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第八章①「疑惑と逃亡編」
そこは見ないで下さい
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どれぐらい時間がたったのだろう?
凄く長かったような気もするし、ほんの数分だったかもしれない。
息も出来ない程の静寂の中、唐突にふぅ、と言うため息が漏れた。
マダムが大きく息を吐いたのだ。
その途端、パッと現実が帰ってきた。
「あ~ヤダヤダ。歳は取りたくないね、全く。」
マダムははぁ~と大きくため息をつくと、ソファーにどっかりと寄りかかった。
サークは何が起きたのかわからず、困惑していた。
「……何、ぼっとしてんだい。肩ぐらい揉んどくれ。」
ピシャリとそう言われ、サークは慌てて立ち上がって、マダムの肩を揉み始める。
だが、はっと我に帰った。
「え?あれ?何で俺がマダムの肩を揉まないといけないんです??」
「年寄りは労るもんだろ。全く。」
答えになっていなかったがマダムが疲労しているのは解ったので、とりあえず逆らわず肩を揉む。
同時に魔力探査をしたが、マダムからは強い魔力等は見られなかった。
「何、魔力探索してるんだい。」
「あ、いや。今のが何だろうと思って。」
「で?何だと思ったのさ?」
「……マダム、千里眼持ちなんですか??」
他に思い当たるものがなく、サークはそう尋ねた。
この世界には、魔力を用いる魔術と魔法の他に、もう1つ似たような力がある。
神通力と呼ばれるものだ。
魔力とは関係なく、魔法や魔術のような事ができる力。
これはとても稀な力で、生まれた時から個人に備わっている。
人が生まれつき視力や聴覚があるのと同じように、1つ多く感覚を持って生まれるのだ。
多分、南の国の皇太子の魔力を匂いとして感じる才能も神通力の一種だ。
生まれ持った感覚なのでそれ以上の事は何もないのだが、それがずば抜けた感覚だった場合、魔法や魔術に匹敵する場合がある。
千里眼もその1つだ。
魔力探査など比べ物にならない。
ただ、ごく普通にものを見るだけで、その全てが見えてしまうのだ。
考えてみれば、今までのマダムのお見通し加減から、千里眼の持ち主であってもおかしくない。
「まぁ、そう言う事になるね。」
マダムはハンッとため息をついてそう答えた。
ただ人間観察眼と勘が優れているのかと思ったが、それだけではなかったようだ。
「……本当に千里眼てあるんですね。伝説かと思ってました。」
「あたしだって好きで持ってる訳じゃないよ。仕方ないだろ。」
「それで、マダムには何が見えたんですか?」
マダムが千里眼の持ち主だとはわかったが、どの程度の眼の持ち主なのかはわからない。
千里眼と言っても多少見える程度から、伝説では世界の現在過去未来、全て見通せる眼だってあるのだ。
「あんたね、サーク。馬鹿にするんじゃないよ?」
「と、言いますと?」
「全部だよ。例えるなら、あたしゃトート遺跡を誰が何で作ったかまで見える。だからあんたが祭壇まで行くのも知ってた。地竜がゾンビ化して出てくるのもね。」
「……はぁ!?マジですか!?」
「マジだよ、サーク。だからデカイ無限異空間バッグを無理矢理売り付けたんだろうが。」
さも何でもないようにマダムは言う。
だがトート遺跡に祭壇があることは公式には明かされていないので、行った者しか知らないはずだ。
もしかしたらマダムは行ったことがあるのかも知れないし、ボーンさんから聞いていたのかもしれない。
でも今回ドラゴンゾンビが出てきた事は話しただろうか?
少なくとも俺は話していないし、そのドラゴンゾンビが地竜だったことはどうして知ったのだろう?
まぁボーンさんが脅されて話したのかもしれないけれど、マダムの能力を疑う気持ちはなかった。
「そこは無理矢理、売り付けないで下さい。」
「なら聞くけど、あたしがお前さんが祭壇まで行くのが見えたから、デカイバッグを買えって言ったら、あんた信じたかい?サーク?……信じないだろ?」
「それは……。」
その言葉は、マダムの千里眼が本当に全てを見通しているのだと、何よりも明白に物語っていた。
マダムはおそらく、その目で見た事を話しても疑われる経験を語り尽くせないほどしてきたのだろう。
サークは言葉が見つからなかった。
だからあえて違うことを言った。
「そう言えば、お礼がまだでしたね。マダム。」
「何がだい??」
「マダムに無理矢理、大きいバッグを買わされてとても助かりました。ありがとうございます。」
「ふんっ、嫌味かい。」
「いえ、本当に助かりました。」
くすくす笑ってそう言うと、マダムは少し黙ってしまった。
サークも何も言わず、お礼を込めて首と肩甲骨周りまでマッサージした。
凝りと共に気持ちも少しはほぐれたのか、マダムはゆっくり話し始める。
「……千里眼って言ってもね、そんなに便利なモノじゃないんだよ。」
「そうなんですか?」
「ああ。全て見えるって言ってもね、ただ見るだけさ。初めて見るものなんかは、何だかわからないから説明のしようもないし、自分でも理解できない。後になってこの事だとわかったりね。」
「なるほど。」
「それにたくさん見えるってのは、それだけ情報量が多いって事さ。神の目を人間が持ったって、人間の頭じゃ処理が追い付かない。」
「それでマダムはよく情報量に拘るんですね~。」
「下手に無駄な情報があると、キャパオーバーで必要な情報を拾えないからね。」
「物凄く言い得て妙ですがわかります。」
「……それに、自分より力の強すぎるものはよく見えない。見えない訳じゃない。そこだけ光ってて何だかわからないのさ。」
「視覚化できない光の波長があるのと似てますね。」
「そ。だからあんたの生まれはわからなかった。光ってて何だかわからなかった。」
「……そっか。」
「逆に言えば、あんたはつまり、それだけ強い力から生まれたって事だよ。」
「……………………。」
覚悟はしていたが、人間の両親から産まれた訳ではない事を暗に示され、答えようがなかった。
ふと、義父さんはこれを知ったらどう思うだろうと思った。
「ただ、思ったより大事にされてたんだね、あんた。ひねくれてるからどんな子供だったのかと思ったら、ただの甘ったれた鼻垂れ小僧だったじゃないかい。」
「ちょっとマダム!?何をどこまで見たんですか!?」
「だから全部だよ。」
「待って!?やめて!?全部って何!?」
「全部って全部だよ。ちんこ周りに毛がはえ出したのは、結構早かったね?嬉しそうにまわりに自慢しててさ。面白かったよ。」
「うわああああぁぁ~!!俺のプライバシーを返してくれぇ~っ!!!!」
さも楽しそうなマダムの言葉に、サークはただただ、悲鳴をあげるしかなかった。
凄く長かったような気もするし、ほんの数分だったかもしれない。
息も出来ない程の静寂の中、唐突にふぅ、と言うため息が漏れた。
マダムが大きく息を吐いたのだ。
その途端、パッと現実が帰ってきた。
「あ~ヤダヤダ。歳は取りたくないね、全く。」
マダムははぁ~と大きくため息をつくと、ソファーにどっかりと寄りかかった。
サークは何が起きたのかわからず、困惑していた。
「……何、ぼっとしてんだい。肩ぐらい揉んどくれ。」
ピシャリとそう言われ、サークは慌てて立ち上がって、マダムの肩を揉み始める。
だが、はっと我に帰った。
「え?あれ?何で俺がマダムの肩を揉まないといけないんです??」
「年寄りは労るもんだろ。全く。」
答えになっていなかったがマダムが疲労しているのは解ったので、とりあえず逆らわず肩を揉む。
同時に魔力探査をしたが、マダムからは強い魔力等は見られなかった。
「何、魔力探索してるんだい。」
「あ、いや。今のが何だろうと思って。」
「で?何だと思ったのさ?」
「……マダム、千里眼持ちなんですか??」
他に思い当たるものがなく、サークはそう尋ねた。
この世界には、魔力を用いる魔術と魔法の他に、もう1つ似たような力がある。
神通力と呼ばれるものだ。
魔力とは関係なく、魔法や魔術のような事ができる力。
これはとても稀な力で、生まれた時から個人に備わっている。
人が生まれつき視力や聴覚があるのと同じように、1つ多く感覚を持って生まれるのだ。
多分、南の国の皇太子の魔力を匂いとして感じる才能も神通力の一種だ。
生まれ持った感覚なのでそれ以上の事は何もないのだが、それがずば抜けた感覚だった場合、魔法や魔術に匹敵する場合がある。
千里眼もその1つだ。
魔力探査など比べ物にならない。
ただ、ごく普通にものを見るだけで、その全てが見えてしまうのだ。
考えてみれば、今までのマダムのお見通し加減から、千里眼の持ち主であってもおかしくない。
「まぁ、そう言う事になるね。」
マダムはハンッとため息をついてそう答えた。
ただ人間観察眼と勘が優れているのかと思ったが、それだけではなかったようだ。
「……本当に千里眼てあるんですね。伝説かと思ってました。」
「あたしだって好きで持ってる訳じゃないよ。仕方ないだろ。」
「それで、マダムには何が見えたんですか?」
マダムが千里眼の持ち主だとはわかったが、どの程度の眼の持ち主なのかはわからない。
千里眼と言っても多少見える程度から、伝説では世界の現在過去未来、全て見通せる眼だってあるのだ。
「あんたね、サーク。馬鹿にするんじゃないよ?」
「と、言いますと?」
「全部だよ。例えるなら、あたしゃトート遺跡を誰が何で作ったかまで見える。だからあんたが祭壇まで行くのも知ってた。地竜がゾンビ化して出てくるのもね。」
「……はぁ!?マジですか!?」
「マジだよ、サーク。だからデカイ無限異空間バッグを無理矢理売り付けたんだろうが。」
さも何でもないようにマダムは言う。
だがトート遺跡に祭壇があることは公式には明かされていないので、行った者しか知らないはずだ。
もしかしたらマダムは行ったことがあるのかも知れないし、ボーンさんから聞いていたのかもしれない。
でも今回ドラゴンゾンビが出てきた事は話しただろうか?
少なくとも俺は話していないし、そのドラゴンゾンビが地竜だったことはどうして知ったのだろう?
まぁボーンさんが脅されて話したのかもしれないけれど、マダムの能力を疑う気持ちはなかった。
「そこは無理矢理、売り付けないで下さい。」
「なら聞くけど、あたしがお前さんが祭壇まで行くのが見えたから、デカイバッグを買えって言ったら、あんた信じたかい?サーク?……信じないだろ?」
「それは……。」
その言葉は、マダムの千里眼が本当に全てを見通しているのだと、何よりも明白に物語っていた。
マダムはおそらく、その目で見た事を話しても疑われる経験を語り尽くせないほどしてきたのだろう。
サークは言葉が見つからなかった。
だからあえて違うことを言った。
「そう言えば、お礼がまだでしたね。マダム。」
「何がだい??」
「マダムに無理矢理、大きいバッグを買わされてとても助かりました。ありがとうございます。」
「ふんっ、嫌味かい。」
「いえ、本当に助かりました。」
くすくす笑ってそう言うと、マダムは少し黙ってしまった。
サークも何も言わず、お礼を込めて首と肩甲骨周りまでマッサージした。
凝りと共に気持ちも少しはほぐれたのか、マダムはゆっくり話し始める。
「……千里眼って言ってもね、そんなに便利なモノじゃないんだよ。」
「そうなんですか?」
「ああ。全て見えるって言ってもね、ただ見るだけさ。初めて見るものなんかは、何だかわからないから説明のしようもないし、自分でも理解できない。後になってこの事だとわかったりね。」
「なるほど。」
「それにたくさん見えるってのは、それだけ情報量が多いって事さ。神の目を人間が持ったって、人間の頭じゃ処理が追い付かない。」
「それでマダムはよく情報量に拘るんですね~。」
「下手に無駄な情報があると、キャパオーバーで必要な情報を拾えないからね。」
「物凄く言い得て妙ですがわかります。」
「……それに、自分より力の強すぎるものはよく見えない。見えない訳じゃない。そこだけ光ってて何だかわからないのさ。」
「視覚化できない光の波長があるのと似てますね。」
「そ。だからあんたの生まれはわからなかった。光ってて何だかわからなかった。」
「……そっか。」
「逆に言えば、あんたはつまり、それだけ強い力から生まれたって事だよ。」
「……………………。」
覚悟はしていたが、人間の両親から産まれた訳ではない事を暗に示され、答えようがなかった。
ふと、義父さんはこれを知ったらどう思うだろうと思った。
「ただ、思ったより大事にされてたんだね、あんた。ひねくれてるからどんな子供だったのかと思ったら、ただの甘ったれた鼻垂れ小僧だったじゃないかい。」
「ちょっとマダム!?何をどこまで見たんですか!?」
「だから全部だよ。」
「待って!?やめて!?全部って何!?」
「全部って全部だよ。ちんこ周りに毛がはえ出したのは、結構早かったね?嬉しそうにまわりに自慢しててさ。面白かったよ。」
「うわああああぁぁ~!!俺のプライバシーを返してくれぇ~っ!!!!」
さも楽しそうなマダムの言葉に、サークはただただ、悲鳴をあげるしかなかった。
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