12 / 34
12、話の真意
しおりを挟む
「えっと…え? あの、申し訳ありませんが、もう一度お聞きしてもよろしいですか?」
「つまりね、ルルが君に会いたいと言って、一人で騒いでいるのだよ」
聞き間違いを疑ったが、そうじゃなかったみたいだ。…どういう事だろうか。もう一度、先程キャメル伯爵が話していた情報を思い浮かべてみる。
『ルルの移送が来週に決まった』、これはいい、大丈夫だ。思ってより時間かかったんだな、とは思うがちゃんと理解できる。
『ルルが、君に会うまで動かない、会えなければ今すぐ死んでやると騒ぎ、どうにも手を焼いている』……んん? 正直言って、意味が分からない。いや言葉の意味は理解するが、あの彼女が、僕に、会いたいって? 会わなければ死ぬ?? え、何で? 何のために??
僕は混乱した。ルル伯爵令嬢が騒いでまで僕に会いたがるなんて、婚約者であった時期でさえなかったのだ。本気で死ぬつもりは皆無だろうけど、今更、僕に何の用があるのだろうか…。
「まぁ、普通に考えて困るわよね。今更会いたいと騒ぐだなんて…恥知らずもいいところだわ。オマケに死んでやると言いつつ、食事は普段通りしっかり食べているようですし」
「デザートに甘いケーキを出せとの要求もあるくらい本人は元気だからな。狂言であることは確かだが、移送中に暴れられても従者達が困るからね。このまま放置して大人しくしない場合は、睡眠薬で眠らせて強制的に移送する予定だった……が」
キャメル伯爵と夫人の視線がライラに向かう。視線を集めたライラは軽く頷くと口を開いた。
「私が一度ルーベンの意見も聞くべきだと、貴方に連絡を取る事を提案したの」
「僕の意見を?」
もしかしてバーナー伯爵家としてルル伯爵令嬢の移送方法について、意見を求められているのだろうか。だが、キャメル伯爵家とは婚約破棄による賠償金もとっくに支払われていて、バーナー伯爵家はキャメル伯爵家とはもう関わる気が無いのだ。関わりがあるのは個人的にライラとライの友人である僕だけだが、両家の間に遺恨を残すような個人的事情を挟む気は無い。なので、我が家としてはルル伯爵令嬢の事に関しては、全てキャメル伯爵家の裁量に任す形で終わっている。
一応、そう伝えてみたが、そうではないと言われた。
「もうあの子の我儘を聞くつもりは私にも無いわ。だから会って欲しい訳ではないの。むしろ、会わなくていいとさえ思ってる。でもね、ルーベンにとって本当にそれでいいのかなって思うと…」
「難しく考えなくていいんだ。家の為でもアレの為でもなくて、ルーの為に会う選択肢があってもいいんじゃないかって事さ。破棄の手続きの時も一切会ってなかったんだろ? ルーの心残りにならないように、会ってしっかり決別した方がルーの為になるんじゃないか…俺とライラはそう思ったから、一度ルー自身に聞いてみようって話になったんだ」
「二人とも…」
大事な友人二人の優しい想いに、僕の胸はジンとした。正直に言えば彼女への想いはもう僕の内から消えたと思っているけど、本人との別れの言葉もなくこのまま会わずに終わるのは違うのかもしれない。今は良くても、いつか過去を振り返る時に後悔がないように、その機会を二人が…いや、キャメル伯爵家が提供してくれたのだ。
「当然だが、面会するのが嫌なら断ってくれて構わない。あの子の我儘を叶える義理も義務もすでに、当家にはないのでね」
次いで言われたキャメル伯爵の言葉で、今回の話の意味を全部理解した。現時点ですでに、彼女は貴族籍から除名されているのだろう。伯爵令嬢ではなくなったルルがどれだけ騒ごうが移送する事も決定事項。睡眠薬での移送も本気なのだ。
つまりルルの会いたい云々の騒ぎは建前に過ぎず、本当にこの話は僕の為だけに用意されたモノ。ライラとライの意見もあっただろうけど、もしかしたら僕にとって義理の両親となったはずのキャメル伯爵夫妻も同じ考えだったのかもしれない。ルルと婚約者だった間も、破棄の手続きの時も、キャメル伯爵夫妻は僕の事を良く気遣ってくれていたから。
返事は早い方がいい。僕はいくつか確認したい事を尋ね納得すると、ルルに会う事を決めた。
「つまりね、ルルが君に会いたいと言って、一人で騒いでいるのだよ」
聞き間違いを疑ったが、そうじゃなかったみたいだ。…どういう事だろうか。もう一度、先程キャメル伯爵が話していた情報を思い浮かべてみる。
『ルルの移送が来週に決まった』、これはいい、大丈夫だ。思ってより時間かかったんだな、とは思うがちゃんと理解できる。
『ルルが、君に会うまで動かない、会えなければ今すぐ死んでやると騒ぎ、どうにも手を焼いている』……んん? 正直言って、意味が分からない。いや言葉の意味は理解するが、あの彼女が、僕に、会いたいって? 会わなければ死ぬ?? え、何で? 何のために??
僕は混乱した。ルル伯爵令嬢が騒いでまで僕に会いたがるなんて、婚約者であった時期でさえなかったのだ。本気で死ぬつもりは皆無だろうけど、今更、僕に何の用があるのだろうか…。
「まぁ、普通に考えて困るわよね。今更会いたいと騒ぐだなんて…恥知らずもいいところだわ。オマケに死んでやると言いつつ、食事は普段通りしっかり食べているようですし」
「デザートに甘いケーキを出せとの要求もあるくらい本人は元気だからな。狂言であることは確かだが、移送中に暴れられても従者達が困るからね。このまま放置して大人しくしない場合は、睡眠薬で眠らせて強制的に移送する予定だった……が」
キャメル伯爵と夫人の視線がライラに向かう。視線を集めたライラは軽く頷くと口を開いた。
「私が一度ルーベンの意見も聞くべきだと、貴方に連絡を取る事を提案したの」
「僕の意見を?」
もしかしてバーナー伯爵家としてルル伯爵令嬢の移送方法について、意見を求められているのだろうか。だが、キャメル伯爵家とは婚約破棄による賠償金もとっくに支払われていて、バーナー伯爵家はキャメル伯爵家とはもう関わる気が無いのだ。関わりがあるのは個人的にライラとライの友人である僕だけだが、両家の間に遺恨を残すような個人的事情を挟む気は無い。なので、我が家としてはルル伯爵令嬢の事に関しては、全てキャメル伯爵家の裁量に任す形で終わっている。
一応、そう伝えてみたが、そうではないと言われた。
「もうあの子の我儘を聞くつもりは私にも無いわ。だから会って欲しい訳ではないの。むしろ、会わなくていいとさえ思ってる。でもね、ルーベンにとって本当にそれでいいのかなって思うと…」
「難しく考えなくていいんだ。家の為でもアレの為でもなくて、ルーの為に会う選択肢があってもいいんじゃないかって事さ。破棄の手続きの時も一切会ってなかったんだろ? ルーの心残りにならないように、会ってしっかり決別した方がルーの為になるんじゃないか…俺とライラはそう思ったから、一度ルー自身に聞いてみようって話になったんだ」
「二人とも…」
大事な友人二人の優しい想いに、僕の胸はジンとした。正直に言えば彼女への想いはもう僕の内から消えたと思っているけど、本人との別れの言葉もなくこのまま会わずに終わるのは違うのかもしれない。今は良くても、いつか過去を振り返る時に後悔がないように、その機会を二人が…いや、キャメル伯爵家が提供してくれたのだ。
「当然だが、面会するのが嫌なら断ってくれて構わない。あの子の我儘を叶える義理も義務もすでに、当家にはないのでね」
次いで言われたキャメル伯爵の言葉で、今回の話の意味を全部理解した。現時点ですでに、彼女は貴族籍から除名されているのだろう。伯爵令嬢ではなくなったルルがどれだけ騒ごうが移送する事も決定事項。睡眠薬での移送も本気なのだ。
つまりルルの会いたい云々の騒ぎは建前に過ぎず、本当にこの話は僕の為だけに用意されたモノ。ライラとライの意見もあっただろうけど、もしかしたら僕にとって義理の両親となったはずのキャメル伯爵夫妻も同じ考えだったのかもしれない。ルルと婚約者だった間も、破棄の手続きの時も、キャメル伯爵夫妻は僕の事を良く気遣ってくれていたから。
返事は早い方がいい。僕はいくつか確認したい事を尋ね納得すると、ルルに会う事を決めた。
90
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
騎士団長を追放した平和ボケ王国は、七日で滅びました
藤原遊
ファンタジー
長らく戦のなかった王国で、
騎士団長の父を病で失った令嬢は、その座を引き継いだ。
だが王城に呼び出された彼女に告げられたのは、
騎士団の解体と婚約破棄。
理由はただ一つ――
「武力を持つ者は危険だから」。
平和ボケした王子は、
非力で可愛い令嬢を侍らせ、
彼女を“国の火種”として国外追放する。
しかし王国が攻められなかった本当の理由は、
騎士団長家が持つ“戦況を覆す力”への恐れだった。
追放された令嬢は、即座に隣国帝国へ迎えられ、
軍人として正当に評価され、安泰な地位を得る。
――そして一週間後。
守りを捨てた王国は、あっけなく陥落した。
これは、
「守る力」を理解しなかった国の末路と、
追放された騎士団長令嬢のその後の物語。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました
Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。
伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。
理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。
これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。
貴方に側室を決める権利はございません
章槻雅希
ファンタジー
婚約者がいきなり『側室を迎える』と言い出しました。まだ、結婚もしていないのに。そしてよくよく聞いてみると、婚約者は根本的な勘違いをしているようです。あなたに側室を決める権利はありませんし、迎える権利もございません。
思い付きによるショートショート。
国の背景やらの設定はふんわり。なんちゃって近世ヨーロッパ風な異世界。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※短編です。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4800文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる