欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

文字の大きさ
219 / 298
第八章 ロンシャン撤退戦ー後編ー

三八一話 這い寄る混沌

しおりを挟む

「魔人達は……獲物を求めています。非常に好戦的でこちらの言い分は全く通りません」

 アーマライト王が口を閉じると、挙手をして口を開いたのは教会騎士団の一人だった。
 よく見れば先の戦いで俺を天使だなんだと言っていた女騎士だった。
 女騎士が発言した事を皮切りに、魔人と相対した赤龍、黒龍、冒険者達が次々と発言を始めた。
 基本的な魔人の姿は人間と変わりないけれど、中には角を生やした者や腕が四本ある者などもいるという。
 さらには魔人の中には獣人や亜人も含まれており、それらは通常人種の魔人よりも遥かに強い力を持つのだとか。
 亜人の魔人と相対した赤龍の騎士達は数人がかりで討ち取ったという。
 冒険者から魔人になった者達は様々な職種を持つ者が多く、魔法使いや剣士、戦士は勿論のこと、オリジナル職を持つ者などもいて一筋縄ではいかないようだ。
 しかも冒険者はパーティを組む。
 基本的に魔人は力の過信により単独行動を好むが、パーティーを組む魔人もいたというのだからタチが悪い。
 
「だから俺達も四、五人でパーティーを組んだ方がいいと思うんだがどうだろうか」

 赤龍騎士団の一人が提案すると皆が頷いた。
 革命軍が正規軍と合流した事で、こちらの戦力は大幅に増加している。
 正確な総数は判明していないけれど、作戦立案は俺の仕事では無いし、気にした所ですぐに増減するだろうからな。

「寄せ集めのパーティーでは陣形や連携に乱れが出る。よって過去に面識のある者同士でパーティーを編成する。編成や部隊の振り分けなどの細かい事は後ほど行う。今は情報が欲しい。誰でもいい、何でもいい。役に立たないかもしれない、などと考えず発言してくれ」

 アーマライト王がそう言うと、一同は顔を見合わせ一人、また一人と口を開き始めた。
 会議は順調に進んでいるのを見て、俺はシャルルに一言断ってから一度部屋から出た。
 未だ戻らないリッチモンドの行方を知るためにウィスパーリングを起動させた。

「リッチモンド、今どこにいるんだ?」

「やぁ。僕かい? 僕なら城の中にいるよ」

「はぁ!? じゃあなんで出てこないんだ?」

「体がね、まだ完全に再生していないからなんだ」

「……は? 再生していないって?」

 リッチモンドの言葉が理解出来ず、オウム返しに質問を投げかけてしまった。

「そのままの意味さ。今の僕は右肩から先が無くてね、あと一時間もすれば完全に再生するからそれまで待っててくれないかな」

「いや……リッチモンドを……? いつだ? というか場所を教えてくれればリジェネレイションで」

「勝手に再生するからそれには及ばないよ。あの大きな異形体が出現した後、僕は魔人を自称する雑魚共を葬っていたんだけどねぇ……完全に不意を突かれたよ。忌々しい事に闇属性魔法で僕の右肩から先を吹き飛ばしてくれたよ」

「まさか! リッチを!?」

「僕も驚いたよ。なんせどこからやられたのかも分からない。恐らくは目の届かない遠距離から魔法を飛ばしてきたんだろう。しかもわざと右手だけ飛ばしたように思える。実に不愉快だよ」

「そんな……」

「まぁそういう事だからもうしばらく待ってくれよ。それじゃあ」

「ちょ待っ!」

 リッチモンドは言いたいだけ言った後、すぐに思念を切った。
 遠距離からの魔法と聞いてすぐに思い浮かぶのは、ウルベルトの使っていた魔筒クトゥグアだ。
 しかしアレは火属性オンリーの筈だし、クトゥグアそのものはウルベルトの遺体と共に置いてある。
 不意を突かれたとはいえ、リッチの右肩から先をピンポイントで吹き飛ばし、尚且つ使用された魔法は闇属性。
 闇属性そのものと言っていいリッチの防御力を容易く貫いた事実。
 もしかするとクトゥグアと似たような兵器を持つ魔人か、ノーザンクロスに与する人間がいるという事だ。
 アザトース、魔人ときて正体不明の魔法使いときたもんだ。
 人員が増えて好転するかと思いきや、さらなる脅威が出てきてしまった。
 やはりクライシスの言う通り、戦いが終わるまで決して油断は出来やしないのだと思い知らされた気分だ。
 とりあえずはリッチモンドの自己再生が終わり次第、合流して詳しく聞かなければならない。
 
「なぁ」

 俺が頭を抱えるように考え込んでいると、背後からメタルラインの声が聞こえた。
 どこか伺うような、自信なさげな声だった。

「なぁフィガロ様よ。ちょっと話を聞いて欲しいヤツがいるんだが……いいか?」

「はい、かまいませんよ。ご無事で何よりです」

「悪いな……俺としても引き合せるか悩んだんだが……本人が殺されても構わないと言うんでな」

「殺されるって……話を聞くだけなのでしょう? 物騒すぎますよ」

「んー……どうだかな。会えば分かる。おい、出て来いよ」

 メタルラインは俺をチラチラと見ながら、廊下の曲がり角に向けて声を掛けた。
 そして声を受けた者がゆっくりと姿を現してこちらへ歩いて来た。

「クックック……我は混沌、そして深淵を覗きし半魔の修羅。我が左腕に封じられし魔がお前を食らうだろう」

「はぁ?」

「だからお前なぁ……」

 灰色と茶色が斑に入った髪をかきあげ、見下して睨めつけるように俺を見下ろす長身の青年が、実に変わった自己紹介を披露してくれた。
 
しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。