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二、開花
二、開花 ⑬
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ヒートでもないのに毎日愛のないセックス。
しかも昨晩は、吐き気で気持ち悪い中、気持ち良かったのは竜仁さんだけ。
それって僕の意思はいらないってことじゃん。傲慢なアルファじゃないか。
泣きすぎて腫れぼったくなった目が、窓の映る。
不細工で滑稽で、そして酷く虚しい。
縛られて、軟禁されて、自由もない。自分の意思も通らない。
ゆるゆると傲慢なアルファに支配されていく。僕の感情も気持ちもいらないまま、彼の手の上で踊らせれている。
悲しくて、そして怖くなった。
ここにいては駄目だと感じられた。
「辰紀くーん、どこですかー」
昨夜の行為が許せなくて、隙を見て屋敷の中で隠れてやった。
逃げ出したかったけれど、酷い顔だったのと身体が立ち上がるのがやっとで屋敷から脱げだす体力はなかった。
必死で探す竜仁さんが面白くて、絶対に物音を立てないようにシーツで覆われた家具の中でじっとする。でも腕時計を持ってきたのは失敗だった。静かな屋敷の中で、小さな秒針の音が響いてしまう。
本当は屋敷の外へ出たかったが、花を食べていないせいで倦怠感の最中だ。
逃げ出すならば、この腕時計の中の花びらを食べて、症状を和らげてからだ。
「辰紀くん、出てきてください。今日はケーキですよ」
食べ物ぐらいで尻尾を振るわけない。
僕は貴方に絶望している。昨夜の行為にも怒りを感じている。
許せるわけはない。この花を食べて、アルファの貴方に毒を嗅がせてやる。
もっとたべて、家に生えている華を全て食べて自分自身が毒になればもうこんな風に触れることもできなくなる。食べてやる。
「紅茶は、アッサムにしますか。ダージリンがいいですか」
腕時計の裏を開けると、花を加工してできた錠剤が出てくる。食べてやる。
アルファ様の言うことなんて聞かない。好きなように操られてやるものか。
取り出した錠剤を見ながら、なぜか手が止まる。
竜仁さんは広い屋敷の中、一つ一つ使われていない部屋の中、僕を探そうと歩き回っている。この部屋からはまだ遠い。絶対に出てこない。出て行かない。出て行きたくない。
愛のないアルファとの行為は、疲れる。気分も悪いし、怠いし止めてくれないし。
心が押しつぶされそうなほど、痛むから。
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