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第三王子編
こころうつり
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昼食会に現れた王太子はとても不機嫌だった。
お抱えのビショップにでも回復してもらったのだろう、一応、どこにも怪我は見られなかった。
テーブルについた王子の後ろに控える俺を一度、ギロリと睨んだ。
会場警護をしていたギルがおもむろに俺に近づき、耳元に顔を寄せる。
「……ロープを切ったのはお前か?」
「いや?事前にイヴァンが切り込みを、な。」
「面白かったぞ?薔薇を咥えたあいつが落ちるところは……。お前達にも見せてやりたかった……。」
クッと耳元で笑うと、ギルは上機嫌に去っていった。
イヴァンと俺はちらりと視線を合わせ、何事もなかったように正面を向いて黙っている。
まぁ、それは楽しかったんだろうな。
気持ちはわかるが、何もあんなに顔を寄せて耳元に低い声で囁かなくてもいいだろ?
俺は何だか耳が痒くなり、耳の後ろを擦った。
だいぶ反撃が効いたのか皇太子はおとなしい。
でも逆にこうなってくると注意が必要だ。
向こうも慎重になって簡単な手は使わないだろうし、やるならやるで徹底して押し通して来るだろう。
しかも今日の昼食会は王太子と二人きりだ。
さすがにもう料理や食器の類いに手出しはしないだろうが、念の為チェックは全て行った。
昼食は穏やかに進み、王太子もおかしな事は言ってこない。
「リオ、君は誰とも婚約をしていないが、どうしてだい?君ならたくさんそう言った話があってもおかしくないはずだろ?」
「そう言えば、グレッグは婚約者が内定されましたね?おめでとうございます。」
「……ありがとう。でもそれは王太子としての責務だからだ。私が本当に婚約したい人は別にいる……。だからその人を差し置いて、正式な婚約をする事も結婚をする事もないよ。」
「奇遇ですね。私も……想う人がいます。なので、今はどなたからの求婚も受けないつもりです。」
王子がピシャリと言い切った。
うわ~かなり強気で断ったな~。
横にいるイヴァンから、若干のブリザードが放たれているが、気のせいだと思おう。
不可抗力だ!
俺は悪くない!
「……今は?と言うことは、暫くすれば考えられるのかな?……失恋でもしたのか?リオ?」
ところが王太子はどこをどう思ったのか、王子の言葉を逆にチャンスだと捉えたらしい。
凄いな、おい。
心臓に毛がはえてるどころじゃない。
王子もそう言われるとは思っていなかったようで、言葉に詰まる。
まぁ詰まって俯かれたら、そういう事だと認めた事になってしまう。
まずいな……。
良い流れだと思ったが、一気に逆転された感じだ。
王子も何か言わなければと思っているようだが、言葉にならないようだった。
「リオ……。」
皇太子の声色が変わった。
甘ったるい低い声だ。
途端に湧き出る男臭いフェロモン。
仕草もいちいちエロチックだ。
気楽な状況なら、性欲研究者としては一度この皇太子のデータを取りたいものだ。
ここまでいきなり一気に雄フェロモンが出るって、どういう構造なのだろう?
場違いにもそんな事を思う。
「君が傷ついているのがわかるよ……。だからこそリオ、君はこんなにも美しいのかもしれない……。久しぶりに会って、どうしてこんなに心が乱されたのか、その理由がやっとわかったよ……。」
「……お止め下さい。私は失恋などしておりません。グレッグの思い違いです。この話はもうやめましょう。」
「そうはいかない!傷ついているリオを、どうして私が放っておけると?こんなにも君を想っているのに!」
「お止め下さい……。」
王子はしどろもどろにそう言って俯いた。
皇太子は立ち上がり、素早く王子に近づく。
驚いた王子が立ち上がると、そのまま腰に手をまわし引き寄せる。
まずい!
俺とイヴァンは顔を見合わせた。
「グレッグ!悪ふざけにも程がありますっ!!」
「ふざけてなどいない、リオ……。叶わぬ恋など忘れてしまえ。俺が忘れさせてやる……。」
さすがの王子もなりふり構わず王太子を押し退けようとしているが、ガタイ通り力も強いのだろう、華奢な王子の力ではびくともしない。
王子はじたばたもがいて叫んだ。
「やめて下さい!……嫌…っ!!嫌だ!サークっ!!」
「はい、ここにいますよ、殿下。」
王太子の奇行にすぐに動いた俺とイヴァンは、体術の原理でスルッと王子から王太子を引き離した。
二人がかりとはいえ力には自信があったらしい王太子は、いとも簡単に王子を引き離され驚いている。
「……サークっ!!」
王子がぎゅっと抱きついてきたが緊急事態だ。
今回ばかりは仕方がない。
軽く王子の体に腕をまわし、王太子との距離をとった。
近づこうとする王太子をイヴァンが体を張って牽制する。
会場警護のギルもすぐに駆けつけ、何故か王子ごと俺までむぎゅっと抱き締められた。
……何なんだ?この構図は??
「何事ですか!?」
そこにちょうど交代にチタニアさんとファレルさんが会場に顔を出した。
ナイスタイミング!本家ロイヤルガードコンビ!!
「ギルっ!!」
「……わかってる。」
俺が声をかけるとギルは腕を離した。
可哀想だったが俺も王子を体から離し、ギルに預ける。
「サーク……っ。」
「部屋にお戻り下さい!殿下!」
少し俺を振り返りながらも、足早にギルに連れられ王子はチタニアさん達に渡される。
そして会場にいた他の警護部隊も連れて去っていく。
俺とイヴァンは動かず、そのまま王太子と向き合っていた。
仮にも王太子だ。
睨んだり剣や魔術を使う事は出来ない。
しかもここは王太子のホームなのだ。
下手に何かすれば、何倍にも問題を大きくされかねない。
無下に殴られても俺達は文句一つ言えない状況なのだ。
引くことも攻めることもできない。
緊張が場に走っていた。
そんな中、ギルがゆっくり戻って来る。
王子について行かなかったのかと少し驚いた。
ギルは無表情のままゆっくりと王太子に近づき、口を開いた。
「いつもながら手が早いな?」
「……またお前か。いい加減、私とリオの邪魔はしないでくれないか?」
「リオに気持ちがあるなら邪魔はしない。だが、お前は無理矢理リオを振り向かそうとしているだけで、リオの心はお前にはない。」
「相変わらず生意気だな、ギル。」
どういう事だ?
俺とイヴァンは視線を一瞬合わせた。
どうもギルと皇太子は旧知の仲で、口で言い合っても問題ない間柄なようだ。
そのお陰で、少しだけ緊張が和らいだ。
「全く……。今回はお前がおとなしいから、もっとリオに近づけると思ったのに……。何なんだ?この魔術師は!?」
皇太子は苛ついた様子でそう吐き捨てた。
この魔術師…??
俺ですか!?
「……はへ!?」
思わずすっとんきょうな声が出る。
慌てて口をふさいだ。
イヴァンが横で俺以上に焦った顔をしている。
でも仕方ないだろ?!
いきなり俺を指定して避難してきたんだから!!
「おい、ギル、何だこいつは?」
皇太子はずかずかと大股で歩くと、俺の前に立った。
俺は無言のまま王太子を見上げる。
でかいな、マジで。
ギルもでかいけど、もっとでかいんじゃないか?
俺は別に小柄な訳じゃないが、苛ついている事もあり妙な圧を感じる。
ビビリはしないが、こちらからは手出しできないのでどうすることもできない。
これは一発、殴られたりするんだろうか?
理不尽だなぁ~。
「……触るな。うちの秘蔵っ子だ。」
王太子が俺の襟首を掴もうとしたので、ギルがサッとその手を払った。
…………。
払ったのは良いが、何でお前が俺の肩を抱く!?
だいたい何なんだよ??秘蔵っ子って??
ギルが過剰に俺を庇うので、かえって王太子の興味を引いたらしい。
バッと素早い動きで俺の襟首を掴むと、力ずくでギルから奪い取って俺を引き寄せた。
何なんだ!?
何なんだ、いったい!?
俺は訳がわからず固まって、イヴァンは何が何だかわからずぽかんとしている。
「ギルの秘蔵っ子か……。ん!?お前……っ!?」
ギルが過剰反応するものだから面白がって俺を引寄せた王太子。
しかし急にまじまじと俺を見た。
何だ!?
嫌な予感しかしないぞ!?
固まっている俺に対し、王太子はいきなりぎゅっと腰を抱き寄せた。
そして首もとに顔を埋め、匂いを嗅いだ。
「……ぎ、ぎゃああぁ~っ!?」
「サークっ!……グレッグ!お前!何をっ!?」
思わず叫ぶ俺。
めちゃめちゃ体を寄せて匂いを嗅いでくる王太子。
躍起になって乱暴に王太子から俺を引き離そうとするギル。
ぽかんとするイヴァン。
まるで地獄絵図だ。
「イヴァン!手伝えっ!!」
ギルの言葉にはっとしたイヴァンが加勢し、やっとの事で王太子から離れる事ができた。
ギルがまたも抱き締めようとしてきたので、俺はイヴァンの背中に飛び付いた。
庇ってくれているのはわかるが、俺には王太子も怖いがギルも何か怖い。
ここは安全なイヴァンを頼るのが一番だ。
と言うか、何なんだ!?
いったい!?
「……ふ~ん。確かに秘蔵っ子だな?」
皇太子はニヤッと笑った。
何か鳥肌が立ってきた。
何なんだよ、本当にあんたは……。
半泣きの俺に反して、王太子は俺様バリバリの態度でふんぞり返った。
「おい、ギル。そいつを寄越せ。」
「……は!?何を言っている!?」
「そいつをくれれば、リオを諦めてやる。だから寄越せ。」
……は??
いったい、どういう事だ??
全く話が見えない。
王子を諦める代わりに、俺を寄越せって言っているのか?この馬鹿王太子は??
何で!?
理由はわからないが冗談じゃない。
「……お断り致します!!」
俺はみっともないが、イヴァンの背中に引っ付いたまま大声で叫んだ。
お抱えのビショップにでも回復してもらったのだろう、一応、どこにも怪我は見られなかった。
テーブルについた王子の後ろに控える俺を一度、ギロリと睨んだ。
会場警護をしていたギルがおもむろに俺に近づき、耳元に顔を寄せる。
「……ロープを切ったのはお前か?」
「いや?事前にイヴァンが切り込みを、な。」
「面白かったぞ?薔薇を咥えたあいつが落ちるところは……。お前達にも見せてやりたかった……。」
クッと耳元で笑うと、ギルは上機嫌に去っていった。
イヴァンと俺はちらりと視線を合わせ、何事もなかったように正面を向いて黙っている。
まぁ、それは楽しかったんだろうな。
気持ちはわかるが、何もあんなに顔を寄せて耳元に低い声で囁かなくてもいいだろ?
俺は何だか耳が痒くなり、耳の後ろを擦った。
だいぶ反撃が効いたのか皇太子はおとなしい。
でも逆にこうなってくると注意が必要だ。
向こうも慎重になって簡単な手は使わないだろうし、やるならやるで徹底して押し通して来るだろう。
しかも今日の昼食会は王太子と二人きりだ。
さすがにもう料理や食器の類いに手出しはしないだろうが、念の為チェックは全て行った。
昼食は穏やかに進み、王太子もおかしな事は言ってこない。
「リオ、君は誰とも婚約をしていないが、どうしてだい?君ならたくさんそう言った話があってもおかしくないはずだろ?」
「そう言えば、グレッグは婚約者が内定されましたね?おめでとうございます。」
「……ありがとう。でもそれは王太子としての責務だからだ。私が本当に婚約したい人は別にいる……。だからその人を差し置いて、正式な婚約をする事も結婚をする事もないよ。」
「奇遇ですね。私も……想う人がいます。なので、今はどなたからの求婚も受けないつもりです。」
王子がピシャリと言い切った。
うわ~かなり強気で断ったな~。
横にいるイヴァンから、若干のブリザードが放たれているが、気のせいだと思おう。
不可抗力だ!
俺は悪くない!
「……今は?と言うことは、暫くすれば考えられるのかな?……失恋でもしたのか?リオ?」
ところが王太子はどこをどう思ったのか、王子の言葉を逆にチャンスだと捉えたらしい。
凄いな、おい。
心臓に毛がはえてるどころじゃない。
王子もそう言われるとは思っていなかったようで、言葉に詰まる。
まぁ詰まって俯かれたら、そういう事だと認めた事になってしまう。
まずいな……。
良い流れだと思ったが、一気に逆転された感じだ。
王子も何か言わなければと思っているようだが、言葉にならないようだった。
「リオ……。」
皇太子の声色が変わった。
甘ったるい低い声だ。
途端に湧き出る男臭いフェロモン。
仕草もいちいちエロチックだ。
気楽な状況なら、性欲研究者としては一度この皇太子のデータを取りたいものだ。
ここまでいきなり一気に雄フェロモンが出るって、どういう構造なのだろう?
場違いにもそんな事を思う。
「君が傷ついているのがわかるよ……。だからこそリオ、君はこんなにも美しいのかもしれない……。久しぶりに会って、どうしてこんなに心が乱されたのか、その理由がやっとわかったよ……。」
「……お止め下さい。私は失恋などしておりません。グレッグの思い違いです。この話はもうやめましょう。」
「そうはいかない!傷ついているリオを、どうして私が放っておけると?こんなにも君を想っているのに!」
「お止め下さい……。」
王子はしどろもどろにそう言って俯いた。
皇太子は立ち上がり、素早く王子に近づく。
驚いた王子が立ち上がると、そのまま腰に手をまわし引き寄せる。
まずい!
俺とイヴァンは顔を見合わせた。
「グレッグ!悪ふざけにも程がありますっ!!」
「ふざけてなどいない、リオ……。叶わぬ恋など忘れてしまえ。俺が忘れさせてやる……。」
さすがの王子もなりふり構わず王太子を押し退けようとしているが、ガタイ通り力も強いのだろう、華奢な王子の力ではびくともしない。
王子はじたばたもがいて叫んだ。
「やめて下さい!……嫌…っ!!嫌だ!サークっ!!」
「はい、ここにいますよ、殿下。」
王太子の奇行にすぐに動いた俺とイヴァンは、体術の原理でスルッと王子から王太子を引き離した。
二人がかりとはいえ力には自信があったらしい王太子は、いとも簡単に王子を引き離され驚いている。
「……サークっ!!」
王子がぎゅっと抱きついてきたが緊急事態だ。
今回ばかりは仕方がない。
軽く王子の体に腕をまわし、王太子との距離をとった。
近づこうとする王太子をイヴァンが体を張って牽制する。
会場警護のギルもすぐに駆けつけ、何故か王子ごと俺までむぎゅっと抱き締められた。
……何なんだ?この構図は??
「何事ですか!?」
そこにちょうど交代にチタニアさんとファレルさんが会場に顔を出した。
ナイスタイミング!本家ロイヤルガードコンビ!!
「ギルっ!!」
「……わかってる。」
俺が声をかけるとギルは腕を離した。
可哀想だったが俺も王子を体から離し、ギルに預ける。
「サーク……っ。」
「部屋にお戻り下さい!殿下!」
少し俺を振り返りながらも、足早にギルに連れられ王子はチタニアさん達に渡される。
そして会場にいた他の警護部隊も連れて去っていく。
俺とイヴァンは動かず、そのまま王太子と向き合っていた。
仮にも王太子だ。
睨んだり剣や魔術を使う事は出来ない。
しかもここは王太子のホームなのだ。
下手に何かすれば、何倍にも問題を大きくされかねない。
無下に殴られても俺達は文句一つ言えない状況なのだ。
引くことも攻めることもできない。
緊張が場に走っていた。
そんな中、ギルがゆっくり戻って来る。
王子について行かなかったのかと少し驚いた。
ギルは無表情のままゆっくりと王太子に近づき、口を開いた。
「いつもながら手が早いな?」
「……またお前か。いい加減、私とリオの邪魔はしないでくれないか?」
「リオに気持ちがあるなら邪魔はしない。だが、お前は無理矢理リオを振り向かそうとしているだけで、リオの心はお前にはない。」
「相変わらず生意気だな、ギル。」
どういう事だ?
俺とイヴァンは視線を一瞬合わせた。
どうもギルと皇太子は旧知の仲で、口で言い合っても問題ない間柄なようだ。
そのお陰で、少しだけ緊張が和らいだ。
「全く……。今回はお前がおとなしいから、もっとリオに近づけると思ったのに……。何なんだ?この魔術師は!?」
皇太子は苛ついた様子でそう吐き捨てた。
この魔術師…??
俺ですか!?
「……はへ!?」
思わずすっとんきょうな声が出る。
慌てて口をふさいだ。
イヴァンが横で俺以上に焦った顔をしている。
でも仕方ないだろ?!
いきなり俺を指定して避難してきたんだから!!
「おい、ギル、何だこいつは?」
皇太子はずかずかと大股で歩くと、俺の前に立った。
俺は無言のまま王太子を見上げる。
でかいな、マジで。
ギルもでかいけど、もっとでかいんじゃないか?
俺は別に小柄な訳じゃないが、苛ついている事もあり妙な圧を感じる。
ビビリはしないが、こちらからは手出しできないのでどうすることもできない。
これは一発、殴られたりするんだろうか?
理不尽だなぁ~。
「……触るな。うちの秘蔵っ子だ。」
王太子が俺の襟首を掴もうとしたので、ギルがサッとその手を払った。
…………。
払ったのは良いが、何でお前が俺の肩を抱く!?
だいたい何なんだよ??秘蔵っ子って??
ギルが過剰に俺を庇うので、かえって王太子の興味を引いたらしい。
バッと素早い動きで俺の襟首を掴むと、力ずくでギルから奪い取って俺を引き寄せた。
何なんだ!?
何なんだ、いったい!?
俺は訳がわからず固まって、イヴァンは何が何だかわからずぽかんとしている。
「ギルの秘蔵っ子か……。ん!?お前……っ!?」
ギルが過剰反応するものだから面白がって俺を引寄せた王太子。
しかし急にまじまじと俺を見た。
何だ!?
嫌な予感しかしないぞ!?
固まっている俺に対し、王太子はいきなりぎゅっと腰を抱き寄せた。
そして首もとに顔を埋め、匂いを嗅いだ。
「……ぎ、ぎゃああぁ~っ!?」
「サークっ!……グレッグ!お前!何をっ!?」
思わず叫ぶ俺。
めちゃめちゃ体を寄せて匂いを嗅いでくる王太子。
躍起になって乱暴に王太子から俺を引き離そうとするギル。
ぽかんとするイヴァン。
まるで地獄絵図だ。
「イヴァン!手伝えっ!!」
ギルの言葉にはっとしたイヴァンが加勢し、やっとの事で王太子から離れる事ができた。
ギルがまたも抱き締めようとしてきたので、俺はイヴァンの背中に飛び付いた。
庇ってくれているのはわかるが、俺には王太子も怖いがギルも何か怖い。
ここは安全なイヴァンを頼るのが一番だ。
と言うか、何なんだ!?
いったい!?
「……ふ~ん。確かに秘蔵っ子だな?」
皇太子はニヤッと笑った。
何か鳥肌が立ってきた。
何なんだよ、本当にあんたは……。
半泣きの俺に反して、王太子は俺様バリバリの態度でふんぞり返った。
「おい、ギル。そいつを寄越せ。」
「……は!?何を言っている!?」
「そいつをくれれば、リオを諦めてやる。だから寄越せ。」
……は??
いったい、どういう事だ??
全く話が見えない。
王子を諦める代わりに、俺を寄越せって言っているのか?この馬鹿王太子は??
何で!?
理由はわからないが冗談じゃない。
「……お断り致します!!」
俺はみっともないが、イヴァンの背中に引っ付いたまま大声で叫んだ。
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