婚約者に浮気され、婚約破棄するしかなかった僕の話

もふっとしたクリームパン

文字の大きさ
4 / 34

4、彼女の評価

しおりを挟む
 ――そこで目が覚めた。まだ日も昇っていないのか、部屋の中は暗かった。
 ぼんやりしながら夢の内容を思い出す。…僕に婚約の打診が来たのは、その次の月の事だったな。
 相手はもちろん、ルル・キャメル。僕さえ良ければ受けるという両親。その当時の僕には色々あって、すぐには返答出来なかったけれど。結局僕は、散々悩んだ末に受け入れる事にした。

 最初は、僕とは合わない子かもしれないと思ってた。何事にも真面目に取り組むライラと違い、ルルは我儘で好きな事しかしない子だったから。僕の方が年上ではあったけど、いつも僕はルルの我儘に振り回されていた。
 …では、今は? 

 寝返りを打つ。
 止めよう、考えるだけ空しくなるし、まだ起きる時間じゃないからもうひと眠りしよう……そう思うのに、思考は止まらない。

 ――僕の脳裏で、くるくると見知らぬ男性と踊るルルの姿が映る。

 僕としては本当に、破棄でなく、せめて解消にしたかったのに何でこうなったんだろう。
 男性側よりも、婚約破棄の申請をされた女性は傷物扱いされて遠ざけられる事が多い。解消ならば、家の立場にもよるが多少気を遣われるぐらいで済むはずなのだ。家の名にも傷はつかないし、友人二人の事もあるが、ルルの事だってまだ十八で高等学園を卒業したてで、彼女のこれからを考えればせめて…。それなのに、何で。

 ――ルルが誰かと話してる。カーテンの陰に隠れてそっと、重なる影。

 あぁもう! すでに原因は分かっている、分かっているはずだろ、僕。
 原因はルル自身にあるのだ。あの夜会の事もそうだが、それだけではない。十八歳で高等学園を卒業したばかりのはずの、ルル・キャメルの社交界での評価は社交デビュー以降すでに最悪だったのだから。

 いわく、見た目の良い男なら誰でもいい尻軽。
 いわく、欲しいモノがあれば何でも欲しがる我儘娘。
 いわく、婚約しているのに不要に異性に密着する淫らな女。

 始めは噂だったのに、ルルの無防備な行動で噂が周知されていき、他にも貴族の娘として致命的な評価はたくさんある。そんな相手に対して婚約の解消にするとバーナー伯爵家側ぼくにも何か問題があったと勘ぐられてしまう。ははは、婚約者の悪評が酷過ぎて、解消に出来ないなんてどんな笑い話だ。
 伯爵家としての面目がある以上、破棄を選ぶしかないのは分かっていた。頭では理解していた…僕の心が納得していなかっただけで。それでも、悪あがきのようにルルに最後の機会をと頼んだのは他でもないこの僕で、今日で最後にすると決めたのも僕自身。

 ――少しでも、僕の言葉がルルに届いて欲しい、…届いていれば。

 何度もそう思った。でも、もう僕にはどうしようもなかった。これまでもルルには何度も注意していた。理解してほしいとお願いしたし、理由だって何度も説明した。それなのに、最後の結果けつまつが昨日の夜会だったのだ。
 あの夜会には、王家派の侯爵家や公爵家などの高位貴族の子息も参加していた。もしかしたら王族も隠れて参加していたかもしれない。そんな場で、婚約者である僕中立派を置いて、の子息達と好き勝手に踊る彼女の姿がどう映るか…。

 王家派は王家を中心として国を治める事を理想とする派。貴族派は高位貴族が中心となって国を導く事を理想とする派。中立派は王家と貴族共に国を支え合っていく事を理想とする派。これが、わが国にある三つの派閥で、互いに敵対している訳ではないものの、権威争いの一環として足の引っ張り合いや嫌がらせくらいはよくある事だ。
 現在、新興若い貴族を中心に勢いを付けている貴族派を牽制する為に、特に中立派との繋がりを求めている王家派にとって、貴族派にいいように遊ばれているルルは、最悪な印象しか残していないだろう。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」 仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。

騎士団長を追放した平和ボケ王国は、七日で滅びました

藤原遊
ファンタジー
長らく戦のなかった王国で、 騎士団長の父を病で失った令嬢は、その座を引き継いだ。 だが王城に呼び出された彼女に告げられたのは、 騎士団の解体と婚約破棄。 理由はただ一つ―― 「武力を持つ者は危険だから」。 平和ボケした王子は、 非力で可愛い令嬢を侍らせ、 彼女を“国の火種”として国外追放する。 しかし王国が攻められなかった本当の理由は、 騎士団長家が持つ“戦況を覆す力”への恐れだった。 追放された令嬢は、即座に隣国帝国へ迎えられ、 軍人として正当に評価され、安泰な地位を得る。 ――そして一週間後。 守りを捨てた王国は、あっけなく陥落した。 これは、 「守る力」を理解しなかった国の末路と、 追放された騎士団長令嬢のその後の物語。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

貴方に側室を決める権利はございません

章槻雅希
ファンタジー
婚約者がいきなり『側室を迎える』と言い出しました。まだ、結婚もしていないのに。そしてよくよく聞いてみると、婚約者は根本的な勘違いをしているようです。あなたに側室を決める権利はありませんし、迎える権利もございません。 思い付きによるショートショート。 国の背景やらの設定はふんわり。なんちゃって近世ヨーロッパ風な異世界。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿。

幸せな婚約破棄 ~どうぞ妹と添い遂げて~

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を宣言された私。彼の横には、何故か妹が。 私……あなたと婚約なんてしていませんけど?

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...