10 / 34
10、僕の恋愛運
しおりを挟む「…そういや、お前の初恋はライラだもんな、…何か悪いな」
「は?! なんで知って?!」
突然の発言に、僕の心臓が止まるかと思った。だって、僕の初恋の話は誰にも打ち明けていない。親は勿論、ライにだって一言も漏らしていなかったのに気付かれていたなんて。
「俺とライラは王家派の繋がりを重視しての婚約で結婚だから、同士のような関係だけど。さっきも言ったろ、お見通しだって。ルーがライラを見ていた事は、一番近くにいた俺が分かることさ」
「ライラは…」
「知らない。お前の事をライバルだと思ってそれを誇りにしてるからな」
その言葉に僕は苦笑した。僕がライラの恋愛対象に入っていない事は、始めから知っていた事だから。
「…確かにライラは僕の初恋相手だよ。でも、今は友人として見てるし、これからもそうだ」
「きっかけとかあるのか?」
「すごく些細な事さ。同じクラスになって、初めて会った時に。僕の目を見て『素敵な目の色をしているのね』って、ライラはそう言ってくれたんだ」
たったそれだけだ。それだけで僕は生まれて初めて恋に落ちた。恋は一瞬だと聞いていたけれど、まさにそう。
「不思議なことにルル伯爵令嬢も、初対面で同じ事を言ってくれたんだ。姉妹ってそんな所も似るのかと驚いたな」
出会った当初からライラは次期当主としてすでに教育を受けており、十三歳の時に婿入りするライと婚約した。ライラは始めから嫁入りが出来ない相手だったのだから、僕の恋が叶う相手じゃない、恋に落ちた瞬間に失恋決定した。仕方がない事だと分かっていた。でも心の中ではなかなか諦めきれずにいた。そんな時に、ルル伯爵令嬢と出会い、彼女との婚約話が持ち上がったのだ。
悩んで悩んで、結局婚約を受け入れたけれど、始めはライラに似た所を探してたと思う。けど、性格とか全然似てなくて。でもそれが、ルル・キャメルという子であり、姉妹ではあっても別人だと僕に理解させてくれた。そうしたら、彼女の事が可愛く見えてきた。元々可愛い子だったけど、こう、他の子より断然可愛く見えるというか。
「僕はルル伯爵令嬢の婚約者になって、後悔してないよ。最初は振り回されてて困ってたけど、彼女の笑顔を見たらこれで良かったんだって思えてたし、結婚したならもっと笑顔になれるよう幸せにしようって思ってたから」
「…そっか、ルルの事、本気で好きだったんだな」
「…うん。好き、だった」
段々、僕を相手にする事に飽きてきたんだなって気付いていたけど、それでも彼女の隣に居たいって思うほどには。可愛い彼女を囲む男性陣に心の奥で嫉妬するくらいには。婚約者の座を手放したくないと思うほどには、好きで、好きで……きっと、愛していたのだ。
「…僕って、恋愛運、ないね…」
勝手に涙が溢れてくる。あの日の夜とは違って人前で本気で泣くのは、貴族としては失格かもしれないけれど。もう僕自身では止められそうになかった。
「そうかもな」
ライはそっと僕の隣に移って、布巾を渡してくれた。
「………これ、さっき、零したお酒、拭いた、ヤツ」
「おっと、すまん」
この日の夜は、泣いて笑って、泣いて泣いて、酒を呑んではまた泣いて。あっという間に朝になってて朝日が目に染みたけれど、僕の涙はすでに止まってた。
ライラに恋した事、ルル伯爵令嬢を愛した事、どちらにも失恋し愛を失った事になるけど僕にとって大事な思い出だ。まだ時々胸が痛むが、今日から僕は前へ進んでいける。酒臭い部屋で窓から朝日を眺めながら、そんな確信を抱いた。
103
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
騎士団長を追放した平和ボケ王国は、七日で滅びました
藤原遊
ファンタジー
長らく戦のなかった王国で、
騎士団長の父を病で失った令嬢は、その座を引き継いだ。
だが王城に呼び出された彼女に告げられたのは、
騎士団の解体と婚約破棄。
理由はただ一つ――
「武力を持つ者は危険だから」。
平和ボケした王子は、
非力で可愛い令嬢を侍らせ、
彼女を“国の火種”として国外追放する。
しかし王国が攻められなかった本当の理由は、
騎士団長家が持つ“戦況を覆す力”への恐れだった。
追放された令嬢は、即座に隣国帝国へ迎えられ、
軍人として正当に評価され、安泰な地位を得る。
――そして一週間後。
守りを捨てた王国は、あっけなく陥落した。
これは、
「守る力」を理解しなかった国の末路と、
追放された騎士団長令嬢のその後の物語。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
貴方に側室を決める権利はございません
章槻雅希
ファンタジー
婚約者がいきなり『側室を迎える』と言い出しました。まだ、結婚もしていないのに。そしてよくよく聞いてみると、婚約者は根本的な勘違いをしているようです。あなたに側室を決める権利はありませんし、迎える権利もございません。
思い付きによるショートショート。
国の背景やらの設定はふんわり。なんちゃって近世ヨーロッパ風な異世界。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿。
平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました
Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。
伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。
理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。
これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※短編です。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4800文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる