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第2章 水の精霊、海の妖精神と次期龍神
淑女への道のりは遠いようです
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20日にも及ぶ長旅が、終わった。アルティアは部屋に案内されると真っ先にベッドに横になった。
もう全身バキバキだ。馬車なんてもう二度と乗りたくない。心の底からそう思う。
シースクウェア王城。サクリファイス皇城より大きくはないとラフェエルは言ってたけど十分大きいと思った。まあひとまずそれは置いといて。ラフェエルは他国の皇子で、私はその婚約者として歓迎された。ラフェエルとカイテルの指導通り淑女として挨拶をし淑やかにするのに精一杯だった。だから疲れている。
でも、ラフェエルの方がもっと疲れているんだろうなって思った。
ラフェエルはサクリファイス大帝国"第1皇太子"___必ず死ぬと言われていた皇子は生きた。それは私が思っている以上に凄いことらしく。出迎えた大臣_名前は忘れた_が興奮しながら「龍神様が生きる事を認めた偉大なる御方」と言っていた。あの時のラフェエルの嫌そうな顔ったら…………思い出しただけで笑えた。
「何を笑っている?」
不機嫌な声にぱ、と口元を押さえた。
勿論声の主はそのラフェエル。足を組んでソファに座っている。どっからどうみても独裁者で来訪者だとは思えない振る舞いだ。……最も、今この部屋には私達しか居ないから出来るのだろうけど。
「ふふ、大したことじゃないですわ。わたくしは未来の旦那様がここまで凄い御方だとは存じ上げなくて、申し訳御座いません」
「そういう言葉はベッドから起き上がって仰々しく言うものだ。……従者が居なくなったからとすぐに横になるのはやめろ。品がない。
口調が多少まともになったからそれでいいと考えているのであれば貴様は本物の愚か者だ」
…………ラフェエルは私が思っているより苛ついている………というか、疲れているらしい。四六時中馬車で顔を合わせていたから多少の起伏は気づけるようになった。疲れていると饒舌になる。しかも大半は毒舌。とはいえ、普段から棘のある威圧的な事を言っているけれど。
「…………旦那様も少しおやすみになられてはいかがでしょうか?先程の者は国王への謁見は明日以降と言っていましたし、今日はゆっくりしてみては?」
「……………気色悪いな」
「はい?」
「貴様が淑女のような喋り方をしているのは気色悪いと言っているのだ」
カッチーン。誰のせいだと思ってるの?数日前は「婚約者としての言葉遣いを学べ」なんて言われて?散々罰を落としていた人間が???罰に怯えて頑張って意識してるのに??
「私だってしたくしてしてるわけないじゃない!!誰のせいよ誰の!!この理不尽大魔王___ッギァア!!」
バチバチィ!と黒い雷もとい罰が落ちた。プスプスと煙を放ちながら涙目でラフェエルを睨む。ラフェエルは紅茶を呑気に、優雅に飲んでいる。
「……………他の者に聞かれたら厄介だ。大声を出さずに淑やかにしろ」
「…………あんまりだってばよ…………」
踏んだり蹴ったりである。ストレス発散材料にされている気がしないでもない。
仮にも婚約者、仮にも次期龍神、どの方面から見ても明らかに私よりもタチが悪くないか?
「婚約者が黒焦げでは私の品位も落ちる。とっとと着替えろ」
「横暴か!誰のせいで___「もう一度受けてみたいか?」……………ううう………」
私はベッドから降りて身体に光を纏う。黒焦げになった服は解けてあっという間に新しいドレスに変わった。
「何度見ても便利だな、その能力は。魔法の法則を全部無視している」
「ふん、私のは魔法じゃなくて"想像"だもんね。………ねえ、疲れたから"従者"を一旦解除していい?」
「ダメだ。夜になるまで待て」
「………………ぶぅ」
私は再びベッドに横になった。
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