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第九章 穏やかな日々
四一六話 隠し部屋へ
しおりを挟むピンクの用意してくれた夕飯を平らげた次の日の事。
俺とハンヴィーとシロンは、大きなスコップを手に金庫室へと来ていた。
なぜスコップかと言うと、シロンとハンヴィーに必要だと言われ、急遽買ってきたのだ。
「それじゃ案内してくれ」
「はい」
朝食のブリオッシュ二つと果実ジュースで腹ごなしをした俺と二人は、昨日言っていた隠し部屋へと向かう。
金庫室の奥はL字型になっており、目的の場所はその先にあるという。
俺
「私はぜんぜん分からなかったんですよー。ハンヴィーの鼻はやっぱり凄いね」
「そ、そう? ありがと」
だだっ広い金庫室を歩く俺達、シロンは楽しそうに話し、ハンヴィーは照れくさそうに鼻の頭を人差し指でポリポリと掻いていた。
「隠し部屋って言ってたよな。どんな感じなんだ?」
「それは……見れば分かりますよ。言葉で説明するより見て頂いた方が」
「それもそうだな」
やがて俺達は金庫室の行き止まりへと辿り着き、行き止まりの右側に縦長の入口があった。
これが隠し部屋への入口だろう。
ハンヴィー曰く巧妙に隠されたスイッチがあり、それを押したら開いたのだという。
金庫室はロック式だったのにここだけスイッチとは……よく分からない構造をしてるな。
「暗いな……」
中に入ると、金庫室からの明かりで入口付近は見渡せるが、奥の方までは見えない。
どうやら明かりは死んでしまっているらしい。
指先に光属性魔法の明かりを灯し、シロンとハンヴィーを伴って奥まで進む。
「これは……崩れてるのか……」
部屋はレンガ造りで二メートル四方の小部屋のようだった、壁には金具が取り付けられており、壁際に設置された作業台の上には工具が乱雑に置かれていた。
金具も工具も錆び付いてしまっていて、使い物にはならないだろう。
けどここで一つ疑問が沸いた。
金庫室の中は埃こそあれど、商品の劣化は殆ど見られなかった。
だけどここにある工具などは時相応の痛み方をしている。
この違いは一体なんなのだろうか。
部屋の奥は天井が崩落してしまったのか土砂で埋まってしまっており、部屋の全容を明かすにはこの土砂をどうにかしなければならない。
なるほど、だからスコップが必要だと言っていたんだな。
けど天井に空いてる穴を塞がなければ、土砂を退かした所でまた上にある土が落ちてきてしまう。
「遮断するしかないな」
「遮断?」
「まぁ見ててくれ」
「はい」
俺の呟きを聞き、不思議そうに視線を送ってくるシロンのとハンヴィーを少し下がらせてから、文殊を起動させた。
穴を塞ぐ、ただそれだけの事だ、大して難しくはない。
「キャンズ・エクスパンション【マテリアルウォール】」
俺は対物理障壁を天井に這うように五式展開させて、土砂と天井の上にある土を切り離した。
これで二時間程度は稼げるだろう。
「よし、掘るか!」
「「は!」」
魔法で明かりを作り出した後、俺とハンヴィーとシロンはうず高く積もった土砂をせっせと掘り出していったのだった。
掘り出した土砂を運び出す一輪車が無いので、とりあえず床に敷くように撒いて平らにしながら山を崩していく。
かれこれ三十分ほど経過しただろうか、ようやく土砂の山は取り除かれ、奥の方へ行く事が出来るようになった。
奥もやはり明かりが付いておらず、果てのないような漆黒が広がっている。
「行くよ」
「ち、ちょっと怖いですね」
「シロンは怖がりね、大丈夫よ、何もいないわ。きっと」
指先に灯した魔法の明かりを頼りに、俺とシロン、ハンヴィーは奥へと足を踏み出した。
奥はかなり広くなっているようで、横幅だけで四メートル近くはあるだろう。
「フィガロ様! これ!」
「どうした! わっ!」
「ひっ! ひいい! ここここっちにも!」
ハンヴィーが警戒したような声を上げ、そちらを見ると白骨化した馬の亡骸が横たわっており、その数は全部で四体。
シロンは怯え切った声で俺にしがみついて反対方向を指さした。
そこにも同じく白骨化した馬が横たわっていて、その後ろには大きく立派な馬車が二台鎮座していた。
「そうか……ここが搬入路だったんだな」
あれだけある金庫室の中身は、全てここから運び入れられていたんだろう。
この馬達はリッチモンドの呪いにより命を落としたと見て間違いないな。
軽く手を合わせると、二人も真似をして手を合わせてくれた。
生憎と屋敷の効力はここまで及ばなかったらしく、馬車は使い物にはならなそうだった。
「先に行くか?」
「フィガロ様が行くのであれば」
「お供します!」
「分かった。モンスターなんかはいないと思うけど、暗いから気をつけろよ」
「「はい!」」
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