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おまけ 出勤のあれ
⑤
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僕の出勤投稿にお客さんは喜んでくれた。さすがにまたソファを汚すわけにはいかないから、あの日以降は自撮りに戻したりたまに蒼羽と2人で撮るくらいの投稿内容にしている。
忙しい日々に、あの日の痴態を忘れかけたころ――僕があの日感じた不安が的中した。
「那智……! これ……!」
ある日僕は、流れていた投稿を見て驚愕し、開店前の更衣室で那智に詰め寄る。出勤投稿の裏側、なんて文言が添えられた那智の投稿に添付されていたのは、僕と蒼羽がソファの上で繋がっている動画だった。お互い腰を揺らし合いながら写真を撮影する僕と蒼羽の動画や、キスをしながら激しく求め合う僕たちの動画などが、いくつかに分けられ投稿されている。
これが真実、イチャラブ年中無休、おきゅいん前のミルクイン、なんてハッシュタグがつけられた投稿に映る僕たちは、心から愛し合う恋人同士のように幸せな顔をしていた。
「あ、バレちゃった?」
なんて悪びれもなく笑う那智。僕たちにあんな投稿を提案したのはこのためだったか、とようやく理解する。
「でもさー。さすがにおれも驚いたよ? セックスするかなーって思ってたらホントにするなんて」
くすくす笑う那智に、僕の顔はカッと熱くなった。たしかに、那智からは繋がって写真を撮れとは言われたけど、セックスしろとは言われていない。熱に浮かされ快楽に負けてしまったのは僕たちなのだ。
「うぅ……お客さんにも嘘ついたって思われてそう……」
「あはは。大丈夫大丈夫。ほら」
そう言って那智がスマホ画面を見せてくる。那智の投稿した動画についたリプライが表示されていた。
『知ってた』
『セックスしてないとかやっぱり嘘じゃん! 末永く爆発しろ!』
『ネタばらし動画待ってた。想像以上のラブラブ具合で草』
『あーあ。陽織くんのツンツンは演技だってバレちゃったね』
送られてきたコメントには、騙された、とか怒っている感じの内容はない。それどころか、セックスしていて当然みたいなコメントばかりで驚いてしまう。
「これ、毎回セックスしてほぐしてるって思われたことにならない……?」
「いいんじゃない? どうせわかんないんだし。妄想させといてあげても」
「いやいや……はぁ……」
僕は大きなため息をつく。どうせ否定したところで、みんな照れているだけだと思うのだろう。
「投稿の内容、おれもマンネリ感じてたんだよねー。ありがとね、ひおりん!」
うなだれている僕に、追い打ちをかけてくる那智。僕はいつか復讐すると心の中で誓ったのだった。
「いっそホントにしてもいいんじゃないか、陽織?」
「こっちはなに言ってんだか……」
楽しげに腰を撫でてくる蒼羽の手をつねり、僕は更衣室を出る。
(まあ……お客さんが喜んでくれるなら、いいかも……)
開店準備をしながら僕はそんなことを考えた。しかし――その考えはすぐに消え去ることとなる。
あの動画を見たマスターに、僕と蒼羽がソファを汚したあげく開店前に僕が潮を吹いたことがバレてしまったのだ。
開店前の潮ジュースの無駄打ち禁止、と怒られた僕と蒼羽。那智もしっかりと、しかも経緯もわかっていたのか僕たち以上に怒られていた。しっかり反省したようなので、那智への復讐は今はまだやめておくことにしよう。
忙しい日々に、あの日の痴態を忘れかけたころ――僕があの日感じた不安が的中した。
「那智……! これ……!」
ある日僕は、流れていた投稿を見て驚愕し、開店前の更衣室で那智に詰め寄る。出勤投稿の裏側、なんて文言が添えられた那智の投稿に添付されていたのは、僕と蒼羽がソファの上で繋がっている動画だった。お互い腰を揺らし合いながら写真を撮影する僕と蒼羽の動画や、キスをしながら激しく求め合う僕たちの動画などが、いくつかに分けられ投稿されている。
これが真実、イチャラブ年中無休、おきゅいん前のミルクイン、なんてハッシュタグがつけられた投稿に映る僕たちは、心から愛し合う恋人同士のように幸せな顔をしていた。
「あ、バレちゃった?」
なんて悪びれもなく笑う那智。僕たちにあんな投稿を提案したのはこのためだったか、とようやく理解する。
「でもさー。さすがにおれも驚いたよ? セックスするかなーって思ってたらホントにするなんて」
くすくす笑う那智に、僕の顔はカッと熱くなった。たしかに、那智からは繋がって写真を撮れとは言われたけど、セックスしろとは言われていない。熱に浮かされ快楽に負けてしまったのは僕たちなのだ。
「うぅ……お客さんにも嘘ついたって思われてそう……」
「あはは。大丈夫大丈夫。ほら」
そう言って那智がスマホ画面を見せてくる。那智の投稿した動画についたリプライが表示されていた。
『知ってた』
『セックスしてないとかやっぱり嘘じゃん! 末永く爆発しろ!』
『ネタばらし動画待ってた。想像以上のラブラブ具合で草』
『あーあ。陽織くんのツンツンは演技だってバレちゃったね』
送られてきたコメントには、騙された、とか怒っている感じの内容はない。それどころか、セックスしていて当然みたいなコメントばかりで驚いてしまう。
「これ、毎回セックスしてほぐしてるって思われたことにならない……?」
「いいんじゃない? どうせわかんないんだし。妄想させといてあげても」
「いやいや……はぁ……」
僕は大きなため息をつく。どうせ否定したところで、みんな照れているだけだと思うのだろう。
「投稿の内容、おれもマンネリ感じてたんだよねー。ありがとね、ひおりん!」
うなだれている僕に、追い打ちをかけてくる那智。僕はいつか復讐すると心の中で誓ったのだった。
「いっそホントにしてもいいんじゃないか、陽織?」
「こっちはなに言ってんだか……」
楽しげに腰を撫でてくる蒼羽の手をつねり、僕は更衣室を出る。
(まあ……お客さんが喜んでくれるなら、いいかも……)
開店準備をしながら僕はそんなことを考えた。しかし――その考えはすぐに消え去ることとなる。
あの動画を見たマスターに、僕と蒼羽がソファを汚したあげく開店前に僕が潮を吹いたことがバレてしまったのだ。
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