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第三章 波乱

43.作戦準備

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「い、祈……?」



「どうしたんだい急に大声出して」



「はぁっ!? ご、ごめんなさい! ちょっと動転して!」



 祈は顔を真っ赤にして俯いてしまったけれど、天下のアイドルにチャンネル登録してもらえるというのは光栄な事だ。

 

「さて、それじゃあ早速やるかい? コノミン」



「あぁ、ここからは電撃作戦だ。ワルキューレの一人を救い出す!」



「おっけー、ヘリは温めてある。行こうか」



「わ、私達に何か出来る事は!」



「祈、さっき隼人さんが言ってたでしょ。私達はここで帰りを待つ。信じて待つ事」



「うぐ、そうだけど……ぐぬぅ!」



「フッ、祈よ。お前の気持ち確かに受け取った。だが今は座して待て。必ず翆を連れて帰る」



 頭では理解していても、心がまだ追い付いていないのだろう。

 隼人から説明されたとしても、大事な仲間を警察でも軍でもない、一般人の俺が救出すると言うのだ。



 心配になって当然だ。

 だがしかし! 俺と隼人が本気を出せば怖い物無しなのだ。



 それを配信で見せつける。

 そしてそれが少しでも、PK達への抑止力になってくれればいいんだがな。

 

「い、いってらっしゃい……コノミ、隼人さん」



「頑張ってねコーチあんど隼人さん」



 手を振る二人に見送られながら、俺と隼人は部屋を出てヘリポートへと向かった。

 シートベルトとヘッドセットを着用した隼人は、パイロットの肩を叩いて合図を送った。

 ヘリはそのままゆっくりと飛び立ち、目的地であるお台場埠頭へと進路を取った。



「ん?」



 ヘリで飛行中、メッセージの着信音が鳴った。

 携帯を開いてみると、祈と瑠璃ちゃんの自撮りが送られてきた。



いのりーぬ:がんばれ! 最強ジャッジメント! こんな写真、コノミだから送るんだよ! ブロマイドにしたらきっとプレミア付くよ! なんちゃって~♪



「フッ……確かにプレミア付きそうだ」



 画面には満面の笑みでガッツポーズを取る二人が映っていた。

 よく考えないでも、希少価値の高い素材であることは間違いない。

 これが彼女らのファン達に知れたらどうなる事か。



「やれやれ、愛されてるねボク達」



 隼人がそう言って自分の携帯の画面を俺に向けた。

 そこには俺のと少し違うポーズの自撮りが映っていた。



「ククク……こういうのもまぁ、悪くは無いな」



「素直じゃないねぇ。もっと喜んだらいいのにさ。いつの間にかコノミ、祈、なんて下の名前で呼び合うようになってるし」



「そ、それはだな……」



「君らがどうこうした所で、ボクには関係のない事だけれど――避妊はしろよ?」



「ぶっ!? いきなり何を言い出しやがる! そういうんじゃないって!」


 唐突に下世話な話をされて、思わず吹き出してしまう。


「どうかなー? 祈ちゃんは君にバッキュンキュンだと思うけどなぁ」



「そんなわけ――無いとも言い切れん……」



「だろ? いくら鈍感な君でも気付いてるとは思ってたよ」



「だが――俺とあの子は別の世界の住人だ。相いる事は無い」

 
 俺を思ってくれるのは正直とても嬉しい。
 だが今は――違うのだ。


「ふうん。どうだかね」



「それよりもうすぐ着くんじゃないか?」



「あぁ、そうだね。あと五分てトコ」



「よし。なら俺は準備に入る」



「オーキードーキー。それじゃボクも」



 広いとは言えないヘリの中で、俺と隼人は対PK集団への準備に取り掛かった。
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