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「……ふふふ。今頃、あの店は大騒ぎになっているだろうな」
王都の王太子執務室。
アレクサンドル王子は、窓の外を眺めながらワイングラス(中身はぶどうジュース)を揺らしていた。
「ええ、そうですわねアレク様! 『衛生管理不届き』で営業停止命令が出れば、あんな店、一発で終わりですわ!」
ミント男爵令嬢が、意地悪な笑みを浮かべて同意する。
今回、王子が送り込んだ刺客。
それは、王都で最も恐れられている男――王立衛生管理局の主任監査官、グチグチ・ネチネチ卿(仮名)だった。
彼は「重箱の隅を楊枝でほじくる」を家訓とし、これまでに数々の飲食店を「厨房の隅に埃が0.1グラムあった」という理由で廃業に追い込んできた、プロのクレーマーだ。
「彼にかかれば、どんなに綺麗な店でも粗が出る。ましてや、あんな古びた別荘を改装した店だ。カビの一つや二つ、必ず見つかるはず!」
王子は高笑いした。
「さあ、泣いて詫びに来いスイート! 僕が再就職の世話(雑用係)をしてやるからな!」
* * *
一方その頃、カフェ『シュガー・ドリーム』。
「……ほう」
監査官ネチネチ卿は、店の前に立ち、眼鏡の位置を直した。
手には白い手袋、懐には拡大鏡、そして鞄には大量の「違反切符」が入っている。
「ここがターゲットの店か。……ふん、外観だけは小綺麗にしているようだが、中は菌の巣窟に違いない」
彼は意気揚々とドアを開けた。
「たのもう! 王立衛生管理局の特別監査だ! 抜き打ち検査を行……う……っ!?」
言葉の途中で、ネチネチ卿は「ぐああっ!」と目を押さえてうずくまった。
「お、お客様? どうなさいました?」
カウンターの中から、私が声をかける。
「ま、眩しい……! なんだこの床は! 鏡か!?」
ネチネチ卿が震える指で床を指差す。
そこには、私が今朝方、三時間かけて磨き上げたフローリングが広がっていた。
あまりに磨きすぎて、天井の照明だけでなく、ネチネチ卿の鼻毛まで映し出しそうな輝きを放っている。
「床です。ワックスを三層塗り重ね、最後に乾拭きで仕上げました」
「こ、こんな飲食店があるか! 客が滑って転んだらどうする!」
「ご安心ください。特殊な滑り止め加工も施しております。スケートリンクのように見えて、グリップ力は抜群です」
「ぬぐぐ……」
ネチネチ卿は立ち上がり、気を取り直して店内を見回した。
「だ、だが! 肝心なのは厨房だ! いくら客席が綺麗でも、裏側が汚れていれば即刻アウトだからな!」
「どうぞ。好きなだけご覧ください」
私は厨房のドアを開け放った。
「失礼する!」
ネチネチ卿は、まるで獲物を探すハイエナのように厨房へ飛び込んだ。
そして、拡大鏡を取り出し、徹底的な捜索を開始した。
冷蔵庫の裏。
換気扇のフィルター。
排水溝のぬめり。
シンクの四隅。
「……ない」
十分後、ネチネチ卿の額に脂汗が浮かび始めた。
「な、なぜだ……? 普通、冷蔵庫のパッキンには黒カビが……換気扇には油汚れが……排水溝にはヘドロがついているはずなのに……!」
「ああ、そこは毎日、営業終了後に分解洗浄しておりますので」
私は当たり前のように言った。
「分解!? 毎日!?」
「はい。お菓子作りにとって、雑菌は最大の敵ですから。特に生クリームやカスタードを扱う場所は、手術室レベルの無菌状態を目指しております」
「しゅ、手術室……」
ネチネチ卿は呆然とした。
王都の一流レストランでも、ここまでやっている店はない。
「い、いや待て! 食材の管理はどうだ! 賞味期限切れの卵や牛乳を使っているのではないか!?」
彼は冷蔵庫をガバッと開けた。
そこには、全ての食材に「入荷日」「開封日」「廃棄予定日」が記されたラベルが貼られ、完璧な温度管理のもとで整然と並んでいた。
「ぐうの音も出ない……」
ネチネチ卿の足元がふらつく。
しかし、彼は諦めなかった。
王子の命令がある以上、何かしらの粗を見つけなければならないのだ。
「そ、そうだ! 帳簿だ! 税務監査も兼ねている! 売上をごまかしているに違いない!」
「帳簿ならこちらです」
私はカウンターの下から、分厚い革張りの帳簿を取り出した。
ネチネチ卿はそれをひったくり、血眼になってページをめくった。
「ははは! どうだ! 素人の記帳など、計算間違いの山だろ……う……?」
ペラッ、ペラッ、ペラッ……。
彼の動きが止まる。
「……完璧だ」
彼は呻いた。
「一円のズレもない……。仕入れ値の原価計算、減価償却費の計上、人件費の割り当て……。王宮の財務官よりも正確で、美しい筆跡だ……」
「ありがとうございます。昔、ある方(王子)の代わりに、国の予算案を作成しておりましたので、この程度は朝飯前です」
「(あの方、そんなこともしていたのか……)」
ネチネチ卿は、パタンと帳簿を閉じた。
もはや、打つ手なし。
衛生面はSランク。
経理面もSランク。
これ以上、何にいちゃもんをつければいいというのか。
「……私の、負けだ」
ネチネチ卿は膝をついた。
その背中は小さく、哀愁が漂っていた。
「お疲れのようですね」
私は厨房から、小皿を持って出てきた。
「よかったら、これをどうぞ」
「……これは?」
「スフレチーズケーキの失敗作です」
「失敗作?」
「はい。焼き上がりの高さが、理想より二ミリほど低くなってしまいまして。商品としては出せませんが、味は変わりません」
ネチネチ卿は、目の前に置かれたケーキを見た。
どう見ても完璧な焼き上がりだ。これで失敗作と言うなら、世の中のケーキ屋は全員廃業だ。
「……毒は?」
「入っているわけないでしょう。検査官殿」
ネチネチ卿は震える手でフォークを持ち、ケーキを口に運んだ。
シュワッ……。
口の中で、淡雪のようにケーキが解ける。
「……っ!!」
ネチネチ卿のカチカチに凝り固まった心が、その甘さと優しさで解きほぐされていく。
王子の命令に従い、人の粗探しばかりをしてきた人生。
感謝されることなどなく、いつも嫌な顔をされ、陰口を叩かれてきた。
そんな彼に、このケーキは「お疲れ様」と囁いているようだった。
「う、ううっ……」
ポロポロと、ネチネチ卿の目から涙がこぼれ落ちた。
「おいしい……。なんて優しい味なんだ……」
「お粗末様でした」
「……私は、なんて愚かなことを」
彼は涙を拭い、立ち上がった。
そして、鞄から一枚の羊皮紙を取り出した。
「これを受け取ってくれ」
「これは?」
「『王立衛生管理局認定・最優良店舗』の証書だ。……国で五店舗しか持っていない、最高ランクの証明書だ」
「まあ! ありがとうございます!」
私は喜んで受け取った。
「これを店頭に飾れば、王都のうるさい連中も黙るだろう。……素晴らしい店だ。これからも頑張ってくれ」
「はい、励みになります!」
ネチネチ卿は深くお辞儀をし、来た時とは別人のように穏やかな顔で店を出て行った。
帰り際、「またプライベートで来る。絶対にだ」と呟いていたのを、私は聞き逃さなかった。
* * *
数日後。
王太子執務室。
「ど、どういうことだぁぁぁぁッ!!」
アレクサンドル王子の絶叫が響いた。
机の上には、ネチネチ卿から提出された報告書があった。
『当該店舗ハ、衛生・経理・味、全テニオイテ国宝級デアル。手出し無用』
そして、最後の一文にはこう添えられていた。
『追伸:殿下も一度、素直になって食べに行かれることを推奨する。人生観が変わりますぞ』
「ふざけるな! なんで僕の刺客が全員、あいつの信者になって帰ってくるんだ!」
王子は報告書をビリビリに引き裂いた。
「アレク様ぁ……。衛生検査もダメだなんて、もう手詰まりですわぁ……」
ミントがため息をつく。
しかし、王子の目はまだ死んでいなかった。
むしろ、狂気の色を帯びていた。
「いいや、まだだ。……こうなったら、最後の手段だ」
「最後の手段?」
「ああ。来月行われる『建国記念晩餐会』だ」
王子はニヤリと笑った。
「各国の要人が集まるあのパーティーで、デザートを担当するパティシエを一般公募する。……そこにスイートを参加させ、公衆の面前で恥をかかせてやるのだ!」
「でも、スイート様のお菓子はおいしいですわよ? 逆に優勝しちゃうんじゃ……」
「フフフ、甘いなミント。審査員は……『全員、僕が買収した貴族』にするのだよ!」
なんというセコい作戦。
しかし、王子にとっては起死回生の一手らしい。
「スイートよ。王都の晴れ舞台にお前を引きずり出し、二度と立ち上がれないように叩き潰してやる……!」
王子の歪んだ執念は、まだ消えそうになかった。
一方その頃。
私は店に飾られた『最優良店舗』の証書を見ながら、ご機嫌で新しいメニューのポップを書いていた。
「これでお客様も増えるわね。……次は、季節限定の『桃のコンポート』に挑戦しようかしら」
私の頭の中は、相変わらず平和な甘い夢で満たされていた。
王都の王太子執務室。
アレクサンドル王子は、窓の外を眺めながらワイングラス(中身はぶどうジュース)を揺らしていた。
「ええ、そうですわねアレク様! 『衛生管理不届き』で営業停止命令が出れば、あんな店、一発で終わりですわ!」
ミント男爵令嬢が、意地悪な笑みを浮かべて同意する。
今回、王子が送り込んだ刺客。
それは、王都で最も恐れられている男――王立衛生管理局の主任監査官、グチグチ・ネチネチ卿(仮名)だった。
彼は「重箱の隅を楊枝でほじくる」を家訓とし、これまでに数々の飲食店を「厨房の隅に埃が0.1グラムあった」という理由で廃業に追い込んできた、プロのクレーマーだ。
「彼にかかれば、どんなに綺麗な店でも粗が出る。ましてや、あんな古びた別荘を改装した店だ。カビの一つや二つ、必ず見つかるはず!」
王子は高笑いした。
「さあ、泣いて詫びに来いスイート! 僕が再就職の世話(雑用係)をしてやるからな!」
* * *
一方その頃、カフェ『シュガー・ドリーム』。
「……ほう」
監査官ネチネチ卿は、店の前に立ち、眼鏡の位置を直した。
手には白い手袋、懐には拡大鏡、そして鞄には大量の「違反切符」が入っている。
「ここがターゲットの店か。……ふん、外観だけは小綺麗にしているようだが、中は菌の巣窟に違いない」
彼は意気揚々とドアを開けた。
「たのもう! 王立衛生管理局の特別監査だ! 抜き打ち検査を行……う……っ!?」
言葉の途中で、ネチネチ卿は「ぐああっ!」と目を押さえてうずくまった。
「お、お客様? どうなさいました?」
カウンターの中から、私が声をかける。
「ま、眩しい……! なんだこの床は! 鏡か!?」
ネチネチ卿が震える指で床を指差す。
そこには、私が今朝方、三時間かけて磨き上げたフローリングが広がっていた。
あまりに磨きすぎて、天井の照明だけでなく、ネチネチ卿の鼻毛まで映し出しそうな輝きを放っている。
「床です。ワックスを三層塗り重ね、最後に乾拭きで仕上げました」
「こ、こんな飲食店があるか! 客が滑って転んだらどうする!」
「ご安心ください。特殊な滑り止め加工も施しております。スケートリンクのように見えて、グリップ力は抜群です」
「ぬぐぐ……」
ネチネチ卿は立ち上がり、気を取り直して店内を見回した。
「だ、だが! 肝心なのは厨房だ! いくら客席が綺麗でも、裏側が汚れていれば即刻アウトだからな!」
「どうぞ。好きなだけご覧ください」
私は厨房のドアを開け放った。
「失礼する!」
ネチネチ卿は、まるで獲物を探すハイエナのように厨房へ飛び込んだ。
そして、拡大鏡を取り出し、徹底的な捜索を開始した。
冷蔵庫の裏。
換気扇のフィルター。
排水溝のぬめり。
シンクの四隅。
「……ない」
十分後、ネチネチ卿の額に脂汗が浮かび始めた。
「な、なぜだ……? 普通、冷蔵庫のパッキンには黒カビが……換気扇には油汚れが……排水溝にはヘドロがついているはずなのに……!」
「ああ、そこは毎日、営業終了後に分解洗浄しておりますので」
私は当たり前のように言った。
「分解!? 毎日!?」
「はい。お菓子作りにとって、雑菌は最大の敵ですから。特に生クリームやカスタードを扱う場所は、手術室レベルの無菌状態を目指しております」
「しゅ、手術室……」
ネチネチ卿は呆然とした。
王都の一流レストランでも、ここまでやっている店はない。
「い、いや待て! 食材の管理はどうだ! 賞味期限切れの卵や牛乳を使っているのではないか!?」
彼は冷蔵庫をガバッと開けた。
そこには、全ての食材に「入荷日」「開封日」「廃棄予定日」が記されたラベルが貼られ、完璧な温度管理のもとで整然と並んでいた。
「ぐうの音も出ない……」
ネチネチ卿の足元がふらつく。
しかし、彼は諦めなかった。
王子の命令がある以上、何かしらの粗を見つけなければならないのだ。
「そ、そうだ! 帳簿だ! 税務監査も兼ねている! 売上をごまかしているに違いない!」
「帳簿ならこちらです」
私はカウンターの下から、分厚い革張りの帳簿を取り出した。
ネチネチ卿はそれをひったくり、血眼になってページをめくった。
「ははは! どうだ! 素人の記帳など、計算間違いの山だろ……う……?」
ペラッ、ペラッ、ペラッ……。
彼の動きが止まる。
「……完璧だ」
彼は呻いた。
「一円のズレもない……。仕入れ値の原価計算、減価償却費の計上、人件費の割り当て……。王宮の財務官よりも正確で、美しい筆跡だ……」
「ありがとうございます。昔、ある方(王子)の代わりに、国の予算案を作成しておりましたので、この程度は朝飯前です」
「(あの方、そんなこともしていたのか……)」
ネチネチ卿は、パタンと帳簿を閉じた。
もはや、打つ手なし。
衛生面はSランク。
経理面もSランク。
これ以上、何にいちゃもんをつければいいというのか。
「……私の、負けだ」
ネチネチ卿は膝をついた。
その背中は小さく、哀愁が漂っていた。
「お疲れのようですね」
私は厨房から、小皿を持って出てきた。
「よかったら、これをどうぞ」
「……これは?」
「スフレチーズケーキの失敗作です」
「失敗作?」
「はい。焼き上がりの高さが、理想より二ミリほど低くなってしまいまして。商品としては出せませんが、味は変わりません」
ネチネチ卿は、目の前に置かれたケーキを見た。
どう見ても完璧な焼き上がりだ。これで失敗作と言うなら、世の中のケーキ屋は全員廃業だ。
「……毒は?」
「入っているわけないでしょう。検査官殿」
ネチネチ卿は震える手でフォークを持ち、ケーキを口に運んだ。
シュワッ……。
口の中で、淡雪のようにケーキが解ける。
「……っ!!」
ネチネチ卿のカチカチに凝り固まった心が、その甘さと優しさで解きほぐされていく。
王子の命令に従い、人の粗探しばかりをしてきた人生。
感謝されることなどなく、いつも嫌な顔をされ、陰口を叩かれてきた。
そんな彼に、このケーキは「お疲れ様」と囁いているようだった。
「う、ううっ……」
ポロポロと、ネチネチ卿の目から涙がこぼれ落ちた。
「おいしい……。なんて優しい味なんだ……」
「お粗末様でした」
「……私は、なんて愚かなことを」
彼は涙を拭い、立ち上がった。
そして、鞄から一枚の羊皮紙を取り出した。
「これを受け取ってくれ」
「これは?」
「『王立衛生管理局認定・最優良店舗』の証書だ。……国で五店舗しか持っていない、最高ランクの証明書だ」
「まあ! ありがとうございます!」
私は喜んで受け取った。
「これを店頭に飾れば、王都のうるさい連中も黙るだろう。……素晴らしい店だ。これからも頑張ってくれ」
「はい、励みになります!」
ネチネチ卿は深くお辞儀をし、来た時とは別人のように穏やかな顔で店を出て行った。
帰り際、「またプライベートで来る。絶対にだ」と呟いていたのを、私は聞き逃さなかった。
* * *
数日後。
王太子執務室。
「ど、どういうことだぁぁぁぁッ!!」
アレクサンドル王子の絶叫が響いた。
机の上には、ネチネチ卿から提出された報告書があった。
『当該店舗ハ、衛生・経理・味、全テニオイテ国宝級デアル。手出し無用』
そして、最後の一文にはこう添えられていた。
『追伸:殿下も一度、素直になって食べに行かれることを推奨する。人生観が変わりますぞ』
「ふざけるな! なんで僕の刺客が全員、あいつの信者になって帰ってくるんだ!」
王子は報告書をビリビリに引き裂いた。
「アレク様ぁ……。衛生検査もダメだなんて、もう手詰まりですわぁ……」
ミントがため息をつく。
しかし、王子の目はまだ死んでいなかった。
むしろ、狂気の色を帯びていた。
「いいや、まだだ。……こうなったら、最後の手段だ」
「最後の手段?」
「ああ。来月行われる『建国記念晩餐会』だ」
王子はニヤリと笑った。
「各国の要人が集まるあのパーティーで、デザートを担当するパティシエを一般公募する。……そこにスイートを参加させ、公衆の面前で恥をかかせてやるのだ!」
「でも、スイート様のお菓子はおいしいですわよ? 逆に優勝しちゃうんじゃ……」
「フフフ、甘いなミント。審査員は……『全員、僕が買収した貴族』にするのだよ!」
なんというセコい作戦。
しかし、王子にとっては起死回生の一手らしい。
「スイートよ。王都の晴れ舞台にお前を引きずり出し、二度と立ち上がれないように叩き潰してやる……!」
王子の歪んだ執念は、まだ消えそうになかった。
一方その頃。
私は店に飾られた『最優良店舗』の証書を見ながら、ご機嫌で新しいメニューのポップを書いていた。
「これでお客様も増えるわね。……次は、季節限定の『桃のコンポート』に挑戦しようかしら」
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