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第八章①「疑惑と逃亡編」
天才の目が見ている未来
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手土産とばかりにテイクアウトしてきた事を伝えると、ノルはとても喜んだ。
いつ食事をしたか覚えてないらしい。
ちょっと苦笑いしてしまった。
ノルは見たことのない装置のスイッチを入れて、テーブルを片付け始める。
俺はシルクに何も触らないようにと伝えた。
研究室と言うのは、ごちゃごちゃして見えて、その人にはちゃんとわかっていたりするので、下手に手出しをするとかえって大変な事になるのだ。
落ち着かなそうにシルクは椅子に座っている。
俺は片付いた場所を魔術で綺麗に浄化した。
「……確かに魔術は便利だ。」
それを興味深げに見ながらノルが呟く。
俺は苦笑いして答えた。
「便利ですけど、わざわざ魔術でやらなくてもいいことではありますね。」
「でも生活魔術ってこう言うのだよね?」
「そうですね。それでも皆が使える訳ではないですし。」
「魔術以外でこう言うことは出来ないのかな??」
「そうですね……あまり浸透していない方法ですが、精霊に頼むと言うのもあります。」
「精霊か~。それもまた未知の分野だな~。」
こぽこぽと言う不思議な音と共に、辺りに珈琲の香りが漂い始める。
シルクと俺はきょとんと辺りを見渡す。
どうやらさっきノルがスイッチを入れた機械は、珈琲を自動で入れるもののようだ。
ぽたぽた容器に珈琲が溜まるのを見て、シルクが目を輝かせる。
「凄~い!!便利~!!」
「ありがとう。でもまだ実用化の目処はたってないんだ。」
「ノル、これはお湯も勝手に沸かしているんですか??」
「うん。場合によっては豆もひいてくれるよ?」
「それは凄いっ!!」
「これって魔術じゃないんだよね!?俺とかでも出来るんだよね!?」
「うん。魔術の使えない人間に魔術のように役に立つ道具を生み出す、それが科学技術だからね。」
「凄~い!!お兄さん!天才~!!」
「いや……その……。」
キラキラした目でシルクにそう言われ、ノルは顔を赤くしてもじもじしていた。
おべっかな称賛には慣れているだろうが、シルクのように裏表のない純粋な誉め言葉と言うのは、研究者的にはかなりクる。
人見知りのノルなら効果は絶大だろう。
「………君も……ノルって呼んでいいよ。」
「うん!ありがと!俺はシルクだよ!シルク・イシュケ!!」
「うん。ノックス・リー・バンクロフトだ。よろしく、シルク。」
シルクの懐柔スキルが人嫌いのノルにも炸裂したのを見て、くすっとしてしまう。
これはシルクのスキルが高いのか、ノルが思っているよりもずっと人嫌いではないのか、どっちだろう??
耳まで赤くしながら、壁に向かって珈琲を入れているノルをチラ見しながら、俺はシルクと片付いた所に食事を並べた。
テイクアウトの容器のままだし、パンももらった袋の口を丸めて取り出しやすくしただけだが、これなら食べ終われば捨てて済むのでまぁ良いだろう。
「二人とも手を出して~。」
テーブルについたところで、俺は声をかけた。
不思議そうに二人が手を出したので、浄化する。
「それ、いいな?さっと手が綺麗になる魔術。濡れた紙ふきんを出すものを考えたんだけど、すぐ乾いちゃうし結局ゴミが出て面倒で。」
「いや、一番はちゃんと水で洗うことだけど……そうだな??何か乾きやすくて殺菌効果のある液体を手に塗るとかは??アルコールとか。」
「液体の効果を持続させるのも難しいし……。殺菌効果のある液体は肌荒れもするし……。コスト面がな~。まんべんなく手を殺菌消毒するにはある程度量もいるし……。」
「液体に粘度をつけたらどうかな?ジェルとかクリームみたいな?揉み込む感じで馴染ませれば、量は減らせないか??」
「なるほど……消毒液に粘度か……う~ん……。」
「あの~ふたりとも。ご飯、食べないの??」
シルクの半ば呆れたような声に、俺とノルはハッとする。
いかんいかん、ノルといるとつられて研究モードに入ってしまう。
「本当、研究者って他の事、そっちのけだよね~。」
「ごめん、シルク……。」
「面目ございません……。」
無感情に放たれたシルクの言葉に、俺とノルは俯いて小さくなるしかなかった。
食事をしながら、ノルを訪ねた理由である臨時の簡易ゲートについて俺は簡単に説明した。
ノルは夢中になると食べるのが止まるので、その度にシルクが注意していた。
何か、基本甘ったれなシルクが、弟の面倒を見るように甲斐甲斐しく世話を焼くのはちょっと面白い。
「ノル、ちゃんと食べて!主もご飯食べてるんだから!その話やめて!ノルがちゃんと食べないじゃん!!」
ぷんすか怒るシルクはちょっとオカン入っている。
おかしくてクスクス笑ってしまった。
「わかった。この話はまた後で。」
「ええ~!!ちゃんと聞きたいよ!!」
「ご飯が終わったらね!?普段ちゃんと食べてないなら、ここでちゃんと食べなきゃダメ!ノル!」
「わ、わかったよ、シルク……怒んないでよ~。」
「怒ってない。心配してるの!!」
「……うん。ありがとう……。」
何か本当、世話好きのお姉ちゃんと年の離れた弟を見ているようだ。
いや、ふたりの年齢はさして変わらないんだが。
ノルは赤くなって俯きながら、もごもごと口を動かしている。
口の中のものをごくんと飲み込むと、ノルは顔を上げて言った。
「……って言うか、サークは何者なんだ??」
「え?どういう意味??」
「だって宮仕えの騎士じゃなかったのか??何で今回は冒険者なんだ??」
「ああ~それは~………。」
俺は珈琲を啜りながら、今の自分の状況を簡単にノルに話した。
初めはふ~んと聞いていたノルだったが、だんだん興奮しはじめて、最後にはダンダンッと机を叩いた。
これにはシルクもびっくりして何も言えなかった。
「何だよ!?それは!?」
「ノ、ノル!?落ち着いて!?な??」
「落ち着いていられるか!!全く政府の連中は何もわかってない!!」
「ノル、どうしちゃったの??」
「シルク!!君は自分の主がどれだけ価値のある人間かわかるだろ!?」
「う、うん……。」
「それをだ!!簡単に南の国にやってしまおうだなんて!!学術的にどれだけの損害があると思ってるんだっ!!」
「ええぇっ!?そっち!?」
「そうだよ!!サークの研究はサークが自分で思っているよりも、ずっと価値がある研究なんだ!!」
「……ノル、気持ちは嬉しいけど、性欲の研究って一部にしか価値はないと思うぞ??」
「いいや!君はわかってない!!君の発想力や着眼点だけ考えたって大きな損失だ!!何でもないように作ってきた今回の臨時の簡易ゲートが良い例だ!!あっておかしくなかったような見落とされた物を、サークは何の考えもなしに作ってしまうんだ!!君がいつも卑下している自分の研究だって!!今後の社会において、必ず大きな役割を果たす基礎になると僕は思っている!!」
「そ、そこまでかな……??」
「性欲を科学的に数値化したデータなんて!誰も思い付かない事だよ!!」
「う~ん。単に個人的な事情があっただけなんだけど……。」
「それでも!!いずれ君が取り続けたデータは物凄い価値を持つ!!」
ノルが何を根拠にそんな事を言うのかわからず、俺とシルクは顔を見合わせた。
ノルは熱く語り続けた。
「裁判だって!?上等じゃないか!!サーク!!その裁判!僕にも参加させてくれ!!王宮の連中に君がどれだけ価値があるか言ってやる!!本当に政府ってのは目先の事ばかりで未来をきちんと見ていない!!君の研究は本当なら!国家レベルで行っても良いくらいなのに!!本当にもうっ!!それに気づきもしないで!南の国にやってしまおうだなんて!!知識の流出も甚だしいっ!!」
俺は何が起きているのか、正確に把握できなかった。
ノルの気持ちはありがたいが、どうしちゃったの??ノル??
俺を認めてくれるのは嬉しいけど、ノルをそんなに熱くさせるほどでもないと思うんだけれども……??
ただ、ノルは天才だ。
科学技術研究という、魔術のある世界では見落とされる古代の技術を掘り起こし、社会に浸透させ、国に認めさせるまでにした第一人者だ。
俺には見えない先の未来まで見据えてそう言っているのかもしれない。
とにかくよくわからないが、科学技術研究の第一人者のノルが、裁判で俺の味方についてくれる事になった。
ノルが王国に対して何を訴えるつもりかはわからなかったが、人嫌いの友人が引きこもっている家を出て裁判で証言してくれると言ってくれた気持ちを、俺は素直に受け取り感謝した。
いつ食事をしたか覚えてないらしい。
ちょっと苦笑いしてしまった。
ノルは見たことのない装置のスイッチを入れて、テーブルを片付け始める。
俺はシルクに何も触らないようにと伝えた。
研究室と言うのは、ごちゃごちゃして見えて、その人にはちゃんとわかっていたりするので、下手に手出しをするとかえって大変な事になるのだ。
落ち着かなそうにシルクは椅子に座っている。
俺は片付いた場所を魔術で綺麗に浄化した。
「……確かに魔術は便利だ。」
それを興味深げに見ながらノルが呟く。
俺は苦笑いして答えた。
「便利ですけど、わざわざ魔術でやらなくてもいいことではありますね。」
「でも生活魔術ってこう言うのだよね?」
「そうですね。それでも皆が使える訳ではないですし。」
「魔術以外でこう言うことは出来ないのかな??」
「そうですね……あまり浸透していない方法ですが、精霊に頼むと言うのもあります。」
「精霊か~。それもまた未知の分野だな~。」
こぽこぽと言う不思議な音と共に、辺りに珈琲の香りが漂い始める。
シルクと俺はきょとんと辺りを見渡す。
どうやらさっきノルがスイッチを入れた機械は、珈琲を自動で入れるもののようだ。
ぽたぽた容器に珈琲が溜まるのを見て、シルクが目を輝かせる。
「凄~い!!便利~!!」
「ありがとう。でもまだ実用化の目処はたってないんだ。」
「ノル、これはお湯も勝手に沸かしているんですか??」
「うん。場合によっては豆もひいてくれるよ?」
「それは凄いっ!!」
「これって魔術じゃないんだよね!?俺とかでも出来るんだよね!?」
「うん。魔術の使えない人間に魔術のように役に立つ道具を生み出す、それが科学技術だからね。」
「凄~い!!お兄さん!天才~!!」
「いや……その……。」
キラキラした目でシルクにそう言われ、ノルは顔を赤くしてもじもじしていた。
おべっかな称賛には慣れているだろうが、シルクのように裏表のない純粋な誉め言葉と言うのは、研究者的にはかなりクる。
人見知りのノルなら効果は絶大だろう。
「………君も……ノルって呼んでいいよ。」
「うん!ありがと!俺はシルクだよ!シルク・イシュケ!!」
「うん。ノックス・リー・バンクロフトだ。よろしく、シルク。」
シルクの懐柔スキルが人嫌いのノルにも炸裂したのを見て、くすっとしてしまう。
これはシルクのスキルが高いのか、ノルが思っているよりもずっと人嫌いではないのか、どっちだろう??
耳まで赤くしながら、壁に向かって珈琲を入れているノルをチラ見しながら、俺はシルクと片付いた所に食事を並べた。
テイクアウトの容器のままだし、パンももらった袋の口を丸めて取り出しやすくしただけだが、これなら食べ終われば捨てて済むのでまぁ良いだろう。
「二人とも手を出して~。」
テーブルについたところで、俺は声をかけた。
不思議そうに二人が手を出したので、浄化する。
「それ、いいな?さっと手が綺麗になる魔術。濡れた紙ふきんを出すものを考えたんだけど、すぐ乾いちゃうし結局ゴミが出て面倒で。」
「いや、一番はちゃんと水で洗うことだけど……そうだな??何か乾きやすくて殺菌効果のある液体を手に塗るとかは??アルコールとか。」
「液体の効果を持続させるのも難しいし……。殺菌効果のある液体は肌荒れもするし……。コスト面がな~。まんべんなく手を殺菌消毒するにはある程度量もいるし……。」
「液体に粘度をつけたらどうかな?ジェルとかクリームみたいな?揉み込む感じで馴染ませれば、量は減らせないか??」
「なるほど……消毒液に粘度か……う~ん……。」
「あの~ふたりとも。ご飯、食べないの??」
シルクの半ば呆れたような声に、俺とノルはハッとする。
いかんいかん、ノルといるとつられて研究モードに入ってしまう。
「本当、研究者って他の事、そっちのけだよね~。」
「ごめん、シルク……。」
「面目ございません……。」
無感情に放たれたシルクの言葉に、俺とノルは俯いて小さくなるしかなかった。
食事をしながら、ノルを訪ねた理由である臨時の簡易ゲートについて俺は簡単に説明した。
ノルは夢中になると食べるのが止まるので、その度にシルクが注意していた。
何か、基本甘ったれなシルクが、弟の面倒を見るように甲斐甲斐しく世話を焼くのはちょっと面白い。
「ノル、ちゃんと食べて!主もご飯食べてるんだから!その話やめて!ノルがちゃんと食べないじゃん!!」
ぷんすか怒るシルクはちょっとオカン入っている。
おかしくてクスクス笑ってしまった。
「わかった。この話はまた後で。」
「ええ~!!ちゃんと聞きたいよ!!」
「ご飯が終わったらね!?普段ちゃんと食べてないなら、ここでちゃんと食べなきゃダメ!ノル!」
「わ、わかったよ、シルク……怒んないでよ~。」
「怒ってない。心配してるの!!」
「……うん。ありがとう……。」
何か本当、世話好きのお姉ちゃんと年の離れた弟を見ているようだ。
いや、ふたりの年齢はさして変わらないんだが。
ノルは赤くなって俯きながら、もごもごと口を動かしている。
口の中のものをごくんと飲み込むと、ノルは顔を上げて言った。
「……って言うか、サークは何者なんだ??」
「え?どういう意味??」
「だって宮仕えの騎士じゃなかったのか??何で今回は冒険者なんだ??」
「ああ~それは~………。」
俺は珈琲を啜りながら、今の自分の状況を簡単にノルに話した。
初めはふ~んと聞いていたノルだったが、だんだん興奮しはじめて、最後にはダンダンッと机を叩いた。
これにはシルクもびっくりして何も言えなかった。
「何だよ!?それは!?」
「ノ、ノル!?落ち着いて!?な??」
「落ち着いていられるか!!全く政府の連中は何もわかってない!!」
「ノル、どうしちゃったの??」
「シルク!!君は自分の主がどれだけ価値のある人間かわかるだろ!?」
「う、うん……。」
「それをだ!!簡単に南の国にやってしまおうだなんて!!学術的にどれだけの損害があると思ってるんだっ!!」
「ええぇっ!?そっち!?」
「そうだよ!!サークの研究はサークが自分で思っているよりも、ずっと価値がある研究なんだ!!」
「……ノル、気持ちは嬉しいけど、性欲の研究って一部にしか価値はないと思うぞ??」
「いいや!君はわかってない!!君の発想力や着眼点だけ考えたって大きな損失だ!!何でもないように作ってきた今回の臨時の簡易ゲートが良い例だ!!あっておかしくなかったような見落とされた物を、サークは何の考えもなしに作ってしまうんだ!!君がいつも卑下している自分の研究だって!!今後の社会において、必ず大きな役割を果たす基礎になると僕は思っている!!」
「そ、そこまでかな……??」
「性欲を科学的に数値化したデータなんて!誰も思い付かない事だよ!!」
「う~ん。単に個人的な事情があっただけなんだけど……。」
「それでも!!いずれ君が取り続けたデータは物凄い価値を持つ!!」
ノルが何を根拠にそんな事を言うのかわからず、俺とシルクは顔を見合わせた。
ノルは熱く語り続けた。
「裁判だって!?上等じゃないか!!サーク!!その裁判!僕にも参加させてくれ!!王宮の連中に君がどれだけ価値があるか言ってやる!!本当に政府ってのは目先の事ばかりで未来をきちんと見ていない!!君の研究は本当なら!国家レベルで行っても良いくらいなのに!!本当にもうっ!!それに気づきもしないで!南の国にやってしまおうだなんて!!知識の流出も甚だしいっ!!」
俺は何が起きているのか、正確に把握できなかった。
ノルの気持ちはありがたいが、どうしちゃったの??ノル??
俺を認めてくれるのは嬉しいけど、ノルをそんなに熱くさせるほどでもないと思うんだけれども……??
ただ、ノルは天才だ。
科学技術研究という、魔術のある世界では見落とされる古代の技術を掘り起こし、社会に浸透させ、国に認めさせるまでにした第一人者だ。
俺には見えない先の未来まで見据えてそう言っているのかもしれない。
とにかくよくわからないが、科学技術研究の第一人者のノルが、裁判で俺の味方についてくれる事になった。
ノルが王国に対して何を訴えるつもりかはわからなかったが、人嫌いの友人が引きこもっている家を出て裁判で証言してくれると言ってくれた気持ちを、俺は素直に受け取り感謝した。
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