婚約者に浮気され、婚約破棄するしかなかった僕の話

もふっとしたクリームパン

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21、伝えたかった言葉

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 …もういいか。僕が知りたかった彼女の目的も分かったし、一応彼女自身の立場についても遅すぎではあるがやっと理解が及んだようだしな。これ以上彼女と会話しても無駄な時間になりそうだ。僕の胸の内は未だ収まらず荒れているが、この面会を終わりにしてもいい気がしてきた。
 これが終わったら、疲れを癒すためにライとまた呑み交わそうかな。なんて後の楽しみを考えつつ、僕は視線を下げ俯き始めた彼女に対し、

「もう、君とは会う事はないだろう。最後に、これだけは伝えておく。僕は――」

「わ、私が、ただのルルだと言うなら、貴方もでしょう、ルーベン!!」

 いざ最後の別れ…としようとしていたのに。
 ガタンと椅子を倒して立ち上がってまで主張する君の意味不明な思考には、本気で驚かされる。悪い意味でだけど。

「だって! 私は、この私が、平民なんてあり得ないでしょう!? 私は何の罪も犯してないのよ? 私は何もしてない! 除名処分は罪を犯した貴族に与えられる重い罰だってお父様は言ってたもの、なら私は違うわ!! それでも私が罰せられるなら、貴方も同罪でないとそれこそ可笑しいでしょう!」

 バカなりに除名処分の説明は覚えていたようだが、何もしてない所か彼女が仕出かした婚約中の浮気も、契約の反故裏切りと言う立派な罪と言えるだろうに。ましてや婚約期間中は彼女を守ろうと必死に注意し、貴族派を近寄らせないよう策を練ってまで努力していた僕が、どうして浮気三昧の彼女と同罪になるのだろう。意味が分からな過ぎて、正直言って気持ち悪かった。
 仲の良いライラとさえ二人きりで会った事はない。ライラと会う時は必ず、ライやキャメル伯爵側の従者達等が共に居た。もちろん、他の貴族令嬢とも同様だ。婚約中だろうとお構いなく男性と密着し二人きりでも平気で会っていた彼女とは違い、僕は独り身フリーとなった今も貴族として紳士であるよう女性に対しては特に気を遣っている。貴族令嬢の噂話は驚くほど速く周知されるから、早くお嫁さんを見つける為にも印象を良くしておいて損はないのだ。

「なんか聞くのも疲れるけど気になるから聞いておく。何故、僕が君と同罪なのかな?」

「貴方も私を愛しているんでしょう? あの人が私を愛してくれていたように、貴方もその中の一人。彼らに愛されていた事が私の罪ならば、私を愛した貴方も同罪で罰を受けるべきよ! そうでないと不公平だわ!!」

「……愛した事、愛された事は罪じゃないから、罰は受けないよ…」

 言いながら、左手で頭を軽く押さえる。頭は痛くないけど、なんか痛い気がするし従者達の僕を労わる様な視線が辛かった。
 彼女が処罰を受けた理由はそこじゃないんだが、とんでもない発想だ。愛が罪で処罰対象ならば、あっという間に国中が犯罪者だらけになるだろうが、バカか。……バカだったな。

「それなら、やっぱり私は悪くないし、罰を受ける必要もないって事よね? お父様に言って、その除名処分を取り消してもらわないと…ルーベン、貴方から言ってちょうだい。お父様ったら私の話を碌に聞いてくれないのよ」

 婚約破棄の取り消しの次は、除名処分の取り消しか。ワザとでも何でもなく、大きなため息が出てしまった。

「そりゃ、キャメル伯爵も君の愉快な暴論をまともに聞く必要ないからな。聞いた僕が悪いけど、聞かなきゃ良かったと今、心底思ってる」

 何ならこの面会を受けた事さえ後悔してしまいそうだ。いや、しないけど。これだけは僕から伝えなければ気の済まない事があるからさ…、うん頑張ろう。

「どういう意味かしら?」

「そのままの意味だとも」

僕は姿勢を整え、敢えてにっこり笑ってみせた。

「君はちっとも自覚してないし、今後も自覚してはくれないだろう。どれだけ言葉を尽くしても、結局、自分の考えルルの世界でしか生きていないのだから」

 彼女は彼女の都合でしか動かず、受け付けず、また他者にその都合を強要する。国王陛下の話が出ても、罪を否定し罰に抗議し、僕とキャメル伯爵を巻き込めばあっさり撤回が叶うと思っている。貴族として生まれ貴族としての特権を受けながら、貴族社会を理解せず、王政を理解せずにいるなんて、あり得ないにも程がある。学園に通っていた平民の同級生達だってしっかり理解していた事なのにな。最初から互いに理解なんて出来るモノじゃなかった訳だ。

「でも、これだけははっきり、僕の口から伝えておきたかった」

 さっき、伝えそびれた言葉で、僕が面会を受けた理由の一つ。

「僕はもう、君を愛してなどいない」

 ――だから未だに僕に愛されているなんて、そんな妄想は金輪際止めてくれ。

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