欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー

二五三話 合流

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「キャトル・エクスパンション【フレイムスピア】!」

 ロンシャン兵と相対している目の前の獣魔兵四体に向け、俺は四式展開に抑えた炎の短槍を発動させた。
 短槍はほぼ同時に獣魔兵の横っ腹に突き刺さり、その命を燃やし尽くした。
 ちょこまかと動き回る獣魔兵に翻弄されていたロンシャン兵は手にしていた剣を俺に向けて掲げた後、踵を返して他の獣魔兵へ剣を振る。
 展開している獣魔兵の数はざっと数えても五〇以上、一〇〇を超えていてもおかしくない数だった。
 ロンシャン兵は背中を合わせながら二人一組で行動しており、多角的な攻撃を仕掛けてくる獣魔兵となんとか渡り合っている状況だった。

「ホワイト、ピンク、動物をやれ! 人には手を出すな!」

 強化兵二人に援護の指示を出すが、もちろん俺だって獣魔兵の攻撃対象となっている。
 しかしたかが鎧を着た程度の犬っころにやられる程俺は弱くない。
 背後から飛びかかってきた獣魔兵の頭を無理向きざまのハイキックで蹴り飛ばし、左右から同時に攻めてきた獣魔兵の首を二振りで切り落とす。
 モンスター相手なら躊躇無く殺れるのにな。
 二人一組で動いているロンシャン兵は無駄に動くことをせず、獣魔兵が襲いかかってくるのを迎え撃つ戦法を取っている。
 そのおかげで俺の放つ援護魔法が面白いぐらいにズバズバと当たってくれる。
 だが敵も馬鹿ではないようで、数十体ほどの獣魔兵を葬ったところで敵の矛先が全て俺に向き始めたのだった。

「誰だかわからんが助かる! 貴殿の名は!」

「私はフィガロ! フィガロ・シルバームーン! ランチア魔導王朝の辺境伯を拝命している者です! アーマライト王はヘカテー第二王女とともに脱出に成功しています!」

「な……! 聞いたか! 陛下と王女殿下は無事だぞ!」

「おおおおおおお!!!」

 一番近くにいた壮年の兵士が俺の言葉を大声で伝えてくれた結果、勝ち鬨もかくやという雄叫びがその場に居合わせた全ての兵から上がった。

「総員奮戦せよ! ここが正念場だ!」

「は!」

 壮年の兵士が檄を飛ばすと、疲労が濃い表情をしながらも兵達の士気は激増したようだ。
 そんな様子が面白くないのか獣魔兵は唸り声をあげつつ、俺と兵士達の周囲を囲むように展開し始めた。

「おやおやおや。突然現れたと思えばなんという戯言を言いますかねこの小僧は」

「戯言とはおかしなことを言う。私は真実を述べているだけですよ?」

 展開している獣魔兵の輪が切れ、そこから一人の男がゆっくりと姿を現した。
 顔面を白く塗り、目元を紅く塗りつぶした異様な風体の男は含み笑いをしながら悠然と語る。

「アーマライト王とドライゼン王がいる場所には我らが指導者、ガバメント総司令がいらっしゃるのです。両王を救い出すにはガバメント総司令を倒さねばならないのですよ?」

「そ、そんな……ならばフィガロ殿の言ったことは……」

「大嘘もいいところです! こんな年端もいかない小僧がこの国最強の剣士を打ち破れるはずがない!」

 白塗りの男が何故か自慢げに朗々と喋くっているが、言葉がちょうど区切れた所で俺も負けじと言い返す。

「本当ですが?」

「まだそんな戯言を……!」

「認めたくないだけではないですか? それに、私は強いですよ?」

「ふん。身の程も知らぬ小童が。ならばこの私が直々に相手をして確かめてあげましょう。この我輩、獣魔操奇部隊隊長ウルベルトがね」

「それはそれは、御心使い痛み入ります。もっとも痛い目を見るのはウルベルトさん、あなたの方ですけど」

 白塗りの男と対話をしつつ、ロンシャン兵のサポートに回るようにとホワイトとピンクへ思念を飛ばす。
 獣魔兵の親玉が出てきてくれるのは都合がいい。
 なんせここで倒してしまえば敵の戦力も減るというもの。
 他にどんな部隊が寝返っているのかはしらないが、一つでも多く潰してしまった方が後々楽になる。

「フィガロ殿! 貴殿の言っていたことが本当なら陛下はどこに!」

「この方を倒したらお連れ致します。なのでご心配なく」

「倒したらって……貴殿はあの男の恐ろしさを知らない!」

 壮年の兵士が剣を構えながら渋い顔をしているが、そんなに強いのだろうか?
 ふざけた顔をしてるだけの変なおっさんじゃないか。

「大丈夫です。守りの国と言われるランチアの国境を預かる身ですよ? 弱いとお思いですか?」

「しかし貴殿は……その……」

「確かに背格好はちっこいかも知れませんけどね……威厳もないし迫力もないですが、やる時はやるんです私は」

 兵士の言いたいことはわかる。痛いくらいにわかる。
 はたから見たらちっこいお子様がイキっているようにしか感じないのだろう。
 口で言っても理解しないのなら行動で示すだけのことだ。

「いつでもいいですよ?」

 俺はその場でトントンと小刻みにジャンプして軽いステップを踏み、剣を右手で握り、剣先を右後方へと下げて構える。
 左の手のひらを上にして指の先をウルベルトへと向け、ちょいちょいと手前に引いた。
 そして思いきり不敵に笑い、俺は言った。

「遊んでやるよワンコロ共。全部まとめてかかってこい」

 
「舐めやがって……! 行け獣魔兵! そのイキがった子供を喰い殺せ!」

 
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