92 / 298
第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー
二五三話 合流
しおりを挟む
「キャトル・エクスパンション【フレイムスピア】!」
ロンシャン兵と相対している目の前の獣魔兵四体に向け、俺は四式展開に抑えた炎の短槍を発動させた。
短槍はほぼ同時に獣魔兵の横っ腹に突き刺さり、その命を燃やし尽くした。
ちょこまかと動き回る獣魔兵に翻弄されていたロンシャン兵は手にしていた剣を俺に向けて掲げた後、踵を返して他の獣魔兵へ剣を振る。
展開している獣魔兵の数はざっと数えても五〇以上、一〇〇を超えていてもおかしくない数だった。
ロンシャン兵は背中を合わせながら二人一組で行動しており、多角的な攻撃を仕掛けてくる獣魔兵となんとか渡り合っている状況だった。
「ホワイト、ピンク、動物をやれ! 人には手を出すな!」
強化兵二人に援護の指示を出すが、もちろん俺だって獣魔兵の攻撃対象となっている。
しかしたかが鎧を着た程度の犬っころにやられる程俺は弱くない。
背後から飛びかかってきた獣魔兵の頭を無理向きざまのハイキックで蹴り飛ばし、左右から同時に攻めてきた獣魔兵の首を二振りで切り落とす。
モンスター相手なら躊躇無く殺れるのにな。
二人一組で動いているロンシャン兵は無駄に動くことをせず、獣魔兵が襲いかかってくるのを迎え撃つ戦法を取っている。
そのおかげで俺の放つ援護魔法が面白いぐらいにズバズバと当たってくれる。
だが敵も馬鹿ではないようで、数十体ほどの獣魔兵を葬ったところで敵の矛先が全て俺に向き始めたのだった。
「誰だかわからんが助かる! 貴殿の名は!」
「私はフィガロ! フィガロ・シルバームーン! ランチア魔導王朝の辺境伯を拝命している者です! アーマライト王はヘカテー第二王女とともに脱出に成功しています!」
「な……! 聞いたか! 陛下と王女殿下は無事だぞ!」
「おおおおおおお!!!」
一番近くにいた壮年の兵士が俺の言葉を大声で伝えてくれた結果、勝ち鬨もかくやという雄叫びがその場に居合わせた全ての兵から上がった。
「総員奮戦せよ! ここが正念場だ!」
「は!」
壮年の兵士が檄を飛ばすと、疲労が濃い表情をしながらも兵達の士気は激増したようだ。
そんな様子が面白くないのか獣魔兵は唸り声をあげつつ、俺と兵士達の周囲を囲むように展開し始めた。
「おやおやおや。突然現れたと思えばなんという戯言を言いますかねこの小僧は」
「戯言とはおかしなことを言う。私は真実を述べているだけですよ?」
展開している獣魔兵の輪が切れ、そこから一人の男がゆっくりと姿を現した。
顔面を白く塗り、目元を紅く塗りつぶした異様な風体の男は含み笑いをしながら悠然と語る。
「アーマライト王とドライゼン王がいる場所には我らが指導者、ガバメント総司令がいらっしゃるのです。両王を救い出すにはガバメント総司令を倒さねばならないのですよ?」
「そ、そんな……ならばフィガロ殿の言ったことは……」
「大嘘もいいところです! こんな年端もいかない小僧がこの国最強の剣士を打ち破れるはずがない!」
白塗りの男が何故か自慢げに朗々と喋くっているが、言葉がちょうど区切れた所で俺も負けじと言い返す。
「本当ですが?」
「まだそんな戯言を……!」
「認めたくないだけではないですか? それに、私は強いですよ?」
「ふん。身の程も知らぬ小童が。ならばこの私が直々に相手をして確かめてあげましょう。この我輩、獣魔操奇部隊隊長ウルベルトがね」
「それはそれは、御心使い痛み入ります。もっとも痛い目を見るのはウルベルトさん、あなたの方ですけど」
白塗りの男と対話をしつつ、ロンシャン兵のサポートに回るようにとホワイトとピンクへ思念を飛ばす。
獣魔兵の親玉が出てきてくれるのは都合がいい。
なんせここで倒してしまえば敵の戦力も減るというもの。
他にどんな部隊が寝返っているのかはしらないが、一つでも多く潰してしまった方が後々楽になる。
「フィガロ殿! 貴殿の言っていたことが本当なら陛下はどこに!」
「この方を倒したらお連れ致します。なのでご心配なく」
「倒したらって……貴殿はあの男の恐ろしさを知らない!」
壮年の兵士が剣を構えながら渋い顔をしているが、そんなに強いのだろうか?
ふざけた顔をしてるだけの変なおっさんじゃないか。
「大丈夫です。守りの国と言われるランチアの国境を預かる身ですよ? 弱いとお思いですか?」
「しかし貴殿は……その……」
「確かに背格好はちっこいかも知れませんけどね……威厳もないし迫力もないですが、やる時はやるんです私は」
兵士の言いたいことはわかる。痛いくらいにわかる。
はたから見たらちっこいお子様がイキっているようにしか感じないのだろう。
口で言っても理解しないのなら行動で示すだけのことだ。
「いつでもいいですよ?」
俺はその場でトントンと小刻みにジャンプして軽いステップを踏み、剣を右手で握り、剣先を右後方へと下げて構える。
左の手のひらを上にして指の先をウルベルトへと向け、ちょいちょいと手前に引いた。
そして思いきり不敵に笑い、俺は言った。
「遊んでやるよワンコロ共。全部まとめてかかってこい」
「舐めやがって……! 行け獣魔兵! そのイキがった子供を喰い殺せ!」
ロンシャン兵と相対している目の前の獣魔兵四体に向け、俺は四式展開に抑えた炎の短槍を発動させた。
短槍はほぼ同時に獣魔兵の横っ腹に突き刺さり、その命を燃やし尽くした。
ちょこまかと動き回る獣魔兵に翻弄されていたロンシャン兵は手にしていた剣を俺に向けて掲げた後、踵を返して他の獣魔兵へ剣を振る。
展開している獣魔兵の数はざっと数えても五〇以上、一〇〇を超えていてもおかしくない数だった。
ロンシャン兵は背中を合わせながら二人一組で行動しており、多角的な攻撃を仕掛けてくる獣魔兵となんとか渡り合っている状況だった。
「ホワイト、ピンク、動物をやれ! 人には手を出すな!」
強化兵二人に援護の指示を出すが、もちろん俺だって獣魔兵の攻撃対象となっている。
しかしたかが鎧を着た程度の犬っころにやられる程俺は弱くない。
背後から飛びかかってきた獣魔兵の頭を無理向きざまのハイキックで蹴り飛ばし、左右から同時に攻めてきた獣魔兵の首を二振りで切り落とす。
モンスター相手なら躊躇無く殺れるのにな。
二人一組で動いているロンシャン兵は無駄に動くことをせず、獣魔兵が襲いかかってくるのを迎え撃つ戦法を取っている。
そのおかげで俺の放つ援護魔法が面白いぐらいにズバズバと当たってくれる。
だが敵も馬鹿ではないようで、数十体ほどの獣魔兵を葬ったところで敵の矛先が全て俺に向き始めたのだった。
「誰だかわからんが助かる! 貴殿の名は!」
「私はフィガロ! フィガロ・シルバームーン! ランチア魔導王朝の辺境伯を拝命している者です! アーマライト王はヘカテー第二王女とともに脱出に成功しています!」
「な……! 聞いたか! 陛下と王女殿下は無事だぞ!」
「おおおおおおお!!!」
一番近くにいた壮年の兵士が俺の言葉を大声で伝えてくれた結果、勝ち鬨もかくやという雄叫びがその場に居合わせた全ての兵から上がった。
「総員奮戦せよ! ここが正念場だ!」
「は!」
壮年の兵士が檄を飛ばすと、疲労が濃い表情をしながらも兵達の士気は激増したようだ。
そんな様子が面白くないのか獣魔兵は唸り声をあげつつ、俺と兵士達の周囲を囲むように展開し始めた。
「おやおやおや。突然現れたと思えばなんという戯言を言いますかねこの小僧は」
「戯言とはおかしなことを言う。私は真実を述べているだけですよ?」
展開している獣魔兵の輪が切れ、そこから一人の男がゆっくりと姿を現した。
顔面を白く塗り、目元を紅く塗りつぶした異様な風体の男は含み笑いをしながら悠然と語る。
「アーマライト王とドライゼン王がいる場所には我らが指導者、ガバメント総司令がいらっしゃるのです。両王を救い出すにはガバメント総司令を倒さねばならないのですよ?」
「そ、そんな……ならばフィガロ殿の言ったことは……」
「大嘘もいいところです! こんな年端もいかない小僧がこの国最強の剣士を打ち破れるはずがない!」
白塗りの男が何故か自慢げに朗々と喋くっているが、言葉がちょうど区切れた所で俺も負けじと言い返す。
「本当ですが?」
「まだそんな戯言を……!」
「認めたくないだけではないですか? それに、私は強いですよ?」
「ふん。身の程も知らぬ小童が。ならばこの私が直々に相手をして確かめてあげましょう。この我輩、獣魔操奇部隊隊長ウルベルトがね」
「それはそれは、御心使い痛み入ります。もっとも痛い目を見るのはウルベルトさん、あなたの方ですけど」
白塗りの男と対話をしつつ、ロンシャン兵のサポートに回るようにとホワイトとピンクへ思念を飛ばす。
獣魔兵の親玉が出てきてくれるのは都合がいい。
なんせここで倒してしまえば敵の戦力も減るというもの。
他にどんな部隊が寝返っているのかはしらないが、一つでも多く潰してしまった方が後々楽になる。
「フィガロ殿! 貴殿の言っていたことが本当なら陛下はどこに!」
「この方を倒したらお連れ致します。なのでご心配なく」
「倒したらって……貴殿はあの男の恐ろしさを知らない!」
壮年の兵士が剣を構えながら渋い顔をしているが、そんなに強いのだろうか?
ふざけた顔をしてるだけの変なおっさんじゃないか。
「大丈夫です。守りの国と言われるランチアの国境を預かる身ですよ? 弱いとお思いですか?」
「しかし貴殿は……その……」
「確かに背格好はちっこいかも知れませんけどね……威厳もないし迫力もないですが、やる時はやるんです私は」
兵士の言いたいことはわかる。痛いくらいにわかる。
はたから見たらちっこいお子様がイキっているようにしか感じないのだろう。
口で言っても理解しないのなら行動で示すだけのことだ。
「いつでもいいですよ?」
俺はその場でトントンと小刻みにジャンプして軽いステップを踏み、剣を右手で握り、剣先を右後方へと下げて構える。
左の手のひらを上にして指の先をウルベルトへと向け、ちょいちょいと手前に引いた。
そして思いきり不敵に笑い、俺は言った。
「遊んでやるよワンコロ共。全部まとめてかかってこい」
「舐めやがって……! 行け獣魔兵! そのイキがった子供を喰い殺せ!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。