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第二章 鬼囃子編
094 ユニコーンロンド
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教徒達は短剣を構えながらゆっくり私達との距離を詰めてくる。
飛びかかってこない所を見ると、多少は警戒しているようですわね。
「モニカ、落ち着くのですわ。ミッドナイトの二の舞はダメですわよ」
「わ、わかってるよ。ごめん、つい……」
「モニカはもう少し、自分の怒りをコントロール出来るようになるべきですわ。精進なさい」
「う……うん……」
「さ、気を取り直して早く終わらせて、アダム様の元へ馳せ参じるのですわ」
「そうだね。切り替え切り替え! よし、がんばるぞ!」
モニカは頬をぺちん、と叩き、再度教徒達を睨みつけた。
それが戦闘開始の合図になった。
とは言っても、戦闘と呼べるものではなく、私はもとより、モニカもアダム様のサーヴァントになってステータスがかなり上昇している。
さらに憤怒の象徴ともされ、それ単体でも幻獣界では指折りの強さを持つユニコの魂が融合しているのだ。
教徒達も多少やり手のようですが、モニカに触れる事も剣先が届く事もありません。
純白のユニコーンズホーンをシャンシャンと鳴らしながら動き回るモニカは、その動きだけで何かの舞いを踊っているかのよう。
連続で襲い来る兇刃をひらりと躱し、錫杖の先で、石突きで、教徒達が振るう煌く銀閃を尽く捌いていた。
錫杖をヒュンヒュンヒュンと軽やかに回転させ、舞い踊るその姿は高い練度のランサーを彷彿とさせる。
この場にいる二十人の鬼獣教徒達は、たった二人の女と侮ったモニカと私に翻弄され続けている。
ちなみに私は既に戦闘を終え、手ごろな岩に座って観戦中ですわ。
地面にはちょうど十人の教徒達が転がっていますけど、大丈夫、ちゃんと生きてますわ。
「中々やるな! 女!」
「あなた方はなぜ! ヤシャを復活させようと目論むのですか! なぜ世界に混沌と破滅をもたらしたヤシャを信仰するのです!」
「決まっている! それが我らの使命であり願いだからだ!」
「たくさんの人の命が奪われるかもしれないのですよ!」
「そんな事はどうでもいい! ゴミが一つ二つ消えた所でどうと言う事はない! むしろこの世界にはゴミが溢れすぎている! 減らした方が世界のためになるかも知れないぞ?」
「ゴミではありません! 一人一人人生があって、生き様があって、それぞれ違う志や願い、夢があるんです! それをあなた方は踏みにじるおつもりですか!」
「は! 話にならんな! まるで聖女様のような口ぶりだ! 素晴らしい、素晴らしい心がけ、聖職者の鏡!」
「私はモニカ、聖女モニカです! あまねく人々を救う、光となりて邪を滅す神々の代弁者です!」
モニカが高らかに名乗りをあげた直後、カキィン! と教徒の短剣が打ち上げられ、腹と延髄に一撃ずつ純白の錫杖が叩き込まれた。
「が……ヤシャ様に……栄えあれ……」
ぐるん、と白目を剥いて倒れ込む教徒の体を、モニカはそっと抱きとめた。
その顔は怒りと悲しみ、そして悲哀の色が色濃く浮き出ていましたわ。
「お疲れ様ですわ」
「やっぱり、この人達とは相容れないのかな」
「当たり前よ。言葉が通じる相手なら、こんな事起きてませんわ」
「そうだね」
モニカが目を閉じて、ふう、と小さくため息を吐いたのと同時に地鳴りのような音がなり始め、やがてグラグラと地揺れが始まった。
地揺れはすぐに収まり、その代わりに私達の真下に何かの気配が出現したのを感じた。
「な、なに……?」
「……ヤシャが復活したのかも知れませんわね」
「え、でも……感じる力はそんなに強くないよ?」
「長年の封印で力が削がれているのか、頭部だけだからそう感じるのかも知れませんわ」
「あぁ、そうかも……あれ? 消えた?」
「消えましたわね……」
出現したと思えば、数分のうちに綺麗さっぱり消失した気配。
私達がうーん? と首を傾げていると、突然目の前の地面が爆ぜた。
飛びかかってこない所を見ると、多少は警戒しているようですわね。
「モニカ、落ち着くのですわ。ミッドナイトの二の舞はダメですわよ」
「わ、わかってるよ。ごめん、つい……」
「モニカはもう少し、自分の怒りをコントロール出来るようになるべきですわ。精進なさい」
「う……うん……」
「さ、気を取り直して早く終わらせて、アダム様の元へ馳せ参じるのですわ」
「そうだね。切り替え切り替え! よし、がんばるぞ!」
モニカは頬をぺちん、と叩き、再度教徒達を睨みつけた。
それが戦闘開始の合図になった。
とは言っても、戦闘と呼べるものではなく、私はもとより、モニカもアダム様のサーヴァントになってステータスがかなり上昇している。
さらに憤怒の象徴ともされ、それ単体でも幻獣界では指折りの強さを持つユニコの魂が融合しているのだ。
教徒達も多少やり手のようですが、モニカに触れる事も剣先が届く事もありません。
純白のユニコーンズホーンをシャンシャンと鳴らしながら動き回るモニカは、その動きだけで何かの舞いを踊っているかのよう。
連続で襲い来る兇刃をひらりと躱し、錫杖の先で、石突きで、教徒達が振るう煌く銀閃を尽く捌いていた。
錫杖をヒュンヒュンヒュンと軽やかに回転させ、舞い踊るその姿は高い練度のランサーを彷彿とさせる。
この場にいる二十人の鬼獣教徒達は、たった二人の女と侮ったモニカと私に翻弄され続けている。
ちなみに私は既に戦闘を終え、手ごろな岩に座って観戦中ですわ。
地面にはちょうど十人の教徒達が転がっていますけど、大丈夫、ちゃんと生きてますわ。
「中々やるな! 女!」
「あなた方はなぜ! ヤシャを復活させようと目論むのですか! なぜ世界に混沌と破滅をもたらしたヤシャを信仰するのです!」
「決まっている! それが我らの使命であり願いだからだ!」
「たくさんの人の命が奪われるかもしれないのですよ!」
「そんな事はどうでもいい! ゴミが一つ二つ消えた所でどうと言う事はない! むしろこの世界にはゴミが溢れすぎている! 減らした方が世界のためになるかも知れないぞ?」
「ゴミではありません! 一人一人人生があって、生き様があって、それぞれ違う志や願い、夢があるんです! それをあなた方は踏みにじるおつもりですか!」
「は! 話にならんな! まるで聖女様のような口ぶりだ! 素晴らしい、素晴らしい心がけ、聖職者の鏡!」
「私はモニカ、聖女モニカです! あまねく人々を救う、光となりて邪を滅す神々の代弁者です!」
モニカが高らかに名乗りをあげた直後、カキィン! と教徒の短剣が打ち上げられ、腹と延髄に一撃ずつ純白の錫杖が叩き込まれた。
「が……ヤシャ様に……栄えあれ……」
ぐるん、と白目を剥いて倒れ込む教徒の体を、モニカはそっと抱きとめた。
その顔は怒りと悲しみ、そして悲哀の色が色濃く浮き出ていましたわ。
「お疲れ様ですわ」
「やっぱり、この人達とは相容れないのかな」
「当たり前よ。言葉が通じる相手なら、こんな事起きてませんわ」
「そうだね」
モニカが目を閉じて、ふう、と小さくため息を吐いたのと同時に地鳴りのような音がなり始め、やがてグラグラと地揺れが始まった。
地揺れはすぐに収まり、その代わりに私達の真下に何かの気配が出現したのを感じた。
「な、なに……?」
「……ヤシャが復活したのかも知れませんわね」
「え、でも……感じる力はそんなに強くないよ?」
「長年の封印で力が削がれているのか、頭部だけだからそう感じるのかも知れませんわ」
「あぁ、そうかも……あれ? 消えた?」
「消えましたわね……」
出現したと思えば、数分のうちに綺麗さっぱり消失した気配。
私達がうーん? と首を傾げていると、突然目の前の地面が爆ぜた。
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