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第21章 元龍神の末裔の『呪い』
勇敢と無鉄砲は似て非なる物
しおりを挟む「…………ワールドエンド?」
知らない単語。
でも、場所だというのは会話からわかる。
場所さえ分かればどうにかなるかもしれないじゃ『ならないよ』………!
俺の思考が、オレンジ色の刈り上げ、沢山のピアスがついた大きな福耳、4本の腕を持つドゥルグレの一言に掻き消された。ドゥルグレは頭をがしがし、とかきながら歌うように言った。
『あれは禁術だ。当時の国民達全員の命を捧げて行った大きな呪いだ。お前がたとえ強い奇妙な力を持っていたとしても、こればかりは簡単にいかねえ。
世の中というものは上手くできてるんだ』
「人が苦しむのにうまいもへたもあるはずないじゃないかッ!」
ドゥルグレの言葉にセオドアは吠えた。『呪い』がどうにもならない、と決めつけるのは嫌だった。苦しんでいる妻が、お腹にいる子供達が『呪い』に縛られているという現実を受け止めるには、俺は幼すぎた。
そんな幼い俺に、ラフェエル皇帝様は静かに言う。
「私たちは___諦めたわけではない」
「なにを…………っ!」
ラフェエル皇帝は真剣な顔で俺を見ていた。その顔に諦めの色がないのは俺だってわかった。ラフェエル皇帝はその顔で、俺の隣まで来て、アミィール様の頭を撫でた。
「_____私達は、20年以上前に世界の常識を覆した。常識、しきたり、運命…………どんなものだって、諦めなければ変えられる。私はそう信じているし、アルティアだってそうだ。
だが、それは容易なことではない。考え無しに吠えるだけがお前の出来ることだと決めつけるな。
その為に頭を回転させろ、様々なことを知り、色んなことを乗り越える。
そうやって…………前に進むんだ。勇敢と無鉄砲をごっちゃにするな」
「ッ……………」
俺は、黙った。大人の意見というものは子供は受け止めきれない。それは前世でも今世でも一緒だ。一刻も早くどうにかしたいと気がはやる。
だって、それだけ愛しているから。
この御方と自分の子供達の為ならどんなことでもできると思っているから。
でも、それは…………俺の思い上がりなのかもしれない、そう聞こえたから。
そして、俺も___それを否定出来るほどの言葉を持っていないから。
セオドアはそう言いたい気持ちをぐ、と抑えて、アルティアを見る。
「アミィは、いつ目覚めるのですか」
「………とりあえず、今日一日は寝ていると思うわ。明日起きるでしょう。
今日は私が付き添うわ。セオくんはラフェーと帰りなさい」
「…………それは、嫌です。
私はアミィ、………アミィール様の夫。妻を支えることぐらい、したいです」
セオドアは目を伏せて、アミィールの顔を撫でた。温かい体温に、やっぱり涙が滲む。その様子を見たアルティアは目を細めて『そう』と言った。
「じゃあ、私と此処に好きなだけいなさい。ラフェー、いい?」
「………ダメだと言ったらこの男は聞くのか?」
「聞かないでしょうねえ。アミィールと同じ変に頑固な子だから」
「なら聞くな。…………では、私は後処理がある。任せたぞ、アル、セオ」
ラフェエルは大きく溜息をついてその場を後にした。太陽神・ドゥルグレも既にもう居ない。
俺とアルティア皇妃様、アミィール様と子供達だけになった。アルティア皇妃様は指を鳴らして、椅子をその場に二脚出した。
「ほら、座りなさい。いつまでもボケッと立ってたってアミィールは目覚めないわ」
「……………はい」
セオドアは椅子をひとつ取ってアミィールの顔がよく見える場所に座った。
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