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第7章 主人公と皇女の結婚式前
"選ばれし者達の密会場"
しおりを挟む「セオドア様、呼吸をしてくださいまし」
「……………………ッ」
結婚式三日前。セオドアはアミィールの横でガチガチに緊張していた。理由は…………各国の王族達との会食のせいである。
……………って!王族と!会食って!
凡人の俺には荷が重すぎると思うんだが!?
普通、結婚式の主役は何もやらなくていい。だがしかし、"普通"ではない大帝国の皇女様の結婚となると話は別である。外交も兼ねて、皇帝に代わり子供が挨拶をするのは当然で。それだけではなく、当のラフェエル皇帝から『お前達も参加しろ』という命令が下っている。逃げ場は残念ながらない。
「では、行きましょう。御手を」
「う、り、リードは私がす、する………」
セオドアはビクビクと怯えながらカタコトでそう言う。アミィールはそれを見てくす、と笑った。
こんなに緊張しているのに、あくまで男であろうするお姿は立派だわ。………でも、無理はさせてはならない。
そう思ったアミィールは優しく、安心させるように微笑む。
「____セオ様、今回はわたくしに王族を紹介させてくださいませ。
そのかわり、次は必ずエスコートしてください」
「……………う」
アミィール様の優しい気遣いが心にじんわり染み渡る。男としては失格だけれど、乙女としても凡人としてもありがたい申し出に、複雑な気持ちになりつつ、その手を取った。
アミィール様の手を取ると、会食場の前にいたラフェエル皇帝様の側近・リーブ様とガロが扉を開いてくれた。
「____?」
扉のむこうは、真っ暗だった。
長い机1つと椅子が9つあるだけ。…………可笑しい、サクリファイス大帝国皇城はどこも金と赤が散りばめられてて、豪華だ。でも、この部屋だけ____以前、卒業パーティにて攻略対象キャラであるターニャが使った特殊能力『監禁』を彷彿させた。
「アミィ、ここは?」
「ここは____サクリファイス大帝国皇族と、各国の王や妖精神、神、精霊、聖女、そして外にいる側近しか入れない聖域ですわ」
「?」
セオドアは首を傾げる。アミィールは『わからないですよね』と困ったように笑った。
「セオドア様、このユートピアで大きな国を言ってみてください」
「え?えっと…………サクリファイス大帝国、シースクウェア大国、ヴァリアース大国、グレンズス魔法公国、セイレーン皇国、アイスバーン………かな?」
突然の問いだったけど、スラスラ出た。最北端にあるアイスバーンを除く4つの国がサクリファイス大帝国を囲むように集まっている。ヴァリアース学園に通っていた時に得た知識だ。
アミィール様は笑顔で頷く。
「そうです。その国々は、20年前から本格的に友好関係を結んでおります。それは、今から来る王族達と、わたくしの両親がこのユートピアを救ったという浅からぬ縁の上で成り立っております。
とはいえ、王族が馬車に乗り、何ヶ月もかけてサクリファイス大帝国に集まると……………国は統制を失ってしまう。また、集まるということは重要な事柄があって、ほかの方々に話せないような話もします。
なので、この部屋は王族が行き来できるよう転移魔法を含んだ防音完備の、完全な密室なのでございます」
「…………そうなのか…………」
一年近く居たけれど、そんな部屋があるとは知らなかった。それに、王族や妖精神、精霊がこのような部屋を作るほど深い関係だということも。
大国同士が常に集まれる、話し合えるということは………この世界は意外と平和なのかな。
そんなことを考えながら、ふと疑問が浮かんだ。
「…………そんな所に、私がはいってもいいのだろうか。私は公爵家だが」
「ふふっ」
アミィール様は俺の言葉に囀るように笑った。そして、目を細めながら笑みを浮かべて優しく言った。
「…………わたくしたちは夫婦になるでは無いですか。立派な皇族ですよ、セオ様は」
「ッ………」
夫婦という言葉に、顔が熱くなる。
今凄く、本当に結婚するんだなって実感した。やばい、……………にやけそう。
「………?」
「!セオ様!」
そう思った時、足がかくん、と揺れた。
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