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第8章 幸せな新婚生活
新しい日常
しおりを挟む「まあ、美味しいですわ!」
「こんなに美味しいものを食べることができるなど…………感激だ………」
「美味いな!力が漲るぜ!」
サクリファイス大帝国の皇城の庭園にて、侍女や執事、兵士が集まり仕事の手を止めてお菓子を食べている。他国では勿論、1年前のこの皇城でも見られなかった光景だ。
1人の新人侍女がチョコのかかった甘いスコーンを片手に、先輩侍女に聞く。
「これはシェフが手作りでくれたものですか?わたくし、こんなに美味しいお菓子を初めて食べました!サクリファイス大帝国皇城で働くとこのような菓子を食べれるのでしょうか………?」
「ふふ、そうよ。この城で務める者は無条件でこのようなお菓子を沢山食べれらるの。
でも、一つだけ違うわ。これは…………シェフの手作りではないわ」
「?どういうことですか?」
「…………上空を見た方が早いです」
先輩侍女にそう言われ、新人侍女は上を見る。そこには_____
「ナーーーハッハッハッ!喰らえ!奪え!お菓子戦争じゃーーーーい!」
黒髪のストレート、黄金色の瞳、黒いドレスを身に纏う美しい女が屋根の上から極悪面でお菓子を投げている。新人侍女でもこの御方が誰なのかはわかる。
サクリファイス大帝国の皇妃、アルティア=ワールド=サクリファイスだ。皇妃とは思えないほど自由奔放かつ誰にでもフレンドリーで、この城に働く者は彼女と話したことがない者などいない。
もちろん、新人侍女も例外ではない。新人侍女は目を輝かせて『もしかして』と言う。
「これをお作りになったのは、アルティア皇妃様でございますか!?流石ですわ!」
「いえ、違うわ…………そのお隣をよく見なさい」
先輩侍女はお菓子を食べた手を、未だに声を上げて高らかに笑う皇妃の隣に掲げた。新人侍女は見て、顔を赤く染めた。
そこには_____
「あ、アルティア皇妃様!このようなことはおやめ下さい!」
群青色の短髪、緑色の瞳、スラッとした鼻立ち…………見目麗しい、美男子。あまりの美しさに声を失う新人侍女に先輩侍女は小さく笑って言う。
「このお菓子は_____アミィール様の皇配であらせられる"スイーツ皇子"ことセオドア様のお菓子ですわ」
* * *
そんな熱い視線に気づかない………否、気づく余裕のないセオドアは隣でお菓子を投げ続ける義母・アルティアに涙目で訴えていた。
「アルティア皇妃様!私のお菓子を定期的に投げるのはおやめ下さい!従者達が困っております!」
「あら?そうは見えないわ。見てみなさいよ、皆の顔。とっても幸せそうでしょうに。
そ!れ!に!これは罰です!私の事をママと呼ばないから!呼んだら辞めてあげる!」
「うっ……………」
セオドアは顔を真っ赤に染めた。
そんなことできるわけがない!相手は皇妃様だぞ!?い、いくら事実とはいえそんな事できるわけがない!
そう顔を赤らめモジモジするのは、ギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公・セオドア・ライド・オーファンだ。しかし、『理想郷の宝石』のキャラとは結婚していない。
"軍事国家"・サクリファイス大帝国。
このユートピアで1番大きく、また、力を有している国の皇女に見初められた俺は皇配として正式に結婚をした。
そして、現在の俺の名前は『セオドア・リヴ・ライド・サクリファイス』である。恐れ多くもサクリファイス皇族として新たな人生の真っ只中………であるのだが。この通り、俺は皇妃様に弄られているのだ。
「ほんと、ほんと勘弁してくださいアルティア皇妃様……………私は羞恥で死にそうです……………!」
「なーにをそんなこと言ってんのよ、相変わらず女々しいわね!"俺の作った菓子を食べろ!"くらいの勢いでいなさいよ!」
「む、無理「セオ様!」…………あ」
そんな言い合いに近い会話をしていると、後ろから声が。振り返ると____紅銀の髪を揺らし、黄金色の瞳で俺を心配そうに見た皇妃様によく似て美しい少女____否、皇女であり、俺の……………愛おしい御方。アミィール・リヴ・レドルド・サクリファイス様である。
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