欠片の軌跡④〜南国の王太子

ねぎ(塩ダレ)

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第八章①「疑惑と逃亡編」

思わぬ再会

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俺とシルクが初心者コースを終わらせてギルドの酒場で夕食をとっていると、バタバタと慌ただしく人が入ってきた。

「あ!トムさん!レダさん!」

入ってきた人物を見てサークは立ち上がった。
そして彼らの元に走っていく。
シルクは不思議そうにそれを見ていた。
話は聞いていたがこの人達がそうかと思う。

「サークっ!?やだ!久しぶりっ!!」

レダがそう言って、駆け寄ってきたサークにハグをした。
変わらぬ温かい歓迎に、サークも嬉しくなる。

「元気だった!?何か前よりがっしりしたわね!?」

「レダさん達も元気そうで良かったです!!」

嬉しそうな顔のレダにサークも笑う。
その首が急に締まって、じたばたもがく。
トムが以前のようにがしっと後ろから腕を回した。

「全くお前は!!連絡1つ寄越さないでっ!!心配してたんだぞ!?」

「ごめんなさい、トムさん!色々あってバタバタしてたもので!!」

「すっきりした顔を見ると、例の件は片がついたのか!?」

「はい!お陰さまでっ!!まぁ、また面倒な事にはなってるんですが……。」

そんなこんなでサークがトムとレダにもみくちゃにされていると、思いもよらない人物が顔を覗かせた。
その人物はリーダーのヒースと一緒に遅れて入ってきた。
驚いたサークは目を丸くする。

「………えっ!?師匠っ!?」

「やだウソ!サークちゃんじゃないっ!!久しぶりっ!!」

そう、それはサークの魔術の師匠であるロナンドだった。
探求の旅に出るとは言っていたが、こんな身近で再会するとは思わなかった。
ガバッと抱きつかれ、サークは愛という名の暴力で締め上げられる。

「……し、師匠……ギブ、ギブです……!!死にますからっ!!」

「いやね~!大袈裟なんだから~!」

大袈裟じゃないっての!
やっと離してもらい、サークは噎せ込んだ。
同じ締められるでもトムは加減してくれるが、自分をか弱い乙女だと信じて疑わないロナンドはそうはいかない。
喜びを全力で表現してくるからたまったものではない。
師匠は自分の体格と筋力をわかってないっ!!
すっかり涙目になったサークをヒースが気の毒そうに撫でた。

「大丈夫か?サーク?」

「まぁ、何とか……。え?何でヒースさん達と師匠が一緒にいるんですか!?」

頭に疑問符を並べ、サークは聞いた。
レダが楽しそうにロナンドと腕を組むと、ニコニコと笑う。

「ロナちゃんは今、うちのパーティーメンバーよ?臨時だけど。」

「そうなの~!レダちゃん達と話してたら、あんたの話が出てきてさ~!他にも色々気が合って、とりあえずパーティーに入れてもらったの~!!」

ね~?とふたりが顔を見合わせる。

あ、あ~……。
確かにレダさんと師匠は気が合うだろう……。
特にあっち方面の話が……。
サークはげっそりしながらそう思った。

「え?ロナンドさん?何でここにいるの!?」

テーブルにいたシルクは立ち上がり、こちらに走ってくる。
シルクは胸の核を戻した際、ロナンドに治療をしてもらったので知り合いなのだ。

「やだ!シルクちゃんもいるの!?も~!相変わらず可愛い~っ!!」

「ありがとー!ロナンドさんも可愛いよ~!!」

そう言ってハグを交わす。
おい、ちょっと待て!!
サークは何故、自分は絞め殺さんばかりだったのに、シルクには程よい力加減ができるのだろうと思った。

つもる話もあるのでとの事で皆で食事する事になり、レダとロナンドはサーク達が食事をしていたテーブルについた。
ヒースとトムは今回のクエストの報告の為、マダムのところに話をしに行く。

「サーク、この子は誰?」

「あ、俺の従者でシルクって言います。今日、冒険者登録をしたところなんです。」

「あら~!シルクちゃんも冒険者登録したの!?」

ロナンドの言葉に、シルクがにこにこしながら返事をした。
何か知らんが仲良いよな、この二人。

「て言うか、何で師匠が冒険者ギルドにいるんですか!?」

「ん~?サークちゃんの話を聞いてて~、アタシも広い世界が見たいなって。冒険者って面白そうたったし、旅をするのにあって損する資格でもないからとってみたの~。うふふ~。」

「……まぁ、楽しそうで良かったです。」

どうやらロナンドはあの後、旅をするために冒険者登録をしたようだ。
確かに旅をするならあって損はない。
勢いで飛び出して行った印象だったが、師匠もそれなり考えているんだなとサークは思った。
そんな話をしているうちに、ヒースとトムがテーブルに加わる。
料理と酒も並び、クエスト明けとシルクの登録を祝って皆で乾杯した。

「サーク、その美人は?」

「俺の従者でシルクって言います。」

「シルク・イシュケです。今日、登録したばっかりの新人で~す。よろしくお願いしま~す。」

シルクは酒のグラスを持って、上機嫌にそう言った。
あまり強い酒は飲まないように言っておいたが、飲めれば何でもハッピーなようだ。
トムさんが歓迎の意味を込めて、シルクの頭をぐりくり撫でる。
自分が歓迎された時を思い出して懐かしかった。

「そうだ。お願いがあるのですが……。」

「何だ?サーク?」

「シルクを預かってもらえませんか?」

「新人預かり??」

「はい。訳あって、早めに中級冒険者にしたいんです。」

「サークって中級よね?サークが見て上げたら??」

「まだ俺も冒険者としては実績がなくほぼ初心者ですし、それにパーティーでの戦闘の経験をさせたいんです。お願いできませんか?」

「実力は?」

「……こいつは俺の武術の師匠です。俺は武術でシルクに勝ったことは一度もありません。」

その言葉にヒース達は固まった。
サークを預かった時でさえ彼の武術に目を点にしたと言うのに、そのサークが勝ったことのない師匠と言われたら、何の為に新人預かりをしたらいいのかわからない。

「あ、ちなみに初心者コースは今日終わらせて来たので、どこに連れて行っても大丈夫です。もし心配なら何か武器を持たせて下さい。こいつはモンクじゃなくて武術士タイプなので基本何でも扱えます。ただ……武器……特に剣の類を持たせた場合、血の海と地獄の光景を見るかもしれないので、気をつけて下さい……。」

まぁ棒くらいが無難だろうな。
俺が言いにくそうにそう言うと、さらに3人の顔から血の気が引いた。
シルクがカイナの民で演舞継承者な事を知っているロナンドだけが、さも当然とばかりに気にせず食事を続けている。

「……待って!?サーク!?シルクは職業は何なの!?」

「躍り手です。直接戦闘手段は武術士ですけど。」

「躍り手!?躍り子ってこと!?」

「躍り子でもあるんですけど、正式には躍り手です。さっきも言った通り戦闘タイプは武術士なんで、基本、何でも扱えますよ?」

武術士と言うのはモンクとは違う。
モンクが体術のみの戦闘を行い武器も限られたものしか使えないのに対し、武術士は体術を中心にあらゆる武器やものを使って戦闘をする。
だから武器も使えるシルクは武術士で、使えないサークはモンクなのだ。

武術士はいわば戦闘をするための武術使いだ。
それは暗殺術者(アサシン)や狂戦闘士(バーサーカー)の基礎に近い。
まぁシルクの場合、現時点である意味完全な狂戦闘士なのだけれども。

「え?え?何!?わかんない!!」

「う~ん。でも他に言いようがないんですよね~。多分、戦闘をしているところを見たら納得できると思いますよ?躍り手って意味が。」

混乱する3人に、俺はただ、にっこりと笑った。
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