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第1章 異世界転生と学園生活
何故?の嵐
しおりを挟むそれだけでも可笑しいのに、俺に求婚してくるなんて……………………夢にも思っていなかった。
アミィール様は、まんま俺の理想なのだ。強くて美しくて賢くて………もし女に生まれるのであればあんな女性になりたいと思っていた。だから嬉しくないわけがない。
だけど、嬉しい気持ちよりも戸惑いの気持ちの方が大きい。これも主人公補正なのか?主人公すご過ぎないか……………?
「…………なんで、俺に求婚なんてしたんだろう………やっぱり主人公だから…………」
「セオドア様、また妄想ですか」
「うおっ!」
突然の声に身体が跳ね上がる。見ると___幼い頃から俺の執事をしてくれているレイだ。
「お前、ちゃんとノックしたか?」
「しましたよ、何度も。………まったく、何故セオドア様はそう抜けていらっしゃるのですか」
「悪かったな。…………それより、敬語やめろよ、同い歳だろ」
そう。レイは同い歳なのだ。父・セシルの部下の息子で、男爵の子供だ。だから執事というよりは、友達に近い。それを聞いたレイは大きくため息をついた。
「………セオドア、俺たちはもう16だぞ?主従関係はしっかりするべきだろう、形だけでもさ」
「だが俺たちはこの部屋に二人きりだ。なんの問題もない」
「はあ……………それより、何があったんだ?またお菓子のレシピでも考えてたのか」
「………………違う」
「じゃあマフィン様絡み?…………セシル様から聞いたぞ、婚約解消したんだってな。
でもいいじゃないか、アミィール様に求婚されたんだから」
「………………!なんで知ってる!?」
思わず立ち上がった。もちろん俺は何も言っていない。しかしレイはにやにやしながら言う。
「俺は執事だぞ?情報なんていくらでも入ってくるんだよ。いいじゃん玉の輿、相手はあのサクリファイス大帝国の皇女だぞ」
「……………簡単に言うなよ」
セオドアは再び机に突っ伏した。
俺は公爵家だ。それなりに地位は高いが、相手はあの大帝国だぞ?皇女だぞ?
好きだなんだと言う前に身分差がありすぎる。いくら主人公補正があったとしても壁は分厚い。俺が女でアミィール様が男であればアミィール様の一言で娶らされるのは可能だが、俺は男だ。しかも剣の腕もなければ特別頭がいい訳では無い。
チート能力1つでも持っていればまだ救いはあるが生憎このゲームはバリバリのギャルゲーである。
「………詰んでる…………やっぱり無理だ」
「諦めるのが早いなぁ…………でも、なんでセオドアを好きなんだろうな」
「俺が分かるわけないじゃないか……………主人公しかスキルないし…………」
「ぎゃるげー?だっけか、しゅじんこうっていうのはすごいんだなぁ」
「信じてないくせによくもまあ……………」
セオドアは主人公に有るまじき憎らしげな顔でレイを睨む。レイはけたけたと楽しそうに笑いながら、言った。
「まあ、なんだ、とりあえずアミィール様と仲良くしてみろって。そんなに悩むんなら本人に直接聞けよ」
「……………ん、そうする」
セオドアは机に顎を置きながら小さく返事をした。
* * *
次の日、学校に向かうセオドアの目にはくっきりとクマが浮かんでいた。
結局、一睡もできなかった…………アミィール様はなんで俺のことを好きだと言ったのか………………
「…………?」
そんなことを思いながら歩いていたら、ぽん、と肩を叩かれた。………また、ヘイリー辺りか…………!
そう思って振り返ると____魔導師を専攻している生徒だけが着れるフードを被ったアミィール様が居て。
「な____「しー」…………っぐ!?」
声が出る前に、アミィール様の手で口を塞がれた。
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