2 / 3
後編
しおりを挟む「は? え、この、屋敷を…??」
「いやはや孫の事もありますのでね、こちらとしても子爵様とは今後ともよろしくお願いしたいところです。しかし驚きましたよ、婿入りしておきながら愛人を囲うとは。しかも、その費用をご自身では一切用意せず、うちの娘に費用を出させていたばかりか、たった五年でその合計金額がこの屋敷を土地ごと購入してもまだ足りぬほどの額になっているとは!」
「え…?」
子爵様の説明にプラスして、アドルフに追い打ちをかける父。愛人云々は同じ男として大目をみれても、私がしっかり残しておいた愛人費用の明細書を見て大激怒していたので当然だろう。私も五年の結婚生活で感覚がマヒしていたな、と改めて思い直したものだ。妻であった私をお金としか認識していない様子のアドルフには苛立っていたので、この際私も追撃しよう。
「今まで、貴方の愛人費用は私の個人的な資産から費用を出しておりました。離縁となった今、その分を返金して頂くのは当然でしょう?」
「はぁ?! そんなの聞いていないぞ!」
「では、どこから費用を出すおつもりでしたか? 何度かお尋ねしましたが、貴方はお前が出しておけ、とおっしゃるばかりで碌な返答がございませんでしたわ」
そもそもアドルフの個人資産はとっくに愛人へのプレゼントで消えており、働いていないので新たな資金が発生することもない。それで本当にどこから費用を出せと言うのか。
「それは…ほら、君の実家からの」
「先に言っておきますが、娘に送っていた金はこの屋敷の運営費用と生活費であり、元婿殿の愛人用のお金なんて一切、含まれていませんよ」
「生活費から、ある程度は『夫のお小遣い』として持たせましたが、すぐに足りないと催促されますので、結局、ほとんど私が出すしかなかったのですわ。貴方が父の元で働くなりしていれば、その給料から出すつもりでしたが、そのような事もありませんでしたしね。まさか、婿入りするだけで私の実家のお金を好きに出来ると考えていた訳ではないでしょう?」
「~っ! 貴族でもない癖に! 平民の妻の実家のお金くらい、僕が自由にしたっていいだろう?!」
何言ってんだコイツ。
きっと部屋に居るアドルフ以外が同じ事を思っただろう。平民だろうが貴族だろうが、妻の資産は本人の同意と手続きがあれば、夫婦の共有財産として扱えるが、妻の実家の資産に関しては現家長または現当主のモノだ。更には父の後継ぎは、私が産んだ子供と決まっている。アドルフが家長となることはあり得ないのだ。そのことは、結婚前から取り決められていた。だからこそ、アドルフが遊び暮らすことを容認されていたのだから。
「…これ以上は、時間の無駄だな。…連れて行け」
「?! 待って、待ってください、父上! 僕は!」
今度こそ、アドルフは外へと連れて行かれ、しばらくその声が響いていたが、それも聞こえなくなった頃、改めて返金の手続きを行う。これで、この屋敷と土地は私と我が子のモノ。屋敷内にある家具も使用人も全部こちらで引き取るので、明日以降もこのまま暮らして行くことになるだろう。
出て行けと言われても、その必要は一切ないのだから。
701
あなたにおすすめの小説
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ある愚かな婚約破棄の結末
オレンジ方解石
恋愛
セドリック王子から婚約破棄を宣言されたアデライド。
王子の愚かさに頭を抱えるが、周囲は一斉に「アデライドが悪い」と王子の味方をして…………。
※一応ジャンルを『恋愛』に設定してありますが、甘さ控えめです。
〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。
幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。
しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。
それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。
母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。
そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。
そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。
不治の病の私とは離縁すると不倫真っ最中の夫が言ってきました。慰謝料、きっちりいただきますね?
カッパ
恋愛
不治の病が発覚した途端、夫であるラシュー侯爵が離縁を告げてきました。
元々冷え切っていた夫婦関係です、異存はありません。
ですが私はあなたの不貞を知っておりますので、ちゃあんと慰謝料はきっちり支払っていただきますね?
それから・・・わたしの私物も勿論持っていきますから。
花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果
藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」
結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。
アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。
※ 他サイトにも投稿しています。
他の女にうつつを抜かす夫は捨てます
りんごあめ
恋愛
幼いころから婚約者同士だったメアリーとダン
幼少期を共にし、ついに結婚した
二人の間に愛が芽生えることはなかったが、せめて気の置ける夫婦になれたらと思っていた
最初は上手くやっていた二人だったが、二人の間を引き裂くようにあらわれた女によってメアリーとダンの関係は壊れていく
すっかり冷たくなったダンに、私に情なんてないのね
メアリーの心はどんどん冷えていく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる