307 / 469
第21章 元龍神の末裔の『呪い』
主人公、龍神と出会う
しおりを挟む「ぐがー!ぐごー!…………」
「…………… 」
アトランティスにて、大きな鼾が広い部屋に響きわたる。アルティア皇妃様のいびきだ。………本当にこの人は分からない。普通子供が正気を失って暴れ回ったというのに呑気に寝れるか?そもそも、男である俺の前で普通に寝顔を晒せるか?
ムカムカとする。それはアルティア皇妃様がこの態度だからではなく………自分の無力さを誤魔化すために八つ当たりしているだけだ。
…………俺はこんなにも小さい人間だったのだろうか。いや、元々懐が深い人間だとは思ったことは無いけれど、アミィール様の事になると視野は確実に狭くなっている。
「……………アミィ」
すやすやと眠るアミィール様の頬に触れる。依然美しい黄金色の瞳を見ることは叶わず、ただ規則正しい寝息しか聞こえない。子供達も何か悪戯をしたり、俺を励ましてくれたりしない。『呪い』を継承したと言っていたし、生きているからとはいえ疲れているだろう。
でも、孤独だ。
寂しいさ。凄く。
____俺は何も出来ない。
_____俺は何も変えられない。
アミィール様の美しい寝顔を見るだけでそう思ってしまう。
「____クソっ」
セオドアは1人そう呟いて、ベッドを殴る。柔らかいベッドはセオドアの拳を優しく包んだ。それが自分の無力さを実感させる。
俺はお飾り以下だ。愛する御方も、愛する子供達もこうして苦しんでいるのに、何も出来ないんだ。格好悪くて、ダサくて、無力なんだ。
何が夫?…………笑わせるな。
アミィール様の身体の事も『呪い』の事もなにも変わっていないじゃないか。3年間俺はなにも、なにもしてなかったじゃないか。
アミィール様の甘さを享受するだけ享受して、口先だけの『愛している』を囁いて、貪るだけ貪って………これが夫婦?巫山戯るな。
悶々として、ぐちゃぐちゃと頭も心もかき乱れている。ワールドエンドという場所さえ知らない。何か解決策が浮かぶわけでもなく馬鹿の一つ覚えのように自分を責めるしかない。
責めているだけじゃだめだ。
絶望しているだけじゃだめだ。
考えろ、考えろ。
家族を守る為に、男として、父親として。
俺の守るべき家族をどう守ればいいのか______
「_____俺は、どうすればいいんだ」
『焦っているねえ、青年』
「……………!」
不意に、知らない声が聞こえた。俺は辺りを見る。誰か、居るのか………!?
俺はすぐさま立ち上がり、いつでも魔法を唱えられる準備をしながら視線を忙しく動かす。もちろん、寝ているアミィール様を守るように立っている。
『怖いねえ。我は敵じゃないよう』
「___誰だッ!」
『上をみろ、上を』
「ッ…………は?」
声に言われて、上を見た。
頭上には____月夜に照らされた、男の姿があった。
黒髪の長髪、黄金色の瞳、少女漫画に出てくる皇帝が着ていそうなロープを身に纏う___アルティア皇妃様によく似た、男。
「………アルティア、皇妃様…………?」
『違うよ。…………でも、似てるだろう?我は親なんだ。
はじめまして、人間。我は9代目龍神のガーランドさ』
「な____!」
俺はすぐさま掲げた手を降ろして、その場に跪く。ガーランド………依然フラン様が『惚れた!』と言っていた、アルティア皇妃様の父親…………!?此処に住んでいるのか!?というか、龍神はもう居ないんじゃないのか!?
『ハハッ、君の心の声は幼い頃のアルティアそっくりだねえ。サクリファイス皇族というのは、そういう面白い者に惹かれる決まりでもあるのかい?』
男は高らかに笑う。そして、『顔を上げろ、人間』と言った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
71
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる