拝啓、いつかの僕達へ ~枯澄高校天文学部活動記録~

一☆一

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夜を越えて

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「っはー……!! 綺麗だったぁぁ……っ!!」

 感極まったように手をブンブンと振り回し、大声で叫びまくる女子生徒。
 いいのか、封鎖されてる筈の屋上で、それもこんな、完全下校も終わっている頃に大声を出しまくって。見回ってる警備員さんとかに怒られないだろうか。
 事情は何もわからないが……取り敢えず最悪の想像はしておくべきだろう。流された俺にも問題はある訳だ。

「先輩達は結局来なかったな……ま、間に合わなかったらって事か。流石に門しまってから忍び込むのはきついだろうしな」
「……これ、許可とか取ってないのか?」
「ん? ああ……屋上入ってんのに付き添いのセンコーもいない時点で察せよ」

 大分高度な読みを要求されてた。知るかよ。
 っていうか何だ、やっぱり駄目なんじゃねーか……!!

「ま、こういう時は無理に出ようとせず学校に泊まるこったな。まずバレねー。あそこの部室に布団あっから勝手に使えよ」
「勝手に使えってお前……お前が勝手に此処まで運んで来たんだからもうちょい責任持てよ。俺、学校に泊まった事とかないし」

 いや、ある奴の方が少ない。というか真っ当に生きてたら普通無いぞそんな経験。

「はぁ!? テメエが俺の、ぱ、パンツ見てるのが悪いんだろ!?」

 顔を真っ赤にして怒るそいつに、俺は当然反論する。

「お前がスカート短くしてるから見えたんだろ? それに自分で自分の視界塞いどいてぶつかったら『お前のせい』も無いだろう……」

 ぐぬぬ、と唸り反論の口を閉じる女子。
 此処でちゃんと理解して、意味不明な反論をしてこないだけ理性的な方だ。ぶっちゃけ俺は、蹴られたことに関しては責められる謂れはない。見たのは申し訳ないし、教えたのもデリカシーが無いかもしれないが、悪いとは思わない。

「分かったよ……じゃあ、取り敢えず付いて来い。何はともあれ部室に着いてからだ」
「部室って、あの黒ずくめの?」
「それ以外に何処があんだよ。早く行くぞ。守衛の周回ルートからするとそろそろ行かないと戻れなくなっちまう」

 ──こいつ手慣れてやがる……

 早くも関わった事を後悔するが、今は言う通りにしなければ俺の身が危うい。
 極力音を立てないように軽快に階段を駆け下りる女子の後ろを、俺はガシガシと豪快に追った。
 すぐさま飛んでくる非難の目。

「もうちょい静かにしろよお前……!!」
「抜き足差し足忍び足なんて慣れてないと無理だっての……!」


 ◇◆◇◆◇◆


 (自称)部室は最上階の端にあったし、どうやら守衛の周回ルートも熟知してるらしい女子生徒の手助けもあって、これといった問題もなく辿り着いた。昼は常に明かりが点いているだけに暗い廊下は新鮮でおどろおどろしさを感じずにはいられなかったし、第一印象最悪な他人を信用して身をまかせるスリルもあったが、まぁなんとかなった。
 スカートのポケットから鍵を取り出し、ガチャリと重厚な音と共に錠が開く。

「ほら、入れ。言っとくが電気はつけるなよ。幾ら何でも光は漏れる。地面に危ない物は置いてねえから」
「……肝心の布団とやらの場所もわかんないんだが」
「もう敷いてあるよ、先輩が使う筈だったからな。まぁ、来れなかったらしいけど……その辺だな。上靴は脱げよ」

 この辺だ、と布団をポンポンと叩く。
 言われた通り靴を脱ぎ、足を踏み入れる。
 ……知らない人が、シャワーも浴びず何度も入った布団か……
 若干躊躇われたが、床で寝るのも勘弁被るのでしょうがない。

「じゃ、俺は寝る……お疲れ」
「あ、おい……」

 止める間もなく、別の布団に入り寝息をたて始める。
 スカート見られるのは駄目で、男と一つ屋根の下一緒に寝るのは、いいのか……
 女子の貞操観念は、よくわからない。

「……俺も寝るか」

 正直ついさっきまで倒れてたからそこまで眠たくもないが……起きててもやることはないし。
 掛け布団を被り、目を閉じる。
 瞼の裏には、まださっきの星の群れが爛々と輝いていた。
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