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第1章 異世界転生と学園生活
立場逆転劇
しおりを挟むザッシュは近くにいたマフィンやヘイリーを突き飛ばして前に出て憤るように言う。
「アミィール様!その男は沢山の女性を不幸にする不貞な輩です!貴方が近づくべき者ではありません!
一国の皇女が下賎な輩を相手にする必要など無いのです!」
「…………わたくしからしたら、公爵家であるセオドア様に伯爵家の貴方がそのような事を述べている事の方が不愉快ですわ。
不敬罪で処されたいですか?」
「___ッ」
ザッシュは口を噤む。…………いくらザッシュに貶されている身とはいえ、自分が原因で国交問題が生じるのは嫌だ。
そう思ったセオドアは深く頭を下げた。
「申し訳ございません、このような事に手を煩わせてしまい…………私の頭一つで事は収まらないのは承知しておりますが……………」
「セオドア様、頭をお上げください。貴方こそよく堪え、その上で自分を貶めた者を庇う事まで気を配ることができましたね。
やはり、貴方が不貞の者には思えません。そう思いませんか?マフィン様?」
「ッ…………………ですが、その者はわたくしの婚約者です!」
「よくもまあ、あのような暴言を撒き散らした上で言えますわね。どの口が仰っているのでしょう、教科書でも食べてみますか?」
「なっ____」
マフィンはあんぐりと口を開け呆然としている。これには俺も驚いた。まさか誰にでも優しいアミィール様からこのような言葉が出るとは思わなかったのだ。
アミィールはマフィンから目を離し、セオドアを見る。
「このような時に求婚などはしたないことをしてしまい、申し訳ございません。
困らせてしまいましたか?」
「そ、そのようなことは………………」
「よかった、宜しければ考えて頂けないでしょうか…………?」
そう言って俺を見上げるアミィール様。もう目が合わせられない。俺、主人公だよな?主人公補正がモブだけど皇女様にも効くのか?
「ッ、アミィール様!今一度お考え___「くどいわよ」ッ」
未だに食い下がろうとするザッシュ、アミィール様のひと睨みでKOされる。いくら女誑しでも、皇女様の御心は動かせないようだ。
その皇女様は俺を見てふ、と笑みを零して言う。
「求婚の件はゆっくり考えて見てください。わたくしもお慕いしている殿方に無理強いはしたくありません。
……………そろそろ授業が始まります。ここは空気が悪いので、少し後ろの方に座りましょう」
「は、はい!」
呆然とするクラスメイトを放って、スタスタと後ろの方の席_アミィール様がよく座っていらっしゃる場所_に連れていかれた。
隣に座ったら、凄くいい匂いが鼻腔を掠める。それだけでもう心臓がバクバクだ。授業なんて聞いていられない…………!
ちら、とアミィール様を見たら、アミィール様と目が合った。すると、にこ、と笑った。ゴハッ!この破壊力はなんだ…………!?
ドキドキしているうちに、教師が教室に来て、授業が始まった。ヒソヒソが未だに聞こえるけどどうでもいい。
案の定、授業に集中できず、真っ白なノートだけが手元に残った。
* * *
「………………………はあ」
その日の夜、セオドアは自身の部屋にあるお気に入りの勉強机に突っ伏していた。
…………………結局、今日1日全く授業に集中できなかった。何故なら1日中俺の隣はアミィール様が座っていたから。勉強なんて身に入らなかった。
アミィール様は、一年前に留学と称して転校してきた。それだけで驚いた覚えがある。あんなに美しく、設定を盛りに盛ったようなキャラなのに………………モブなのだ。ゲームには全く出てこなかった。2年で転校してくるのはヤンデレ属性のターニャだけのはずである。
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