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大会開催
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【スノー城・闘技場】
闘技場は、盛大に盛り上がっていた。
「では、ルールを説明する。まず、相手を殺したら負けとなる。ウォーター・カッターなど殺傷力の高い魔法は禁止だ。だが、相手に当てなければ使用しても問題ない。例えば、魔法を相殺させる場合などの使用は認める。あと、大魔法の中にはアクア・ウェブなど殺傷力がそこまで高くないものは使用可能だ。勿論、相手に直接当てても構わない。次に武器についてだが、武器の使用は認めるが全て木製であることが条件だ。最後に、勝敗は相手が気絶、降参、または相手がリングの外に出したら勝ちとする。予選は人数が多いため30人のバトル・ロワイアルを16ブロックで行い、各予選で勝ち残った16人が予選通過となる。そして、勝者16人は明日から始まる一対一のトーナメントに参加して貰う以上だ!」
ユナイトがルール説明をし終えたら、再び、観客達が盛大に盛り上がった。
「では、第1試合の予選の出場者を決める。まずは、騎士団の槍の師範代ナーヨン、【町の番長】ウーチョン、クリス…。」
ユナイトは、用意していた穴が開いている箱に手を突っ込んで中に入っている2つ折りにされている紙を引き抜き、紙を開いて名前を読み上げていく。
クリスとマミューラは、周りにいる他の選手達を見渡して力量を見極めていた。
(う~ん、これは予想外だったかな。強そうな人が全くいないなんて…。これなら、初戦でお婆ちゃんと当っても邪魔にならないし問題ないかな。)
クリスは、周りを見渡してホッとした面持ちになった。
(はぁ、クリス以外にも少しは骨がある者がいるかと期待していたんだがねぇ。それが、何だい。この腑抜けた集まりは。拍子抜けも良いところだよ。こんな、しょうもない大会で長々と戦いたくないね。さっさと、クリスと当たって終わりにしたいね。)
一方、マミューラはため息を吐いて頭を掻く。
「……以上、呼ばれた30名以外はリングから降りて待機室で待機するなり、観戦するなり自由にして構わない。だが、その代わり、戦っている選手達を襲ったり援護、助言することは一切禁ずる。良いな?」
ユナイトは、読み終わると説明と指示を出す。
結局、マミューラの名前は呼ばれることはなく、第1試合の予選ではマミューラとクリスの直接対決にはならなかった。
「う~んっと、よいしょっと…。」
クリスは、リングの上で膝を屈伸したり腕を伸ばしたりしてストレッチをする。
「準備はできた様だな。では、試合開始!」
ユナイトは、リングを見渡して試合開始を宣言した。
最上階にある特等席にいるバロシュ国王と妃のサリーダは椅子に座って観戦しているが、アイリスは立ち上がってベランダの柵の所まで出ており片手を腰の高さの柵の手摺を掴み、もう片方の手を自身の胸元に当てて心配そうに観戦していた。
「少し、お着きなさいアイリス。」
「お母様…。」
アイリスは、後ろを振り返り母親であるサリーダを見る。
「そうだぞ、アイリス。それに、大会は開催されたのだ。もう、誰も止めることはできない。あとは、クリスを信じて見守るだけだぞ。」
「きっと大丈夫よ、アイリス。だから、クリス君を信じてあげなさい。」
妃のサリーダは、優しく微笑んだ。
「はい!」
(頑張ってクリス。私は、あなたが優勝するって信じているわ。)
アイリスは不安が消え、胸元で両手を握り締めて祈る。
ユナイトが試合開始の合図をしたが、バトル・ロワイアルなので狙った相手を倒しても他の選手が不意打ちで自分を狙ってくる可能性が高く、隙を作らない様にしないといけないため、お互いに警戒をして誰も身動きが取れないでいた。
だが、そんな中…。
「英雄のガキは俺が貰ったぜ!ガハハハ…これで、俺は英雄よりも強いということになるよな!」
優勝候補の1人である【町の番長】と言われている精肉屋の筋肉質の大男ウーチョンは、高笑いしながら両腕を開いてクリスに襲い掛かる。
「なっ!?小僧は、俺が狙っていた獲物なんだぞ!」
「糞、抜け駆けしやがって!糞肉屋が!」
同じくクリスを狙っていた選手達も慌ててクリスに向かって走る。
「ガハハハ、早い者勝ちだ!そうだろ?」
ウーチョンはクリスと比べると、明らかに体格や年齢差があるので余裕の満ちた面持ちで無防備にクリスに襲い掛かった。
「はぁ…。」
クリスは迫ってくるウーチョンを見て、一度ため息を吐いて右足でハイキックをして襲い掛かってきたウーチョンの顔面を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされたウーチョンは、リングの上を転がりながらクリスを狙っていた他の選手達の前で止まった。
ウーチョンは起き上がる気配はなく、近くにいた選手が恐る恐るウーチョンの体をひっくり返すと、ウーチョンはぐったりとしたまま口から泡を吹いて気絶していた。
「「~っ!?」」
走っていた選手達の足はピッタリと一斉に立ち止まった。
「う、嘘だろ…。」
「あの、町の番長と言われているウーチョンが倒されただと?」
「しかも、蹴り1発だったぞ…。」
選手達は、怯えた目で倒れているウーチョンを見つめた。
その隙に、クリスは怯んで足を止めている選手達に接近する。
「き、来たぞ!」
「くっ、この少年は危険だ。子供に負けたくなければ、少年を倒すのに協力しろ!魔法が得意な奴は呪文を唱えろ。その間は、俺みたいに武術に自信がある奴が足止めをする。良いな?」
(これが、噂に聞くマミューラ様が自ら手塩をかけた教え子か。なるほど、間近に立つと鳥肌が立つほどの威圧感だ。研磨された鋭い針が肌に突き刺さる様に感じる。まだ幼いというのに、何という恐ろしい子だ。だが、どんなことがあれ、大の大人が安々と子供相手に負けてたまるものか!)
優勝候補1人である背が高い男、騎士団の槍の師範代ナーヨンが指示を出す。
「「わ、わかった。」」
選手達は怯えた面持ちを浮かべており、体を震えさせながら魔力を高めて木製の武器を握り締めて構える。
木製の槍を持っているナーヨンは、槍の中央持ちクルクルと回転させながら先頭を切ってクリスに迫る。
「うぉぉ!」
自分の間合いに入ったナーヨンは、高速の連続突きを繰り出す。
クリスは、怯むことなく体や頭を傾けて難なく攻撃を避けながらナーヨンに接近して距離を詰めていく。
「ちっ。」
(何という、動体視力と身のこなし。俺の突きを完全に見極めて最小限の動きで躱すとはな。だが…。)
「これなら、どうだ!」
ナーヨンは高速の突きから横に凪ぎ払い、クリスは屈んで避けてナーヨンの懐に入った。
「しまった。」
「ハッ!」
クリスは右手の掌底打ちで、驚愕しているナーヨンの下顎を下から上に打ち抜く。
「ぐぁ。」
ナーヨンは、白目を向いて上空へと宙を舞いリングの上に落ちた。
「「~っ!」」
選手達は、再び足を止めた。
その隙にクリスは怯んでいる選手達に接近し、目の前の選手の鳩尾を殴ったり蹴ったりして気絶させていく。
「糞ぉぉ!」
我に返った選手達は、捨て身覚悟でクリスに立ち向かう。
「たぁぁ!」
大剣を持った選手が力一杯に大剣を振り下ろす。
クリスは、左に一歩動いて避けながらカウンターで右拳で顔面を殴った。
「ぐはっ」
殴られた大剣の選手は気絶して倒れた。
「貰った!がはっ。」
木製の剣を持っている選手は、クリスが正面の大剣を持った選手を殴って倒したと同時に背後から剣を振り下ろそうとしたが、振り下ろす前にクリスの裏拳が顎に当たって気絶してその場に倒れた。
クリスの勢いは止まることはなく、あっという間に前衛を倒した。
「間に合った!いくぞ!」
「「アクア・ジェット」」
魔力を高めていた選手達は、一斉に中級水魔法アクア・ジェットを唱えた。
選手達の木製の杖の先端から魔法陣が現れ、大量の水流を放出する。
クリスは、右手に魔力を込めて剣のイメージをすると、右手の魔力が剣の形になった。
「ハッ!」
クリスは右手を横に振って襲い掛かる水流を真っ二つに切断し、その切口から水流を凍らせた。
「嘘だろ…。」
驚愕している選手達に、クリスは一気に接近して倒していく。
そして、クリスは最後の選手の鳩尾を殴って気絶させ、クリス以外、誰もリングに立っている選手はいなかった。
「ユナイトさん、勝利宣言をお願いします。」
「ああ、わかっている。勝者クリス!」
(こいつ、一体どこまで強くなっているんだ…。)
ユナイトは、手を挙げて勝利宣言をした。
「「うぉぉぉ!」」
闘技場は、盛大に盛り上がった。
特等席ではサリーダが立ち上がり、クリスを心配しているアイリスの後ろから優しくアイリスの両肩に手を置いた。
「お母様?」
「ほら、アイリス。クリス君、勝ったわよ。」
「はい!」
サリーダは微笑みながら話し掛けると、アイリスも満面な笑みを浮かべて微笑んだ。
「しかし、クリスは信じられないほど強くなったものだ。正直に驚いた。あの、騎士団の槍の師範代であるナーヨンを相手に苦もなく無傷で倒すとはな。それにしても、1人で参加者全員を倒すとは思いもしなかった。」
バロシュ国王は、真剣な面持ちでクリスを見ていた。
そして、試合の進行は戦いが始まれば進行は早いが、開始の合図があっても誰かが戦いを始めるまでは選手達はお互いに警戒をして動かないため予定よりも進行は遅く進み、やっと最後の予選の試合が始まる。
「では、最後の予選を始める。呼ばれたものはリングに上がれ!まず、【六花】第1席のマミューラ様、騎士団のモーリン、ナフデン…。」
ユナイトは、用意していた一箇所だけ穴が開いている箱に手を突っ込んで中に入っている2つ折りにされている残りの紙を引き抜き、紙を開いて順番に名前を読みあげていく。
「……以上だ。準備も良いようだな。では、最後の予選を始める。試合開始!」
ユナイトは、リングを見渡して試合開始の合図をした。
選手達はすぐに戦わずにお互いに頷き合い、息を呑みながらマミューラを囲う。
「はぁ~。まぁ、その方が手っ取り早く済むから助かるねぇ。」
マミューラがため息をして口元を緩めた直後、選手達は武器を握り締めて一斉に襲い掛かる。
「しかし、残念ながら、お前さん達はまだまだ鍛練不足だよアクア・ショット。」
マミューラは、アクア・ショットを唱えると自身の周りに水弾を選手の人数分だけ召喚して放つ。
水弾は、的確に選手達の胸元に当たり吹き飛ばした。
「「がはっ。」」
吹き飛ばされた選手達は、気絶した者や意識はあるが心臓を圧迫され呼吸が上手くできず酸欠状態に陥り動ける者は誰も居なかった。
「ユナイト、勝利宣言をしな。」
観客達が驚いて静寂が訪れる中、マミューラは観客と同じ様に呆然と立ち尽くしているユナイトに声を掛ける。
「は、はい。勝者、マミューラ様!本日の予選は、これにて終了とする。明日からトーナメントを開催する。予選を勝ち残った出場選手達は、本日は城に泊まって貰い、城のメイド達による傷の手当てや体力、魔力の回復を支援する!では、解散!」
(十年近く前線から離れていたというのに、全く衰えていないとは本当にこの人には驚かせられる。まだ、背中が遠いな…。)
勝者宣言と解散宣言をしたユナイトは、最後に口元を緩めながらリングから立ち去るマミューラを見る。
「おいおい、始まって20秒も経ってないぞ。まさかの瞬殺かよ…。」
「でも、決して相手が弱い訳ではなかったぞ。優勝候補のモーリンとナフデンいたしな。あの二人は、騎士団の中で10本指に入るほどの実力があると噂されるほどだぞ…。」
「これが、俺達の国の最強の騎士様の強さなのか…。」
マミューラの実力を目の当たりにした観客達の驚きは興奮を通り越しており、盛り上がれずに息を呑むほどだった。
静寂の中、マミューラはリングから降りる際にリングの端で観戦していたクリスを見て不敵に笑みを浮かべ、クリスも気付いて嬉しそうに右拳をマミューラに向けた。
特等席にいるアイリス達も、マミューラの戦いを見て呆然としていた。
「嘘でしょう…。」
(水弾の弾速が速いとか威力が高いとかもあるけど、動いている相手に的確に心臓部に当てる技術も凄いけど、それ以上にあの一瞬で威力を相手1人1人に合わせた技術が凄いを通り越して神業だわ。これが、他国にも実力を認められ【女帝】といわれるマミューラさんの実力…。)
アイリスは、信じられない表情を浮かべていた。
「……流石、としか言い様がないな…。」
バロシュは、小さく呟いた。
「ええ、十年近く現役から遠ざかっているのに全く衰えていないわ。」
バロシュの隣の椅子に腰掛けているサリーダも、深刻そうな面持ちで答えた。
「クリス…。」
マミューラの実力を目の当たりしたアイリスは、不安に駆られて胸元をギュッと握り締める。
試合が終わったので、アイリスはクリスに会いに行きたかったが大会中は選手との面会など接触はおろか手紙でのやり取りも禁止されているのでクリスを信じるしかなかった。
勝ち残った選手達は、各自、メイド達に城の2階にある御用人が宿泊する豪華な部屋に案内された。
選手同士の揉め事や不意打ちなどが起きない様に、選手1人1人に護衛として騎士団2名が付き添いにつくことになっており、晩御飯を部屋で摂る選手の護衛騎士団は部屋の外で待機している。
大広間では、出場選手6人が食事を摂っていた。
選手達からは威圧感が出ており、場の空気はピリピリと張り詰めている。
そんな中…。
「クリス、あの魔力を剣にイメージした技に名前を付けたらどうだい?威力も申し分なしだったからね。アレは、もう立派な技だよ。」
「お婆ちゃんが、そう言うなら。う~ん、名前か…。断罪の剣ってのは、どうかな?この技は殺傷力が高いから、いざって時にしか使わないだろうし。」
「なるほどね、言い名前だね。」
「因みに、お婆ちゃんはどんな名前付けているの?」
「私のは、クリスとは違って凍らないけど切れ味は劣っていないよ。名前は宝剣と名付けているね。」
マミューラは、右手に魔力を集中させて剣をイメージすると青い剣が出現した。
「格好いい名前だね。」
「フフフ…ありがとう。ところで、クリス。どうだった?私の試合を見て、それでも、私に勝てる自信はあるかい?」
「お婆ちゃん、アレぐらい僕にだってできるよ。」
「フフフ…。だろうね。でも、私はまだ本気を出しちゃいないからね。」
「うん、わかっているよ。それでも、僕は負けないよ。」
「フフフ…。楽しみにしているよ、クリス。」
クリスとマミューラは張り詰めた空気の中でも特に気にした様子はなく2人は笑みを浮かべ、会話しながら食事をする。
そんな光景を出入口の扉の影からアイリスと妃のサリーダがいた。
アイリスは、クリスがマミューラの異常な強さを目の当たりして自失してないか心配になり、クリスの様子を窺っていたのだ。
「ほら、クリス君なら大丈夫だったでしょう?アイリス。」
「はい、お母様。」
「長居していたらバレてしまうから戻りましょう、アイリス。」
「はい、お母様。頑張って、クリス。」
不安だったアイリスだったがクリスの笑顔を見て不安がなくなり、立ち去る際にチラッともう一度クリスを見て呟いて立ち去った。
アイリスは口元に笑みを浮かべており、足取りは軽くなっていた。
そして、翌日になりトーナメントが開催された。
「では、まずトーナメントの順番を決めて貰う。この箱の中に数字が書かれたボールが入っている。選手達は、ボールを1つ引いて順番を決めて貰う。説明は以上だ。では、引いて貰おう。」
ユナイトの説明が終わり、選手達はリングに上がり順番に用意されている穴が開いている箱に手を突っ込んで数字が書かれたボールを1個ずつ取り出していく。
クリスは2番を引き当て、マミューラは10番を引いた。
「はぁ、昔から私とクリスはクジ運がないねぇ…。クリスは2番で、私は10番だからクリスと当たるのは決勝みたいだね。はぁ、2日後までお預けみたいだね。」
ため息を吐いたマミューラの耳に観客達の話が聞こえてくる。
「勝ち残った選手は、大体、予想通りだったわね。」
「ああ、だけど、これからはトーナメント戦だから一対一の勝負になる。そうなると、もうこの大会はマミューラ様が絶対に優勝するよな。」
「そうね。もう、結果が見えているわね。何だかつまらないよね。」
カップル達は、面白くなさそうにリングを見る。
「ユナイト、ちょっと良いかい?」
「はい、どうかされましたか?マミューラ様。」
「今回から、トーナメント戦になるだろ?そうしたら、私とクリスの勝利率が大幅に上がり、観客達は観戦していても楽しくないみたいだからさ。1つ提案があるんだけど良いかい。」
「提案ですか?」
「そうさね、こういうのはどうかい?Bブロックである私対同じBブロックの選手5人全員、AブロックもAブロックのクリス対同じAブロックの選手5人全員で戦わせて貰えないかい?」
「「なっ!?」」
マミューラの提案に、観客達と選手達は驚愕の声をあげた。
「「うぉぉ!」」
「そうだ!このままじゃあ、つまらないぞ!」
「流石、マミューラ様だ!わかっている!」
「そうだ!そうだ!俺達はお金を払ってまで見に来ているんだ!楽しませろ!」
観客達は、盛大に盛り上がり賛同の声が交差する。
「マミューラ様、困ります。それは、流石にちょっと…。」
ユナイトは、困った表情を浮かべる。
「そうかい?でも、観客達は賛同しているみたいだから残る他の選手達に聞いてみたらどうだい?」
「僕は、別に構いません。」
クリスは、即答した。
「俺も、それで構わない。」
「俺もだ。」
マミューラの予選の戦いを観戦して自信がない選手達は続々と賛同する中、反対の声があがる。
「俺は反対だ!屈辱だ!そんな情けない提案は却下だ!」
「俺も反対だ!お前も、そうだろ?」
反対の声をあげる選手は、まだ決めていない選手に同意を求めた。
「……俺は、提案を飲む。」
「貴様!何故だ!プライドはないのか?」
「じゃあ、聞くが。お前達は一対一でマミューラ様に勝てる自信があるのか?」
「それは…。しかし、だからと言って…。」
「わかっている。俺もお前達と同じく悔しい。しかし、今回は侮辱を受けてでも優勝する可能性が上がるならば、それにすがる。なぜなら、俺は優勝するためにこの大会に出場したんだ。それに、今回は情けない勝ち方をしても、いずれ己を鍛えあげていつか必ず真っ正面から堂々とマミューラ様に勝てば良いと思っている。」
選手の1人は、歯を食い縛りながら拳をギュッと握り締める。
「フフフ…面白いね。良い心意気だよ。」
マミューラは、不敵な笑みを浮かべた。
「「……。」」
反論する選手達は、誰もいなかった。
「そうだな…。我々、選手達は異論はないです。マミューラ様の提案を呑みます、ユナイト様。」
反対していた選手達は頷き合い、意見が合致した。
「おいおい、お前達。少し待て!勝手に話を進めるんじゃない。」
どうして良いのか、わからなかったユナイトはバロシュ国王に視線を向ける。
「アイリス、どうする?マミューラの提案を呑むか?」
「はい、お父様。私は、それでも構いません。」
「わかった。ユナイト、その提案を呑む。その方向で進めてくれ。」
バロシュは深く頷いた後、立ち上がってベランダに出てユナイトに指示を出した。
「畏まりました。では、マミューラ様の提案が通ったので、急遽、今からAブロックはクリス対Aブロックの選手5人との試合を開始する。Bブロックの選手達はリングから降りて貰おう。」
「「うぉぉ!」」
観客達は、盛大に盛り上がる。
「準備は良いようだな。では、試合開始!」
「「ウォォ!」」
「「アクア・ショット!」」
ユナイトの試合開始の合図と同時に、選手4人は木製の剣を握ったままクリスに接近し、残りの3人の選手はアクア・ショットを唱えて無数の水弾を放つ。
「アクア・ショット!」
クリスは、その場から一歩も動かずにアクア・ショットを唱えて無数の水弾を放ち、迫ってくる水弾を全て相殺し、襲い掛かってくる選手4人と魔法を唱えた選手3人の胸元に的確に当てた。
「「ぐぁっ。」」
水弾が当たった選手達は、ゆっくりと倒れ気絶した。
「「~っ!」」
「フッ…。やってくれるな。」
闘技場が静寂が訪れる中、マミューラだけが不敵に笑みを浮かべていた。
「あの、ユナイトさん。宣言をして貰っても良いですか?」
「あ、ああ、勝者クリス!」
(まさか、マミューラ様と同等以上のことができるとは思いもしなかった。こいつの実力は、まだ底がしれんということか…。)
ユナイトは、深刻な面持ちで勝利宣言をした。
「俺達は、夢でも見ているのか?」
特等席側のリングの外に待機している国王直轄軍【六花】第4席のランドルが信じられない表情で恐る恐る呟いた瞬間、隣に待機しているユーリアから頬を引っ張られた。
「痛っ!?何をするんだ!ユーリア!貴様!」
「夢かと思ったから。」
「俺の頬じゃなく、自分の頬を摘まんで確かめろよ!」
「嫌よ、痛いのは。わかるでしょう?」
「わかるが、だからと言って俺の頬を摘まむなよ!」
「そんなことより、信じられないわ。まだ幼いというのに、私達でもできないマミューラ様と同等のことができるなんて。ううん、それ以上だったわ。だって、放たれた無数の高速で飛んでくる小さな水弾も全部を相殺した上でのことだから。昨日、マミューラ様が行った神業を超えているのは確かだわ。」
「おい、俺の話は無視か…。少しは俺の話を聞けよな。はぁ、お前の言っていることは合っている。目の前で目撃したが、今も俺も信じられないでいるからな。」
ランドルとユーリアは、真剣な面持ちでクリスを見つめた。
観客達も驚いていた。
「な、何なんだ…?あの子供は…。本当に子供なのか?」
「もう、天才とか鬼才とか超えているわ。神の子、神童よ。」
「だが、これで、決勝が楽しみになったな。」
「ええ。おそらく、次の試合はマミューラ様が勝つと思うから決勝で2人の戦いが見れるわね。」
観客達が会話している間に次の試合が始まった。
選手7人はマミューラの魔法攻撃を警戒しており、試合開始直後に動かずにマミューラから距離を取っていた。
「おや?攻めてこないのかい?じゃあ、こっちから行くよ。」
マミューラが不敵な笑みを浮かべた瞬間、マミューラの姿が消えた。
「「なっ?」」
マミューラを見失った選手達が間抜けな声をあげた瞬間、マミューラは真ん中にいる選手の懐に入っていた。
マミューラは右拳で中央の驚愕している選手の顔面を殴り、左足のハイキックで右側にいる選手の顔面を蹴りを入れ、前に一歩だけ踏み込んで肘打ちで隣の選手の鳩尾を打ち抜き、最後に左足を軸にして右足の回し蹴りで近くの選手の顎を撃ち抜いた瞬間、再び、マミューラの姿が消えた。
そして、マミューラは一瞬で残りの3人の前に移動していた。
「こ、このっ!」
「「ハァァ!」」
選手3人は、同時に握っている木製の剣を振り下ろしてマミューラに攻撃する。
しかし、マミューラは高くジャンプして避けながら選手達の背後に回った。
「「くっ。」」
「3人共、反応が遅すぎるよ。」
マミューラは選手達が振り返る前に選手1人の首筋に左手の手刀して気絶させ、右拳で振り返り様の選手1人の顔面を殴って気絶させた。
「糞っ!チッ、がっ。」
残った最後の選手は振り返りながら剣を横に振ったが、剣がマミューラに届く前にマミューラの回し蹴りが剣を握っている右手首に当たり剣が空中に放り出されて回り、そのままマミューラの蹴りが顔面に決まって吹き飛ばされる。
誰も立ち上がる気配がなく、場が静寂した。
「勝者、マミューラ様!」
ユナイトが勝利宣言をし、観客達はどよめく。
なぜなら、リングの上には、二十歳ぐらいの若い女性が立っていたのだ。
「あれ?あの若い女性は誰だ?一体、マミューラ様は何処に行ったんだ?」
観客の1人が呟く。
「ふぅ~。次のクリスとの試合をする前に感覚を慣らすために久しぶりに使ってみたんだけど、予想以上に疲れるものだね。本当に、年は取りたくないものだよ。」
女性がため息をしながら自身の片方の肩に手を当てて肩を回していると、次第に老けていき見慣れたマミューラの姿に戻った。
「え!?嘘…。ど、どうなっているの…?」
「嘘だろ…。どっちが、本当のマミューラ様の姿なんだ?」
観客達は、信じられない表情でざわつく。
(久しぶりに、あの姿のマミューラ様を見たな。だが、相変わらずだな。あの姿を見る度、周囲には数多くの敵が倒れているからな。こんなに実力をまじまじと間近で見せつけられると、敵わないと思ってしまうな。)
ユナイトは、目を瞑って左右に頭を振った。
「あの、どんなことをすれば若返るのですか?あれは、魔法ですか?」
マミューラが【六花】から離れた後に入れ違いに【六花】第6席になったテーラは初めて若返ったマミューラを見て驚愕し、隣にいる【六花】第5席であるダイアスに尋ねる。
「そうか、テーラ。お前は、初めて見たんだったな。あの姿のマミューラ様を見るのは。」
「はい。」
「マミューラ様があのお姿になった時は、いつも周囲には数多くの敵が倒れているんだ。仲間の俺達ですら息を呑むほど圧倒的で絶対的な強さだった。後に、マミューラ様の強さに他国が恐れて、マミューラ様に【女帝】と呼称つけたんだ。」
「そうだったのですね。それで、その…。」
「ああ、そうだったな。なぜ若返ったのかだったな。マミューラ様曰く、自身の魔力だけでなく大気中にも満ちている僅かな自然の魔力を大量に体内に取り込み身体を活性化させると最盛期の姿になるらしい。」
「自然の魔力ですか?そんなことが、本当にできるのですか?」
「お前もマミューラ様以外に1度、その目で間近で見ただろ?」
「え!?あっ!クリス君…ですか?」
「そうだ。国王様がクリスに聞き取りしていた時、揉め事になってユーリア様がアイリス様に攻撃しようとした際、魔力を封じられたクリスが自然の魔力を使って身体強化をした。おそらく、自然の魔力を取り込み使いこなすことができるのはマミューラ様とクリスだけだ。」
「ダイアスさんは、次の決勝戦はどちらが優勝すると思っていますか?」
「大会が始まる前は、確実にマミューラ様が優勝すると思っていた。例え、クリスがマミューラ様と同等に自然の魔力を使えたとしても武術は兎も角、魔法の熟練度に差があるからな。だが、先ほどのクリスの試合、クリスが使ったアクア・ショットの完全無比な正確さを目の当たりにして、正直わからなくなった。今は、どちらが優勝しても可笑しくはないと俺は思っている。まぁ、どちらが勝つにせよ、おそらく、歴史に残る戦いになるだろう。」
ダイアスとテーラは、マミューラとクリスを見つめた。
マミューラは、ユナイトに歩み寄る。
「ところで、ユナイト。見た通り、私とクリスは無傷だから、このまま決勝戦を行いたいんだが良いかい?」
「そうですね、わかりました。では、引き続き決勝戦を行いましょう。クリス、リングに上がれ。」
「わかりました。」
「クリス、待たせたね。今さっきの戦いを見ても、私に勝てると思っているかい?」
「やってみないとわからないよ、お婆ちゃん。だけど、勝たせて貰うよ。」
「フフフ…良いね。男の子は、そうこなくちゃね。」
「では、試合開始!」
「クリス、私は最初から本気で行くからクリスも本気で来ないと、すぐに終わってしまうよ。」
マミューラは膨大な魔力を纏い、再び姿が若くなっていき二十歳の姿に変貌した。
「わかっているよ。」
クリスは、真逆に魔力だけでなく気配すらも完全に消える。
「じゃあ、行くよクリス!」
「……。」
マミューラが笑みを浮かべた瞬間、マミューラの姿が消えると同時にクリスも姿が消えた。
マミューラとクリスはお互いに一瞬で迫り、リングの中央で同時にお互いに右足でハイキックをする。
「「ハッ!」」
お互いの右足同士が頭部の高さでぶつかり合い、足がクロスになった瞬間に二人の中心からリングにヒビが入り衝撃波が発生した。
「「ハァァ!」」
同時に右足を引き、今度は左足の回し蹴りを放ち、再び、ぶつかり合い衝撃波が生まれる。
今度は、お互いに耐えきれず後ろにズリ下がった。
クリスは、一瞬でマミューラの背後に回って手刀を繰り出す。
「良い動きだね。しかし、あまいよ!クリス。」
マミューラは、屈んで攻撃を躱すと共に右足を真上に突き出してクリスに攻撃をする。
「くっ。」
咄嗟にクリスは、マミューラが突き出した右足を自身の左足の裏で防ぎ、威力に逆らわずに高く飛んで着地した。
今度はマミューラがクリスに接近し、右拳に魔力を込めて殴りにいく。
「ハッ!」
「ぐっ。」
クリスは、腕をクロスにして防いだが威力に負けて後ろにズリ下がった。
マミューラは容赦なく、クリスに追い打ちをかける様に再び接近する。
マミューラは右足のハイキックを放ち、クリスは左腕を挙げて防ぐと共に右拳で殴りにいく。
マミューラは左腕で防ぎ、左足で回し蹴りを放つ。
「くっ、ハッ!」
クリスは、屈んで避けながら右拳を放つ。
「ヤッ!」
マミューラは、蹴りを避けられた瞬間に空中に上げていた左足をリングに叩きつける様に勢い良く振り下ろして着地させて右拳を放ったが僅かに出遅れた。
「~っ!」
クリスは自分が放った右拳がこのままだとマミューラの顔面に当たると思い、途中で拳の鋭さが鈍くなった。
そのため、クリスの拳がマミューラに届く前に先にマミューラの拳がクリスの顔面に決まった。
「ぐぁ。」
クリスは、リングの上を転がる。
「どうしたんだい?クリス。私を気遣う余裕はないはずだよ!」
マミューラは先回りをして、転がっているクリスに蹴りを放つ。
「くっ。」
クリスは転がりながら両腕をクロスにして防いだが、再び、リングの上を転がった。
「クリス、本気を出しな!そうしないと、姫様との約束は守れないよ!思い出すんだよ、クリス。何のために、今まで毎日ボロボロになるほど辛くキツイ訓練を受け続けて強くなったのかを!そうしないと、この攻撃は生半可な覚悟じゃあ防げないよ!ハァァ!」
マミューラは高くジャンプして右足を振り上げたまま降下しながら、今度は転がっているクリスに踵落としを放つ。
(そうだ…。僕は、アイリスを守るために…。アイリスの護衛騎士になるために!)
マミューラの右足の踵落としがクリスに迫る中、クリスの雰囲気が一変し威圧感が増した。
クリスは腕をクロスにしてマミューラの踵落としを防ぐと威力と衝撃波により足元のリングに大きくヒビが入り割れて抉れる。
「ぐっ、ハァァ!」
クリスは、クロスした腕を上げてマミューラを押し退けた。
マミューラは空中で一回転しながら着地したが、目の前にクリスが迫っており驚愕する。
(速い!迷いがなくなった分、動きに切れが増したみたいだね。そうさ、それで良いんだよクリス。)
「だけど、ハッ!」
マミューラは、嬉しそうに口元に笑みを浮かべながら右拳を放つ。
クリスはマミューラの拳を頬を掠りながらギリギリで避け、カウンターで右足でハイキックをする。
「良い攻撃だね、クリス。」
マミューラは左腕を上げて防いだが、クリスは今度は左足でハイキックする。
「そんな攻撃は…えっ!?ぐっ。」
マミューラは屈んで避けて反撃をしようとしたが、クリスの左足が途中で軌道を変えて踵落としになり、反応が遅れたマミューラはクリスの踵落としが肩に決まって地面に叩きつけられた。
クリスは右足でマミューラを蹴り飛ばし、追い打ちをしようと追いかける。
「くっ、アクア・ショット。」
マミューラは、クリスに接近をさせないためにリングの上を転がりながら無数の水弾を放つ。
「アクア・ショット。」
しかし、クリスも走りながら水弾を放ち全てを相殺させた。
「だぁぁ!」
クリスは、体勢が崩れているマミューラにジャンプキックをする。
「くっ。」
マミューラは、両腕を縦に引っ付けて防いだが後ろにズリ下がった。
再び、クリスは右足のジャンプキックをする。
マミューラは一歩だけ左側に動いて避けたが、クリスは空中で体を捻って回転し、左足を叩きつける様に上から下に振り下ろして繋ぐ。
「フフフ…。そうさ、クリス。それで、良いんだよ。相手が誰であろうと容赦なく戦うんだよ!」
マミューラは両腕をクロスにして防ぎながら笑みを浮かべ、両腕を開いて少しだけ弾くと共に右足でハイキックをする。
「くっ。」
クリスは、左腕を挙げて防いだが空中だったので踏ん張ることができず弾き飛ばされた。
弾き飛ばされたクリスは、勢いを利用して両手をリングにつけて大きくバク転をして着地した。
その隙に、マミューラはクリスに接近して右拳を放つ。
クリスは体を傾けて避けながら左手でマミューラの右手首を掴んでマミューラの鳩尾に右の肘打ちを入れ、流れる動作で右手でマミューラの胸元を掴んで一本背負いをし、地面に叩きつける前に右足でマミューラの頭を蹴り飛ばそうとする。
「くっ。」
マミューラは咄嗟に左手を地面について力一杯に力を入れて飛び上がりクリスの蹴りを避けた。
クリスは掌を空中にいるマミューラに向け、マミューラも空中で体を捻って掌をクリスに向ける。
そして…。
「「アクア・ジェット!」」
クリスとマミューラは、同時に水魔法アクア・ジェットを唱えて魔法同士がぶつかって相殺した。
「ふー。驚いたよ、クリス。何だい、今の連続攻撃は?」
マミューラは、空中で体を捻って着地をして一息つき嬉しそうに尋ねる。
「流石、お婆ちゃん。結構、自信があった攻撃だったんだけど。普通なら、絶対に決まると思ったのに。」
攻撃を防がれたクリスだったが、嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「そんなに悲観することはないよ、クリス。私もギリギリだったさ。鳩尾に肘打ちが決まった時、一瞬、呼吸が止まったからね。私以外の人達なら決まっていただろうさ。それよりも、クリス。そろそろ決着をつけようじゃないかい?」
「そうだね、お婆ちゃん。」
クリスは頷くと、クリスとマミューラは膨大な魔力を解き放つ。
2人の解き放たれた膨大な魔力よった生まれた余波が、突風の様に闘技場にいる人達に襲い掛かる。
予想を超えた魔力を目の当たりにした観客達は言葉を失い、闘技場は静寂になった。
「な、何ですか!?こ、この膨大な魔力は…。」
驚愕して息を呑んだテーラは、呟く様に小声で尋ねる。
「俺も、マミューラ様の本気を見るのは久しぶりだ。しかし、クリスは本当に子供なのか?精霊を宿しているとはいえ、まだ子供だぞ。それ以前に、こんな膨大な魔力を放っているのに、まだ発達していない幼い体が耐えれるとは…。」
ダイアスは、信じられない表情でクリスを見つめる。
特等席で観戦しているアイリス達も驚愕していた。
「まさか、マミューラが本気で全力を出して戦うとは…。それほど、クリスも凄いということなのだろう。しかし、マミューラは当然だが、クリスもあれほどの膨大な魔力を暴発させずに完全にコントロールして安定させているとはな。」
「ええ、だけど、クリス君は大丈夫かしら?あれほどの膨大な魔力に体がついていけるのかしら?」
「お母様、クリスなら大丈夫です。だって、今、放出させている魔力は精霊の魔力ではないので。」
「そうなの?」
「はい、クリス自身の魔力です。」
「精霊を宿しているアイリスが、そういうならばそうなのだろうな。しかし、まだ幼いというのに本当に凄いな。流石、王国の歴史で歴代1位の才能を持っていると言われているアリス様の子供だけのことはある。」
「あなた、その言い方は良くないわ。クリス君がアイリスのために毎日ボロボロになるまで必死に頑張って努力した結果だからこそよ。」
「お、お母様っ!?」
アイリスは、顔を真っ赤に染めて大きな声を出した。
「ハハハ…。そうだったな、悪かった。」
「う~。」
アイリスは顔を真っ赤に染めたまま、何も言い返せず唸った。
「そろそろ、戦いが始まるようだぞ。」
「そうみたいわね。」
「クリス…。」
(無理だけはしないで。)
アイリスは、心配した面持ちで胸元で手を合わせて握り締めてクリスの無事を祈った。
闘技場は、盛大に盛り上がっていた。
「では、ルールを説明する。まず、相手を殺したら負けとなる。ウォーター・カッターなど殺傷力の高い魔法は禁止だ。だが、相手に当てなければ使用しても問題ない。例えば、魔法を相殺させる場合などの使用は認める。あと、大魔法の中にはアクア・ウェブなど殺傷力がそこまで高くないものは使用可能だ。勿論、相手に直接当てても構わない。次に武器についてだが、武器の使用は認めるが全て木製であることが条件だ。最後に、勝敗は相手が気絶、降参、または相手がリングの外に出したら勝ちとする。予選は人数が多いため30人のバトル・ロワイアルを16ブロックで行い、各予選で勝ち残った16人が予選通過となる。そして、勝者16人は明日から始まる一対一のトーナメントに参加して貰う以上だ!」
ユナイトがルール説明をし終えたら、再び、観客達が盛大に盛り上がった。
「では、第1試合の予選の出場者を決める。まずは、騎士団の槍の師範代ナーヨン、【町の番長】ウーチョン、クリス…。」
ユナイトは、用意していた穴が開いている箱に手を突っ込んで中に入っている2つ折りにされている紙を引き抜き、紙を開いて名前を読み上げていく。
クリスとマミューラは、周りにいる他の選手達を見渡して力量を見極めていた。
(う~ん、これは予想外だったかな。強そうな人が全くいないなんて…。これなら、初戦でお婆ちゃんと当っても邪魔にならないし問題ないかな。)
クリスは、周りを見渡してホッとした面持ちになった。
(はぁ、クリス以外にも少しは骨がある者がいるかと期待していたんだがねぇ。それが、何だい。この腑抜けた集まりは。拍子抜けも良いところだよ。こんな、しょうもない大会で長々と戦いたくないね。さっさと、クリスと当たって終わりにしたいね。)
一方、マミューラはため息を吐いて頭を掻く。
「……以上、呼ばれた30名以外はリングから降りて待機室で待機するなり、観戦するなり自由にして構わない。だが、その代わり、戦っている選手達を襲ったり援護、助言することは一切禁ずる。良いな?」
ユナイトは、読み終わると説明と指示を出す。
結局、マミューラの名前は呼ばれることはなく、第1試合の予選ではマミューラとクリスの直接対決にはならなかった。
「う~んっと、よいしょっと…。」
クリスは、リングの上で膝を屈伸したり腕を伸ばしたりしてストレッチをする。
「準備はできた様だな。では、試合開始!」
ユナイトは、リングを見渡して試合開始を宣言した。
最上階にある特等席にいるバロシュ国王と妃のサリーダは椅子に座って観戦しているが、アイリスは立ち上がってベランダの柵の所まで出ており片手を腰の高さの柵の手摺を掴み、もう片方の手を自身の胸元に当てて心配そうに観戦していた。
「少し、お着きなさいアイリス。」
「お母様…。」
アイリスは、後ろを振り返り母親であるサリーダを見る。
「そうだぞ、アイリス。それに、大会は開催されたのだ。もう、誰も止めることはできない。あとは、クリスを信じて見守るだけだぞ。」
「きっと大丈夫よ、アイリス。だから、クリス君を信じてあげなさい。」
妃のサリーダは、優しく微笑んだ。
「はい!」
(頑張ってクリス。私は、あなたが優勝するって信じているわ。)
アイリスは不安が消え、胸元で両手を握り締めて祈る。
ユナイトが試合開始の合図をしたが、バトル・ロワイアルなので狙った相手を倒しても他の選手が不意打ちで自分を狙ってくる可能性が高く、隙を作らない様にしないといけないため、お互いに警戒をして誰も身動きが取れないでいた。
だが、そんな中…。
「英雄のガキは俺が貰ったぜ!ガハハハ…これで、俺は英雄よりも強いということになるよな!」
優勝候補の1人である【町の番長】と言われている精肉屋の筋肉質の大男ウーチョンは、高笑いしながら両腕を開いてクリスに襲い掛かる。
「なっ!?小僧は、俺が狙っていた獲物なんだぞ!」
「糞、抜け駆けしやがって!糞肉屋が!」
同じくクリスを狙っていた選手達も慌ててクリスに向かって走る。
「ガハハハ、早い者勝ちだ!そうだろ?」
ウーチョンはクリスと比べると、明らかに体格や年齢差があるので余裕の満ちた面持ちで無防備にクリスに襲い掛かった。
「はぁ…。」
クリスは迫ってくるウーチョンを見て、一度ため息を吐いて右足でハイキックをして襲い掛かってきたウーチョンの顔面を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされたウーチョンは、リングの上を転がりながらクリスを狙っていた他の選手達の前で止まった。
ウーチョンは起き上がる気配はなく、近くにいた選手が恐る恐るウーチョンの体をひっくり返すと、ウーチョンはぐったりとしたまま口から泡を吹いて気絶していた。
「「~っ!?」」
走っていた選手達の足はピッタリと一斉に立ち止まった。
「う、嘘だろ…。」
「あの、町の番長と言われているウーチョンが倒されただと?」
「しかも、蹴り1発だったぞ…。」
選手達は、怯えた目で倒れているウーチョンを見つめた。
その隙に、クリスは怯んで足を止めている選手達に接近する。
「き、来たぞ!」
「くっ、この少年は危険だ。子供に負けたくなければ、少年を倒すのに協力しろ!魔法が得意な奴は呪文を唱えろ。その間は、俺みたいに武術に自信がある奴が足止めをする。良いな?」
(これが、噂に聞くマミューラ様が自ら手塩をかけた教え子か。なるほど、間近に立つと鳥肌が立つほどの威圧感だ。研磨された鋭い針が肌に突き刺さる様に感じる。まだ幼いというのに、何という恐ろしい子だ。だが、どんなことがあれ、大の大人が安々と子供相手に負けてたまるものか!)
優勝候補1人である背が高い男、騎士団の槍の師範代ナーヨンが指示を出す。
「「わ、わかった。」」
選手達は怯えた面持ちを浮かべており、体を震えさせながら魔力を高めて木製の武器を握り締めて構える。
木製の槍を持っているナーヨンは、槍の中央持ちクルクルと回転させながら先頭を切ってクリスに迫る。
「うぉぉ!」
自分の間合いに入ったナーヨンは、高速の連続突きを繰り出す。
クリスは、怯むことなく体や頭を傾けて難なく攻撃を避けながらナーヨンに接近して距離を詰めていく。
「ちっ。」
(何という、動体視力と身のこなし。俺の突きを完全に見極めて最小限の動きで躱すとはな。だが…。)
「これなら、どうだ!」
ナーヨンは高速の突きから横に凪ぎ払い、クリスは屈んで避けてナーヨンの懐に入った。
「しまった。」
「ハッ!」
クリスは右手の掌底打ちで、驚愕しているナーヨンの下顎を下から上に打ち抜く。
「ぐぁ。」
ナーヨンは、白目を向いて上空へと宙を舞いリングの上に落ちた。
「「~っ!」」
選手達は、再び足を止めた。
その隙にクリスは怯んでいる選手達に接近し、目の前の選手の鳩尾を殴ったり蹴ったりして気絶させていく。
「糞ぉぉ!」
我に返った選手達は、捨て身覚悟でクリスに立ち向かう。
「たぁぁ!」
大剣を持った選手が力一杯に大剣を振り下ろす。
クリスは、左に一歩動いて避けながらカウンターで右拳で顔面を殴った。
「ぐはっ」
殴られた大剣の選手は気絶して倒れた。
「貰った!がはっ。」
木製の剣を持っている選手は、クリスが正面の大剣を持った選手を殴って倒したと同時に背後から剣を振り下ろそうとしたが、振り下ろす前にクリスの裏拳が顎に当たって気絶してその場に倒れた。
クリスの勢いは止まることはなく、あっという間に前衛を倒した。
「間に合った!いくぞ!」
「「アクア・ジェット」」
魔力を高めていた選手達は、一斉に中級水魔法アクア・ジェットを唱えた。
選手達の木製の杖の先端から魔法陣が現れ、大量の水流を放出する。
クリスは、右手に魔力を込めて剣のイメージをすると、右手の魔力が剣の形になった。
「ハッ!」
クリスは右手を横に振って襲い掛かる水流を真っ二つに切断し、その切口から水流を凍らせた。
「嘘だろ…。」
驚愕している選手達に、クリスは一気に接近して倒していく。
そして、クリスは最後の選手の鳩尾を殴って気絶させ、クリス以外、誰もリングに立っている選手はいなかった。
「ユナイトさん、勝利宣言をお願いします。」
「ああ、わかっている。勝者クリス!」
(こいつ、一体どこまで強くなっているんだ…。)
ユナイトは、手を挙げて勝利宣言をした。
「「うぉぉぉ!」」
闘技場は、盛大に盛り上がった。
特等席ではサリーダが立ち上がり、クリスを心配しているアイリスの後ろから優しくアイリスの両肩に手を置いた。
「お母様?」
「ほら、アイリス。クリス君、勝ったわよ。」
「はい!」
サリーダは微笑みながら話し掛けると、アイリスも満面な笑みを浮かべて微笑んだ。
「しかし、クリスは信じられないほど強くなったものだ。正直に驚いた。あの、騎士団の槍の師範代であるナーヨンを相手に苦もなく無傷で倒すとはな。それにしても、1人で参加者全員を倒すとは思いもしなかった。」
バロシュ国王は、真剣な面持ちでクリスを見ていた。
そして、試合の進行は戦いが始まれば進行は早いが、開始の合図があっても誰かが戦いを始めるまでは選手達はお互いに警戒をして動かないため予定よりも進行は遅く進み、やっと最後の予選の試合が始まる。
「では、最後の予選を始める。呼ばれたものはリングに上がれ!まず、【六花】第1席のマミューラ様、騎士団のモーリン、ナフデン…。」
ユナイトは、用意していた一箇所だけ穴が開いている箱に手を突っ込んで中に入っている2つ折りにされている残りの紙を引き抜き、紙を開いて順番に名前を読みあげていく。
「……以上だ。準備も良いようだな。では、最後の予選を始める。試合開始!」
ユナイトは、リングを見渡して試合開始の合図をした。
選手達はすぐに戦わずにお互いに頷き合い、息を呑みながらマミューラを囲う。
「はぁ~。まぁ、その方が手っ取り早く済むから助かるねぇ。」
マミューラがため息をして口元を緩めた直後、選手達は武器を握り締めて一斉に襲い掛かる。
「しかし、残念ながら、お前さん達はまだまだ鍛練不足だよアクア・ショット。」
マミューラは、アクア・ショットを唱えると自身の周りに水弾を選手の人数分だけ召喚して放つ。
水弾は、的確に選手達の胸元に当たり吹き飛ばした。
「「がはっ。」」
吹き飛ばされた選手達は、気絶した者や意識はあるが心臓を圧迫され呼吸が上手くできず酸欠状態に陥り動ける者は誰も居なかった。
「ユナイト、勝利宣言をしな。」
観客達が驚いて静寂が訪れる中、マミューラは観客と同じ様に呆然と立ち尽くしているユナイトに声を掛ける。
「は、はい。勝者、マミューラ様!本日の予選は、これにて終了とする。明日からトーナメントを開催する。予選を勝ち残った出場選手達は、本日は城に泊まって貰い、城のメイド達による傷の手当てや体力、魔力の回復を支援する!では、解散!」
(十年近く前線から離れていたというのに、全く衰えていないとは本当にこの人には驚かせられる。まだ、背中が遠いな…。)
勝者宣言と解散宣言をしたユナイトは、最後に口元を緩めながらリングから立ち去るマミューラを見る。
「おいおい、始まって20秒も経ってないぞ。まさかの瞬殺かよ…。」
「でも、決して相手が弱い訳ではなかったぞ。優勝候補のモーリンとナフデンいたしな。あの二人は、騎士団の中で10本指に入るほどの実力があると噂されるほどだぞ…。」
「これが、俺達の国の最強の騎士様の強さなのか…。」
マミューラの実力を目の当たりにした観客達の驚きは興奮を通り越しており、盛り上がれずに息を呑むほどだった。
静寂の中、マミューラはリングから降りる際にリングの端で観戦していたクリスを見て不敵に笑みを浮かべ、クリスも気付いて嬉しそうに右拳をマミューラに向けた。
特等席にいるアイリス達も、マミューラの戦いを見て呆然としていた。
「嘘でしょう…。」
(水弾の弾速が速いとか威力が高いとかもあるけど、動いている相手に的確に心臓部に当てる技術も凄いけど、それ以上にあの一瞬で威力を相手1人1人に合わせた技術が凄いを通り越して神業だわ。これが、他国にも実力を認められ【女帝】といわれるマミューラさんの実力…。)
アイリスは、信じられない表情を浮かべていた。
「……流石、としか言い様がないな…。」
バロシュは、小さく呟いた。
「ええ、十年近く現役から遠ざかっているのに全く衰えていないわ。」
バロシュの隣の椅子に腰掛けているサリーダも、深刻そうな面持ちで答えた。
「クリス…。」
マミューラの実力を目の当たりしたアイリスは、不安に駆られて胸元をギュッと握り締める。
試合が終わったので、アイリスはクリスに会いに行きたかったが大会中は選手との面会など接触はおろか手紙でのやり取りも禁止されているのでクリスを信じるしかなかった。
勝ち残った選手達は、各自、メイド達に城の2階にある御用人が宿泊する豪華な部屋に案内された。
選手同士の揉め事や不意打ちなどが起きない様に、選手1人1人に護衛として騎士団2名が付き添いにつくことになっており、晩御飯を部屋で摂る選手の護衛騎士団は部屋の外で待機している。
大広間では、出場選手6人が食事を摂っていた。
選手達からは威圧感が出ており、場の空気はピリピリと張り詰めている。
そんな中…。
「クリス、あの魔力を剣にイメージした技に名前を付けたらどうだい?威力も申し分なしだったからね。アレは、もう立派な技だよ。」
「お婆ちゃんが、そう言うなら。う~ん、名前か…。断罪の剣ってのは、どうかな?この技は殺傷力が高いから、いざって時にしか使わないだろうし。」
「なるほどね、言い名前だね。」
「因みに、お婆ちゃんはどんな名前付けているの?」
「私のは、クリスとは違って凍らないけど切れ味は劣っていないよ。名前は宝剣と名付けているね。」
マミューラは、右手に魔力を集中させて剣をイメージすると青い剣が出現した。
「格好いい名前だね。」
「フフフ…ありがとう。ところで、クリス。どうだった?私の試合を見て、それでも、私に勝てる自信はあるかい?」
「お婆ちゃん、アレぐらい僕にだってできるよ。」
「フフフ…。だろうね。でも、私はまだ本気を出しちゃいないからね。」
「うん、わかっているよ。それでも、僕は負けないよ。」
「フフフ…。楽しみにしているよ、クリス。」
クリスとマミューラは張り詰めた空気の中でも特に気にした様子はなく2人は笑みを浮かべ、会話しながら食事をする。
そんな光景を出入口の扉の影からアイリスと妃のサリーダがいた。
アイリスは、クリスがマミューラの異常な強さを目の当たりして自失してないか心配になり、クリスの様子を窺っていたのだ。
「ほら、クリス君なら大丈夫だったでしょう?アイリス。」
「はい、お母様。」
「長居していたらバレてしまうから戻りましょう、アイリス。」
「はい、お母様。頑張って、クリス。」
不安だったアイリスだったがクリスの笑顔を見て不安がなくなり、立ち去る際にチラッともう一度クリスを見て呟いて立ち去った。
アイリスは口元に笑みを浮かべており、足取りは軽くなっていた。
そして、翌日になりトーナメントが開催された。
「では、まずトーナメントの順番を決めて貰う。この箱の中に数字が書かれたボールが入っている。選手達は、ボールを1つ引いて順番を決めて貰う。説明は以上だ。では、引いて貰おう。」
ユナイトの説明が終わり、選手達はリングに上がり順番に用意されている穴が開いている箱に手を突っ込んで数字が書かれたボールを1個ずつ取り出していく。
クリスは2番を引き当て、マミューラは10番を引いた。
「はぁ、昔から私とクリスはクジ運がないねぇ…。クリスは2番で、私は10番だからクリスと当たるのは決勝みたいだね。はぁ、2日後までお預けみたいだね。」
ため息を吐いたマミューラの耳に観客達の話が聞こえてくる。
「勝ち残った選手は、大体、予想通りだったわね。」
「ああ、だけど、これからはトーナメント戦だから一対一の勝負になる。そうなると、もうこの大会はマミューラ様が絶対に優勝するよな。」
「そうね。もう、結果が見えているわね。何だかつまらないよね。」
カップル達は、面白くなさそうにリングを見る。
「ユナイト、ちょっと良いかい?」
「はい、どうかされましたか?マミューラ様。」
「今回から、トーナメント戦になるだろ?そうしたら、私とクリスの勝利率が大幅に上がり、観客達は観戦していても楽しくないみたいだからさ。1つ提案があるんだけど良いかい。」
「提案ですか?」
「そうさね、こういうのはどうかい?Bブロックである私対同じBブロックの選手5人全員、AブロックもAブロックのクリス対同じAブロックの選手5人全員で戦わせて貰えないかい?」
「「なっ!?」」
マミューラの提案に、観客達と選手達は驚愕の声をあげた。
「「うぉぉ!」」
「そうだ!このままじゃあ、つまらないぞ!」
「流石、マミューラ様だ!わかっている!」
「そうだ!そうだ!俺達はお金を払ってまで見に来ているんだ!楽しませろ!」
観客達は、盛大に盛り上がり賛同の声が交差する。
「マミューラ様、困ります。それは、流石にちょっと…。」
ユナイトは、困った表情を浮かべる。
「そうかい?でも、観客達は賛同しているみたいだから残る他の選手達に聞いてみたらどうだい?」
「僕は、別に構いません。」
クリスは、即答した。
「俺も、それで構わない。」
「俺もだ。」
マミューラの予選の戦いを観戦して自信がない選手達は続々と賛同する中、反対の声があがる。
「俺は反対だ!屈辱だ!そんな情けない提案は却下だ!」
「俺も反対だ!お前も、そうだろ?」
反対の声をあげる選手は、まだ決めていない選手に同意を求めた。
「……俺は、提案を飲む。」
「貴様!何故だ!プライドはないのか?」
「じゃあ、聞くが。お前達は一対一でマミューラ様に勝てる自信があるのか?」
「それは…。しかし、だからと言って…。」
「わかっている。俺もお前達と同じく悔しい。しかし、今回は侮辱を受けてでも優勝する可能性が上がるならば、それにすがる。なぜなら、俺は優勝するためにこの大会に出場したんだ。それに、今回は情けない勝ち方をしても、いずれ己を鍛えあげていつか必ず真っ正面から堂々とマミューラ様に勝てば良いと思っている。」
選手の1人は、歯を食い縛りながら拳をギュッと握り締める。
「フフフ…面白いね。良い心意気だよ。」
マミューラは、不敵な笑みを浮かべた。
「「……。」」
反論する選手達は、誰もいなかった。
「そうだな…。我々、選手達は異論はないです。マミューラ様の提案を呑みます、ユナイト様。」
反対していた選手達は頷き合い、意見が合致した。
「おいおい、お前達。少し待て!勝手に話を進めるんじゃない。」
どうして良いのか、わからなかったユナイトはバロシュ国王に視線を向ける。
「アイリス、どうする?マミューラの提案を呑むか?」
「はい、お父様。私は、それでも構いません。」
「わかった。ユナイト、その提案を呑む。その方向で進めてくれ。」
バロシュは深く頷いた後、立ち上がってベランダに出てユナイトに指示を出した。
「畏まりました。では、マミューラ様の提案が通ったので、急遽、今からAブロックはクリス対Aブロックの選手5人との試合を開始する。Bブロックの選手達はリングから降りて貰おう。」
「「うぉぉ!」」
観客達は、盛大に盛り上がる。
「準備は良いようだな。では、試合開始!」
「「ウォォ!」」
「「アクア・ショット!」」
ユナイトの試合開始の合図と同時に、選手4人は木製の剣を握ったままクリスに接近し、残りの3人の選手はアクア・ショットを唱えて無数の水弾を放つ。
「アクア・ショット!」
クリスは、その場から一歩も動かずにアクア・ショットを唱えて無数の水弾を放ち、迫ってくる水弾を全て相殺し、襲い掛かってくる選手4人と魔法を唱えた選手3人の胸元に的確に当てた。
「「ぐぁっ。」」
水弾が当たった選手達は、ゆっくりと倒れ気絶した。
「「~っ!」」
「フッ…。やってくれるな。」
闘技場が静寂が訪れる中、マミューラだけが不敵に笑みを浮かべていた。
「あの、ユナイトさん。宣言をして貰っても良いですか?」
「あ、ああ、勝者クリス!」
(まさか、マミューラ様と同等以上のことができるとは思いもしなかった。こいつの実力は、まだ底がしれんということか…。)
ユナイトは、深刻な面持ちで勝利宣言をした。
「俺達は、夢でも見ているのか?」
特等席側のリングの外に待機している国王直轄軍【六花】第4席のランドルが信じられない表情で恐る恐る呟いた瞬間、隣に待機しているユーリアから頬を引っ張られた。
「痛っ!?何をするんだ!ユーリア!貴様!」
「夢かと思ったから。」
「俺の頬じゃなく、自分の頬を摘まんで確かめろよ!」
「嫌よ、痛いのは。わかるでしょう?」
「わかるが、だからと言って俺の頬を摘まむなよ!」
「そんなことより、信じられないわ。まだ幼いというのに、私達でもできないマミューラ様と同等のことができるなんて。ううん、それ以上だったわ。だって、放たれた無数の高速で飛んでくる小さな水弾も全部を相殺した上でのことだから。昨日、マミューラ様が行った神業を超えているのは確かだわ。」
「おい、俺の話は無視か…。少しは俺の話を聞けよな。はぁ、お前の言っていることは合っている。目の前で目撃したが、今も俺も信じられないでいるからな。」
ランドルとユーリアは、真剣な面持ちでクリスを見つめた。
観客達も驚いていた。
「な、何なんだ…?あの子供は…。本当に子供なのか?」
「もう、天才とか鬼才とか超えているわ。神の子、神童よ。」
「だが、これで、決勝が楽しみになったな。」
「ええ。おそらく、次の試合はマミューラ様が勝つと思うから決勝で2人の戦いが見れるわね。」
観客達が会話している間に次の試合が始まった。
選手7人はマミューラの魔法攻撃を警戒しており、試合開始直後に動かずにマミューラから距離を取っていた。
「おや?攻めてこないのかい?じゃあ、こっちから行くよ。」
マミューラが不敵な笑みを浮かべた瞬間、マミューラの姿が消えた。
「「なっ?」」
マミューラを見失った選手達が間抜けな声をあげた瞬間、マミューラは真ん中にいる選手の懐に入っていた。
マミューラは右拳で中央の驚愕している選手の顔面を殴り、左足のハイキックで右側にいる選手の顔面を蹴りを入れ、前に一歩だけ踏み込んで肘打ちで隣の選手の鳩尾を打ち抜き、最後に左足を軸にして右足の回し蹴りで近くの選手の顎を撃ち抜いた瞬間、再び、マミューラの姿が消えた。
そして、マミューラは一瞬で残りの3人の前に移動していた。
「こ、このっ!」
「「ハァァ!」」
選手3人は、同時に握っている木製の剣を振り下ろしてマミューラに攻撃する。
しかし、マミューラは高くジャンプして避けながら選手達の背後に回った。
「「くっ。」」
「3人共、反応が遅すぎるよ。」
マミューラは選手達が振り返る前に選手1人の首筋に左手の手刀して気絶させ、右拳で振り返り様の選手1人の顔面を殴って気絶させた。
「糞っ!チッ、がっ。」
残った最後の選手は振り返りながら剣を横に振ったが、剣がマミューラに届く前にマミューラの回し蹴りが剣を握っている右手首に当たり剣が空中に放り出されて回り、そのままマミューラの蹴りが顔面に決まって吹き飛ばされる。
誰も立ち上がる気配がなく、場が静寂した。
「勝者、マミューラ様!」
ユナイトが勝利宣言をし、観客達はどよめく。
なぜなら、リングの上には、二十歳ぐらいの若い女性が立っていたのだ。
「あれ?あの若い女性は誰だ?一体、マミューラ様は何処に行ったんだ?」
観客の1人が呟く。
「ふぅ~。次のクリスとの試合をする前に感覚を慣らすために久しぶりに使ってみたんだけど、予想以上に疲れるものだね。本当に、年は取りたくないものだよ。」
女性がため息をしながら自身の片方の肩に手を当てて肩を回していると、次第に老けていき見慣れたマミューラの姿に戻った。
「え!?嘘…。ど、どうなっているの…?」
「嘘だろ…。どっちが、本当のマミューラ様の姿なんだ?」
観客達は、信じられない表情でざわつく。
(久しぶりに、あの姿のマミューラ様を見たな。だが、相変わらずだな。あの姿を見る度、周囲には数多くの敵が倒れているからな。こんなに実力をまじまじと間近で見せつけられると、敵わないと思ってしまうな。)
ユナイトは、目を瞑って左右に頭を振った。
「あの、どんなことをすれば若返るのですか?あれは、魔法ですか?」
マミューラが【六花】から離れた後に入れ違いに【六花】第6席になったテーラは初めて若返ったマミューラを見て驚愕し、隣にいる【六花】第5席であるダイアスに尋ねる。
「そうか、テーラ。お前は、初めて見たんだったな。あの姿のマミューラ様を見るのは。」
「はい。」
「マミューラ様があのお姿になった時は、いつも周囲には数多くの敵が倒れているんだ。仲間の俺達ですら息を呑むほど圧倒的で絶対的な強さだった。後に、マミューラ様の強さに他国が恐れて、マミューラ様に【女帝】と呼称つけたんだ。」
「そうだったのですね。それで、その…。」
「ああ、そうだったな。なぜ若返ったのかだったな。マミューラ様曰く、自身の魔力だけでなく大気中にも満ちている僅かな自然の魔力を大量に体内に取り込み身体を活性化させると最盛期の姿になるらしい。」
「自然の魔力ですか?そんなことが、本当にできるのですか?」
「お前もマミューラ様以外に1度、その目で間近で見ただろ?」
「え!?あっ!クリス君…ですか?」
「そうだ。国王様がクリスに聞き取りしていた時、揉め事になってユーリア様がアイリス様に攻撃しようとした際、魔力を封じられたクリスが自然の魔力を使って身体強化をした。おそらく、自然の魔力を取り込み使いこなすことができるのはマミューラ様とクリスだけだ。」
「ダイアスさんは、次の決勝戦はどちらが優勝すると思っていますか?」
「大会が始まる前は、確実にマミューラ様が優勝すると思っていた。例え、クリスがマミューラ様と同等に自然の魔力を使えたとしても武術は兎も角、魔法の熟練度に差があるからな。だが、先ほどのクリスの試合、クリスが使ったアクア・ショットの完全無比な正確さを目の当たりにして、正直わからなくなった。今は、どちらが優勝しても可笑しくはないと俺は思っている。まぁ、どちらが勝つにせよ、おそらく、歴史に残る戦いになるだろう。」
ダイアスとテーラは、マミューラとクリスを見つめた。
マミューラは、ユナイトに歩み寄る。
「ところで、ユナイト。見た通り、私とクリスは無傷だから、このまま決勝戦を行いたいんだが良いかい?」
「そうですね、わかりました。では、引き続き決勝戦を行いましょう。クリス、リングに上がれ。」
「わかりました。」
「クリス、待たせたね。今さっきの戦いを見ても、私に勝てると思っているかい?」
「やってみないとわからないよ、お婆ちゃん。だけど、勝たせて貰うよ。」
「フフフ…良いね。男の子は、そうこなくちゃね。」
「では、試合開始!」
「クリス、私は最初から本気で行くからクリスも本気で来ないと、すぐに終わってしまうよ。」
マミューラは膨大な魔力を纏い、再び姿が若くなっていき二十歳の姿に変貌した。
「わかっているよ。」
クリスは、真逆に魔力だけでなく気配すらも完全に消える。
「じゃあ、行くよクリス!」
「……。」
マミューラが笑みを浮かべた瞬間、マミューラの姿が消えると同時にクリスも姿が消えた。
マミューラとクリスはお互いに一瞬で迫り、リングの中央で同時にお互いに右足でハイキックをする。
「「ハッ!」」
お互いの右足同士が頭部の高さでぶつかり合い、足がクロスになった瞬間に二人の中心からリングにヒビが入り衝撃波が発生した。
「「ハァァ!」」
同時に右足を引き、今度は左足の回し蹴りを放ち、再び、ぶつかり合い衝撃波が生まれる。
今度は、お互いに耐えきれず後ろにズリ下がった。
クリスは、一瞬でマミューラの背後に回って手刀を繰り出す。
「良い動きだね。しかし、あまいよ!クリス。」
マミューラは、屈んで攻撃を躱すと共に右足を真上に突き出してクリスに攻撃をする。
「くっ。」
咄嗟にクリスは、マミューラが突き出した右足を自身の左足の裏で防ぎ、威力に逆らわずに高く飛んで着地した。
今度はマミューラがクリスに接近し、右拳に魔力を込めて殴りにいく。
「ハッ!」
「ぐっ。」
クリスは、腕をクロスにして防いだが威力に負けて後ろにズリ下がった。
マミューラは容赦なく、クリスに追い打ちをかける様に再び接近する。
マミューラは右足のハイキックを放ち、クリスは左腕を挙げて防ぐと共に右拳で殴りにいく。
マミューラは左腕で防ぎ、左足で回し蹴りを放つ。
「くっ、ハッ!」
クリスは、屈んで避けながら右拳を放つ。
「ヤッ!」
マミューラは、蹴りを避けられた瞬間に空中に上げていた左足をリングに叩きつける様に勢い良く振り下ろして着地させて右拳を放ったが僅かに出遅れた。
「~っ!」
クリスは自分が放った右拳がこのままだとマミューラの顔面に当たると思い、途中で拳の鋭さが鈍くなった。
そのため、クリスの拳がマミューラに届く前に先にマミューラの拳がクリスの顔面に決まった。
「ぐぁ。」
クリスは、リングの上を転がる。
「どうしたんだい?クリス。私を気遣う余裕はないはずだよ!」
マミューラは先回りをして、転がっているクリスに蹴りを放つ。
「くっ。」
クリスは転がりながら両腕をクロスにして防いだが、再び、リングの上を転がった。
「クリス、本気を出しな!そうしないと、姫様との約束は守れないよ!思い出すんだよ、クリス。何のために、今まで毎日ボロボロになるほど辛くキツイ訓練を受け続けて強くなったのかを!そうしないと、この攻撃は生半可な覚悟じゃあ防げないよ!ハァァ!」
マミューラは高くジャンプして右足を振り上げたまま降下しながら、今度は転がっているクリスに踵落としを放つ。
(そうだ…。僕は、アイリスを守るために…。アイリスの護衛騎士になるために!)
マミューラの右足の踵落としがクリスに迫る中、クリスの雰囲気が一変し威圧感が増した。
クリスは腕をクロスにしてマミューラの踵落としを防ぐと威力と衝撃波により足元のリングに大きくヒビが入り割れて抉れる。
「ぐっ、ハァァ!」
クリスは、クロスした腕を上げてマミューラを押し退けた。
マミューラは空中で一回転しながら着地したが、目の前にクリスが迫っており驚愕する。
(速い!迷いがなくなった分、動きに切れが増したみたいだね。そうさ、それで良いんだよクリス。)
「だけど、ハッ!」
マミューラは、嬉しそうに口元に笑みを浮かべながら右拳を放つ。
クリスはマミューラの拳を頬を掠りながらギリギリで避け、カウンターで右足でハイキックをする。
「良い攻撃だね、クリス。」
マミューラは左腕を上げて防いだが、クリスは今度は左足でハイキックする。
「そんな攻撃は…えっ!?ぐっ。」
マミューラは屈んで避けて反撃をしようとしたが、クリスの左足が途中で軌道を変えて踵落としになり、反応が遅れたマミューラはクリスの踵落としが肩に決まって地面に叩きつけられた。
クリスは右足でマミューラを蹴り飛ばし、追い打ちをしようと追いかける。
「くっ、アクア・ショット。」
マミューラは、クリスに接近をさせないためにリングの上を転がりながら無数の水弾を放つ。
「アクア・ショット。」
しかし、クリスも走りながら水弾を放ち全てを相殺させた。
「だぁぁ!」
クリスは、体勢が崩れているマミューラにジャンプキックをする。
「くっ。」
マミューラは、両腕を縦に引っ付けて防いだが後ろにズリ下がった。
再び、クリスは右足のジャンプキックをする。
マミューラは一歩だけ左側に動いて避けたが、クリスは空中で体を捻って回転し、左足を叩きつける様に上から下に振り下ろして繋ぐ。
「フフフ…。そうさ、クリス。それで、良いんだよ。相手が誰であろうと容赦なく戦うんだよ!」
マミューラは両腕をクロスにして防ぎながら笑みを浮かべ、両腕を開いて少しだけ弾くと共に右足でハイキックをする。
「くっ。」
クリスは、左腕を挙げて防いだが空中だったので踏ん張ることができず弾き飛ばされた。
弾き飛ばされたクリスは、勢いを利用して両手をリングにつけて大きくバク転をして着地した。
その隙に、マミューラはクリスに接近して右拳を放つ。
クリスは体を傾けて避けながら左手でマミューラの右手首を掴んでマミューラの鳩尾に右の肘打ちを入れ、流れる動作で右手でマミューラの胸元を掴んで一本背負いをし、地面に叩きつける前に右足でマミューラの頭を蹴り飛ばそうとする。
「くっ。」
マミューラは咄嗟に左手を地面について力一杯に力を入れて飛び上がりクリスの蹴りを避けた。
クリスは掌を空中にいるマミューラに向け、マミューラも空中で体を捻って掌をクリスに向ける。
そして…。
「「アクア・ジェット!」」
クリスとマミューラは、同時に水魔法アクア・ジェットを唱えて魔法同士がぶつかって相殺した。
「ふー。驚いたよ、クリス。何だい、今の連続攻撃は?」
マミューラは、空中で体を捻って着地をして一息つき嬉しそうに尋ねる。
「流石、お婆ちゃん。結構、自信があった攻撃だったんだけど。普通なら、絶対に決まると思ったのに。」
攻撃を防がれたクリスだったが、嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「そんなに悲観することはないよ、クリス。私もギリギリだったさ。鳩尾に肘打ちが決まった時、一瞬、呼吸が止まったからね。私以外の人達なら決まっていただろうさ。それよりも、クリス。そろそろ決着をつけようじゃないかい?」
「そうだね、お婆ちゃん。」
クリスは頷くと、クリスとマミューラは膨大な魔力を解き放つ。
2人の解き放たれた膨大な魔力よった生まれた余波が、突風の様に闘技場にいる人達に襲い掛かる。
予想を超えた魔力を目の当たりにした観客達は言葉を失い、闘技場は静寂になった。
「な、何ですか!?こ、この膨大な魔力は…。」
驚愕して息を呑んだテーラは、呟く様に小声で尋ねる。
「俺も、マミューラ様の本気を見るのは久しぶりだ。しかし、クリスは本当に子供なのか?精霊を宿しているとはいえ、まだ子供だぞ。それ以前に、こんな膨大な魔力を放っているのに、まだ発達していない幼い体が耐えれるとは…。」
ダイアスは、信じられない表情でクリスを見つめる。
特等席で観戦しているアイリス達も驚愕していた。
「まさか、マミューラが本気で全力を出して戦うとは…。それほど、クリスも凄いということなのだろう。しかし、マミューラは当然だが、クリスもあれほどの膨大な魔力を暴発させずに完全にコントロールして安定させているとはな。」
「ええ、だけど、クリス君は大丈夫かしら?あれほどの膨大な魔力に体がついていけるのかしら?」
「お母様、クリスなら大丈夫です。だって、今、放出させている魔力は精霊の魔力ではないので。」
「そうなの?」
「はい、クリス自身の魔力です。」
「精霊を宿しているアイリスが、そういうならばそうなのだろうな。しかし、まだ幼いというのに本当に凄いな。流石、王国の歴史で歴代1位の才能を持っていると言われているアリス様の子供だけのことはある。」
「あなた、その言い方は良くないわ。クリス君がアイリスのために毎日ボロボロになるまで必死に頑張って努力した結果だからこそよ。」
「お、お母様っ!?」
アイリスは、顔を真っ赤に染めて大きな声を出した。
「ハハハ…。そうだったな、悪かった。」
「う~。」
アイリスは顔を真っ赤に染めたまま、何も言い返せず唸った。
「そろそろ、戦いが始まるようだぞ。」
「そうみたいわね。」
「クリス…。」
(無理だけはしないで。)
アイリスは、心配した面持ちで胸元で手を合わせて握り締めてクリスの無事を祈った。
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