カオスの遺子

浜口耕平

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第一部 エルマの町

第二十二話 運命の模擬戦 ロード対ザクレイ1

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 ザクレイと模擬戦をすることになったロードは、町から離れた見晴らしのいい場所にやってきた。
 「ここまでくれば問題ないだろう… それじゃあ始めるか!」
 「……とその前に、、 おい! お前らさぼってないで早く任務に行け! 見世物ンじゃねえんだぞ!!」
 ザクレイは、二人の端にいる戦いを見に来た他のメンバーたちに向かって叫んだ。
 「少ししたらちゃんと行きますよ! でも、その前に隊長の戦いをコイツらが見たいって言うから…」
 「そうそう、だから早く始めてくれたら、俺らもその分早く任務に行けるから、早くやってくれよ~」
 「はぁ~、全く都合のいい奴らだ。じゃあ行くぞ!!」
 ウェインとアレスがそう言うと、ザクレイは早くウェインたちを任務に行かせるために急かされているようで少し癪に障るが、予定通り模擬戦を始めた。
 模擬戦が開始されると、ロードはザクレイの攻撃に備えて構え、ザクレイは自身の体内にある魔力を高め始めた。
 ザクレイが自身の魔力を高め始めると、体から黒いオーラが現れて体の周りを覆っている。
 「何だあれ!?」
 アレスがザクレイの周囲が高密度の魔力で覆われ、今までに見たことのない膨大な魔力量をほこる魔法に驚愕した。
 「あれが隊長の魔法 多次元魔装ダークアーマーだ。隊長の体内にある膨大な魔力を高め放出することで、肉体の強化、多種多様な武器や防具を纏うことができる。隊長の十八番だ」
 「ふーん、よく知っているなウェイン。あいつのファンなのか?」
 「ファンというわけではないが、ザクレイは俺が昔軍に入った時のチームの隊長だったんだ。俺の師匠みたいなもんさ、まあ… よくしごかれたもんだよ、、」
 ウェインは久しぶりにザクレイの魔法を見て、ザクレイのキツイしごきと過去の生活を懐かしく感じ思い出にふけていた。

 ウェインたちが見守る中、ザクレイはロードに向けて突進した。
 (速いッ!!)
 ロードがそう思っているのもつかの間、ザクレイは近づいてパンチを繰り出した。
 拳をすんでのところでよけてザクレイから距離を取り、自身がよけた位置を見ると、半径十メートルにもなろうか地面にパンチが当たったであろう場所から放射状に地面が割れていた。
 「やっば! 当たったら僕死ぬじゃん… これが隊長の実力かぁ、、」
 「どうしよう、、どうやって反撃しよう?」
 パンチ一発とはいえ、その凄まじい破壊力に驚きとザクレイの実力に感心したと同時に不安に駆られた。
 「どうした? 怖気づいて来れないのか? なら、もう終わりだ。これ以上やっても意味がない、時間の無駄だ」
 「待って‼ ちょっと驚いただけだよ! まだ戦えるよ!」
 ザクレイの攻撃を見てひるんだロードだったが、魔法陣を展開して間合いを詰める。
 「ほう、これがフォースが言っていた魔法か… 近づいてくるあたり一定範囲でしか効果がないってことだな」
 ロードの攻撃をよけながら、ザクレイは魔法の有効範囲を見定めていた。
 (なるほど、直接触れないと魔力を吸い取ることができないのか、、 なら)
 ザクレイは一転してロードに攻撃を仕掛けた。
 ロードは反撃に出るが、ザクレイは手足のリーチの違いを利用して触れられる前に腹に蹴りを入れた。
 「うっ…」
 ロードは草の上をゴロゴロと転がりながら吹き飛ばされた。
 しかし、ザクレイが蹴りを入れた瞬間にロードはザクレイに触れ、魔力を吸い取り、ザクレイの多次元魔装ダークアーマーを剥がした。
 (そうか、あの一瞬で足を掴んで俺の多次元魔装ダークアーマーを消したのか… なかなかやるじゃん)
 ロードは魔法を無力化して蹴りの威力を軽減したが、そもそも元の肉体の強さが桁違いのザクレイの蹴りにはダメージも少なくない。
 (痛ったーい! あの人、今までに戦った中で一番強い! 吸い取って蹴りの威力を弱めたのにこのダメージはまずいよ~ もろにくらったら死んじゃうかも、、でも、僕がカオスの遺子との戦いを認められるためにはもっと強くならなきゃ!)
 「よし!! 来ーい!」
 立ち上がったロードはザクレイの次の一手をどう受けるか思案に暮れていたが、ザクレイに実力を認められるために決心した。


 「隊長相手に上手く戦えているじゃない。これなら早くにもザクレイに認められるかもね」
 ロードがザクレイ相手に互角ではないにしろ、上手に戦えているように見えたメリナが呟いた。
 「ロードも戦い方が上手くなったよな~ 前までは『うわあああー助けてー 誰かー手伝ってー』しか言ってなかったのにな」
 「そんなことはないわよ。あなたみたいに二日酔いで戦えないっていう方が問題だと私は思うけども」
 「酒を飲んだら酔う、当たり前のことだ。なんでそれを咎めるんだ?」
 「はあー、あなたってお金の使い方だけじゃなく、頭もゆるゆるなのねぇ」
 「ちなみにパンツの紐もゆるゆるだぞ」
 「どうでもいいわよそんなこと。私が言いたいのは、お酒を飲んでも構わないけど、生活や任務に支障をきたすまで飲むなってことよ」
 「まあでも、アレスの言う通りロードは随分成長したわ。これならザクレイもロードの実力を認めてカオスの遺子たちとの戦いに参戦できそうね!」
 「お前たち何を言ってるんだ? 隊長は全然本気を出してないぞ」
 「そうなのか、、 じゃあ何でザクレイは手を抜いて戦っているんだ? 本気でやってやれよ、そんなんじゃロードのためにならんだろ…」
 「大丈夫だ。どうやら隊長の様子見はここまでのようだ」
 「おい、ここから離れるぞ。巻き添えを食らっては俺たちも無事ではすまんからな」
 そう言うと、ウェインは立って三人にここから離れて、遠く離れた場所に移動して二人の戦いを見学することにした。
 
 「お前なかなかやるな。度胸はいいし、機転もきく… そんじゃそこらのカス相手じゃ話にならんだろうな」
 ザクレイは多次元魔装ダークアーマーが剥がされたあとの右腕を眺めながら呟いた。
 「それじゃあ、カオスの遺子との戦いを認めてくれるの!?」
 「だが! カオスの遺子と戦うためには最も重要なことが大きくかけている」
 「それはなに?」
 「強さだ! ここからは俺も本気でいく。覚悟しろ! 死んだとしても、後悔するなよ! だから全力で俺に向かってこい!!」
 ザクレイは自身の魔力を最大限まで高めると、これまで以上に溢れ出た魔力がザクレイの全身を包み込み黒き鎧となり剣となった。
 禍々しく、漆黒の鎧を身に着けたザクレイはまさしく魔人のような姿であり、その姿はロードを慄かせた。
 「あ…、ぁ…」
 ザクレイの威圧感に押されて、ロードは数歩下がって立ちすくんだ。
 「行くぞッ!!!」
 ザクレイの本気の戦いが今始まった。
 
 
 
 
 
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