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「ふはははは! 見たかミント! ついに手に入れたぞ!」
王都の地下深く、薄暗い隠し部屋。
アレクサンドル王子は、埃まみれの古びた書物を掲げて高笑いしていた。
「これは王家の書庫の奥底に封印されていた『禁断のグリモワール』! ここには、全てを喰らい尽くす最強の魔獣の召喚方法が記されているのだ!」
「すごいですわアレク様ぁ! その魔獣で、スイート様の建設中のテーマパークをめちゃくちゃにしてやるんですのね!」
ミントが手を叩いて喜ぶ。
「その通りだ! あの生意気な女の夢を、物理的に噛み砕いてやる!」
王子はページをめくった。
そこに描かれていたのは、不定形で、ブヨブイとした不気味な怪物の姿。
「……なんか、スライムみたいで弱そうですわね?」
「馬鹿者! これは『無限増殖型・酵母ゴーレム』だ! 攻撃を受ければ受けるほど分裂し、周囲の有機物を取り込んで巨大化する! 一度放たれれば、国一つを飲み込むまで止まらないと言われる厄災の獣だ!」
「キャーッ! 素敵! やっておしまいなさいませ!」
「よし、詠唱を始めるぞ! ……いでよ、深淵より来たる白き悪魔よ! 我が憎しみを糧に、全てを飲み込め!」
ドロドロドロ……。
魔法陣から、白く粘り気のある巨大な塊が這い出してきた。
それは不気味に脈動し、甘酸っぱい発酵臭を漂わせていた。
「成功だ……! 行け、ゴーレムよ! スイートの建設現場を地獄に変えろ!」
* * *
一方その頃。
王都の一等地、テーマパーク建設予定地。
「第三班、レンガ積みが遅いわよ! チョコレートの滝を作る土台なんだから、水平には気を使いなさい!」
「イエッサー!!」
私は現場監督として、ヘルメット(ホイップ型)を被り、図面を片手に指示を飛ばしていた。
ガナッシュ様率いる辺境騎士団は、今や完全に「熟練の建設作業員」へとクラスチェンジしていた。
彼らの怪力にかかれば、重機など不要。
素手で杭を打ち込み、大岩を運搬し、驚異的なスピードで『スイート・キングダム』の基礎を作り上げていく。
「順調だな、スイート」
ガナッシュ様が、汗を拭いながらやってきた。
その手には、差し入れの冷たいレモネードがある。
「はい。このペースなら、予定より早く『お菓子の城』が完成しそうです」
「楽しみだ。……特に、城壁をバウムクーヘンにするというアイデアは画期的だな」
私たちが平和に語らっていた、その時だった。
ズズズズズ……。
地面が揺れ、マンホールが突き破られた。
「な、なんだ!?」
地下水道から溢れ出してきたのは、白くて巨大な……何か。
それはビル三階分ほどの高さまで膨れ上がり、建設中の足場を飲み込み始めた。
「グルルルル……」
不気味な唸り声を上げ、その物体は蠢いている。
「敵襲だーッ!! 総員、戦闘態勢!」
ガナッシュ様が瞬時に剣を抜く。
騎士たちもツルハシやシャベルを構え、怪物に向かっていく。
「とりゃあぁぁぁッ!!」
騎士の一人が、怪物に斬りかかった。
ボヨヨンッ!!
「なっ!?」
剣が弾かれた。
いや、吸収されたのだ。
怪物の身体は驚くほど弾力があり、刃を通さないどころか、衝撃を吸収してさらに膨張したように見える。
「き、斬れない!? なんだこいつは!」
「物理攻撃が効かねぇぞ!」
「しかも、どんどんデカくなってやがる!」
騎士たちが後退する。
怪物は周囲の木材や資材を飲み込み、さらに巨大化していく。
「ふはははは! 無駄だ無駄だ!」
近くの建物の屋上から、王子の声が聞こえた。
「これは『酵母ゴーレム』! 貴様らの攻撃など、パン生地を捏ねる手助けにしかならんわ! さあ、絶望するがいい!」
「王子……また貴方ですか」
ガナッシュ様が忌々しげに舌打ちする。
「まずいぞ、スイート。物理が効かないとなると、魔法使いを呼ばねば……だが、手配している間に街が飲み込まれる!」
絶体絶命のピンチ。
しかし。
私はその怪物を、じっと見つめていた。
「……酵母?」
私は鼻をひくつかせた。
漂ってくるのは、豊かなイーストの香り。
そして、あの弾力。
攻撃を跳ね返すほどの、モチモチとしたグルテンの形成具合。
「(……なんて素晴らしい発酵状態なの!)」
私の目は、恐怖ではなく歓喜に輝いた。
「ガナッシュ様! 攻撃はやめてください!」
「なっ? 食われるぞ!」
「いいえ。あれは敵ではありません」
私はニヤリと笑い、ヘルメットの顎紐を締め直した。
「あれは……神が与えたもうた、特大の『パン生地』です!」
「はぁ!?」
「総員、作戦変更! 武器を捨てろ! 火炎放射器と、大量のバターを持ってこい!」
私の指示に、騎士たちは一瞬戸惑ったが、すぐに「イエッサー!」と動き出した。
「な、何をする気だ!?」
王子が狼狽える。
私は拡声器を持って叫んだ。
「よく聞きなさい、愚かなる酵母よ! 貴方は今、過発酵寸前よ! これ以上膨らんだら、酸っぱくなって美味しくなくなるわ!」
「グルッ……?」
怪物の動きが止まった気がした。
「今すぐ、最高の焼き加減にしてあげる! 騎士団、包囲陣形! 『野焼き』の準備よ!」
騎士たちが怪物の周囲を取り囲み、即席の耐火レンガを積み上げる。
あっという間に、怪物は巨大なカマドの中に閉じ込められた状態になった。
「点火ァァァァッ!!!」
ボォォォォォォッ!!!!
騎士団の魔導師部隊(火力調整担当)が一斉に炎を放つ。
カマドの中の温度が急上昇する。
「ギャァァァァッ!?」
怪物が暴れるが、レンガの壁と騎士たちの威圧感に阻まれて逃げられない。
そして何より――。
「投入! バター百キロ! ハチミツ五十キロ!」
上空から、騎士たちが大量の調味料を投下した。
熱で溶けたバターが怪物の身体に染み込み、ハチミツが表面をコーティングする。
ジュワァァァァ……!
香ばしい香りが、王都中に広がった。
それは、朝のパン屋の前を通った時のような、誰もが幸せになる香り。
怪物の悲鳴は、いつしか「美味しく焼ける音」へと変わっていた。
「な、なんだこれは……! 僕の最強の魔獣が……ただの巨大なパンになっていく……!?」
王子が頭を抱える。
数十分後。
「……焼き上がり!」
火が消されると、そこには。
家一軒分はある、巨大な、黄金色に輝く、フワッフワの山型食パン(ハニートースト仕様)が鎮座していた。
「うまそぉぉぉぉッ!!!」
騎士たちが涎を垂らして絶叫する。
「さあ、みなさん! 建設作業の休憩よ! 焼きたてを召し上がれ!」
私の合図で、騎士たちが一斉に巨大パンに飛びかかった。
「いただきまーす!!」
ガブッ! ムシャァ!
「熱っ! でもうめぇ!」
「中がモチモチだ! バターが染みてて最高だ!」
「こいつ、攻撃を吸収してた分、コシが強くて噛みごたえ抜群だぜ!」
数百人の男たちが、あっという間に魔獣を解体(完食)していく。
私も一切れちぎって食べた。
「ん~っ! 天然酵母の力強い風味! 王子にしては良い仕事をしたわね」
私は屋上の王子に向かってサムズアップした。
「ごちそうさまでした、殿下! おかげで食費が浮きました!」
「う、嘘だ……。僕の禁断の魔法が……おやつの足しにされた……」
王子はガクガクと震え、そして白目を剥いて気絶した。
「アレク様ぁ! しっかりしてくださいましぃ!」
ミントが引きずって連れ帰っていく。
「ふう、満腹だ」
ガナッシュ様が、パン屑を口元につけたまま満足げに腹をさすった。
「しかしスイートよ。……魔獣すら食材に変えるとは。貴殿の食欲は、ある意味で魔獣より恐ろしいな」
「あら、褒め言葉として受け取っておきます」
私は笑った。
「さあ、お腹も満たされたことですし、午後の作業に戻りましょう! 目指せ、来月オープン!」
トラブルさえも糧(文字通り)にして、私の『スイート・キングダム』建設は順調に進んでいく。
だが、完成が近づくにつれ、今度は「テーマパークのキャスト(従業員)」不足という、新たな問題が浮上しようとしていた。
こんなムキムキの騎士たちに、可愛い着ぐるみを着せるわけにはいかないのだから――。
王都の地下深く、薄暗い隠し部屋。
アレクサンドル王子は、埃まみれの古びた書物を掲げて高笑いしていた。
「これは王家の書庫の奥底に封印されていた『禁断のグリモワール』! ここには、全てを喰らい尽くす最強の魔獣の召喚方法が記されているのだ!」
「すごいですわアレク様ぁ! その魔獣で、スイート様の建設中のテーマパークをめちゃくちゃにしてやるんですのね!」
ミントが手を叩いて喜ぶ。
「その通りだ! あの生意気な女の夢を、物理的に噛み砕いてやる!」
王子はページをめくった。
そこに描かれていたのは、不定形で、ブヨブイとした不気味な怪物の姿。
「……なんか、スライムみたいで弱そうですわね?」
「馬鹿者! これは『無限増殖型・酵母ゴーレム』だ! 攻撃を受ければ受けるほど分裂し、周囲の有機物を取り込んで巨大化する! 一度放たれれば、国一つを飲み込むまで止まらないと言われる厄災の獣だ!」
「キャーッ! 素敵! やっておしまいなさいませ!」
「よし、詠唱を始めるぞ! ……いでよ、深淵より来たる白き悪魔よ! 我が憎しみを糧に、全てを飲み込め!」
ドロドロドロ……。
魔法陣から、白く粘り気のある巨大な塊が這い出してきた。
それは不気味に脈動し、甘酸っぱい発酵臭を漂わせていた。
「成功だ……! 行け、ゴーレムよ! スイートの建設現場を地獄に変えろ!」
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一方その頃。
王都の一等地、テーマパーク建設予定地。
「第三班、レンガ積みが遅いわよ! チョコレートの滝を作る土台なんだから、水平には気を使いなさい!」
「イエッサー!!」
私は現場監督として、ヘルメット(ホイップ型)を被り、図面を片手に指示を飛ばしていた。
ガナッシュ様率いる辺境騎士団は、今や完全に「熟練の建設作業員」へとクラスチェンジしていた。
彼らの怪力にかかれば、重機など不要。
素手で杭を打ち込み、大岩を運搬し、驚異的なスピードで『スイート・キングダム』の基礎を作り上げていく。
「順調だな、スイート」
ガナッシュ様が、汗を拭いながらやってきた。
その手には、差し入れの冷たいレモネードがある。
「はい。このペースなら、予定より早く『お菓子の城』が完成しそうです」
「楽しみだ。……特に、城壁をバウムクーヘンにするというアイデアは画期的だな」
私たちが平和に語らっていた、その時だった。
ズズズズズ……。
地面が揺れ、マンホールが突き破られた。
「な、なんだ!?」
地下水道から溢れ出してきたのは、白くて巨大な……何か。
それはビル三階分ほどの高さまで膨れ上がり、建設中の足場を飲み込み始めた。
「グルルルル……」
不気味な唸り声を上げ、その物体は蠢いている。
「敵襲だーッ!! 総員、戦闘態勢!」
ガナッシュ様が瞬時に剣を抜く。
騎士たちもツルハシやシャベルを構え、怪物に向かっていく。
「とりゃあぁぁぁッ!!」
騎士の一人が、怪物に斬りかかった。
ボヨヨンッ!!
「なっ!?」
剣が弾かれた。
いや、吸収されたのだ。
怪物の身体は驚くほど弾力があり、刃を通さないどころか、衝撃を吸収してさらに膨張したように見える。
「き、斬れない!? なんだこいつは!」
「物理攻撃が効かねぇぞ!」
「しかも、どんどんデカくなってやがる!」
騎士たちが後退する。
怪物は周囲の木材や資材を飲み込み、さらに巨大化していく。
「ふはははは! 無駄だ無駄だ!」
近くの建物の屋上から、王子の声が聞こえた。
「これは『酵母ゴーレム』! 貴様らの攻撃など、パン生地を捏ねる手助けにしかならんわ! さあ、絶望するがいい!」
「王子……また貴方ですか」
ガナッシュ様が忌々しげに舌打ちする。
「まずいぞ、スイート。物理が効かないとなると、魔法使いを呼ばねば……だが、手配している間に街が飲み込まれる!」
絶体絶命のピンチ。
しかし。
私はその怪物を、じっと見つめていた。
「……酵母?」
私は鼻をひくつかせた。
漂ってくるのは、豊かなイーストの香り。
そして、あの弾力。
攻撃を跳ね返すほどの、モチモチとしたグルテンの形成具合。
「(……なんて素晴らしい発酵状態なの!)」
私の目は、恐怖ではなく歓喜に輝いた。
「ガナッシュ様! 攻撃はやめてください!」
「なっ? 食われるぞ!」
「いいえ。あれは敵ではありません」
私はニヤリと笑い、ヘルメットの顎紐を締め直した。
「あれは……神が与えたもうた、特大の『パン生地』です!」
「はぁ!?」
「総員、作戦変更! 武器を捨てろ! 火炎放射器と、大量のバターを持ってこい!」
私の指示に、騎士たちは一瞬戸惑ったが、すぐに「イエッサー!」と動き出した。
「な、何をする気だ!?」
王子が狼狽える。
私は拡声器を持って叫んだ。
「よく聞きなさい、愚かなる酵母よ! 貴方は今、過発酵寸前よ! これ以上膨らんだら、酸っぱくなって美味しくなくなるわ!」
「グルッ……?」
怪物の動きが止まった気がした。
「今すぐ、最高の焼き加減にしてあげる! 騎士団、包囲陣形! 『野焼き』の準備よ!」
騎士たちが怪物の周囲を取り囲み、即席の耐火レンガを積み上げる。
あっという間に、怪物は巨大なカマドの中に閉じ込められた状態になった。
「点火ァァァァッ!!!」
ボォォォォォォッ!!!!
騎士団の魔導師部隊(火力調整担当)が一斉に炎を放つ。
カマドの中の温度が急上昇する。
「ギャァァァァッ!?」
怪物が暴れるが、レンガの壁と騎士たちの威圧感に阻まれて逃げられない。
そして何より――。
「投入! バター百キロ! ハチミツ五十キロ!」
上空から、騎士たちが大量の調味料を投下した。
熱で溶けたバターが怪物の身体に染み込み、ハチミツが表面をコーティングする。
ジュワァァァァ……!
香ばしい香りが、王都中に広がった。
それは、朝のパン屋の前を通った時のような、誰もが幸せになる香り。
怪物の悲鳴は、いつしか「美味しく焼ける音」へと変わっていた。
「な、なんだこれは……! 僕の最強の魔獣が……ただの巨大なパンになっていく……!?」
王子が頭を抱える。
数十分後。
「……焼き上がり!」
火が消されると、そこには。
家一軒分はある、巨大な、黄金色に輝く、フワッフワの山型食パン(ハニートースト仕様)が鎮座していた。
「うまそぉぉぉぉッ!!!」
騎士たちが涎を垂らして絶叫する。
「さあ、みなさん! 建設作業の休憩よ! 焼きたてを召し上がれ!」
私の合図で、騎士たちが一斉に巨大パンに飛びかかった。
「いただきまーす!!」
ガブッ! ムシャァ!
「熱っ! でもうめぇ!」
「中がモチモチだ! バターが染みてて最高だ!」
「こいつ、攻撃を吸収してた分、コシが強くて噛みごたえ抜群だぜ!」
数百人の男たちが、あっという間に魔獣を解体(完食)していく。
私も一切れちぎって食べた。
「ん~っ! 天然酵母の力強い風味! 王子にしては良い仕事をしたわね」
私は屋上の王子に向かってサムズアップした。
「ごちそうさまでした、殿下! おかげで食費が浮きました!」
「う、嘘だ……。僕の禁断の魔法が……おやつの足しにされた……」
王子はガクガクと震え、そして白目を剥いて気絶した。
「アレク様ぁ! しっかりしてくださいましぃ!」
ミントが引きずって連れ帰っていく。
「ふう、満腹だ」
ガナッシュ様が、パン屑を口元につけたまま満足げに腹をさすった。
「しかしスイートよ。……魔獣すら食材に変えるとは。貴殿の食欲は、ある意味で魔獣より恐ろしいな」
「あら、褒め言葉として受け取っておきます」
私は笑った。
「さあ、お腹も満たされたことですし、午後の作業に戻りましょう! 目指せ、来月オープン!」
トラブルさえも糧(文字通り)にして、私の『スイート・キングダム』建設は順調に進んでいく。
だが、完成が近づくにつれ、今度は「テーマパークのキャスト(従業員)」不足という、新たな問題が浮上しようとしていた。
こんなムキムキの騎士たちに、可愛い着ぐるみを着せるわけにはいかないのだから――。
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