カオスの遺子

浜口耕平

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第二部 自由国ダグラス

第七十八話 宴

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 任務をロード達に任せて自室へと戻ったアレスは何もすることが無く、ただベッドに横たわって時間を持て余していた。
 やることが無いなと鬱蒼と時間が過ぎていくのを天井を見上げていると、ドアを叩く音がした。
 「誰だ?」
 アレスはドアの向こうにいる人物に声をかけるとドアの向こうから返事が聞こえてきた。
 ギャバンだ、どうやら彼も時間を持て余していたようで自分と同じ奴がいないかと思って、アレスを尋ねてきたらしい。
 「入れよ」と声をかけるとギャバンは部屋の中に入ると、椅子に足を組んで座った。
 「暇だな」
 「ああ……暇だ」
 会ってから日も浅いので、二人は会話を始めようと話をふるがオウム返しのように同じ返答を繰り返して一向に会話が始まらない。
 少しの沈黙が流れた後、アレスが思いきって口を開いた。
 「…なあ、お前はどうして兵士になろうとしたんだ」
 「うーんん~」
 両手を頭にのせて少し考えるかのようにうなった後、自身の生い立ちを語り始めた。
 「俺はこの国とは違う場所で生まれて、父の手一つで育てられたんだ。それから、父の意趣で兵士になったんだ」
 「ほえー、その歳で親の意思に従ってるのかよ」
 「フフ……お前から見ればみっともないと思うだろうが、従えば離れていった父の愛が俺に戻って来るかもしれないんだ……」
 ただ一点を見つめて語るギャバンの目は哀愁が漂っていた。
 父の愛を求めて狂った青年の話を聞いたアレスもまた同じように自分の生い立ちを話した。
 「それは気の毒だったな……」
 会話を終えた二人にはまたもや沈黙が訪れた。
 陰鬱とした空気が漂う中、部屋の中にメリナとエルフリーデが入ってきた。
 「あら二人とも、そんなに黙りこくって何かあったの?」
 いつもはテンションが高いアレスが何のアクションも示さずにベッドに横たわっているのを、メリナは気味が悪いと感じた。
 「何だお前たちか、何の用だ?」
 「用なんてないわ、ただ暇だから来ただけよ。でも、ここも退屈そうね。エルフリーデ、町に行きましょう」
 「いいわね、行きましょう」
 そう言って、部屋を出ようとした時アレスが、「町に行くなら酒かってきてくれよ~」と言い、続けて「俺もつまみ頼むわ、ハムをぶつ切りにしたやつな」とギャバンが言った。
 「自分で買ってきなさい!!」
 メリナはバンッとドアを強くしめて去っていった。
 アレスはやばい怒らせたと思いながらも、心の中で酒を渇望していた。
 そして、ギャバンも同様に酒を飲んでつまみを食べたいと思っていたので、二人は合図なしで同時に立ち上がると、目線を合わせて頷くと酒とつまみを買いに町へ出かけた。
 しこたま酒とつまみを買いあさり、持ち帰った大量のそれらをテーブルの上に並べた。
 テーブルに置かれた食べきれない飲みきれない酒とつまみに興奮していた。
 「おい早くしようぜ、待ちきれねえよこんなの」
 「待て待て、こういう時は最初が肝心なんだから」
 そう言うと、ギャバンは一番強い酒を持ち、「さあこれを鼻で仰ぐんだ」と言い瓶の蓋を開けた。
 「マジ!? それクソ痛いんだよな~」
 「やったことあるのか?」
 「いんや、寝ているロードの鼻を使って実験したからな。もう泣き叫んで大変だったよ」
 「お前……だいぶクソ野郎だな。まあ、面白いからいいがな!」
 そして、手をお椀のようにして酒をそこに注いだ。
 「それじゃあ、行くぞ」
 「ああ」
 「「せーのッ!」」
 二人は同時に酒を鼻で飲んだ。途端、二人は悲鳴を上げて地面に倒れこんだ。
 「ぐああああ!! いてえええエエ!!」
 顔が一気に赤くなり酔いが回った二人はしばらくして痛みから立ち上がった。
 「ふはー! 一気にきたな!」
 「頭がいてえ、、コイツは酔える。それじゃあ食うか!」
 「おう!」
 二人は席に着いて宴を始めた。
 
 半分ほど飲み食いをした二人は既にべろんべろんに酔っぱらっており、折り重なるように体を重ねていた。
 「おーいギャバン、何でそんなとこにいるんだぁ~?」
 「ぅおう、、 おえええ、お前こそいつのまに俺の上に?」」
 「知らねえよそんなのォオん! お前が俺のケツを狙ったんだろオん?」
 二人とも酔っぱらっていて何故こうなったのか理解できてないようだ。
 あたりは飲みほした空き瓶と食い散らかしたゴミなどが散乱していた。
 下にいるギャバンがアレスを押しのけ意識が朦朧としながらも上半身を起こして周りの惨状を見て、「どこだここは?」とやはり記憶が曖昧なようだ。
 床にぞんざいに落とされたアレスも同じように体を上げて惨状を見て大笑いした。
 「ハハハハハハ! うッ、、ゴホッゴホッ あー頭いてえ」
 「水ぅー、水をくれー」とギャバンが喉が焼いて水を求めて手を伸ばした。
 もちろんここには水なんてない、あるのは大量の度数の高い酒瓶だけだ。
 アレスは、ここには水なんてないと言うが、それでも水を求めるギャバンにアレスは酒瓶を無理やり口にくわえさして飲まそうと固定した。
 「ほーら水だぞー、ちょっと酒っぽいけど」
 「うぼぼおぼぼぼッ!」と溺れた時のようにゴボゴボ音を立てているそんな様子を酔いも回っているせいか、アレスは爆笑しながら最後の一滴まで中の酒を飲ました。
 「おえええええ!!」
 全部飲み干したギャバンは口が自由になると、胃の中の物を全て吐き出して部屋は吐しゃ物にまみれ、彼はその吐しゃ物の海に顔を沈めた。
 「はーっははははははは! おいおいどこで寝てんだよ!!」
 アレスは自身の吐しゃ物の上でいびきをかいて寝ているギャバンを見て地面に笑い崩れて、そのまま意識を失ってギャバンと同じように吐しゃ物を枕にして眠りに落ちた。

 「アレスー? ちょっと聞いてよ、町の人がエルフリーデにとんでもない悪口をって、、 くっさ!!」
 町に出かけていたメリナが部屋に入ると、中の悪臭に嗚咽した。
 「一体何が起こったの……?」
 メリナは鼻を抑えながら悪臭漂う部屋の中に入った。
 「うわ、気持ち悪ッ!」
 床に散らかっている液体が吐しゃ物だと気づいたメリナは急いで部屋から出て行った。 
 
  
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