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20、国王陛下の祝福
しおりを挟む「…は? え? こくおう、へいか…?」
彼女は先程自身の事を誰より高貴等と口走っていたが、流石に最高権力者の存在は無視出来ないようだ。彼女の顔色はすっかり悪くなり、視線も盛大に泳ぎ出す。
「ほら、貴族籍について何度も説明されたんだろう? キャメル伯爵は嘘でも冗談でもなく、君を貴族籍から正式に除名した」
「う、嘘よ! お祖父様がそれを許すなんてあり得ないでしょう?!」
「除名処分には現当主であるキャメル伯爵の許可があれば出来るんだ。当然、王宮への申請とそれに伴う審査はあるけどな。必要なのは現当主の許可であって、君が期待していただろう前キャメル伯爵のお祖父様の許可など一切必要ない。申請も審査も問題なく通ったその結果、キャメル伯爵家で『ルル・キャメル』という子は生まれておらず、キャメル伯爵家は一人娘のライラ嬢しかいない事になり、その事実を国中の貴族が参加した先日のパーティーで国王陛下がお認めになられたという訳さ」
僕も見ていたが、キャメル伯爵夫妻が国王陛下へ挨拶に向かったところ、もうすぐ執り行われるキャメル伯爵家の一人娘であるライラの結婚を目出度き事と祝して下さったのだ。これは確実にアンドレア侯爵の手配によるものだろうけど、それでも公共の場で国王陛下が『一人娘』と口にされたのだ。その瞬間『ルル・キャメル』の存在は完全に無となった。
派閥はあれど、王政である我が国において国王陛下の権威は、未だ揺ぎ無いものだ。その言葉の重みは推して知るべし。
「さて、そうなると今、僕の目の前に居る、女性は誰だろうなぁ? そう言えば貴族では無い国民の事を一般的に『平民』と呼ぶんだけど、君は知ってたかい?」
「――?! へ、いみん? まさか…この私がそうとでも?」
「うん。貴族で無い今の君はただのルル、平民のルルだ」
否定を求めてだろう問いに僕が思いっきり肯定すれば、彼女は目を見開いて動かなくなった。これでようやく今の立場を理解してくれたならいいのだが……普通とは大きく異なる彼女の思考能力では、正直言って不安しかない。
やがて瞬きをし、ゆるりと動き出した彼女は自分の喉元に手を当て後ろを振り返る。
「………ねぇ、そこのアナタ、お茶を淹れて来なさい。私、喉が渇いたわ」
唐突な指示出し。彼女の視線の先に立つ従者はその場から動かない。女性の従者は彼女の後ろに配置した一人だけだから、他の従者よりは命じやすいと判断したのだろうが、従者の主人は僕なのだ。いくら彼女が早くなさい、と叱りつけるように言っても僕の指示でなければ動くはずがなかった。
「勝手に僕の従者を使おうとしないでくれ。ただのルルである君には命じる権利はないし、そもそも礼儀のない君に出すお茶なんてないからな」
「…意味が分からないわ?」
「君はそればかりだな。さっきも言ったが、君は平民、僕は貴族だ。今日の君自身の態度を思い出してもらいたい、どう考えても礼儀知らずの無礼者で、上の立場の者に対しての態度ではないだろう。君は見も知らぬ平民が挨拶もなく、ましてやこちらに一切非が無いのに謝罪を要求して来たら応じるとでも言うのかい?」
「何を言ってるのよ? 見も知らないとか…私と貴方の仲じゃない」
僕の問い掛けには答えずに、にこりと微笑みを浮かべ小首を傾げる彼女。今更僕に愛想よくしてどうするつもりなのか。可愛らしく見せれば許されると思っての事だろうけど、今の僕から見たら異性に対する己の魅せ方を知っているなと思うだけで、絆される訳がないのに。
「君と僕とは一切、何の関係もないな」
「私達、婚約者だったじゃない。なら――」
「『ルル・キャメル』は存在しない。だから、僕と婚約していた相手は元々居ない事になった。まぁ、それ以前に婚約は破棄していたから元婚約者が居なくても何の問題もないしな。もちろん、平民であるただのルルと婚約していた事実もないから、本当に君と僕は何の関係も繋がりもないんだ。今回の君との面会も、キャメル伯爵に頼まれての事。君の事なんか知らないな」
「~っ!」
話題を変え、愛想をよくし、どんなに彼女が自分の立場についてうやむやにしようとしても、婚約破棄した事も、貴族籍除名処分も、国王陛下のお言葉も、起きた現実は変えられない。
彼女はようやく今の状況を受け入れ始めたのか、何度も口をパクパクさせて何かを言おうとしている。しかし、まともに言葉にすら出来ないようだった。
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表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
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