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第1章 異世界転生と学園生活
二重人格?
しおりを挟む「大きな声は出さないで、バレたら面倒だわ」
「…………ッ」
セオドアはこくこくと小刻みに頷く。
それより!顔が近い!すごい近いんだが!?ドアップで見たアミィール様は本当、フランス人形………いや、もっと美しい…………!
「…………ごめんね、驚かせちゃった。おはよう」
「お、おはようございます………ではなく、何故ここに………!?」
普通、王族なら専用の馬車で登校する。ヴァリアース城に滞在していると聞いたことがある。ならやっぱり馬車での登校のはずなのに……………
しかしアミィール様はサラッととんでもないことを言った。
「抜け出してきちゃった。そんなに距離が無いのに馬車なんて仰々しいでしょう?」
「な、それはなりません!従者がどれだけ心配すると…………」
「書置きを残してきたから大丈夫よ。………セオドア様と登校、したかったんだもん」
そう言ってむう、とむくれるアミィール様。
いつもとキャラが違くないか…………?いつもは凛として、令嬢よりも丁寧な言葉を使うのに、今の話し方は町娘よりもフレンドリーだ。
「?どうしたの?」
「いや、その、………全然イメージと違う喋り方をなさっておられるので………」
「ああ、そっか。………私、一応皇女だし、こんな馴れ馴れしい話し方はいけないでしょう?だから頑張って意識しないとこういう話し方になっちゃうの」
アミィール様はそう言って、地面に落ちていた石を蹴る。石は遠くに転がっていく。それを見てからでも、といって俺を見た。
「セオドア様とは、もっと親しくなりたいからね。皇女、としてではなく、アミィールとして…………セオドア様と話したいなって」
「……………ッ!」
いつもの高貴な笑顔ではない、溌剌とした笑顔。ギュン、と胸が苦しくなる。ギャップ万歳…………!
「それより、行きましょ?遅刻してしまうわ」
「あ、はい……………」
アミィール様の隣を、歩く。ちら、と見たら昨日のように視線があった。慌てて目をそらす。けど、もう一度見て、また目が合って…………を繰り返す。
本当に自分はヘタレだ…………!男として恥ずかしすぎる…………!
けれど、いい雰囲気ではある。もしかしたら、俺をすきになった理由を聞けるかも……………
「あ、あの」
「ん?なあに?」
「ッ!」
アミィール様はすんなり顔を近づけてきた。一々距離が近い…………!熱くなる頬を抑えつつ、早口で聞いてみた。
「な、ななな、なんで私を、す、………ッ、求婚、…………!」
うわー!早口で言ってるのに、ちゃんと言えない!口が回らない!なんだこれ口ちゃんとついてるのか!?
セオドアは自分の口を押さえながら顔を真っ赤にして俯いた。アミィールはそれをみて、クスクスと小さく笑ってから答えた。
「____貴方が花の世話をしているのを見てたの」
「へ?」
「小さな花壇で花の世話、いつもしてるでしょ?あと、教室にある花瓶に水をあげてるのも見た」
「……………?」
アミィールは空を見上げながら、独り言のように言葉を紡ぐ。
「あの小さな花壇の所のおおきな木、私の秘密の場所でね、そこで花を触ってる貴方を見たの。いっつもニコニコ幸せそうな顔をしてさ、…………いいなあ、って思ってたの」
「……………………」
確かに、花壇の所には幹の太い大木がある。よもやアミィール様が居るとは思ってなかったけど、……………でも、
「……………それだけ、ですか?」
「うん。…………沢山好きな所、あるけどきっかけはあれかな。というか、好きになる気持ちに理由って、居る?」
「それは……………」
………………少女漫画のようだ。
ヒーローがヒロインに言うような甘いセリフ。耳が溶けてしまいそうな甘い声。
……………ッ、きっとこれは主人公補正だ。
アミィール様はその色香に惑わされてるんだ。
そう思おうとしたけど、胸も、顔も熱くなった。
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