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第26章 ドキドキ?ハラハラ?家族旅行!

気分はメリーゴーランド

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 不意に、歩いていたうさぎの獣人が野太い声でそう叫んだ。すると街ゆく亜人達が一斉にこちらを向いた。


 「隣にいらっしゃるのは龍神様の末裔のアミィール様では!?」


 「おい!その隣にいる人間に抱かれた女の子も龍神の瞳だぞ!」


 「きゃーっ!噂は本当でしたのね!?龍神様の末裔のアミィール様が人間と結婚し双子をご出産になられたというのは!」



 「え!?え!?え!?え!?」




 ドドドドド、と国民達らしき亜人が詰め寄ってきた。一気に騒がしくなる広間にフランがはあ、と溜息をついた。



 「あーあ、見つかっちゃった~。またこれかあ。だからゼグス様の城にひとっ飛びすればよかったのよ、アミィールちゃん」


 「ですが……セオドア様に街を見て欲しくて…………」


 「ど、どういうことなんだい?アミィ…………!」


 「___この国は、龍神やサクリファイス大帝国の第1皇太子に優しい街なのです。この国の王の1人であるゼグス様はわたくしのご先祖、そして龍神とは古くから関わってきた…………また、20年ほど前、フラン様やお父様、お母様達旅の一行がこの国を救ったので___この国では、わたくし達は『英雄の子供』なのです」



 「……………………」


 そうだったのか……………俺は何も知らないで浮かれて来たけれど、これは確かに憂鬱になる。けど、俺の為に街に寄ってくれたのは純粋に嬉しい。おかげで素敵なものを見れたからそれはいいんだけど…………


 「この人間、珍しい匂いがしますわ!」 


 「さすが龍神様の選んだ御方ですわ!」


 「うう………」



 馬と虎の獣人が物凄く匂いを嗅いでくる……………セラフィールはかたかた震えているぞ……………俺もついでに震えている…………ここから動けなくないか?俺達………



 _____この後、ガロがユニコーンの馬車の手配をして戻ってきた時、『人狼様だ!』とまた1層騒がれ、俺達が馬車に乗れたのはこれから3時間後だった。



 *  *  *





 「きゃーッ!」


 「スゲーッ!」



 子供達は目をきらきらさせながら外を見ている。俺も声をまた失っていた。俺達は___ユニコーンの馬車に乗っているのだ。空を飛ぶユニコーンの馬車。当たり前だけどメリーゴーランドよりも迫力があって俺もはしゃいでしまう。


 「アミィ、見てくれ!私達は飛んでいるぞ!凄い!」


 「ふふ、セオ様と子供達が同じ顔をしていますわ」


 「う、…………」


 1歳半の子供たちと共にはしゃぐ20歳…………でも仕方ないじゃないか。こんなの乙女的にはご褒美でしかない。アルティア皇妃様は常々『なんでもありな世界だ』というけれど、本当にそうだと思った。


 そんなセオドアの向かいに座っているガロもくすくすと笑った。



 「20年前のフランさんとアルさんのようですね」


 「わかる。わかるわセオドアくん。乙女的にこれは美味しいわよね。リアルユニコーンにリアル馬車よ。夢の国よりも燃える」 


 「そうなんですよ!本当に夢の国のネズミよりも燃えます!メリーゴーランドの100倍楽しいです!」


 「ネズミ?ゆめのくに?めりーごーらんど…………?」


 ___アミィールはフランとセオドアが熱く語っているのを見て嫉妬し、セオドアとキスをするまで、あと5分。



 *  *  *



 「……………………」



 ユニコーンの馬車は楽しかった。すごく幸せだった。それは認める。フラン様と語り合ってからのアミィール様のキスも嬉しかった。子供達には冷めた目で見られたけどなんでもいい。だがしかし。



 セオドアはカタカタと震えながら目の前を見た。____全部が黒い、大きな城。なんというか、幻想的な銀世界観を壊しているような城だな、悪趣味だなと思った。


 というか。



 「………………誰もいない…………?」


 出迎える従者の姿が無いのだ。普通城に立ち寄る時は沢山の従者が出迎える。けれども、誰一人居ない。…………寂しい城だと思った。


 「セオ様、行きましょう」


 「アミィ、勝手に入っていいのかい?」


 「ええ。…………この城自体が聖域、普通の人間は入ってはならないのです」


 「それでは、私も入っては…………む」


 その言葉を言う前に、アミィール様の人差し指が俺の唇に触れた。そして、アミィール様は挑発的に笑った。


 「___セオ様は、わたくしの旦那ですわ。セオ様ほど清らかな人が入れなくて何が聖域ですか」


 「___っ」



 その言葉に、顔の熱が上昇する。
 本当に、ずるい。俺がドキドキさせる前にアミィール様が俺をドキドキさせる。ズルすぎる。キスしたいと思う自分が情けない。


 「ふふ、………では、入りましょう。

 ガロ、お願い致します」


 「は。………………星の妖精神・ゼグス様、氷の精霊・シヴァ様。我らが訪問をお許しください」


 「____!」


 ガロがそう言うと、城がひとりでに開いた。そして、アルティア皇妃様がいつも出すような黒渦が広がっている。それがとても禍々しく感じた。しかし、元気な子供達は『きゃー』なんて言いながら走り出す。


 「アド!セラ!」



 「パパ、先に行くー!」


 「早く来てよー!」


 それだけ言い残して入っていった子供達。勿論放って置くことなどできない。セオドアも急いで黒渦に入った。









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