欠片の軌跡④〜南国の王太子

ねぎ(塩ダレ)

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第八章①「疑惑と逃亡編」

ご利用は計画的に

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班長は徐に置いてあった鞄を俺に投げて寄越した。
案外重いそれを俺は受け止める。
リグが5区外壁警備総括のジェフさんを連れて入ってきた。
そのまま小走りにこちらに来ると、シルクとは反対側に座って引っ付いた。
シルクに向かって舌を出し、ぎゅっと腕にしがみつく。
またこれかよ……。
俺は頭を痛めた。

「よう!サーク!しばらく見ないうちに、モテモテだな!!」

「不可抗力です。ジェフさん。」

「そう言うなよ。リグもこのところすっかり悪い遊びをしなくなったんだし、たまには甘えさせてやれよ。」

「は!?そうなのか!?どうしたんだよ!?リグ!?」

「別に~。第二王子も恋人ができて人が変わっちゃったし~。誰かさんも知らないうちに婚約しちゃってるし~偉くなってるし~。ちっとも会いに来てくれないですし~。」

「いや、関係なくないか!?」

「なくないって事でしょ?主って本当、愚鈍だよね。」

「は!?どういう事!?」

「はいはい、そう言うのは後でゆっくりやってくれ。俺はさっさと頼まれた事を終わらせたい。」

「あ、すみません……。」

班長のどうでも良さげなくたびれた声で冷静になる。
ひとまず話を聞いた方がいい。

「ま、何だか知らんが、サークが投獄されそうだと言うのはわかったな?」

「はい。」

「まぁ、ずいぶん前からそう言うことが起こるだろうと、お前の隊長さんから話が来ててな。お前の性格からか言って、そりゃ起こるだろうなと思ってた訳だ。」

「まさか王宮裁判で戦犯として捕縛命令が出るほど大物になってるとはな~!!さすがはサークだよな!!」

「ジェフさん、それ、誉め言葉になってません……。」

「とは言え、詳しくは知らないが、お前が本当に投獄されるような事をしたとは思えない。むしろ、何らかの理由からお前に泥をつけて貶めてやりたいんだろうってのは想像に容易い。」

「て言うか、何なんだよ、その南の王太子って!?いきなり出てきてサークさんを寄越せとか!おこがましいにも程があるってのっ!!こっちは何年もそう言う事、言えずに我慢してるってのにさ~!!」

「同感。ぽっとでで主を独占しようとか、なめてるよね~。」

「いや、お前らなんか論点ズレてるから。」

話の腰を折ってくるシルクとリグを嗜める。
班長は慣れたもので、気にも留めずに話を進めた。

「で、まぁ、何て言うんだ?お前がそのうち、そういうやつらの罠に掛かるからってんで、内々にその対策をしててだな。で、本日めでたく、その対策が役に立ったって訳だ。」

「はぁ……。まさか班長や5区外壁警備にまで息がかかってるとは思わなくてびっくりしました。」

それでイヴァンがああ言ったのか……。
そこまで読めなかった……。
と言うより、こんな大がかりな計画、いつから立ててたんだよ、あいつら。
南の国から帰ってきてからじゃ、色々忙しかったし間に合わないだろ?
いつの間にこんな連携して団結してた訳?
喜んで良いのか何なのか、複雑な気分だ。

「ここなんて、ちょっとした穴場だろ?まぁ時間がたてばここも目をつけられるだろうが、お偉方さんたちは外壁警備なんて自分達の仲間だなんて思ってないからな。かといって逃亡者が隠れるような怪しい所だとも思ってない。一応、自分等の管轄内である王国警備の1つだ。だから確かに、すぐにここに目をつけては来ないだろうな。なかなかいい上司と仲間を持ったな、サーク。」

「いいんだか悪いんだか……まぁ、でも、うん……。いい仲間を持ったと思います。」

なんとなく照れ臭くなって、受け取った鞄をぎゅっと握った。
そう言えばこの鞄は何だ??
俺はまじまじと鞄を見つめる。

「それ、ギルが用意したの。当面これで大丈夫だからって……。」

シルクは知っていたようでそう言った。
中を開くと、それなりの現金と生活用品、非常食等が入っていた。
確かにどこかに金銭を取りに行くのも、必要なものを買いに行くのも危険だ。
非常にありがたい。
確かにこれでしばらくはどうにかなりそうだ。

非常にありがたいんだが……。
鞄の中身を確認して俺は顔を強張らせた。
だがな、ギル、俺はこれをどうしたらいい!?

「……うわ~。先輩ってそう言うの履くんですか……。うわ~。ご馳走さまです~。」

「履かねぇよ……!あの野郎っ!!」

「あ~多分、ギルの願望だね、それ。」

つまみ上げた下着に、班長とジェフさんが盛大に吹いた。
何なんだ、この、ほぼ面積のない代物は!?
どういうつもりで入れやがった!?
俺は真っ赤になって、その下着をシルクに渡した。

「ええ~!!せっかくギルの想いが詰まったエロパンだよ~!!履いてあげてよ~!!」

「断るっ!!お前がはけ!シルクっ!!」

「ん~?うふふ~。いいよ~履いても~?履いたらじっくり見せてあげるね~?」

「やめろっ!!勘弁してくれっ!!」

何なんだ、あの野郎っ!!
この一大事に爆弾残していきやがって!
緊張感が崩れ去ったじゃねえかっ!!
俺は頭を抱えた。
本当にもう、何なんだよ!馬鹿野郎っ!!
赤っ恥かいたじゃねぇかっ!!
俺は声にならない怒号を叫んだ。
班長が仕切り直しに咳払いをする。

「まぁ、何だ。とにかくお前はそれを持ってしばらくどっか行ってろって事だ。」

「後半は丸投げなんですね。」

「仕方ないだろ?連絡を取り合うのも危険なんだから。」

「正門なんかは押さえられてるからな。ここの通用門なら、まだやつらの息は掛かってない。行くなら今だ、サーク。」

「あ~、あの門。直ったんですか?」

「とっくだよ!」

ジェフさんが豪快に笑った。
あの門。
全てが始まったあの門だ。
俺はそこを潜って、仕切り直しの旅に出る。

「俺はついていくよ。主。」

「うん。ありがとう。」

班長が懐から手紙を取り出し、俺に差し出した。
見慣れた別宮の封筒だ。

「今後の事なんかはここに書いてあるそうだ。持ってけ。」

「はい。ありがとうございます。」

「俺も行こうかな~。」

「リグ、てめえはまだ仕事が残ってんだ!それにお前が行ったら、こことの関わりが疑われる。隊長さんが出来る限り俺達を関わらせないのは、疑いがかからないようにするためだ。計画に水を差すんじゃない。」

「え~。」

「まぁ多少は疑われるだろうが、何も証拠がなきゃいい。何かありゃいつも言い掛かりを付けられて、疑われんのは俺らは慣れてるしな。どってことねぇよ。」

ジェフさんがそう言ってまた豪快に笑った。
何から何まで考えられた計画に、俺はちょっとぐっときた。
本当、馬鹿で愛すべき仲間を持った。
とにかくここを離れるのが、今、俺に出来る最善のようだ。
ちゃんと計画はしっかりしている。
何も考えずに乗ってやればいい。
何も知らなくても、信頼できる仲間の指示なのだから。

何が起きたのかわからないような激動の1日だった。
そしてそれは、仲間に自分が守られている事をどうしようもなく教えてくれる1日でもあった。
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