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第八章①「疑惑と逃亡編」
寡黙なるエアーデ
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その後、とにかく俺は呆けてしまって話しにならず、まずはダンジョンを出ようと言う事になった。
ある意味、地竜のいるここが最深部であるようで(これ以上奥は封じられている)、おっさんが作った固定ゲートがあるのですぐに出られるようだが、俺は臨時ゲートの回収をしたかったので、それを使わずに戻ると言った。
流石に血の魔術でぶっ倒れた時と同様なのでひとりでは行かせられないと師匠が言い、なら付き合いますとサーニャさんが鼻息荒く立候補した。
が、師匠もほぼ魔力切れだし疲れているのでいても足手まとい、サーニャさんは魔術師なので俺に何かあっても対応できないと却下され、俺は何故か、ドワーフのおっさんと一緒に行くことになった。
ちなみに本来なら一週間ほど寝込む俺がすぐ動けるのはおっさんの回復魔法、つまり奇跡のお陰らしい。
おっさん曰く俺の状態は酷いもので、大魔法師のおっさんでも一度では回復しきれなかったそうだ。
どうりで警護部隊医務担当の巡回回復師(クレリック)がどうにも出来ない訳だ。
血の魔術を使っている分、ただ状態や体力を回復させれば目覚めると言うわけでもないらしく、何だか色々複雑になってるらしい。
今まで何度かぶっ倒れた事があると話すと、良く生きてたな?と呆れられた。
俺はどうやらかなり運が良かったようだ。
血の魔術は強い魔術を使えるが、精霊や竜でもない人間の体がそれに耐えられる訳ではないので、命を落としてもおかしくないそうだ。
俺は臨時ゲートを回収しながら、ふ~んとそれを聞いていた。
「………お前、何個こいつを作ったんだ!?」
「いや、これが最後ですよ?後は来たTゲートに行くだけです。」
「全く……血の魔術をこんな風に使うやつは初めて見た……。」
「ん~?他に使える人がいなかったですし、子供の時から感覚で使ってるんで、こんな風にと言われても、なんかピンと来ないですね??」
「お前、本当に何者なんだ??体も普通じゃないんじゃないか??」
「………………。」
そう言われても、俺は返しようがなかった。
今まで自分が異常だなんて思ったこともないし、ましてや自分が人間の子供じゃないなど考えたこともなかった。
だから、それを前提に話してくるおっさんの言葉が、聞こえているのだが頭に入らなかった。
俺の様子に、おっさんは口が滑って不味いことを言ってしまったと顔をしかめたが、ムスッとしただけで何も言わない。
俺は別におっさんに腹を立てたりしている訳ではなかったが、頭がとにかくその話題についてこなくて考えることを放棄していたので、そのまま黙ってゲートに向かった。
途中、魔物が出てきたが、おっさんがイライラしたように大きなハンマーで殴り付けていた。
ふーん??
ビショップってハンマーで戦うんだ?
なんてぼんやり見ていた。
ドワーフのおっさんことトート迷宮遺跡管理総責任者ボーン・マディソンさんは、実は知る人ぞ知る大魔法師、寡黙なるエアーデその人だ。
魔法が使える人間は、たいてい医者か聖職者であり、他は政治関係者だ。
つまり魔法使いは宗教と政治と無縁である事は希なのだ。
それが大魔法師ともなれば、どこかの政治組織の重役でないことなど、今時あり得ない。
何だっておっさんが大魔法師でありながら、たかだかギルドのダンジョン責任者止まりなのかと言えば、おっさんがドワーフ、つまり迷い人だからだ。
いや、おっさんの性格的に政治とも宗教とも折り合いがつかなかったってのもありそうだが。
ドワーフだと言うのも偏見の対象なようで、ドワーフが回復魔法を使える訳がない、ましてや魔法師(ビショップ)になどなれる筈がないと差別されてきたのだろう。
おっさんは言わなかったが、言葉の節々からそれは垣間見えた。
迷い人そしてドワーフであると言う差別から、おっさんは政治とも宗教とも無関係の大魔法師になったのだ。
迷い人と言うのは、突然、この世界に現れる、人間みたいな人々を指す。
おっさんのようなドワーフやサーニャさんのような半獣人等、人間のようで人と違う、他に類を見ないような人達だ。
迷い人はその名の通り、突然、この世界に迷い混む。
大人の場合もあるし子供なのどの事もある。
たいていはダンジョンやダンジョン近くに現れるので、大昔は魔物だと思われていた。
でも彼らは敵対心がなく、話しはできるし優れた技術などを持っていたりと、だんだん社会に認められるようになった。
とはいえ、今でも差別的な風潮があるのは確かだ。
ただ彼らが幸運だったのは、初めて出会う人間が、あまりそういった事に偏見のない冒険者である事が殆どだと言うことだ。
冒険者は政治社会からははみ出し者とされるところがあるが、彼らの常識ではなく自分の目と感性を信じ、自分がいいと思えば他がどう言おうと構わない部分が、何の隔たりもなく迷い人を受け入れてくれる。
だから迷い人は殆ど、そのまま冒険者かギルドに携わる仕事をする事が多い。
「……マダムは生きてるかわからないって言ってたのに、元気ですね??ボーンさん?」
ハンマーでグールをボコボコにしているボーンさんを繁々と眺め、俺は言った。
ボーンさんは俺が普通に話しかけて来たので、少し安心したのかケッとそっぽを向いた。
ツンデレか?
「ドワーフは元々長生きなんだよ!だが俺はもう465歳だ。ドワーフにしたら。そろそろ死んだっておかしくないいい歳だ!」
「ドアーフって平均寿命はどれくらいなんですか??」
「500~800歳ってとこだろ?」
「ならまだ全然若いじゃないですか!!」
「お前!ちゃんと聞いてたか!?500からはもう寿命の一部だ!!」
「いやそれにしたって、後38年はあるでしょう??」
「まぁ、そうだが……。」
「しかも平然とハンマー振り回して魔物倒してるし。俺、ビショップがハンマーで戦うなんて知りませんでした。」
「そこはビショップ関係ねぇっ!!ドワーフだからだっ!!」
「喧嘩っ早いのもドワーフだからですか??」
「それは……少し関係あるかも知れないが……。」
「ああ!個人の性格上の問題ですねっ!!」
「サークてめえ……!本当、いい性格してんな!?お前!?」
「お褒めに預かり、光栄です。大魔法師様。」
「あああぁっ!!イラッとする!!この若造っ!!イラッとするっ!!」
ボーンさんが短い足でダンダンと地面を蹴った。
うん、なんだ。
こんな感じだが、俺はボーンさんとは上手くやっていけるだろうと内心思っていた。
まぁなんか色々あったが、とにかく一度、何もかも忘れて眠りたい。
色々考えるのはそれからでいい。
俺は見えてきたTゲートを確認しながら、こんなことを考えていた。
ある意味、地竜のいるここが最深部であるようで(これ以上奥は封じられている)、おっさんが作った固定ゲートがあるのですぐに出られるようだが、俺は臨時ゲートの回収をしたかったので、それを使わずに戻ると言った。
流石に血の魔術でぶっ倒れた時と同様なのでひとりでは行かせられないと師匠が言い、なら付き合いますとサーニャさんが鼻息荒く立候補した。
が、師匠もほぼ魔力切れだし疲れているのでいても足手まとい、サーニャさんは魔術師なので俺に何かあっても対応できないと却下され、俺は何故か、ドワーフのおっさんと一緒に行くことになった。
ちなみに本来なら一週間ほど寝込む俺がすぐ動けるのはおっさんの回復魔法、つまり奇跡のお陰らしい。
おっさん曰く俺の状態は酷いもので、大魔法師のおっさんでも一度では回復しきれなかったそうだ。
どうりで警護部隊医務担当の巡回回復師(クレリック)がどうにも出来ない訳だ。
血の魔術を使っている分、ただ状態や体力を回復させれば目覚めると言うわけでもないらしく、何だか色々複雑になってるらしい。
今まで何度かぶっ倒れた事があると話すと、良く生きてたな?と呆れられた。
俺はどうやらかなり運が良かったようだ。
血の魔術は強い魔術を使えるが、精霊や竜でもない人間の体がそれに耐えられる訳ではないので、命を落としてもおかしくないそうだ。
俺は臨時ゲートを回収しながら、ふ~んとそれを聞いていた。
「………お前、何個こいつを作ったんだ!?」
「いや、これが最後ですよ?後は来たTゲートに行くだけです。」
「全く……血の魔術をこんな風に使うやつは初めて見た……。」
「ん~?他に使える人がいなかったですし、子供の時から感覚で使ってるんで、こんな風にと言われても、なんかピンと来ないですね??」
「お前、本当に何者なんだ??体も普通じゃないんじゃないか??」
「………………。」
そう言われても、俺は返しようがなかった。
今まで自分が異常だなんて思ったこともないし、ましてや自分が人間の子供じゃないなど考えたこともなかった。
だから、それを前提に話してくるおっさんの言葉が、聞こえているのだが頭に入らなかった。
俺の様子に、おっさんは口が滑って不味いことを言ってしまったと顔をしかめたが、ムスッとしただけで何も言わない。
俺は別におっさんに腹を立てたりしている訳ではなかったが、頭がとにかくその話題についてこなくて考えることを放棄していたので、そのまま黙ってゲートに向かった。
途中、魔物が出てきたが、おっさんがイライラしたように大きなハンマーで殴り付けていた。
ふーん??
ビショップってハンマーで戦うんだ?
なんてぼんやり見ていた。
ドワーフのおっさんことトート迷宮遺跡管理総責任者ボーン・マディソンさんは、実は知る人ぞ知る大魔法師、寡黙なるエアーデその人だ。
魔法が使える人間は、たいてい医者か聖職者であり、他は政治関係者だ。
つまり魔法使いは宗教と政治と無縁である事は希なのだ。
それが大魔法師ともなれば、どこかの政治組織の重役でないことなど、今時あり得ない。
何だっておっさんが大魔法師でありながら、たかだかギルドのダンジョン責任者止まりなのかと言えば、おっさんがドワーフ、つまり迷い人だからだ。
いや、おっさんの性格的に政治とも宗教とも折り合いがつかなかったってのもありそうだが。
ドワーフだと言うのも偏見の対象なようで、ドワーフが回復魔法を使える訳がない、ましてや魔法師(ビショップ)になどなれる筈がないと差別されてきたのだろう。
おっさんは言わなかったが、言葉の節々からそれは垣間見えた。
迷い人そしてドワーフであると言う差別から、おっさんは政治とも宗教とも無関係の大魔法師になったのだ。
迷い人と言うのは、突然、この世界に現れる、人間みたいな人々を指す。
おっさんのようなドワーフやサーニャさんのような半獣人等、人間のようで人と違う、他に類を見ないような人達だ。
迷い人はその名の通り、突然、この世界に迷い混む。
大人の場合もあるし子供なのどの事もある。
たいていはダンジョンやダンジョン近くに現れるので、大昔は魔物だと思われていた。
でも彼らは敵対心がなく、話しはできるし優れた技術などを持っていたりと、だんだん社会に認められるようになった。
とはいえ、今でも差別的な風潮があるのは確かだ。
ただ彼らが幸運だったのは、初めて出会う人間が、あまりそういった事に偏見のない冒険者である事が殆どだと言うことだ。
冒険者は政治社会からははみ出し者とされるところがあるが、彼らの常識ではなく自分の目と感性を信じ、自分がいいと思えば他がどう言おうと構わない部分が、何の隔たりもなく迷い人を受け入れてくれる。
だから迷い人は殆ど、そのまま冒険者かギルドに携わる仕事をする事が多い。
「……マダムは生きてるかわからないって言ってたのに、元気ですね??ボーンさん?」
ハンマーでグールをボコボコにしているボーンさんを繁々と眺め、俺は言った。
ボーンさんは俺が普通に話しかけて来たので、少し安心したのかケッとそっぽを向いた。
ツンデレか?
「ドワーフは元々長生きなんだよ!だが俺はもう465歳だ。ドワーフにしたら。そろそろ死んだっておかしくないいい歳だ!」
「ドアーフって平均寿命はどれくらいなんですか??」
「500~800歳ってとこだろ?」
「ならまだ全然若いじゃないですか!!」
「お前!ちゃんと聞いてたか!?500からはもう寿命の一部だ!!」
「いやそれにしたって、後38年はあるでしょう??」
「まぁ、そうだが……。」
「しかも平然とハンマー振り回して魔物倒してるし。俺、ビショップがハンマーで戦うなんて知りませんでした。」
「そこはビショップ関係ねぇっ!!ドワーフだからだっ!!」
「喧嘩っ早いのもドワーフだからですか??」
「それは……少し関係あるかも知れないが……。」
「ああ!個人の性格上の問題ですねっ!!」
「サークてめえ……!本当、いい性格してんな!?お前!?」
「お褒めに預かり、光栄です。大魔法師様。」
「あああぁっ!!イラッとする!!この若造っ!!イラッとするっ!!」
ボーンさんが短い足でダンダンと地面を蹴った。
うん、なんだ。
こんな感じだが、俺はボーンさんとは上手くやっていけるだろうと内心思っていた。
まぁなんか色々あったが、とにかく一度、何もかも忘れて眠りたい。
色々考えるのはそれからでいい。
俺は見えてきたTゲートを確認しながら、こんなことを考えていた。
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