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第12章 様々な愛の形

魔剣の気持ち

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 セオドアは庭園に来ていた。
 今日は花の手入れという理由ではない。___ダーインスレイヴと話すためだ。


 ダーインスレイヴは神出鬼没だが、基本的に庭園の決まったの木の上にいるのだ。お気に入りなのか、俺もよくそこで会うし話もする。


 案の定、いつもの場所にダーインスレイヴは居た。


 「ダーインスレイヴ様!」



 声をかけると、無言でこちらを向いた。
 もちろん聞きたいことはフラン様のことだ。………ダーインスレイヴ様がフラン様を嫌いな訳では無い。フラン様は熱烈にアピールしているみたいだし、それを嫌がっている様子もない。でも、付き合わない。


 いくら乙女ゲーム『理想郷の王冠』の攻略対象キャラだとしても、ここは現実世界だ。ヒロインであるアミィール様と絶対結ばれないといけないわけではない。俺だってギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公だけど、アミィール様と結婚出来た。絶対不可能なんてない。


 「…………やあ、セオドア」



 「こ、こんにちわ」



 ダーインスレイヴはやっと木から降りて俺の前に来た。聞きたいことは、ある。けれど切り出し方がわからない。突然『フラン様とお付き合いください』なんて言うのは変だし、けどだからといって聞きたくないわけが無いし……………



 グルグルと脳をフル回転させるセオドアに、ダーインスレイヴはポリポリと頭をかきながら言う。



 「はあ…………お前、心の声がうるさいぞ」


 「!す、すみません!」


 セオドアは勢いよく頭を下げる。ダーインスレイヴは『あーいい、いい』とつまらなさげに言った。


 「心で何を思おうが勝手だしそれについて怒ってないよ。けど、聞きたいことがあるなら声を出せ。全員が俺のように心を読めるわけじゃないんだからな。

 ほら、怒らないから言ってみろ」



 ダーインスレイヴ様の言葉が若干優しく聞こえる。これは、聞いてもいい雰囲気じゃないか?



 そう思ったセオドアはおずおずと頭をあげて言葉を紡いだ。



 「あの、…………フラン様のことは、どう思ってますか?」


 うわー!言葉のチョイスミスった!オブラードに包もうとしすぎて突然過ぎる話展開になってしまった!言葉がおかしい気がする!なんで俺はヘタレなんだ!豪胆な男になれよ俺!



 一人、言葉のあやに顔を赤くするセオドア。そんなセオドアの心と真っ赤になっている顔にダーインスレイヴはくつくつ、と喉を鳴らして笑った。




 「フランなぁ?フランは好きだぞ。面白いし元気だし………共に、旅もしたしな。聖女としては異端だが、それと同時に聖の力が強い。歴代でも最強なんじゃないか?…………もっとも、歴代にユートピア全土に"聖なる祈り"を張り巡らせるという偉業を成している奴はフランしかいないが」



 ダーインスレイヴがすらすらとフラン様のいい所を述べる。でもそれは、俺の求めていた答えではなく、表面的なものだ。



 そうではなく。


 セオドアは緑の瞳でしっかりダーインスレイヴを見据えて、言う。



 「そうではなく…………その、女性として、異性としてどうお思いですか?

 フラン様は、貴方のことを___「知ってるよ」………?」



 ダーインスレイヴ様が言葉を遮った。俺から目を逸らして、花を見ながら言葉を紡ぐ。


 「知っているさ。フランの気持ちなど。俺は心も読めるし、それ以前に20年も懲りずにアプローチされてれば嫌でも気づくさ。

 俺もフランをそういう目で見ることは可能だ」



 「!」



 はっきり、ダーインスレイヴ様が断言した。なら両思いじゃないか!断ることなんてない!結ばれて欲しい、20年の片想いが実る___「実らないさ」………!











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