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第5章 主人公の隠された能力
人智を超えた力 #とは
しおりを挟む「セオ様!」
「…………アミィ」
玉座の間に、アミィール様がいらっしゃった。息を切らしている。走ってきたのはすぐにわかった。
俺は嬉しくて、抱き締めたい気持ちを抑えて言う。
「……………俺、アミィと結婚するの、認められたよ」
「ッ………………セオ様…………!」
アミィールは泣きそうなセオドアを強く抱き締めた。
嬉しい。
凄く嬉しい。
けど。
そんな強大な力を持つ人間は、争いの種になりかねないんだ。人智を超えた力を得た者は、普通の人間ではなくなる。神にさえなれてしまう。
そんなの_____辛い。
わたくしが"龍神の血を受け継ぐ者"だから、わかるんだ。
そのような力などなくても、わたくしはセオドア様の事を愛しているのに。何故そのような力をお与えになったのですか。
神………………だから貴方は嫌い。
神なんて大嫌い。
_______心優しい彼をそんな辛い道に連れていく貴方が大嫌いです。
「………………ッ」
涙が溢れる。胸が苦しい。
でも、セオドア様は本当に嬉しそうに笑っているんだ。
それが______嬉しくて、悲しくて。たくさんの感情が渦巻いていて…………言葉が出ない。
セオドアはアミィールを抱きしめながら、優しく言う。
「……………アミィ、泣かないで。
俺は____アミィと居れるだけでいい」
そう言って、セオドア様は少し離れてわたくしにキスをした。………甘くて、酸っぱくて…………涙が止まらないくらい、嬉しいんだ。
父親が居る前でも、何度もキスをした。
セオドア様のキス、いつものキス。………………お願いです。強力な力を持っても変わらないでくださいまし。
そう切に願って、目を閉じた。
* * *
「~♪」
俺は今、凄く幸せだ。
鼻歌だって出てしまう。だって、皇帝様に結婚を認められたから。
理由は_______
セオドアは自分の指を見た。
傷は残ってないけど、この血だ。
とんでもないチート能力を持っていた。主人公なんてお飾りだと思っていたのに、だ。
でも、そんなのどうでもいい。
頼まれても、家族以外には使わない。頼る気もない。
ちゃんと"家族"になれたかは……………わからない。本当は、好かれて認められたかった、なんて我儘なことを考えている。
「……………偉く上機嫌だな、セオドア」
「お、レイ」
執事のレイは、暗い顔をしていた。
何かあったのか……………?
「どうしたんだ、レイ」
「_____お前、その力がどういうものかわかっているのか?」
「え?」
レイは執事モードをすっかりやめて、詰め寄ってきた。大きな茶瞳が歪んでいる。
「お前ッ、なんで嬉しそうなんだよ!」
「ッ、だ、だって…………」
レイは震えながら言う。
「いいか、その力は、人智を超えた力だ……………戦争の種にだってなる。お前、アミィール様の顔を見たのか?あんなに、あんなに悲しそうな顔をしてたんだぞッ!」
「ッ!」
レイは俺をソファに押し倒して胸倉を掴んだ。
「"龍神"で苦しんでいるアミィール様の前で!人智を超えた力で浮かれてるな!」
「_____!」
ふーふー、とレイが肩で息をしている。
俺は__________馬鹿だ。
頭に水をぶっかけられた気分だ。
アルティア皇妃様は、"龍神の力に関すること"で苦しんでおられた。
アミィール様は、自分が人外だと泣いておられた。
______俺は、俺は馬鹿だ!
「ッ、…………レイ、ありがとう。頭が冷えた。俺、アミィール様に逢いに行く」
セオドアは、今にも泣きそうな顔でそう言った。レイは背を向けながら大きく息を吸う。
「ああ。行ってこい。行ってぶん殴られてこい!」
「……………ああ!」
セオドアは部屋を飛び出した。城内を走る。
アミィール様……………!
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