欠片の軌跡④〜南国の王太子

ねぎ(塩ダレ)

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第八章①「疑惑と逃亡編」

早朝散歩

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「駄目だ。認めない。」

目の前のノルは、口をへの字に曲げて頑として揺るがなかった。

う~ん、ノルって意外と頑固なんだな??
まぁ研究者らしいって言えば研究者らしいんだけど。
俺は少し困ってしまった。

「なら……3対7は??」

「……あのさ~!!僕が何で認めないって言ってるか、わかんないの!?サーク!?」

「わかんないデス……。」

俺は半ば本当にわからなくて目を泳がせた。
いや多分割合の問題なのだが、流石に3対7以上は俺も厳しいんだけど……??
揉めている俺とノルの声を聞きつけ、奥のソファーで寝ていたシルクが起きてきた。

「何、朝からもめてるの~??」

寝ぼけた感じで、腹をボリボリ掻きながらこちらにやってくる。

昨日、食事の後、俺はノルと簡易型臨時ゲートの話をして盛り上がり、そのまま一晩中その話を続けた。
つまり、夢中になりすぎて徹夜した訳だ。

ゲートの話をはじめた俺たちを見たシルクは、おそらくどうなるか想像がついたのだろう。
ここで寝ていいかノルに確認し早々に寝る支度を進めてソファー環境を整えると、一人でさっさと寝てしまった。

そんな感じで迎えた朝だった。

起きてきたシルクに気づいたノルが、興奮ぎみにさっと近づく。

「シルク!さっきからサークが馬鹿な事ばかり言うんだ!本当に信じられない!!」

え!?そこまで言われちゃうの!?俺!?

友人関係になったとは言え憧れの研究者であるノルにそう言われ、俺はちょっとショックを受けた。
憤慨しているノルを、シルクが欠伸しながらよしよしと撫でる。
いいな~俺もあのもふっとした頭、触ってみたい。
シルクに撫でられノルは少し落ち着いたようだ。

「話が見えないよ~??どうしたの~??」

俺とノルを交互に見てシルクは言う。
俺が説明しようと口を開くと同時に、ノルが先に喋りだした。

「聞いてよ!今、簡易型臨時ゲートが完成した時の、特許収入の割合を話し合ってたんだけどさ!!サーク、4対6とか3対7とか言うんだよ!!」

「え??どっちがどっち??」

「僕が多いんだよ!!頭、おかしくないか!?」

興奮ぎみに話すノルに、俺は呆気にとられた。

え!?そっちなの!?

俺はびっくりしてしまった。
てっきり自分の割合が足りないって意味だと思っていたからだ。
俺は軽く混乱しながら聞いた。

「え!?多いから認めなかったの!?ノル!?」

「当たり前だろ!!君のアイデアであり、君が大体の構造を考えほぼ形になっているものを!何で僕の方が割合が多くなるんだよ!?おかしいだろ!?」

俺とシルクはぽかんとノルを見つめる。

だって自分が儲かる方に話が進んでいるのに、何だってそんなに憤慨して怒るんだ??
呆気にとられる俺を尻目に、ノルは熱いトークを続けた。

「どう考えても!多くても僕が3でサークが7が常識的だろう!!」

「いやいや!!流石にそれはこっちが多すぎる!俺はこの装置の根本は魔術でカバーしてるんだ!しかも特殊な魔術でだ!そこを魔術以外のものでカバーする事が出来なければ商品にならない!!装置の心臓、いわば要の部分を任せるのだから、ノルが多くて当然だろ!?」

「ある程度を魔術でカバーする形で、技術情報特許を取る方法だってある!!でも君は!基本できる限り誰でも使えるようにするため僕に依頼したんだ!!技術情報特許を考えれば!3対7でも僕が多すぎるくらいだ!!」

「いやいやいやいやっ!!俺にはこれを商品化できる技術も知識もない!!ほぼアイデアを出して、ノルに丸投げなんだから!!ノルが多くて当然だ!!」

「何を言ってるんだ!?サーク!?」

話し合いは平行線をたどり、俺とノルは互いに譲らなかった。
そっちが多くて当然だと言い合っていると、シルクがあくびをしながら、昨日使い方を教えてもらったコーヒーメーカーのスイッチを押す。

こぽこぽという音をたて、コーヒーの薫りが漂い始める。
その薫りに、なんとなくヒートアップしていた会話が和らいだ。

「……俺、よくわかんないけどさ~、そんなに言うなら、折半にしたら??仲良く半分こすればいいじゃん??」

シルクはのほほんとコーヒーをカップに注いで、粉のミルクと砂糖をたっぷり入れてかき回した。
自分のコーヒーを作りながら、俺たちに「飲む?」と聞く。
匂いにつられて、俺とノルはコーヒーメーカーの台に向かい、コーヒーを入れた。
ノルも俺も徹夜明けなので、ブラックのまま口をつける。

「朝イチにブラックって……胃が荒れるよ~??ふたりとも??ミルクぐらい入れなよ~??」

「慣れてるから平気。」

「うん、俺も。」

温かい飲み物が体に入って浸透していく。
特有の薫りが鼻腔を刺激し、色々な意味で目が覚めた気がする。

ホッと一息漏れた。
そして、コーヒーを飲んだら何だかお腹が空いてくる。

なんとなく腹を押さえると、ノルもシルクも同じ事をしていた。
顔を見合せ思わず笑ってしまう。

「ごめん、うち、食べるものないや。」

「う~ん、冒険者用の非常食なら持ってるけど、それじゃ味気ないよな~??」

「近くにモーニングやってるお店とかないの??」

「お店が開いてるかは知らないけど、川沿いの通りに、出店の早朝ワゴンが出てると思う。」

「え!?何それ!?見たい!見に行ってもいい!?」

途端、キラキラした目でシルクが言った。
シルクが西の国の出身で、この町には初めて来た話は昨日したのでノルもわかっている。
そしてこの町が、観光にはうってつけだと言うことも言うまでもない。
俺とノルは顔を見合せクスッと笑った。

「なら、早朝散歩がてら見に行くとするか~。」

「いいね。この時間なら人も少ないし、朝日が川面に揺れて綺麗だと思うよ。」

「そうなんだ~!!」

ウキウキとするシルクを見ながら出かける支度をした。
俺たちは簡単に片付けを済ませノルの家を出る。
住宅街はまだ静かで、でも少しずつ生活の音がし始めている。

川沿いの通りに向かいながら、ノルがスッと俺に並んだ。

「……半々でいいよな?サーク?」

「ん~。そうだな~。どっちも譲らそうだし。」

「その代わり、サークは技術情報特許も取ること。ここは僕は関わってないからね。」

「……それじゃ、俺が多くなるじゃん。」

「それはそれ、これはこれ。それに技術情報特許も絶対とった方がいい。勝手にそして安易に利用しようとする輩は必ず出てくる。それに少しでも歯止めをかけないと危険だ。」

なるほど、こういうのは金銭面の問題だけではないのか。
大がかりな半永久的ゲートの特許は取られ安全対策も進んでいるが、簡易で臨時的なゲートとなれば、興味本意で真似をして大きな事故が起きたり、犯罪的に使われる事も想定して対策も同時進行しなければならない。

商品を作ると言うのは、便利そうだからとただ作ればいいと言う事ではないんだな。
ノルはやはり、俺より視野が広いようだ。

「わかった。技術情報特許も取るよ。」

「うん。手続きは僕の方で進めておく。君は気にせず、今やるべき事をやってくれ。」

「うん。ありがとう。ノル。」

一晩ああでもないこうでもないと議論をしているうちに、ノルとの関係もずいぶんフランクになった。

「主~!ノル~!ホットサンドとワッフル売ってる~!!どっちがいい!?」

川沿いの通りに出ると、先を歩くシルクが楽しげに声をかけてきた。

通りにはポツポツと出店のワゴンが並び、地元のランニングや散歩をする人、通勤に向かう人か立ち寄っている。
ここまで近づくと美味しそうな薫りが、強烈に食欲を刺激した。

ホットサンドとワッフルか~??

甘いものを食べればしょっぱいものが食べたくなり、しょっぱいものを食べれば甘いものが食べたくなる。
腹に手を当て、俺はニヤリと笑った。

「俺はどっちも食うから、シルクは好きな方頼め~!!」

俺の言葉にノルとシルクは顔を見合せ大笑いする。

古い町並みが保たれたこの町での朝の散歩は心地よく、緩やかな静けさが漂っていた。
ノルのいう通り朝日が淡く川面に揺れ、とても綺麗だった。
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