婚約者に浮気され、婚約破棄するしかなかった僕の話

もふっとしたクリームパン

文字の大きさ
33 / 34

オマケ 貴族派の誰か その3

しおりを挟む

「アレがほぼ一方的に、婚約者を無視してるみたいで。飽きたって理由でまともに会ってもないし、会っても相手の言葉はほぼ聞き流してるし、意思の疎通どころか会話も碌にしてないようなんだ」

「…あり得ないが、アレならあり得るか…」

 誘惑している側が言うのも何だが、婚約者がいるのに誘いに乗るのももちろんの事、アレの態度は貴族として婚約の意味とその重さを考えれば、普通ならあり得ないことなのだ。

「婚約した当初、アレは十一歳だったそうだし、その後まともに会ってもなくて会話もしてないなら、見た目だけはいいし周囲のフォローもあっただろうし、アレの異常さには気付きにくいと思う」

 アレの異常性は、幼児か子供であったならまだ笑って受け入れられるかもしれない。だからこそ、婚約者も子供であったアレと婚約する事を受け入れられたんだろう。
 だが、残念ながらアレはもう学園の最上級生だ。

「…そうだな。俺も最初は全然気付かなかったしな」

「僕もだよ…」

 見た目がいいのが災いしてアレの異常性は、大体付き合いだして四日目辺りで感じ始めるのだ。そして、その異常性を理解したら最後、理由あっての事だけど、誘惑する為に近づいた僕達の方が、アレを受け付けられず、また傍に居る事が気持ち悪くなって、精神的に耐えられなくなる。…自分に夢中にさせて破棄させてやると自信満々だったヤツが、一人では到底不可能であると悟り、そうして僕達の同士になっていくのだ。減っては増える同士の参加理由はこれが基本的なパターンとなっている。

「どうやったら、あんなのが生まれるんだろな……あれか、教育が悪かったのか?」

「う~ん、様子を見るにキャメル伯爵側には諫める側と甘やかす側がいて、諫める側が教育しようにも甘やかす側が邪魔してこう着状態になるパターンが多いみたいだね。甘やかす側に非があると思うけど、諫める側の当主が強く出れないのは理由がありそうだけど…」

「バーナー伯爵家側は?」

「親も婚約者も諫める側だけど、大事にしなきゃいけない婚約者を無視するようなアレが、その親の話を聞くと思う?」

「ねぇな…」

「でも、教育のせいでアレが生まれたとは思えない、と言うか思いたくないよね」

「…だな、アレは元々ああだったんだろな」

 教育のせいならば、僕達も含めて貴族全員がアレと同じになった可能性が出てしまう。基本的な貴族教育なんて大体どこの家でも大きな違いはないはずだからだ。そんな考えるだけで吐き気を催す可能性なんて、ないでしょ。ないよね? うん、なくていい。

「婚約者がアレの異常性に気付いて破棄するのが先か、浮気の醜聞僕達の成果で破棄されるのが先か…」

「なら、いっそのこと強制的に婚約者に向き合わせたらどうだ?」

「『大らかな海の民』と呼ばれ『人たらし』で知られるあのバーナー伯爵家の嫡男だよ? それで任務失敗したらどうするのさ」

 流石にアレは受け入れないとは思うけど、過去のバーナー伯爵家の『大らかさ』によって起きた逸話は有名だからな。例えば、『とある公爵家の悪童が聖人になった事件』とか『異国の強欲な豪商が財産投げ打って求婚事件』とか。婚約者である嫡男とは付き合いがないので性格等は良く知らないが、聞いている話では血の素質は受け継いでいる様子だ。はっきり言って、アレと向き合わせてどう転ぶが分からない所がある。怒らせたら怖いとも聞くから、今以上に刺激してその怒りがこっちに向けられても嫌だ。

「…そうか、どうやっても受けた任務の内容からして、後者の方法で頑張るしかねぇのか」

「…うん」

 早く任務達成したいなと、切実にそう思う。
 これは僕の勝手な予測だが、王家派と中立派への嫌がらせはであって、貴族派の高位貴族の本当の目的は、最初の方で脱落していったらしい身内内のロクデナシ連中を、一斉処分する為に始めた事なんじゃないだろうか。だが、予想外にアレがアレだったのでロクデナシ連中が早々に脱落し、嫌がらせ自体も今更引くに引けなくなって、僕達のような者達を成功報酬で釣って仕掛けているのだろう。…釣られた僕達も悪いが、ちょっと巻き込まないで欲しかったと思わないでもない…。
 さぁ、愚痴を言っても仕方がない。そろそろアレの元に向かわなければ。嫌だけど。囲む同士達を助ける為にも、今付き合っているのは僕だしね。本当に嫌だけど。



 それから、ある夜会の後。とうとう婚約破棄となった、と聞いた時。
 各自、醜聞の責任を取る形で受けていた謹慎処分から解放された僕達は、同士の間で集まって大いに祝杯を挙げた。任務達成による喜びよりも、アレから解放された事による喜びの祝杯が主だったのは、余談かもしれない。




【完】
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」 仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。

騎士団長を追放した平和ボケ王国は、七日で滅びました

藤原遊
ファンタジー
長らく戦のなかった王国で、 騎士団長の父を病で失った令嬢は、その座を引き継いだ。 だが王城に呼び出された彼女に告げられたのは、 騎士団の解体と婚約破棄。 理由はただ一つ―― 「武力を持つ者は危険だから」。 平和ボケした王子は、 非力で可愛い令嬢を侍らせ、 彼女を“国の火種”として国外追放する。 しかし王国が攻められなかった本当の理由は、 騎士団長家が持つ“戦況を覆す力”への恐れだった。 追放された令嬢は、即座に隣国帝国へ迎えられ、 軍人として正当に評価され、安泰な地位を得る。 ――そして一週間後。 守りを捨てた王国は、あっけなく陥落した。 これは、 「守る力」を理解しなかった国の末路と、 追放された騎士団長令嬢のその後の物語。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

貴方に側室を決める権利はございません

章槻雅希
ファンタジー
婚約者がいきなり『側室を迎える』と言い出しました。まだ、結婚もしていないのに。そしてよくよく聞いてみると、婚約者は根本的な勘違いをしているようです。あなたに側室を決める権利はありませんし、迎える権利もございません。 思い付きによるショートショート。 国の背景やらの設定はふんわり。なんちゃって近世ヨーロッパ風な異世界。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿。

幸せな婚約破棄 ~どうぞ妹と添い遂げて~

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を宣言された私。彼の横には、何故か妹が。 私……あなたと婚約なんてしていませんけど?

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...