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第21章 元龍神の末裔の『呪い』
諦めないという誓い
しおりを挟むガーランドはそう言って、やっと俺の元に降りてきた。そして、透明な手だと言うのに、俺の頭を撫でた。
『考えるのは必要だとラフェエルも言っていただろう?考えるのをやめた時、我は心が死ぬ時だと思う。
自分の目で見て、触って、感じて。
そうやって色々知って、考えて。
でもさ。
考える時にそうやって卑屈になって、物事はちゃんと見れると思うかい?』
「____それは」
セオドアは言葉を詰まらせる。
その通りだと、思ったから。
自分の責めるのは簡単だ。誰でも出来る。落ち込むことだってできる。決めつければ諦めもつく。
けど。
某少年漫画の言葉では『諦めたらそこで試合終了だよ』というのがあった。有名な漫画で、乙女な俺でも感動した。
____俺は自分を責めて楽になりたいのか?
そうじゃない、そうじゃないだろう、俺。
楽になんてならなくていい。苦しいままでいい。
だけど。
_____この幸せを手放したく、ない。
この幸せの為ならいくらでも苦しい、悲しい道を選べる自信がある。
…………ああ、そうか。
アミィール様は悲しみに暮れながらもそれでも歩みを止めなかったのは、それ以上に『誰かの幸せ』の為に動く事に使命を持って『任務』を行っていたのか。
こういう気持ちで____心が傷だらけになりながらも、この道を歩んできたのか。
そう思うと不思議でさ、涙が出てきた。
「ッ、う…………」
顔を覆って、泣いた。寝ているアミィール様の前で、涙を流した。俺はその強い御方の力の源になっていたんだ。____それが嬉しくて、嬉しくて。
これは絶望で泣いているのではない。
嬉しくて泣いているんだ。
そして。
俺も、動かねばならない。考えねばならない。アミィール様と居ること、それを叶えるために考えるのを辞めてはならない。
それがいくら悲しい道でも、『アミィール様や子供達と歩む幸せ』を得るために、俺は頑張らねばならないんだ。
『そうさ。そういうことだ。
自分を責めれば楽だが、それは逃げだろう?
せっかく生まれて、すくすく育ち、愛する人を得て、子宝さえも手に入れた男が簡単に諦めるなよ。
せっかくの人生。"お前の物語"。
それを変えるのは、誰でもないお前なんだ。
"主人公"と言っていたが_____生きとし生きるものに脇役などおらん。
生きている人間、生きている生物、生きている全てが自分の物語での"主人公"だろう?』
ガーランドはそう言って、歯を見せて笑った。見た目から想像出来ないくらい子供っぽい笑顔は、いつも無茶苦茶をするアルティア皇妃様によく似ていて、どこかアミィール様の凛々しさを称えていて。
俺は、涙を拭いた。痛くなるくらい擦って、鼻水も服の裾で拭った。
そして、真っ直ぐ男を見据えて、笑顔を作った。
「____はい!私はもう、諦めません!」
そう、ガーランドにではなく自分に宣言したんだ。
そんな俺を見て、ガーランドは優しく微笑んだ。
『曾孫が生まれたら、此処に来ておくれよ。元気な曾孫を我に見せておくれ。
その時は____"呪い"に打ち勝って、な?』
「わかりました。………必ず、来ます。
家族全員、笑顔で此処の地を踏むことを誓います」
『固いなあ。いいんだよ気軽で。ひいおじいちゃんに会いに来た~って気構えで来い。
___っと、そろそろ朝が来るな。じゃあな、青年』
「あっ、ガーランドさ………ッ」
ガーランドが消えたと思ったら、眩しい朝日の光が差し込んだ。そして、暗かった部屋が彩られていく。
そこに、居た。
「___セオ様」
「…………アミィ…………ッ!」
気高く美しく、それでいて愛らしく可愛い____俺の大事な人が体を起こして微笑んでいて。
俺はすぐさま駆け寄って____抱き締めたんだ。
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