欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第八章 ロンシャン撤退戦ー後編ー

三三九話 トレーニング

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 プランターの上で砂の量や砂粒の大きさ、全体的な硬さなどを魔力で調節しつつ、俺は呟くように言った。

「明日の作戦なんだけどさ」

「うん」

「どうする?」

「質問が漠然的過ぎないかい?」

 テーブルに頬杖を付いて椅子に座っていたリッチモンドが背もたれに寄りかかり、腕を組んでため息混じりに答えた。

「や、まぁそうなんだけど。だって破壊工作って言ってもさ」

 俺はと言えば掌からモコモコと生成される砂粘土を固めたり、細い線状にしてプランターに垂らしたりして対話を続ける。

「読んで字の如し。破壊だよ破壊、アーマライト王も言ってたろ? 更地にする勢いでやってくれって」

「うーん……言うのは簡単だけど実行するのって結構難しくないか? 密集してる街並みを更地にする、しかも直線的にだ」

「なるほどね。フィガロはたまに変に論理的になる所があるけど、実際やってみたら考える程でも無かったって事無いかい?」

「ある、けど……」

 話の要点が変わってしまったけど、作戦は明日だ、少しくらい雑談したって問題無い。

「君は頭でっかちで世間知らずだ、そのくせポテンシャルは凄まじい。武術や魔法も卒無くこなす。論理的、学術的、多角的に物事を見ようとする傾向がある反面、論理的に対応しようとしてても感情に流されたり、対応出来ずに行き詰まってしまったり。器用貧乏と言うか中途半端と言うか……十五年も家に軟禁されて学問と武術をしこたま叩き込まれた結果かな?」

「む……何が言いたいんだよ……」

「君は不完全でアンバランスで人間臭いんだよね、とっても。完璧な人間なんていないし、完璧だったらそれは人間じゃないと僕は思う。失敗して、学んで、考えて、失敗して、成功して、また失敗して。トライアンドエラー、ビルドアンドスクラップ、言い様は色々あるけどさ」

 散々な言われように段々と心が重くなってくる。
 歯に衣着せぬとはこの事だとは思うけど、変にオブラートに包んで話されるよりは分かりやすくていい。
 しかしリッチモンドはよく俺の事を見ているよな。
 分析力と言えばいいのだろうか。
 これも豪商の息子という血筋のなせる技なのか。
 俺から言わせて貰えば、リッチモンドの方こそアンデッドなのに人間臭いと思うんだけどな。

「打ち合わせは……大事だろ」

「勿論さ。ごめんごめん、話がズレてしまったね。僕には君が焦っているように見えたものだからつい、ね」

「なんかクライシスっぽいな」

「あはは! 僕が憧れていた人だからね、ひょっとしたら移ったかもしれないね?」

「クライシスとリッチモンドの二人に説教されたらたまったもんじゃないな」

「あー、そういう事言うのかい?」

「散々言われた俺のささやかなお返しだ」

「拗ねるのは良くないよ?」

「拗ねてないし。それよりどうするんだ? 普通に爆破すればいいのか?」

「うーん。一番手っ取り早いのはそれだけどね。この際だから派手にやらないかい? お師様風に言うなら「パーッといこうぜ」って感じ?」

「パーッと、ねぇ」

「論理的に言うなら爆破した後、瓦礫を吹っ飛ばすか、瓦礫も残らないような威力で破壊する、って感じ?」

「どこが論理的なんだか……」

「俺だったら魔法障壁で作戦区画を囲んで、その中で高威力の爆破魔法を使うかな。そうすれば範囲も限定されるし、威力も高められる」

「なるほどね。いい案だ、それでいこうよ」

「決まりだな」

 気付けばプランターの中は砂粘土で一杯になっており、俺は両手をかざして砂粘土で遊んでいた。
 生き物のようにグネグネと姿を変える光景を見ているのはとても楽しい。
 話しながらではあったけど、魔力を絞ったり間隔を開けて送り込む事は出来るようになった。
 窓の外を見れば日はすっかり沈んでおり、夜空には満天の星空が輝いていた。

「もうこんな時間か」

「食事に行かなくていいのかい?」

「そうだな、行ってくるよ。色々ありがとうな」

「魔力コントロールはいつでも出来る。外であれば最小限の魔力を使って掌に小さなつむじ風を発生させる、とかね」

「ふむふむ。やり方は何通りもあるってことか」

「そういう事。使う魔法は初級の初級を使うんだよ?」

「分かった! やってみる!」

 アドバイスをしっかりと脳に刻み、手を振るリッチモンドを残して俺は扉を閉めた。
 今から食堂に行っても食べれる物があるかは分からないけど、とりあえずお腹に何か入れたい。
 食事を意識した途端に鳴り始めた腹の虫の声を聞きながら、足早に食堂へ向かう。
 途中何人かの兵士達とすれ違った時に、握手を求められたのだけど何故だろうか?
 十分ほどかけてやっとこさ食堂まで辿り着き、木製の引き戸を開けて中に入った。
 中はやはり人がまばらで、若干ではあるが照明も絞られており、奥の方は完全に明かりが落とされていた。

 
 
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