欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

文字の大きさ
254 / 298
第九章 穏やかな日々

四一六話 隠し部屋へ

しおりを挟む

 
 ピンクの用意してくれた夕飯を平らげた次の日の事。
 俺とハンヴィーとシロンは、大きなスコップを手に金庫室へと来ていた。
 なぜスコップかと言うと、シロンとハンヴィーに必要だと言われ、急遽買ってきたのだ。

「それじゃ案内してくれ」

「はい」

 朝食のブリオッシュ二つと果実ジュースで腹ごなしをした俺と二人は、昨日言っていた隠し部屋へと向かう。
 金庫室の奥はL字型になっており、目的の場所はその先にあるという。
 俺
「私はぜんぜん分からなかったんですよー。ハンヴィーの鼻はやっぱり凄いね」

「そ、そう? ありがと」

 だだっ広い金庫室を歩く俺達、シロンは楽しそうに話し、ハンヴィーは照れくさそうに鼻の頭を人差し指でポリポリと掻いていた。

「隠し部屋って言ってたよな。どんな感じなんだ?」

「それは……見れば分かりますよ。言葉で説明するより見て頂いた方が」

「それもそうだな」

 やがて俺達は金庫室の行き止まりへと辿り着き、行き止まりの右側に縦長の入口があった。
 これが隠し部屋への入口だろう。
 ハンヴィー曰く巧妙に隠されたスイッチがあり、それを押したら開いたのだという。
 金庫室はロック式だったのにここだけスイッチとは……よく分からない構造をしてるな。

「暗いな……」

 中に入ると、金庫室からの明かりで入口付近は見渡せるが、奥の方までは見えない。
 どうやら明かりは死んでしまっているらしい。
 指先に光属性魔法の明かりを灯し、シロンとハンヴィーを伴って奥まで進む。

「これは……崩れてるのか……」

 部屋はレンガ造りで二メートル四方の小部屋のようだった、壁には金具が取り付けられており、壁際に設置された作業台の上には工具が乱雑に置かれていた。
 金具も工具も錆び付いてしまっていて、使い物にはならないだろう。
 けどここで一つ疑問が沸いた。
 金庫室の中は埃こそあれど、商品の劣化は殆ど見られなかった。
 だけどここにある工具などは時相応の痛み方をしている。
 この違いは一体なんなのだろうか。
 部屋の奥は天井が崩落してしまったのか土砂で埋まってしまっており、部屋の全容を明かすにはこの土砂をどうにかしなければならない。
 なるほど、だからスコップが必要だと言っていたんだな。
 けど天井に空いてる穴を塞がなければ、土砂を退かした所でまた上にある土が落ちてきてしまう。

「遮断するしかないな」

「遮断?」

「まぁ見ててくれ」

「はい」

 俺の呟きを聞き、不思議そうに視線を送ってくるシロンのとハンヴィーを少し下がらせてから、文殊を起動させた。
 穴を塞ぐ、ただそれだけの事だ、大して難しくはない。
 
「キャンズ・エクスパンション【マテリアルウォール】」

 俺は対物理障壁を天井に這うように五式展開させて、土砂と天井の上にある土を切り離した。
 これで二時間程度は稼げるだろう。
 

「よし、掘るか!」

「「は!」」

 魔法で明かりを作り出した後、俺とハンヴィーとシロンはうず高く積もった土砂をせっせと掘り出していったのだった。
 掘り出した土砂を運び出す一輪車が無いので、とりあえず床に敷くように撒いて平らにしながら山を崩していく。
 かれこれ三十分ほど経過しただろうか、ようやく土砂の山は取り除かれ、奥の方へ行く事が出来るようになった。
 奥もやはり明かりが付いておらず、果てのないような漆黒が広がっている。
 
「行くよ」

「ち、ちょっと怖いですね」

「シロンは怖がりね、大丈夫よ、何もいないわ。きっと」

 指先に灯した魔法の明かりを頼りに、俺とシロン、ハンヴィーは奥へと足を踏み出した。
 奥はかなり広くなっているようで、横幅だけで四メートル近くはあるだろう。

「フィガロ様! これ!」

「どうした! わっ!」

「ひっ! ひいい! ここここっちにも!」

 ハンヴィーが警戒したような声を上げ、そちらを見ると白骨化した馬の亡骸が横たわっており、その数は全部で四体。
 シロンは怯え切った声で俺にしがみついて反対方向を指さした。
 そこにも同じく白骨化した馬が横たわっていて、その後ろには大きく立派な馬車が二台鎮座していた。
 
「そうか……ここが搬入路だったんだな」

 あれだけある金庫室の中身は、全てここから運び入れられていたんだろう。
 この馬達はリッチモンドの呪いにより命を落としたと見て間違いないな。
 軽く手を合わせると、二人も真似をして手を合わせてくれた。
 生憎と屋敷の効力はここまで及ばなかったらしく、馬車は使い物にはならなそうだった。

「先に行くか?」

「フィガロ様が行くのであれば」

「お供します!」

「分かった。モンスターなんかはいないと思うけど、暗いから気をつけろよ」

「「はい!」」
しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。