欠片の軌跡④〜南国の王太子

ねぎ(塩ダレ)

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第三王子編

訪問者

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「なるほどね~。そう言うことならこっちでも少し考えておくわ~。ある意味、ちょうど良かったわ~。」

「よろしくお願いします。」

サークがギルの部屋をノックして開けると、そんな会話が耳に入った。

「入るぞ~?……て、師匠?どうしたんです?何でここに?」

中にはサークの魔術師としての師である、ロナンドがいた。
久しぶりに見た顔にサークはきょとんとした。
そう言えばしばらく魔術本部に行っていないな、と思う。
色々目まぐるしくて忘れていた。
そんなサークに、ロナンドはいつもの調子で笑った。

「久しぶり~サークちゃん!うふふ、ちょっと若い男達の濃厚な空気が吸いたくなってね~?」

「あ~ハイハイ。」

ここは聞く必要はない。
サークはロナンドの言葉を軽く流した。
慣れたものである。

「どうした、サーク?」

「ああ、殿下の事でちょっと厄介な事になりそうだから、早めに耳に入れておこうかと思ってさ。」

「何だ?」

「……いや、後で話す。で、師匠はどうしたんです?」

ギルにそう声を掛けられ答える。
どうしようか悩んだが、まだ未確定な話だし後に回す事にした。
それよりなぜ、ロナンドがいるのかが気になった。

「あんたがなかなかこっちに来ないから!顔を見に来たのよ!」

「すみません……。副隊長代理になってバタバタしてたもので……。と言うか、何で師匠、サムの結婚式に来なかったんですか?」

考えてみれば不思議だ。
サムとロナンドは仲が良かった。
ここも家柄云々の関係なのかもしれない。

「魔術師って色々面倒くさいのよ~。こっちでの立場は~!……それに、むこうでも他に色々あったのよ。大変そうだからサークちゃんには黙ってたんだけどさ~。」

何故かさらっと大変な事を言われた気がする。
どうやら魔術本部の方でも何か問題が起きているようだ。

「え!?何があったんですか!?」

「ん~?とりあえず、また少し魔術本部に来てくれる?後ね~、サークちゃん、今、私が就いている役職引き継ぐ事になるからよろしくね?」

は??
さっきから、大事をさらっとブッ混んできてません!?師匠!?
サークは目を白黒させた。

「は!?え!?ちょっと待って下さいよ!役職!?」

「そ、私、こっちと魔術本部のパイプ役って言うのかな~?王宮魔術師総括って言うのやってるんだけど~。それ、サークちゃんに任せるから。」

「え!?冗談でしょ!?」

「本当よ~?良かったわ~!これで私も完全にこっちと繋がりが切れるわ~!」

「いやいやいや!!待って下さいよ!!」

さすがのサークも焦った。
ただでさえ副隊長代理の仕事でアップアップなのに、魔術本部の役職にまで就いたら、えらいことになる。

「でもね~?結構前から、魔術本部としてサークちゃんに何か肩書きつけないと~って話してたでしょ~。」

「知ってますけど何で今!?」

「だってこっちの人達って肩書きにうるさいじゃない?サークちゃんが色々やってくれてても~、肩書きないと軽視するでしょ~?サークちゃんって移民で平民上がりだから、そういう無駄な蔑みを受けやすいのよ~。そんなの能力には関係ないのにね~。でも貴族社会って無駄にこだわるじゃない~?だからちゃんとサークちゃんは魔術本部の一員なのよって示してカバーしとかないとさ~、馬鹿にするし、いいように使おうとするから~。」

「いや……でも……今ですか!?」

「今だからよ。」

「……そうした方がいい。爵位を得たとはいえ正式な貴族でもないお前が王宮に出入りするのを、快く思ってない人間は多い。名前だけが独り歩きすると、どこの馬の骨ともしれない奴が殿下に取り入ってでかい顔してると思われ兼ねない。お前が魔術師として実力があり魔術本部の人間だと、わかりやすく示した方がいい。」

言われてみればその通りだ。
忙しすぎて、そこまで考えが至らなかった自分に驚く。

「なるほど……。最近、忙しくて、そういうところまで気が回ってなかった。」

「そ、だから私の役職を引き継がせる事で、私の後継者って意味合いも盛るから。」

「何かすみません……。師匠。」

「いいのよ~!私はこっちと縁が切れて嬉しいし~!」

師匠はにっこりと笑った。
自分で選んだ道だが、ここに来て少し抱え込みすぎた。
色々手も頭も回らなくなっているのは事実だ。
俺が見落としている部分を、回りがこうやってサポートしてくれる事がとてもありがたかった。

「でも、俺が引き継いだら、師匠はどうするんですか?」

「ん~?私も旅に出ようかな~って思ってるの!!」

「は!?」

ロナンドは楽しそうに笑っている。
いやいやいや、何でそうなる?
サークは固まった。
それをロナンドはくすりと笑い、静かに言った。

「何かサークちゃんと出会って、まだまだ学ぶことはたくさんあるんだな~って思ったの。サークちゃんがどんどん外に出て成長していくのを見てたら、このまま閉じ籠って研究していても、何もわからないままなんだって~。」

「師匠……。」

「それに~!旅に出たら!サークちゃんがシルクちゃんに出会ったみたいに!私にもガチムチな雄臭い出会いがあるかもしれないじゃない~!キャーっ!めちゃめちゃ高ぶる~っ!!」

「目的はそっちかいっ!!感動して損したっ!!」

「いいじゃない~!うふふ~!楽しみ~!」

師匠は師匠だとサークは思った。
いやでも師匠、あなたのガチムチな乙女心を受け止めきれる人間がいるとは、俺には思えません……。
サークは何だか頭が痛くなってきていた。

「それじゃ、用件は伝えたわよ?サークちゃん?早めに魔術本部の方にも顔を出してね?」

「はい。」

ウィルの事もある。
バタバタしていて後回しにしていたが、行こうとは思っていたのでちょうどいいのかもしれない。

「じゃ、私、王宮に行って、サークちゃんに引き継ぐ話してくるから。またね?」

「はい。わざわざありがとうございました。」

師匠はそう言って、去っていった。
相変わらず台風みたいな人だと思った。

「……座ったらどうだ?」

「あ、うん。」

ギルにそう言われ、俺はソファーに腰かけた。
何だか疲れた顔をしてるな、と思う。

「どうしたんだ?ギル?何か疲れてるぞ?」

「気にするな。最近、考えねばならない事が多いだけだ。……それで?お前の用件は何なんだ?」

「それがさ……何か面倒な事になりそうでさ~。」

「何だ?」

「……南の国から、殿下に友好訪問の招待状が来た。」

俺の言葉に、ギルはただ黙って顔をしかめた。
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