チャラ孫子―もし孫武さんがちょっとだけチャラ男だったら―

神光寺かをり

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九変篇 第八

九変篇2・必死っていうのは、必ず死んじゃうってコトっす。

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 あ、そうだ。優秀な将軍リーダーオチイりやすい「ヤバいメンタル」っていうのが、コレも五つぐらいあるんで、それもピックアップしておきますね。


 必死は殺さるなり。必生はとりこにさるなり忿ふんそくは侮らるなりれんけつはずかしめらるなり。愛民はわずらわさるなり
 
 うん、我ながらカッイイ言葉だなぁー。


 つまり、どういうことかっていうとですね。

 一つ目の「必死」。
 必死ガムシャラな人、向こう見ずな人。これヤバいんです。
 だって、必死の死ぬ気で殴りかかって来られたら、相手だって必殺の殺す気で反撃してくるに決まってるじゃないですか。
 当たり前ですよね。センソーなんですもん。負けたくないし、死にたくない。
 そうなると、一番先頭で必死になってる人、つまりは「必死な将軍リーダーさん」が真っ先にられちゃう。
 兵隊メンバーさんを引っ張ってる将軍リーダーが死んじゃったら、チームはバラけちゃいますからね。
 だからヤバいんですよ。

 二つ目は「必生」。
 要するに、身勝手ワガママな人、保身に走る人。これはマズいですよ。
 生き残るのは大切なことなんですけどもね。
 自分が生き残ること第一に考えるようなメンタリティの人は、ふんばりどころでさっさと逃げちゃうことが多いんですよ。で、そうすると、不思議なことに大抵は敵さんに捕まっちゃうんですよね。
 そんな状態で将軍リーダーが捕虜になっちゃうと、味方の士気やるキはだだ下がりになっちゃうからマジでマズい。
 あと、生きるのに必死な人だから「処刑されちゃったらいやだ」って考えちゃって、敵さんにこっちの情報流しちゃう可能性もあったりして。
 これ尚更マズい。

 三つ目は「忿ふんそく」。
 すぐ忿いかりまくる人、プッツンしちゃいやすい人。これはキツいっすね。
 すぐ切れちゃう短気な人は、敵にも味方にもあなどられがちなんですよね。特に味方に侮られちゃったら危ないですよー。
 トップが尊敬も信頼もされてないってことは、
「あの人はすぐ怒るし、反論したらもっと怒るから、適当に返事してやり過ごそう」
 って思われちゃうってことですヨ。
 つまるところ、どんな命令でも部下は真面目に聞かないいし、頑張ろうとも思わなくなっちゃう。
 そんな関係が敵にばれたらもっと大変。頭の良い軍師なんかいたら、トラップ……例えば離間の計とか……そういうのを仕掛けられちゃったりするでしょうね。んで、また気が短いもンだから、ホイホイ引っかかっちゃうんですよ。
 キッツいなぁ。

 四つ目は「れんけつ」。
 清く正しい人、欲のない人。これってコワいんですよね。
 いやいや、真面目なのはチョー良いことですよ。正しいとあろうと努めることも良いこと。ええ、素晴らしいことだ。
 でも、ですよ。
 セイセキユーシューセーレンケッパクユートーセーは、馬鹿にされるのに慣れてないコトが多いでしょ? だって利口な人なら、ちっちゃいころから誰からも貶されちゃったりしたことがないだろうし、怒られたり罵倒されたりしたこともないでしょ?
 そういう方は大体、失敗して恥をかくのが苦手。失敗した経験がないし、恥をかくことにも慣れてないんですよ。
 だから敵からも味方からも辱められるのなんか大っ嫌い。嫌いってコトは、辱めるような挑発にはあっさり乗せられちゃうってことです。
 日頃真面目で冷静な人程、そういうときはカーっと頭に血が上ってちゃって、何の策もなく飛び出しちゃいがちでしてね。
 そこを、待ち構えていた敵さんに取り囲まれて、劇終ジ・エンド
 おお、コワい。

 五つ目は「あいみん」。
 国のを愛する人、心の優し過ぎる人。これアヤういんですよ。
 ええ。民衆ファン兵隊メンバーに優しくして、大切にするってのは大変ことなんですけども。
 、ですよ。
 よく考えて下さい。将軍リーダーさんは一人だけど、民衆ファン兵隊メンバーは一人だけじゃないんですよ。
 たった一人が何千何万全員みんなに優しくしよう、話を聞いてあげよう、なんてことをしたら、絶対パンクします。
 人間ってのは、一人一人がそれぞれちがう希望を持っていますからね。大勢いれば、人の数だけそれぞれに違うことを要求してくることになります。別々の、場合によっちゃぁ全然あべこべなお願い事が出てきちゃったりしますよ。
 何をやっても全員が全員ともを納得させようなんてことは、そりゃ無茶です。
 あちらを立てればこちらが立たず。右を向いたり左を向いたりして、愛するミンナに振り回されちゃった優しい人は、最後には心が粉々に壊れちゃうんです。
 アヤウいなぁ。

 この五つ、それぞれ本当に重要な資質なんですけども……。ほら、過ぎたるはなおおよばざるがごとしってヤツですよ。こういう性質をジョーに持っている場合は、その人は現場を取り仕切るリーダーには相応しくないんです。

 特に、センソーをするって場合は、ね。

 大負けして、軍隊チームはバラバラ、将軍リーダー自身もご昇天、なんてサイアクな結果になっちゃったてぇ時は、大体将軍リーダーのメンタルの内の、この五つのどれかが過多オーバーキャパになってたンですよ。

 この辺のコトは、ホン本気マジ真剣ガチで気をつけないといけませんよ。
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