欠片の軌跡④〜南国の王太子

ねぎ(塩ダレ)

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第八章①「疑惑と逃亡編」

馴染みの三人

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「ここ、いいか?」

サークはそう言って椅子を引いた。
答えを待たずにどかっと座る。
隣の席にいた男がびくっと肩を跳ねさせた。

「……あんま身構えんなよ……。やりにくいだろ……。俺も……。」

サークはそう言って、困ったように頭を掻いた。
その顔は少し赤らんでいる。
気まずさをまぎらわす様に、持ってきたグラスに口をつけた。

その隣。
ガスパーは真っ赤になっていて、ちらりとも横のサークを見ようとはしない。

何だか初々しい微妙な感じだ。
ライルは目の前の二人を見守って、くすりと笑った。

「お疲れ、サーク。」

「お疲れっす。ライルさ……ライル。」

「………え??」

「まだまだ、完全なため口にはならないな~、サークは。」

「努力してるんで、勘弁してくれ。」

「何だ……??その微妙なため口は??」

ライルとサークの会話が妙な口調になっていて、ガスパーは訳がわからないと言った顔をした。

「ライルが自分だけに敬語なのやめろって言うから、努力してんの。良いと思わないか!?先輩に敬意を払ってるだけなんだから敬語でもさ!!」

サークはそうガスパーに話しかける。
ガスパーも顔を直視する事はなかったが、話に乗ってきた。

「まぁそうだろうけどよ……。」

「ええ!?だってサーク、隊長にすらため口なんだよ!?なのに俺にだけ敬語とか、端から聞いたら、俺、何者だよって感じだろ!?何か疎外感感じるしさ~!」

「いや俺が思うに、ギルを怒らせても怖くないけど、ライルさ…ライルを怒らせたら、リアルに地獄を見るくらい怖いと思うんだよ。」

「あ。少しわかるわ、それ。」

「は!?酷くない!?ふたりとも!?」

なんやかんやそんな会話を3人でする。

良かった。
何とか第一関門は突破したようだ。

普通に会話を行えた事で、サークは胸を撫で下ろす。
全くこちらに顔を向けないが、会話ができたと言うのは大きい。
今まで通りになるにはまだ時間はかかるだろうが、そこはお互いに慣れていくしかない。

「つか、ライルは知ってたわけ?」

逃げていても仕方がないので、回りくどいことはせずにいきなり核心をぶん殴る。
ガスパーがぎょっとした顔でサークを見た。

やっと顔を見やがった。

サークは涼しい顔をしてグラスを舐めた。

「知ってたよ?むしろあんなに分かりやすいのに、何で気づかないかな~って思って見てた。」

「すいま……悪かったな、愚鈍で。」

「やめろよって言いたいが……サークのライルに対する口調が気になって、何か訳がわからなくなる……。」

「うるさいな~!努力してんだよ~!」

サークはイライラを誤魔化すように、近場にあった、唐揚げを口に放り込んだ。
ムスッとしてもごもごと口を動かす。
その様子にライルとガスパーは吹き出した。

「何か出会った頃に比べて、本当、色々あったけど……。サークの食べっぷりは変わらないな~。」

「ほっといてくだ……くれ。」

「ぷっ!!お前!!そのどっちつかずの口調!マジでやめろよ!!」

「笑うな!ガスパーっ!!俺は努力してんだよっ!!」

「あはは!本当、努力してるよな~。偉い偉い。」

ライルはそう言って笑った。

本当、努力している。
自分に対する敬語だけでなく、ガスパーとの事も。

ガスパーはサークに言わなかったし、サークもそれを尊重している。
だからと言って、なかった事にもせずに向き合おうとしている。
例えその想いに応えられなくても、言わなかったと言う部分すら含めて真剣に受け止め向き合っている。

それがサークなりのガスパーに対する答えなのだろう。

「まぁいいや。で、ガスパー、王宮会議とかってどうなってんの??」

「あ、あ~。……まぁ、気にすんなよ。大丈夫だから。」

「大丈夫だと思えないから聞いてんだよ、ボケ!」

「は!?てめえ!ボケとは何だよ!?」

「あのな!俺はあの王太子に貢ぎ物として差し出されるかも知れないんだぞ!?だったら俺だって対策をたてたい!!その為には正確でリアルな情報が必要な事はわかるな!?」

「わかるけどよぉ……。」

ガスパーは言葉を濁した。

どういう事だ??
サークはだんだん、違和感を感じはじめた。

何だ?何故ギルもガスパーも何も言わないんだ??
進捗ぐらい教えてくれても良いはずだが……??

違和感からどこかに不審を感じる。
自分の知らないところに大きな何かがある。

いったい王宮で何が起こっているんだ!?
サークはガスパーを問い詰めようと口を開きかけた。

「……サーク、ガスパーをいじめんなよ。」

その時、ライルが珍しく真面目な声で言った。
その声色にサークは何かを感じ、まっすぐにライルを見つめる。

「どういう事です?」

「……敬語。」

「あ、ええと…どういう事だ?」

何故かこんな時ですら敬語を注意され、サークはこんがらがってきた。
ガスパーは複雑な顔をしていて黙っている。

「どうせ隊長に聞いてもはぐらかされたんだろ?ガスパーなら押せば行けると思ったんだろうけどさ~。それは狡くない!?」

「まあ、うん。……ごめん。」

「言えないって事もある意味、情報だろ?俺も知らないけど、多分、今は言えないんだよ。そうだろ?ガスパー?」

「……ああ。悪い、サーク。今は言えない……。」

「………。わかった。悪かったな、ガスパー。」

「いや、俺の方こそ、ごめん……。」

どちらの角も立てずライルがうまくまとめたが、それはつまりそう言うことだ。

ギルもガスパーも、言いたくても言うことが出来ない。
それはつまり何かが起きていると言うことだ。

何が起きているのかはわからない。
ただ、自分を身を粉にしてでも守ってくれるだろう人間が言うことが出来ない状況なのだ。
それはよほどの事であり、また、話させるのは相手の身を危険にさらす事になる。

ここはライルの言う通り、言えないという情報を重視すべきだろう。
下手に仲間を追い詰めるのは本末転倒だ。

となると面倒だな……。

少しばかり考え込む。
黙り込んだサークを見て、ライルは言った。


「で?サークはガスパーを愛人にするのか?」


思考が止まる。
それは横のガスパーも同じだった。

「は?!はぁ!?ちょっと待ってくださいっ!!」

「敬語!!」

「いや!そこじゃないっ!!」

「な、ななななっ!?ライルっ!!!何言ってんだっ!?てめえっ!!」

「え~??良いんじゃないか?愛人。ガスパーは幸薄い感じの方が似合うし~。」

「いや!しませんよ!?ガスパーが嫌いとかじゃなくて!俺は愛人は持ちません!!」

「え~?何で~??ガスパー、可哀想~っ。」

「ふざけんな!可哀想じゃねぇっ!!俺だって愛人になんかならないっ!!」

「え~??だって正妻の座は空いてないよ??え??何??奪い取るの!?ガスパー!?」

「奪わないっ!!もう!!お前ら最悪っ!!やってらんねぇっ!!」

「はぁ!?何で俺まで!?」

「てめえが全部悪いんだっ!!」

何だかよくわからないカオスになってくる。

これが今、飛ぶ鳥も落とす勢いと言われる隊の出世頭達なのか……。
ぎゃんぎゃんと言い合う3人を、周囲は複雑な表情で遠巻きに見つめていた。
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