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第8章 氷の精霊、星の妖精神と次期龍神
突然の出来事
しおりを挟む「…………………で、どうして結界の中で話していたの?」
アルティアはポンポン、と自分の焦げた身体を払う。不思議なことにそうするだけでホコリのように焦げた皮膚が小さな黒い光となって空中に舞う。その黒い光は床に落ちる前に消えた。
へえ、罰を落とされて平然としてるのも不思議だけど、そうやってケアするんだな……………
ゼグスはそんなことを思いながら、ラフェエルを見た。ラフェエルは小さく首を振って、口を開く。
「………………………次の行先の話を聞こうとしてたんだ」
『……………………』
……………………どうやら、私が話した事を話す気はないらしい。
この子孫の心の中は考えを綺麗に整頓されている。龍神___アルティアの旅に支障が出ることを良しとしない。故に、自分が死ぬ事は伝える必要が無い、と思っているようだ。
なら、私が話すのも違うことだな。
『____ああ、そうだったね。
最後はどこだい?』
出来るだけ素っ気なく言うと、ラフェエルは目を伏せた。
「それがわからないんだ。…………空の妖精神と風の精霊が何処にいるのか知りたい」
『……………空の妖精神と、風の精霊ね…………』
____正直、あの2人が屈服印を渡すとは思えなかったからだ。
5000年前の事を、未だに許していないあの二人_____!
ピン、と空気が張り詰めたのを感じる。
この国に張ってる結界に、"嫌なもの"が近づいてきている………………!
私が感じたことと同じ事を感じたのか、アルティアが空に向けて両手を伸ばし、叫んだ。
「防御魔法・全遮断!」
そう叫ぶと、私とラフェエル、アルティアの周りに大きな結界が生まれた。
その直後、風の魔法を纏った鉄の玉___砲丸が天井を破壊して落ちてきた。アルティアはすぐさま片手で指を鳴らした。
「秘術・標的消滅!」
そう続けて叫ぶと大砲が正方形の物を囲んだ。大砲がボン、と音を立てて爆破する。怪我をするどころか消し炭まで正方形と消えて部屋が汚れることはなかった。
だが……………………
「なんで、こんなものが___『結界が、壊された』…………え?」
私の言葉が遮られた。ゼグスを見ると___唇を噛んで、目を伏せている。
『おい!ゼグス!』
私が言葉を紡ぐ前に、ぱ、とガロをおんぶした氷の精霊・シヴァが現れた。シヴァは大きな声でとんでもないことを言った。
『聖域の結界が壊された!小国連合共が街を襲い始めたぞ!』
「……………!どういうこと!?何が起きてるって言うの!?」
私は慌ててゼグスに近寄った。ゼグスは頭を抱えながら、ぽつり、ぽつりと言葉を漏らす。
『この国・アイスバーンは絶滅しそうな亜人達と、元から此処に住んでいる人間の国なんだ………………!
他国の人間_特にアイスバーンからセイレーン皇国の間にある数十国_から見ればここは宝箱のような場所、だからこそこの国全てを聖域として守っていたんだ………!』
「…………………だが、その聖域の結界が壊れた。神の作る聖域は人間が壊せるものでは無いのではないのか?」
『それは________ッ、かは……………ッ!』
「ゼグス!?」
ゼグスが何か言おうとする前に、赤い血を吐き出した。そして膝が崩れ…………その場にへたりこんだ。そして、消えそうな声で呟く。
『こ…………なときに………………っくそ…………………!』
『ゼグス!…………っち!嬢ちゃん!ガロを預かってくれ!』
「わっ」
シヴァは私にガロを渡して急いで駆け寄った。
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