446 / 469
第30章 巡る巡る夏の夜
お祭り満喫中! #1
しおりを挟む「たこやき~」
「べっこうあめ~」
「くれーぷ~」
「ふらいどぽてと~」
子供達は沢山の食べ物を小さな腕いっぱいに持ってはしゃいでいる。………今まで言ったもの殆どはそもそもこの世界にはないものだ。けれども、俺たち前世日本人組が知恵を出し合い、思い出し、機材を作ったり、作り方を教えた。すると国民達が目を輝かせ練習し、このとおり人に売れる代物までに進化させたのだ。
確かに、たこ焼きのソースはデミグラスソースだったり、べっこうあめの味がフルーツ一択だったりとズレているけれど、………たった20日でここまでできるサクリファイス大帝国の人間はやはり凄いと実感させられる。
そう感心しているセオドアを他所に、りんご飴を持ったアミィールはくすくすと笑った。
「お祭りがこんなに楽しいと思ったのは初めてですわ。国民達も喜んでますし………はなび、というものが始まる前に燃え尽きてしまいそうです」
「ふふ、そうだね。楽しんで貰えるなら、やった意味にもなる。俺達だけが楽しいのではなく、みんなで楽しめるのがお祭りの醍醐味だよ」
「そうなのですか…………勉強が至らず申し訳ございません」
「ああ、謝らないでおくれ。………楽しい祭りに謝罪は似合わないから」
「…………ええ」
アミィールはそう言ってふわり、笑う。ぐぁぁ………やっぱり尊い……首筋が露になっている………男、見てないよな?いや見てるなぁ?俺はどういう気持ちでいればいいんだ?『オレの嫁だ!』とドヤ顔していればいいのか?『俺以外見るな!』と怒ればいいのか?わからない。わからないぞ…………
そんなことを考えるセオドアを、アミィールは盗み見る。
髪と同じ色の珍しいお召し物、明るい色など着ないセオドア様が赤の差したものをきていらっしゃる。ほんの少しだけ胸板が覗いている。
………わたくしとしたことが、このような服を着るのであればわたくしの大切な人だという跡を胸板につけておくべきでした。わたくし以外の女がいやらしい目でセオドア様を見ています。腹立たしい。殺して差し上げましょうか。………いいえ、だめです。今宵はお祭り、血祭りはだめなのです。
そんなことを考えている両親を他所に、子供達は両手に抱えていた食べ物をぺろり、と食べてから金魚すくいの場所を見つける。からんころんと下駄を鳴らししゃがんだ。
「おさかな、たくさん、きれー」
「しってる、きんぎょ、って言うんだよ」
「ふーん、………ん?」
アドラオテルは金魚を見るのをやめて、隣を見た。なにやら金魚を掬って器にいれている。大きな大人の人だ。見上げると___見覚えのある金髪青瞳の男の人。
「あ、くりすー!」
「くりす?あ、くりすおじちゃま!」
「ん?………おお!セラフィール嬢とアドラオテル殿ではないか!」
くりすことクリスティド・スフレ・アド・シースクウェア。隣国、シースクウェア大国の国王である。しかし、そんなことを知らず『友達』だと思っている子供達はきゃいきゃいと話し始める。
「くりす、なんでここにいるの?」
「くりすおじちゃま、おーさまでしょ?」
「ふふ、祭りがあると聞いてお忍びでね………ところで、パパとママは__「アド、セラ!」……ああ、セオドア殿とアミィール嬢」
子供達が消えた、と思い走り回っていたセオドアとアミィールはクリスティドと子供達を見つける。セオドアは急いで頭を下げた。
「クリスティド国王陛下!どうして………」
「しーっ、あまり大きな声で国王陛下はやめておくれ」
「す、すみません………」
「でも、何故ここに__「クリスティド様!」………エアリス女王陛下?」
そんな話をしていると、わたあめを持った貴婦人___深緑の髪、黄緑の瞳を眼鏡で隠したエリアス・ラピュード・ヴァリアースがチョコバナナを片手に現れた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
71
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる