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第8章 氷の精霊、星の妖精神と次期龍神
次期龍神=正義の味方?
しおりを挟む『ゼグス!』
シヴァが駆け寄った時には、ゼグスは意識を失っていた。
何が何だかわからない私は、ガロを抱きながらシヴァに聞く。
「シヴァ!どういうこと!?ゼグスはどうしたの!?」
『ッ…………ゼグスは星の妖精神だが…………もともと、人間なんだ』
シヴァはゼグスを抱き締めながら、先程ゼグスがしていたように唇を噛んだ。そんなことはもう知っている。返事をせかそうと口を開く私を遮るようにシヴァが答えた。
『初代龍神に無理矢理"神"にされて10万年、屈服印を与えてきた。___屈服印っつーのは身体から膨大な魔力を、命を削って授ける。だから精霊も妖精神も代替わりをする。
けどこいつは……………9回もしたんだ、魔力も命も……………もう擦り切れる寸前なんだ……………おまけにアイスバーン全土に100年も聖域の結界まで張っていた…………
こいつはもう瀕死なんだよ!』
「_____ッ!」
知らなかった。
屈服印が、命や魔力を削るものなんだということを。
言葉をなくす私に、畳み掛けるようにシヴァは続けた。
『聖域の結界はそう簡単に壊れない、人間だけならそれでも持つだろう。けど"奴ら"がどういうつもりか人間共に力を貸したらしい…………………!』
「奴ら、とは?」
『いい加減にしろ!それを話す暇はねえんだよ!もう一度結界を張りなおさなければ国は滅びる!
たくさんの亜人たちは殺されるなり売られるなりしちまう!
嬢ちゃん………いや、龍神!お前の力を貸してくれ!』
「は?」
シヴァががば、と頭を下げた。
飄々としていた態度はそこには無い。必死に国を守ろうとする氷の精霊………………国王。
____私は別に、"正義の味方"ではない。
ただの人外だ。人間にいい思いはほとんど無いし、亜人にも義理はない。誰かを守ってやる、という高尚な考えはあいにく持ち合わせていない。
「……………アルさま」
不意に、抱きしめていたガロが私の服を掴んで、顔を上げていた。今にも泣きそうなのに、それでも言葉を紡ぐ。
「ガロ、ここ、守りたい。
ラフェーさん、ガロ、ゴセンゾサマ、いる。
ゴセンゾサマ、いい人、みんな、きっと、いいひと、だから、だから……………」
「……………………………」
金色と赤色の瞳からとうとう涙が零れた。
……………私はとことんガロに甘いらしい。
そもそもこんな可愛いお願いごとを聞かずにいれる女がいるのかどうか…………………
そんなことを思いながらラフェエルを見る。ラフェエルはこくり、と頷いた。面倒事が大嫌いなラフェエルがオーケーを出しているんだ。
…………………たまには、"正義の味方"を演じるのも一興、かな。
私はガロを下ろして、ゼグスを抱きながら頭を下げるシヴァに歩み寄った。
そして、膝をついてシヴァの顎を持つ。………よく見たら、口元はガロに似てるじゃない。
そんなことを思いながら、口を開いた。
「_____いいわよ。助けてあげる。
何をすればいいのか、話してご覧なさい」
『___!』
____こうして、私は"鎖国国家の雪国・アイスバーン防衛大作戦"を決行することになった。
でも、この時の私は何も分かってなかったんだ。
これが、大きな波乱を生むことを____私は予期出来なかったんだ。
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