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25、一年後
しおりを挟む――あの面会の日から、一年の月日が流れた。
あれから予定通りの月に、ライラとライは結婚した。それはもう豪華で、幸せそうな結婚式だった。親友として参加出来た事を嬉しく思う。余りの嬉しさに泣いて、周囲に引かれたのはもう笑い話だ。
そして二人が結婚したその次の月には、何と僕に新たな婚約者が出来た。出来れば今年結婚出来たら良かったのだけど、王族の結婚式と重なりそうだったので時期をずらし、結婚式は来年にする事が決まっている。
新しい婚約者は、明るい栗毛と優しいトパーズのような薄茶の目をしたローズベリー嬢だ。僕より四つ年上で乗馬が得意。性格も明るくしっかりしていて、話す口調はキツめだが相手を不快にさせない程度の言い回しを用いるので、友人も多く交友関係が広い。最近では僕と二人で遠乗りデートを楽しんでいる。…実は僕の方が馬がちょっと怖くて乗馬自体も苦手意識があったのだけど、婚約者のおかげでだいぶ馬にも慣れて来たから乗馬も上達した。会話も弾むし、ダンスの息も合う素晴らしい婚約者。こんなに素敵な婚約者が早々に僕に出来たのは、アンドレア侯爵のせい…げふん、おかげだった。
あの面会の終わり、アンドレア侯爵と有意義な対話も終わってそろそろ解散かなと思っていた僕だが、そんな事はなかった。アンドレア侯爵が隣室で待機していた理由が別に――むしろ、本命はこちらだったのではと今でも思う――あったのだ。
実は隣室に待機していたのはライとアンドレア侯爵だけでなく、ライラともう一人が同席して居たのだ。ライラがライと共に現れなかったのは僕がアンドレア侯爵と対話している間、ライラはその相手…王家派に属するフラスコフ辺境伯の末娘ローズベリー嬢の話し相手になっていたそうだ。
今回の件に無関係であるローズベリー嬢が同席していた理由は、僕との顔合わせ…そう、お見合いの為である。侯爵に確認すれば僕の両親にはすでに話が行っており、お見合い自体は承諾済み。相手が国の護りを担う辺境伯の娘であるので貴族派もそう簡単には邪魔出来ず、派閥関係の根回し手回しは完璧。更にはフラスコフ辺境伯の奥様がアンドレア侯爵家の遠縁に当たるらしく、遠くても親戚としての立場をちゃっかり得ているようだった。転んでもただでは起きないそのアンドレア侯爵の手腕に、僕は驚くよりも先にうっかり感心してしまった。とは言え、面会だけだと思っていたのにまさかのお見合い相手の登場。味方のはずのライは僕の肩に手を置き、『親父はこういう人だから諦めな、頑張れ』、と囁くだけだった。
結局、ライと飲もうと思っていた午後の時間はお見合いで埋まる事となり、アンドレア侯爵から紹介されたご令嬢と過ごす事になった。紹介が済んだ侯爵は後を任せたと別荘を立ち去った為に始めはライとライラも交えての昼食会、その後ローズベリー嬢と僕でお茶会となったのだ。
ご令嬢は僕の目を見て綺麗とも珍しいとも言わなかった。ただ、二人の時間の中で海の向こうにあるとある国の事が出ただけで、会話は別の話題に移された。僕のこの紫の目は両親とも祖父母とも異なるいわゆる先祖返りと呼ばれるモノで、かつてこの国に移住してきた他国の民が持つ色だった。この国では珍しくとも、海の向こうではよく見かける色である事を、ローズベリー嬢は知っていたらしい。珍品のように見られることが多い僕の目を、僕自身はずっと嫌いで話題に出されるのが苦手だった。けれど、珍しさに好奇心を露わにするでもなく、ましてや褒めるでもなく自然と会話に目の色と他国の話を織り込んで、そこから国政の話に持って行く令嬢は中々居ないだろう。
お見合いが終わり、バーナー伯爵家の屋敷に帰った時、両親に今日の事を尋ねられ僕が思い出したのは、フラスコフ辺境伯のローズベリー嬢の事だけだった。…両親にはからかわれ笑われてしまって多少恥ずかしかったが、こうして何の障害もなくさくさくと順調にローズベリー嬢と婚約出来たのだから良かったと思う。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
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