欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第八章 ロンシャン撤退戦ー後編ー

三八三話 魔人?ダンケルク

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「おいおい、アレが魔人だって? 随分ナヨナヨしてんじゃねぇか」

「黙りなさいシュミット」

「へーへー、サーセンね」

 いつの間にか場に混ざっていたシュミットがヤジを飛ばすが、ヘカテーのピシャリとした一言で彼はそっぽを向いた。
 
「ダンケルクよ。お主がこの場に現れた理由を聞かせてくれ」

「はい。ご列席の皆様が怪しむ気持ちも分かります。これから話す事は全て真実です。どうか信用して頂けることを願います」

 ダンケルクは深々と四十五度の礼をした後、視線を一身に受けながらも話を始めた。

「まず僕は……というより魔人達の殆どはゼロ魔導師長様より持ちかけられた【強くなりたければ共に来い】という誘いに乗った者達です。僕は元々低等級の冒険者で、あまり実力も高くありませんでした。ゼロ魔導師長様の誘いに乗った冒険者達は、皆それぞれの理由を持って強くなりたいと望んでいました」

「ゼロが……そんな事を……」

 アーマライト王が掌でおでこを抑え、力無く頭を振る。
 その様子を見ながらダンケルクは続ける。

「ですが……それは狂気の片鱗でした。上手い話には裏がある、去りゆく僕に友人が投げかけてくれた言葉ですが……友人の言う通りだなと思いました。僕達、総勢八十弱の人数が連れて行かれたのは地下迷宮の最下層にある魔導師長様のラボでした」

「地下迷宮の最下層だと? そんな危険な場所に大所帯で行けるものか!」

 赤龍騎士団の幹部の一人が声を荒らげてダンケルクに突っ込むが、ダンケルクは真剣な瞳で幹部を見つめ返して言った。

「いえ、それが行けたんです。魔導師長様がお作りになられた魔導技巧……魔導師長様は【ゲート】と呼んでおりましたが、恐らくは昇降機の類だと思います。ご希望であれば僕がご案内しますが……今は無理かと」

「何故だ!」

「ゲートは地下迷宮二層の端にある隠し部屋にあるからです」

「ゲートに行くには魔人達の目を抜け、アザトースの下を通らなければならない……という事だな?」

「陛下の仰る通りです。ラボに案内された僕達に待っていたのは……想像を絶する非人道的な行いでした。ここからは非常におぞましい内容ですので御容赦を……僕達は一人一人檻に隔離され、試練だと言われて魔導師長様が作られた薬を飲まされました。まずはこの段階で数人が死亡しました。体を内側から溶かされるような強烈な痛みと吐き気がショック死を引き起こしたのでしょう。耳を塞ぎたくなるような叫びがフロアに響き渡りましたが、僕達はそれどころではありませんでした。試練を突破した者達の中には帰りたいと騒ぐ者もいましたが……そういう人はすぐに殺されました」

「入ったら最後、というわけか……酷いな」

「はい。抵抗すれば殺されると分かった面々は大人しくなり、魔導師長様のなすがままでした。その後も一人ずつ檻から出され、痛みを抑える魔法を掛けられてから体中を切り開かれました。目の前で自分の体が切り開かれていくのです、発狂する者もいました。そして体の内側に手が入り、臓器、骨、神経などをまさぐられ筋肉や神経などはモンスターのモノに取り替えられていきました。骨は金属のような液体で包まれ、骨が徐々に変質していくのが分かりました。痛みはなくともそれ以外の感覚は残っていましたからね」

 そこまで言うとダンケルクはおもむろにシャツをたくしあげ、顕になった腹部に指を突き立て、腹部の肉を強引に引き剥がした。

「何を!」

 誰かの声が上がるが、ダンケルクは痛みを感じていないようで平然としている。
 肉が剥がれた部分からは赤黒い血が溢れるが、皆の視線はそれよりもダンケルクの体内に向けられていた。

「うぷっ……!」

 教会騎士団の一人が口を押さえ、その場に蹲る。
 本来胃や腸などがあるべき場所にソレは存在せず、鋼線が編み込まれたようなモノが剥き出しになっている。

「見て頂いた方がわかり易いかと思いまして。このように臓器は特殊な繊維で編み込まれたもので守られています。ちなみにこの奥には【ソウルコア】と言うとあるモンスターの器官が接合されてます。これにより空気中の魔素や瘴気を強制的に吸収し、自らの糧とする事が出来ます。このソウルコアによって人間では行使出来ないような魔力を生み出す事が出来ます」

「傷が……治っていく……」

 淡々と説明を続けるダンケルクとは対照的に、生き物のように蠢いて再生していく腹部を引き攣った顔で凝視する面々。

「因みにこの改造手術から生還したのは僕を含めて約三十人。残りの人達は発狂するか、モンスターの組織と適合せずに自壊したり、そのまま息を引き取りました。素材は地下迷宮の最下層に巣食うモンスターを使用していると豪語していましたね。生き残った者達は粘度の高い液体で満たされたプールに数日沈められ、ようやく外に出る事が出来たのです。ざっくりと説明しましたが、これ以外にも様々な施術が行われました。闘争本能を高める薬や、射出機構を備えた魔導技巧を埋め込まれたり……魔導師長様は気の向くまま、思いつくままに僕達を改造していきました。なので個人個人でそれぞれ違う力を持つに至りました。そして……ここからが本題になります」

 言葉を切ったダンケルクは一度皆を見回し、静かに口を開いた。

「魔導師長様は……ホムンクルスです」
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