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第八章①「疑惑と逃亡編」
冒険者の覚悟
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ギルドとは、ある種の独立国家的機関である。
各国各地に点在し、政府組織から一線を引いた、国境さえ飛び越えられる1つの国のようなものだ。
それは単に組織として力が強いと言うだけではない。
各国の政府から特別な権限を得ているのだ。
それは所在地政府離脱権限と臨時国家的独立行政権の2つ。
所在地政府離脱権限は、各地のギルドが所在する場所の政府から離脱し、一時的に独立国の様に振る舞う事が認められた権利。
臨時国家的独立行政権は、ギルド全体が、全ての政府から離脱、独立し、一時的にだが本当にギルド組織が1つの国となる事を意味する。
これらは、国自体が独裁政府や恐怖政治にならないようブレーキをかける役割を担っている。
国が国民を弾圧したり圧政を敷いたりした時、すぐに軍と渡り合えるような戦力を集めるのは難しい。
だがギルドは各地に点在し、個々人が優れた能力の者が集まっている。
だから他国の介入やその国の有志が傭兵を集める等して対抗できる様になるよりも先に、真っ先にギルドが事態に対応するのだ。
それだけでなく、ギルドは各地に拠点があり情報伝達ができる。
国が国境を塞いだり情報弾圧をかけたとしても、ギルド間での情報伝達が塞がる事はほぼない。
その為、もしもどこかの国でおかしな事態が起きた時は、人々を守る為にギルドは権限を使用して独立国家として振る舞う事が許されている。
そして今回、マダムが権限施行を宣言したのが「所在地政府離脱」だ。
臨時国家的独立行政権はギルド組織全体が各国政府から独立する事を意味するので、ギルド組織全体の意向が必要になる。
これは本当にクーデターが起きたり、戦争が起きたりしない限りは使われる事はない。
だが所在地政府離脱権限は、各ギルドのギルドマスターに与えられている。
ギルドマスターがその必要ありと判断し、そのギルドに所属する冒険者の3/4以上の署名によって、権限が施行される。
そんな訳で、今、皆がずらずら並んで、署名にサインしている。
サインが終わった人は酒場にいなかった仲間を呼んできたりして、後から後から人が来て署名を行っている。
マダムが宣言した時、誰一人抜けられないと行ったが、それはこの署名をした人に限る。
だから嫌な人は署名せず、代わりにギルド変更願いを持って近くのギルドに籍を移しに行くのだ。
マダムはギルド兼酒場の入り口にテーブルを用意し、署名用紙と変更願いを並べて座っているが、今の所、変更願いを取った人はいない。
「……何だって、こんな大事に……?!」
俺は状況が飲み込めずただただ混乱した。
酒場では酒が振る舞われ、どんちゃん騒ぎになっている。
いやいやいやいやっ!!
皆さんも、お祭り騒ぎしてないでください!
どう考えても、これ、ただ事じゃない事態だぞ?!
何でそんな気軽に署名して、うぇーいってお祭り騒ぎしてるんですか?!
王国から離脱するんですよ?!
敵対組織とみなされて、攻撃される危険に晒されてるんですよ?!
本当にわかってます?!
「サークっ!!政府離脱権限が施行されたんだってっ?!」
「レダさん!そうなんですよ!何だってこんな大事になったんだか!!俺!どうしたら良いんですか?!」
パタパタとレダが走り込んできた。
その後ろから、トムがヒースを連れてやってくる。
どうやらいつの間にか宿かどこかにいた2人を呼んできたりらしい。
「ウソ~!酒場に居れば良かった!!私も『構わん!構わんっ!』やりたかったっ!!」
悔しそうにレダは机を叩いた。
え?!待って?!
大事なのってそこじゃないよね?!
「あれ面白かった~!俺も知ってたら参加したのに~!」
シルクはにこにことそんな事を言う。
あの瞬間、俺と一緒に呆気に取られていたもんな、こいつ。
というか、あれって通例儀式みたいなものだったの?!
ギルドってまだまだよくわからない。
レダはさんざん悔しがった後、署名をする為にヒースと列に並びに行った。
シルクは自分も酒が欲しくなったらしくカウンターに走っていき、そこで飲んだくれてた奴らに捕まって一緒にゲラゲラ笑っている。
「トムさ~んっ!!どういう事なんですか?!これは~?!」
俺は頭が追いつかなくて、帰ってきたトムさんに泣きついた。
トムさんはキョトンとした顔で俺を見る。
「どういう事って……お前、所在地政府離脱権限を知らないのか??」
「知ってます!知ってるから混乱してるんですっ!!何でこんな大事に?!俺、皆の人生なんて背負えませんっ!!」
そう、こんな大事になると思わなかった。
ちょっとお言葉に甘えて頼らせてもらおうと思っただけなのだ。
なのにこんな、このギルドと皆の人生をかけるような大事になると思わなかった。
俺の言葉と動揺っぷりに、トムさんはう~んと唸った。
そして少しの間の後、ニッと笑った。
「あんまり難しく考えるなよっ!!政府離脱権限が施行されるなんて!一生に一度、あるかないかだ!!楽しめっ!!」
豪快に笑って、トムは持ってきたジョッキをグイッと煽った。
だから何なんだ?!皆?!
こんな大事なのに!?何でお祭り感覚なんだよ?!
俺は頭を抱えた。
「……サーク、落ち着け。」
トムさんがゆったりした口調でそう言う。
確かにこうなった以上、俺がここでオロオロした所で何も変わらない。
大きくため息をついて俺はトムさんに向き直る。
それを確かめると、トムさんはゆっくり話し始めた。
「……お前、マダムをどう思う?」
「どうって……抜け目ない人ですよね。」
俺の返答にトムさんはブッと酒を吹いた。
そしてゲラゲラ笑いながら噎せている。
ちょっと苦しそうだったので、回復をかけてあげた。
「抜け目ない……プププっ、まぁ、抜け目ないな。」
「あの人の思い通りにならない事って、この世にあるんですかね~??」
「何だよ、サーク?やけに拗ねてるな??」
「別に拗ねてませんけど、何か手のひらで踊らされて、好き勝手されてるみたいで。」
ムス~とする俺を、トムさんは笑って黙って見ている。
そしてゆっくり話し出す。
「そうかもな~。マダムにかかれば、皆そんな感じだ。だがな?それでも皆、マダムについていくんだ。何でだかわかるか?」
「……何だかんだ、マダムは情に厚いからですよ。勝手な事をしているようで、後々になればそれが相手や周りの為だった事がわかります。」
「なんだ、わかってるじゃないか??」
トムさんはふふふと笑って、俺の頭をガシガシ撫でた。
それども俺はぶーたれた顔で机に肘をついた。
「ですが今回はリスクが大きすぎます。もしもこれが間違った判断だとギルド組織全体に判断されれば、マダムはギルドマスターの資格を失います。皆だってそうです。下手したら反逆罪に問われます。こんな簡単にお祭り感覚でやっていい事じゃないです。」
「お祭り感覚か……そうだなぁ~。」
トムさんは、ただウンウンと頷きながら、俺の話を聞いてくれる。
「サーク、俺達は常に死を覚悟してクエストを行っている。だから感覚が少し馬鹿になってるのかもな。……だからって覚悟が無い訳じゃない。逆に常に覚悟があるんだ。」
「…………。」
「そして、心には常に自由を、生きている限りは楽しんで生きようと思ってる。同じやるなら深刻になるより楽しんで、だ。」
俺は横目で、周りの皆の顔を見ていた。
落ち着いて顔を見ればわかる。
ただ馬鹿みたいに騒いでるんじゃない。
皆、腹を括った顔をしている。
あるものは少しの不安を誤魔化すように笑い、あるものは悟ったように落ち着いている。
そうか、と思った。
皆、不安が無い訳じゃない。
それでも選んだ事なんだ。
「難しい決断だったと思うよ、俺は。マダムにしても、俺達にしても。多分これはお前の為だけの事じゃない。何らかの意味があるんだ。マダムは今、王国に対し喝を入れるべきだと判断した。そしてそれが個人的な思いだけでなく、ギルド全体の意思だと判断したんだ。俺達それぞれが、自分の意思を持ってそれを選んだ。お前にはお前の戦いがある。だがお前の事はきっかけに過ぎない。俺達は俺達が選んだ道を進む。ただ、それだけの事なのさ。」
トムさんは、ただ、静かにそう言った。
各国各地に点在し、政府組織から一線を引いた、国境さえ飛び越えられる1つの国のようなものだ。
それは単に組織として力が強いと言うだけではない。
各国の政府から特別な権限を得ているのだ。
それは所在地政府離脱権限と臨時国家的独立行政権の2つ。
所在地政府離脱権限は、各地のギルドが所在する場所の政府から離脱し、一時的に独立国の様に振る舞う事が認められた権利。
臨時国家的独立行政権は、ギルド全体が、全ての政府から離脱、独立し、一時的にだが本当にギルド組織が1つの国となる事を意味する。
これらは、国自体が独裁政府や恐怖政治にならないようブレーキをかける役割を担っている。
国が国民を弾圧したり圧政を敷いたりした時、すぐに軍と渡り合えるような戦力を集めるのは難しい。
だがギルドは各地に点在し、個々人が優れた能力の者が集まっている。
だから他国の介入やその国の有志が傭兵を集める等して対抗できる様になるよりも先に、真っ先にギルドが事態に対応するのだ。
それだけでなく、ギルドは各地に拠点があり情報伝達ができる。
国が国境を塞いだり情報弾圧をかけたとしても、ギルド間での情報伝達が塞がる事はほぼない。
その為、もしもどこかの国でおかしな事態が起きた時は、人々を守る為にギルドは権限を使用して独立国家として振る舞う事が許されている。
そして今回、マダムが権限施行を宣言したのが「所在地政府離脱」だ。
臨時国家的独立行政権はギルド組織全体が各国政府から独立する事を意味するので、ギルド組織全体の意向が必要になる。
これは本当にクーデターが起きたり、戦争が起きたりしない限りは使われる事はない。
だが所在地政府離脱権限は、各ギルドのギルドマスターに与えられている。
ギルドマスターがその必要ありと判断し、そのギルドに所属する冒険者の3/4以上の署名によって、権限が施行される。
そんな訳で、今、皆がずらずら並んで、署名にサインしている。
サインが終わった人は酒場にいなかった仲間を呼んできたりして、後から後から人が来て署名を行っている。
マダムが宣言した時、誰一人抜けられないと行ったが、それはこの署名をした人に限る。
だから嫌な人は署名せず、代わりにギルド変更願いを持って近くのギルドに籍を移しに行くのだ。
マダムはギルド兼酒場の入り口にテーブルを用意し、署名用紙と変更願いを並べて座っているが、今の所、変更願いを取った人はいない。
「……何だって、こんな大事に……?!」
俺は状況が飲み込めずただただ混乱した。
酒場では酒が振る舞われ、どんちゃん騒ぎになっている。
いやいやいやいやっ!!
皆さんも、お祭り騒ぎしてないでください!
どう考えても、これ、ただ事じゃない事態だぞ?!
何でそんな気軽に署名して、うぇーいってお祭り騒ぎしてるんですか?!
王国から離脱するんですよ?!
敵対組織とみなされて、攻撃される危険に晒されてるんですよ?!
本当にわかってます?!
「サークっ!!政府離脱権限が施行されたんだってっ?!」
「レダさん!そうなんですよ!何だってこんな大事になったんだか!!俺!どうしたら良いんですか?!」
パタパタとレダが走り込んできた。
その後ろから、トムがヒースを連れてやってくる。
どうやらいつの間にか宿かどこかにいた2人を呼んできたりらしい。
「ウソ~!酒場に居れば良かった!!私も『構わん!構わんっ!』やりたかったっ!!」
悔しそうにレダは机を叩いた。
え?!待って?!
大事なのってそこじゃないよね?!
「あれ面白かった~!俺も知ってたら参加したのに~!」
シルクはにこにことそんな事を言う。
あの瞬間、俺と一緒に呆気に取られていたもんな、こいつ。
というか、あれって通例儀式みたいなものだったの?!
ギルドってまだまだよくわからない。
レダはさんざん悔しがった後、署名をする為にヒースと列に並びに行った。
シルクは自分も酒が欲しくなったらしくカウンターに走っていき、そこで飲んだくれてた奴らに捕まって一緒にゲラゲラ笑っている。
「トムさ~んっ!!どういう事なんですか?!これは~?!」
俺は頭が追いつかなくて、帰ってきたトムさんに泣きついた。
トムさんはキョトンとした顔で俺を見る。
「どういう事って……お前、所在地政府離脱権限を知らないのか??」
「知ってます!知ってるから混乱してるんですっ!!何でこんな大事に?!俺、皆の人生なんて背負えませんっ!!」
そう、こんな大事になると思わなかった。
ちょっとお言葉に甘えて頼らせてもらおうと思っただけなのだ。
なのにこんな、このギルドと皆の人生をかけるような大事になると思わなかった。
俺の言葉と動揺っぷりに、トムさんはう~んと唸った。
そして少しの間の後、ニッと笑った。
「あんまり難しく考えるなよっ!!政府離脱権限が施行されるなんて!一生に一度、あるかないかだ!!楽しめっ!!」
豪快に笑って、トムは持ってきたジョッキをグイッと煽った。
だから何なんだ?!皆?!
こんな大事なのに!?何でお祭り感覚なんだよ?!
俺は頭を抱えた。
「……サーク、落ち着け。」
トムさんがゆったりした口調でそう言う。
確かにこうなった以上、俺がここでオロオロした所で何も変わらない。
大きくため息をついて俺はトムさんに向き直る。
それを確かめると、トムさんはゆっくり話し始めた。
「……お前、マダムをどう思う?」
「どうって……抜け目ない人ですよね。」
俺の返答にトムさんはブッと酒を吹いた。
そしてゲラゲラ笑いながら噎せている。
ちょっと苦しそうだったので、回復をかけてあげた。
「抜け目ない……プププっ、まぁ、抜け目ないな。」
「あの人の思い通りにならない事って、この世にあるんですかね~??」
「何だよ、サーク?やけに拗ねてるな??」
「別に拗ねてませんけど、何か手のひらで踊らされて、好き勝手されてるみたいで。」
ムス~とする俺を、トムさんは笑って黙って見ている。
そしてゆっくり話し出す。
「そうかもな~。マダムにかかれば、皆そんな感じだ。だがな?それでも皆、マダムについていくんだ。何でだかわかるか?」
「……何だかんだ、マダムは情に厚いからですよ。勝手な事をしているようで、後々になればそれが相手や周りの為だった事がわかります。」
「なんだ、わかってるじゃないか??」
トムさんはふふふと笑って、俺の頭をガシガシ撫でた。
それども俺はぶーたれた顔で机に肘をついた。
「ですが今回はリスクが大きすぎます。もしもこれが間違った判断だとギルド組織全体に判断されれば、マダムはギルドマスターの資格を失います。皆だってそうです。下手したら反逆罪に問われます。こんな簡単にお祭り感覚でやっていい事じゃないです。」
「お祭り感覚か……そうだなぁ~。」
トムさんは、ただウンウンと頷きながら、俺の話を聞いてくれる。
「サーク、俺達は常に死を覚悟してクエストを行っている。だから感覚が少し馬鹿になってるのかもな。……だからって覚悟が無い訳じゃない。逆に常に覚悟があるんだ。」
「…………。」
「そして、心には常に自由を、生きている限りは楽しんで生きようと思ってる。同じやるなら深刻になるより楽しんで、だ。」
俺は横目で、周りの皆の顔を見ていた。
落ち着いて顔を見ればわかる。
ただ馬鹿みたいに騒いでるんじゃない。
皆、腹を括った顔をしている。
あるものは少しの不安を誤魔化すように笑い、あるものは悟ったように落ち着いている。
そうか、と思った。
皆、不安が無い訳じゃない。
それでも選んだ事なんだ。
「難しい決断だったと思うよ、俺は。マダムにしても、俺達にしても。多分これはお前の為だけの事じゃない。何らかの意味があるんだ。マダムは今、王国に対し喝を入れるべきだと判断した。そしてそれが個人的な思いだけでなく、ギルド全体の意思だと判断したんだ。俺達それぞれが、自分の意思を持ってそれを選んだ。お前にはお前の戦いがある。だがお前の事はきっかけに過ぎない。俺達は俺達が選んだ道を進む。ただ、それだけの事なのさ。」
トムさんは、ただ、静かにそう言った。
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