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第八章 ロンシャン撤退戦ー後編ー
三八一話 這い寄る混沌
しおりを挟む「魔人達は……獲物を求めています。非常に好戦的でこちらの言い分は全く通りません」
アーマライト王が口を閉じると、挙手をして口を開いたのは教会騎士団の一人だった。
よく見れば先の戦いで俺を天使だなんだと言っていた女騎士だった。
女騎士が発言した事を皮切りに、魔人と相対した赤龍、黒龍、冒険者達が次々と発言を始めた。
基本的な魔人の姿は人間と変わりないけれど、中には角を生やした者や腕が四本ある者などもいるという。
さらには魔人の中には獣人や亜人も含まれており、それらは通常人種の魔人よりも遥かに強い力を持つのだとか。
亜人の魔人と相対した赤龍の騎士達は数人がかりで討ち取ったという。
冒険者から魔人になった者達は様々な職種を持つ者が多く、魔法使いや剣士、戦士は勿論のこと、オリジナル職を持つ者などもいて一筋縄ではいかないようだ。
しかも冒険者はパーティを組む。
基本的に魔人は力の過信により単独行動を好むが、パーティーを組む魔人もいたというのだからタチが悪い。
「だから俺達も四、五人でパーティーを組んだ方がいいと思うんだがどうだろうか」
赤龍騎士団の一人が提案すると皆が頷いた。
革命軍が正規軍と合流した事で、こちらの戦力は大幅に増加している。
正確な総数は判明していないけれど、作戦立案は俺の仕事では無いし、気にした所ですぐに増減するだろうからな。
「寄せ集めのパーティーでは陣形や連携に乱れが出る。よって過去に面識のある者同士でパーティーを編成する。編成や部隊の振り分けなどの細かい事は後ほど行う。今は情報が欲しい。誰でもいい、何でもいい。役に立たないかもしれない、などと考えず発言してくれ」
アーマライト王がそう言うと、一同は顔を見合わせ一人、また一人と口を開き始めた。
会議は順調に進んでいるのを見て、俺はシャルルに一言断ってから一度部屋から出た。
未だ戻らないリッチモンドの行方を知るためにウィスパーリングを起動させた。
「リッチモンド、今どこにいるんだ?」
「やぁ。僕かい? 僕なら城の中にいるよ」
「はぁ!? じゃあなんで出てこないんだ?」
「体がね、まだ完全に再生していないからなんだ」
「……は? 再生していないって?」
リッチモンドの言葉が理解出来ず、オウム返しに質問を投げかけてしまった。
「そのままの意味さ。今の僕は右肩から先が無くてね、あと一時間もすれば完全に再生するからそれまで待っててくれないかな」
「いや……リッチモンドを……? いつだ? というか場所を教えてくれればリジェネレイションで」
「勝手に再生するからそれには及ばないよ。あの大きな異形体が出現した後、僕は魔人を自称する雑魚共を葬っていたんだけどねぇ……完全に不意を突かれたよ。忌々しい事に闇属性魔法で僕の右肩から先を吹き飛ばしてくれたよ」
「まさか! リッチを!?」
「僕も驚いたよ。なんせどこからやられたのかも分からない。恐らくは目の届かない遠距離から魔法を飛ばしてきたんだろう。しかもわざと右手だけ飛ばしたように思える。実に不愉快だよ」
「そんな……」
「まぁそういう事だからもうしばらく待ってくれよ。それじゃあ」
「ちょ待っ!」
リッチモンドは言いたいだけ言った後、すぐに思念を切った。
遠距離からの魔法と聞いてすぐに思い浮かぶのは、ウルベルトの使っていた魔筒クトゥグアだ。
しかしアレは火属性オンリーの筈だし、クトゥグアそのものはウルベルトの遺体と共に置いてある。
不意を突かれたとはいえ、リッチの右肩から先をピンポイントで吹き飛ばし、尚且つ使用された魔法は闇属性。
闇属性そのものと言っていいリッチの防御力を容易く貫いた事実。
もしかするとクトゥグアと似たような兵器を持つ魔人か、ノーザンクロスに与する人間がいるという事だ。
アザトース、魔人ときて正体不明の魔法使いときたもんだ。
人員が増えて好転するかと思いきや、さらなる脅威が出てきてしまった。
やはりクライシスの言う通り、戦いが終わるまで決して油断は出来やしないのだと思い知らされた気分だ。
とりあえずはリッチモンドの自己再生が終わり次第、合流して詳しく聞かなければならない。
「なぁ」
俺が頭を抱えるように考え込んでいると、背後からメタルラインの声が聞こえた。
どこか伺うような、自信なさげな声だった。
「なぁフィガロ様よ。ちょっと話を聞いて欲しいヤツがいるんだが……いいか?」
「はい、かまいませんよ。ご無事で何よりです」
「悪いな……俺としても引き合せるか悩んだんだが……本人が殺されても構わないと言うんでな」
「殺されるって……話を聞くだけなのでしょう? 物騒すぎますよ」
「んー……どうだかな。会えば分かる。おい、出て来いよ」
メタルラインは俺をチラチラと見ながら、廊下の曲がり角に向けて声を掛けた。
そして声を受けた者がゆっくりと姿を現してこちらへ歩いて来た。
「クックック……我は混沌、そして深淵を覗きし半魔の修羅。我が左腕に封じられし魔がお前を食らうだろう」
「はぁ?」
「だからお前なぁ……」
灰色と茶色が斑に入った髪をかきあげ、見下して睨めつけるように俺を見下ろす長身の青年が、実に変わった自己紹介を披露してくれた。
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