欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第八章 ロンシャン撤退戦ー後編ー

三九二話 最強の魔人

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「どうぞお手柔らかにっ! 【ブラストニードル】!」

『甘いわ!』

 余裕綽々で浮かぶガバメントへ爆発する石針を射出するも、ガバメントは剣を一振りしただけで俺の魔法を全て斬り伏せた。
 間髪入れずに同じ魔法を連続で放つも結果は同じ、リッチモンドも十本の漆黒の槍を形成して時間差で撃ち込んでいくが、それも二本の剣さばきにより斬り捨てられてしまう。
 
「剣で魔法を斬るだと……! とんでもねぇ事すんなぁ!」

 空覇で空に留まっているシュミットが驚愕の声を上げ、ガバメントは多少イラつきのこもった声と共に光弾を放つ。

『本気で来なければ……死ぬぞ?』

「お手並み拝見というやつです、よっ!」

 迫る光弾を拳と脚で弾き飛ばし、こちらも威力を上げた魔力弾を数十発単位で数度放つ。
 リッチモンドも暗黒弾をダース単位で連発しており、灰色の魔力弾と暗黒弾がスコールの如く降り注いでいく。

「……こっちはこっちで枢機卿の光弾を殴り飛ばすかよ……んな事する奴初めて見るぜ」

 シュミットはまだ接近するタイミングでは無いと判断したのか、ガバメントの出方を伺っている。
 俺とリッチモンドの攻撃が次々と着弾するが、ガバメントの周囲には金色に輝く膜が球状に生成され、全ての攻撃が無効化されてしまう。
 あれが枢機卿の防御魔法なんだろう。
 どれぐらいの硬度があるか、試してみるとしよう。

「リッチモンド、魔法を放ち続けて牽制しておいてくれ。一発デカいのをお見舞いする」

「了解だよ、任せておくれ」

 フレイムボルテックスランスを使おうかとも思ったが、この際新しい魔法を試してみようと思った。
 幸いにもガバメントはこちらを舐め切っているので、大きく動く様子もない。
 リッチモンドは暗黒弾と共に、様々な魔法を緩急をつけて放ち続けている。
 今から発動するのは、市街地を更地にするために使った、集団戦略魔法【カラミティフレア】からヒントを得て考案したある意味オリジナルとも言える魔法。
 魔法の内容としては、一定の範囲を障壁で囲み、その障壁の中で高威力の爆発を複数回引き起こすという単純な構成だ。
 外側に向かう爆発の力を強制的に内側に向け、威力を底上げさせるのだ。
 限定空間を作り出す障壁のイメージは、ドライゼン王の絶対防壁のような強固なもの。
 爆発はカラミティフレアと同じような威力をイメージしていくと、【創】の文殊が淡く光り、俺のイメージ力を増幅してくれる。

「リッチモンド!」

「いつでもいいよ!」

「これでも喰らえ! 【クリアノヴァ】!」

 ガバメントを覆う金色の膜、その外側を正十二面体の赤い障壁がさらに囲い込む。
 
『何をする気だ? 例えどんな魔法だろうと……』

 枢機卿の防御魔法に絶対の自信があるのか、ガバメントは慌てた様子も無く成り行きを静観して喋っていたが、障壁の内側に生じた白金に輝く十の球が膨れ上がり、次々と巻き起こる爆発音によってその言葉は掻き消された。
 爆発は数十秒にも及び、繰り返される爆発の威力によって張っている障壁が心臓の鼓動のようにドクンドクンと脈動している。

「す、すげぇな……」

 爆発が終わり、ガラスが割れるような音が鳴ると黒い煙が一気に噴き出した。
 いつでも動けるように臨戦態勢を取ったまま、煙が晴れるのを待つ俺とリッチモンドとシュミット。
 
『か……ひゅー……お、のれ……なん、だ、今、のは……』

「まだ、生きてるとは驚きですね」

「魔人はタフだからな」

「解せないね」

 煙が晴れるとそこには、全身火傷を負い、所々の箇所を欠損したガバメントの姿があった。
 致命傷にはならなかったものの、クリアノヴァであれば枢機卿の防御魔法を突破出来る事がわかった。
 
『く……油断大敵というやつか……』

「チッ……一撃で仕留めるか、枢機卿を使い物にならなくさせねぇとジリ貧だぞこりゃ」

 全身に火傷を負い、足や脇腹や頭部の一部などを失っていたガバメントは、枢機卿の治癒魔法によりみるみるうちに全快していった。
 首を左右に振った後、ガバメントは深く息を吸い、大きく吐き出してからゆっくりと口を開いた。

『侮るなかれ、だな。幼いモンスターでも追い詰められれば考えもしない力や能力を発現させる事がある。俺は少々新しい力に酔っていたようだ……礼を言おう』

「個人的にはそのままおやすみ頂いてくれたほうが良かったんですけどね……」

『俺も全身全霊をもってお前達を叩き潰そう。そしてゼロと共に新しい世界を作り上げるのだ』

 朗々と語るように話すガバメントからは今までの余裕が消え、凛とした空気が漂っている。

「おい、気を抜くなよ。ガバメントさんはどうやらヤル気になっちまったみてぇだ」

「援護なら僕に任せてくれよ。フィガロと騎士さん」

 眼光鋭くこちらを睨みつけるガバメントは剣を構え、静かに言った。

『ゆくぞ』

 本気になったガバメントからの圧力は凄まじく、嫌な汗が背筋を伝う。
 これでガバメント、アザトース、ノーザンクロス、アビスシリーズの魔人達、四つの脅威に対抗する最終決戦が幕を上げたのだった。
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